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六章
奴隷 8
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用事も済ませたし、もう街の方に戻るか。
外で長居する理由もないしね。
獣っ娘はお礼を言って着替えたっきり、俯いている。
押された事を怒ってるのか。
裸を見られたのが恥ずかしかったのか。
どっちかだと思うんだけど。
いまいち何を考えてるのかよく分からない。
因みに、怒らせる意図は無かった。
ただ、なんと言いますか。
ついつい、揶揄いたくなってしまいまして。
気づいたら手が伸びていたのだ。
まぁ、目は合わないけど。
普通に俺の後ついてきてくれるからね。
問題はないって事で、ヨシ!
しかし、服を渡した訳だが。
女の子用の服なんて持ってるはずもなく。
俺のを渡した。
当然、ブカブカである。
彼シャツってやつ?
素晴らしいシチュエーションな訳だけど。
それ以上に。
下を向いているのと身長の低さ。
それが相まって、チラチラと。
首元の辺りから素晴らしい景色が見える。
川での事といい。
この娘はよく分かってらっしゃる。
いや、天然なんだろうけど。
だからこそより良いって言うか。
「それで……」
「ん?」
「私はこれから何を」
顔がまだほんのり赤いまま。
恐る恐るといった様子で聞いてきた。
まぁ、そこ気になるよね。
奴隷を理由なく買う人間なんてあんまりいないし。
特に高いのは。
真面目に働かないと。
期待はずれだって売り飛ばされかねない。
中古は値段が落ちるのだ。
って事は、店での扱いも悪くなる訳で。
なかなか酷い扱いだったが。
それ以下になる。
どんな羽目に遭うか、想像もしたくない。
「何の為に買われたと思う?」
「えっと、私は獣人ですし狩猟のお供とかですか? ご主人様は森に詳しいようですし」
「自信あるの?」
「嗅覚には自信が。……もしかしたら、少し衰えてるかもしれませんけど」
「あの店、それに君も匂い強かったからね」
「で、でも! すぐに勘を取り戻して見せます!」
「やる気出してくれてるとこ悪いけど、残念」
「え」
「ハズレだ」
この子に言われて今思い至った。
そういうのもあるのかと。
狩猟とかやるなら、嗅覚ってかなり便利だもんな。
獣人にしかない利点だ。
人間の奴隷じゃこうは行かない。
猟犬とかなら嗅覚という点では劣らないのかもしれないが。
言葉通じないからね。
使い勝手が悪い。
差別されてたとしてそのメリットがなくなる訳じゃない。
この国じゃ一般的な購入理由か。
ま、俺の場合は魔眼があるし。
そもそも狩猟もあまりやらないからね。
奴隷をそれ目的で買う事はないな。
「仕方ない、ヒントをあげよう」
「ヒントですか?」
「俺は男で君は女だ。分かるか?」
「はい」
「よろしい。つまりそういう事」
「……え?」
キョトンと、惚けた顔。
「私と、ですか?」
「うん」
「獣人ですよ?」
「ケモ耳って可愛いよね」
「……」
「どした?」
驚いたような表情。
そのまま、固まってしまった。
あれ?
想定外の反応だ。
「この国の人って、獣人はそういう対象にならないんじゃ」
「多数派とは言わないけど、そんな事ないでしょ」
「そうなんですか?」
「まぁ、少なくとも俺は一目惚れして買っちゃったしね」
てっきり嫌悪感を示されるかと思ったが。
そんな感じではないな。
胸の前に手を当て。
上目遣いで俺を見つめるような形。
「そういうのは嫌?」
「……嫌じゃ、ないです」
「あ、そうなんだ」
「何でご主人様の方が驚いてるんですか?」
「こんなおっさんに求められても嬉しくないでしょ」
「そんな事」
「?」
「私とする為にお金払ってくれたんですよね?」
「そりゃ、奴隷を買った訳だしね」
「求められるのは、価値を認められるのは嬉しいです」
「そんなもんか」
正直意外だ。
奴隷な以上、断ったりとかは不可能だが。
それでも感情は本人の自由。
もっと嫌がられるかと。
そうでなくても、微妙そうな反応されるのが普通。
まさか喜ばれるとは。
変わった子である。
ま、嫌われてないならそれでよし。
好かれて悪い事はないからね。
「不良債権だと。ずっと言われてました」
「……あそこの店で?」
「はい」
「ま、あの扱いだしね。想像はつく」
「長い間売れ残ってしまって。それで」
「いつからあそこにいたの?」
「よく覚えてません。でも、冬は初めてです」
「そっか」
一年はいなかった。
と言っても、奴隷は在庫持ってるだけで経費が半端なくかかるしな。
売れどきもある。
基本的には仕入れ直後が一番売れる。
それ以降は心身共に衰えるから。
経費はかかるのに価値は落ちていくという有様。
多分、そこそこの値段で仕入れたはずだ。
それで売れなくて。
経費が利益を圧迫し。
結果あの扱いにつながっていたのだろう。
キツかったな。
あまり救世主的な目で見られても困るが。
まぁ、あそこより環境が悪くなる事はない。
そこは保証しよう。
「ところで、どこに向かってるんですか?」
「ん? 娼館」
「へぇ……。え!?」
外で長居する理由もないしね。
獣っ娘はお礼を言って着替えたっきり、俯いている。
押された事を怒ってるのか。
裸を見られたのが恥ずかしかったのか。
どっちかだと思うんだけど。
いまいち何を考えてるのかよく分からない。
因みに、怒らせる意図は無かった。
ただ、なんと言いますか。
ついつい、揶揄いたくなってしまいまして。
気づいたら手が伸びていたのだ。
まぁ、目は合わないけど。
普通に俺の後ついてきてくれるからね。
問題はないって事で、ヨシ!
しかし、服を渡した訳だが。
女の子用の服なんて持ってるはずもなく。
俺のを渡した。
当然、ブカブカである。
彼シャツってやつ?
素晴らしいシチュエーションな訳だけど。
それ以上に。
下を向いているのと身長の低さ。
それが相まって、チラチラと。
首元の辺りから素晴らしい景色が見える。
川での事といい。
この娘はよく分かってらっしゃる。
いや、天然なんだろうけど。
だからこそより良いって言うか。
「それで……」
「ん?」
「私はこれから何を」
顔がまだほんのり赤いまま。
恐る恐るといった様子で聞いてきた。
まぁ、そこ気になるよね。
奴隷を理由なく買う人間なんてあんまりいないし。
特に高いのは。
真面目に働かないと。
期待はずれだって売り飛ばされかねない。
中古は値段が落ちるのだ。
って事は、店での扱いも悪くなる訳で。
なかなか酷い扱いだったが。
それ以下になる。
どんな羽目に遭うか、想像もしたくない。
「何の為に買われたと思う?」
「えっと、私は獣人ですし狩猟のお供とかですか? ご主人様は森に詳しいようですし」
「自信あるの?」
「嗅覚には自信が。……もしかしたら、少し衰えてるかもしれませんけど」
「あの店、それに君も匂い強かったからね」
「で、でも! すぐに勘を取り戻して見せます!」
「やる気出してくれてるとこ悪いけど、残念」
「え」
「ハズレだ」
この子に言われて今思い至った。
そういうのもあるのかと。
狩猟とかやるなら、嗅覚ってかなり便利だもんな。
獣人にしかない利点だ。
人間の奴隷じゃこうは行かない。
猟犬とかなら嗅覚という点では劣らないのかもしれないが。
言葉通じないからね。
使い勝手が悪い。
差別されてたとしてそのメリットがなくなる訳じゃない。
この国じゃ一般的な購入理由か。
ま、俺の場合は魔眼があるし。
そもそも狩猟もあまりやらないからね。
奴隷をそれ目的で買う事はないな。
「仕方ない、ヒントをあげよう」
「ヒントですか?」
「俺は男で君は女だ。分かるか?」
「はい」
「よろしい。つまりそういう事」
「……え?」
キョトンと、惚けた顔。
「私と、ですか?」
「うん」
「獣人ですよ?」
「ケモ耳って可愛いよね」
「……」
「どした?」
驚いたような表情。
そのまま、固まってしまった。
あれ?
想定外の反応だ。
「この国の人って、獣人はそういう対象にならないんじゃ」
「多数派とは言わないけど、そんな事ないでしょ」
「そうなんですか?」
「まぁ、少なくとも俺は一目惚れして買っちゃったしね」
てっきり嫌悪感を示されるかと思ったが。
そんな感じではないな。
胸の前に手を当て。
上目遣いで俺を見つめるような形。
「そういうのは嫌?」
「……嫌じゃ、ないです」
「あ、そうなんだ」
「何でご主人様の方が驚いてるんですか?」
「こんなおっさんに求められても嬉しくないでしょ」
「そんな事」
「?」
「私とする為にお金払ってくれたんですよね?」
「そりゃ、奴隷を買った訳だしね」
「求められるのは、価値を認められるのは嬉しいです」
「そんなもんか」
正直意外だ。
奴隷な以上、断ったりとかは不可能だが。
それでも感情は本人の自由。
もっと嫌がられるかと。
そうでなくても、微妙そうな反応されるのが普通。
まさか喜ばれるとは。
変わった子である。
ま、嫌われてないならそれでよし。
好かれて悪い事はないからね。
「不良債権だと。ずっと言われてました」
「……あそこの店で?」
「はい」
「ま、あの扱いだしね。想像はつく」
「長い間売れ残ってしまって。それで」
「いつからあそこにいたの?」
「よく覚えてません。でも、冬は初めてです」
「そっか」
一年はいなかった。
と言っても、奴隷は在庫持ってるだけで経費が半端なくかかるしな。
売れどきもある。
基本的には仕入れ直後が一番売れる。
それ以降は心身共に衰えるから。
経費はかかるのに価値は落ちていくという有様。
多分、そこそこの値段で仕入れたはずだ。
それで売れなくて。
経費が利益を圧迫し。
結果あの扱いにつながっていたのだろう。
キツかったな。
あまり救世主的な目で見られても困るが。
まぁ、あそこより環境が悪くなる事はない。
そこは保証しよう。
「ところで、どこに向かってるんですか?」
「ん? 娼館」
「へぇ……。え!?」
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