ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

文字の大きさ
147 / 276
十四章

始末 5

しおりを挟む
 断じて照れたわけではない。
 そもそも、こんだけ体重ねておいてだ。
 今更。
 しかも35歳のおっさんである。
 前世も合わせりゃ、70歳のおじいちゃん。
 そんなピュアな訳あるか!

 まぁ、性的経験に対して?
 恋愛経験はびっくりするほど少ないが。
 異世界に来てから。
 ほぼ風俗。
 女将もアレ恋愛とは違うし。
 獣っ娘は奴隷だし。

 もしかして、ストレートに愛情向けてきたの。
 ノアぐらいかもしれない。
 ……いや、馬車の娘が居たか。
 あれもそう言う意味合いより庇護を求めてた感はあるが。
 結局俺が避けたちゃったし。
 どうともならなかったのだから、カウント外は変わらず。
 まさかそれが原因?
 期間空きすぎて。
 童貞レベルまで耐性が下がっている可能性。
 セカンド素人童貞拗らせすぎでは?

 そんな悲しい事実に気づいてしまった訳だが。
 一旦置いて置いて。
 それがあろうとも、断じて照れた訳ではいないのだ。
 恥ずかしいとか。
 断じてそんな童貞くさい思考回路はない。

 俺が黙ったせいか、沈黙が流れる。
 まぁ、深夜も深夜。
 街もまだ寝ているぐらいの時間帯だし、それも当然。
 さっきまでぐっすりしてた訳だし。
 沈黙ついでに、ノアも寝てくれればよかったのだが。
 どうもそうはならなそう。
 横から視線を感じる。
 見なくても分かる、絶対ニヤニヤしてる。
 嫌ではないのだけれど。
 何と言えばいいのか。
 気まずいというか、いたたまれない気分だ。

 さっさと寝ろや!
 あからさまに、疲れてはいそうだったし。
 俺のせいで起こしちゃっただけで。
 眠いだろ?
 ほっとけばすぐ寝落ちするかと思ったが。
 期待薄。
 どうも、しっかり起きてしまったらしい。
 微妙な空気感。
 このままは耐えられない。

 ……そういえば、

「話は変わるが」
「あ、先輩が誤魔化した!」
「うるさい」

 ちょうどいいか。
 少し、聞きたいことがあったのだ。
 別に誤魔化してる訳じゃないよ?
 ノアの戯言って事で。
 ……うん。

 王都で発生した暴動の件。
 これ、詳しく聞けていなかったから。
 いやね。
 ずっと気になってはいたのだ。
 ただ、あれだけ華麗にスルーされて。
 そのままベッドin。
 戦闘が始まった。
 正確には聞く暇がなかったのだ。

 ピロートークとしてはどうかと思うが。
 そもそも行為自体そんな可愛い物ではなかったし。
 生きるか死ぬかの戦いだった。
 戦場を生き抜いたのだ。
 その後のトークが物騒でも違和感はないだろう。
 文句を受け付けるつもりはない。

 完全な俺視点。
 自分本位の勝手な言い分ではあるが。
 ノアの責任ってことで。
 あの状態で気にならない訳ないのだ。
 お預けして。
 どう考えてもそれが悪い。
 うん。
 もちろん、口には出さないけどね?

「あぁ、その話ですか」

 俺の疑問になんでもないように話し始めた。
 3人揃って帰ってきた時点でそこまで心配はしてなかったが。
 ってか、何かあったとも思ってない。
 日も落ちかけだったし。
 初日だ。
 候補地も何個かあったはずだからね。
 それなりに当たりだけつけて。
 続きは明日以降。
 そのつもりで帰ってきたのだと判断していたのだけど。

「結構手強かったですよ」

 あっさり、そう言い放った。
 ハズレたらしい。
 予想外。
 しっかり解決してきた様子。

 流石、優秀やね。
 この若さでAランク冒険者やってるだけあるわ。
 さっきまで淫魔にしか見えなかった訳だが。
 そこらへん。
 案外、しっかりしてるらしい。
 そして、俺が酒瓶の事で冤罪くらった理由も。
 何となく察しがついた。
 一仕事終えて来た所にアレはね。
 まぁ、少々イラっとくるのも分からなくはない。
 結構大変だったのだろう。

 魔結晶の事を考えると、だ。
 相当優秀な錬金術師がいたと思うのだが。
 それこそ、歴史に名を残すような。
 そのレベルだ。

 ただ、優秀な錬金術師が魔術師として優秀かと問われれば。
 それは必ずしも是とは言えない。
 今回の主犯もそのタイプだったのだろうか?
 本質は、研究者だった。
 そういう事だ。
 強力な魔道具を有してたらしく。
 護衛はそれもあってかなり強力だったらしいが。
 1人だけ。
 そして、当の本人はそこまでだったとか。
 それでも手強かったらしいけど。
 技術力に比べればその力はだいぶお粗末なものだったと。

 Aランク冒険者と、学園の教師と生徒。
 強力なパーティーではある。
 しかし、国相手に何かしようってやつには力不足感も否めない。
 それでもやりきったのだ。
 やりきれてしまったのだ。
 まぁ、ノアは若くして到達したからな。
 実力も詳しくは知らないし。
 Sランク並みであってもおかしくはない、が。
 どちらにしても。
 そう簡単に勝てるような相手ではないし。
 きっとそういう事なのだろう。

 時間を与えてたら不味かったかもな。
 護衛が1人しかいなかったのも、そこら辺が理由。
 おそらくだが。
 あまり信用してなかったのだろう。
 その分、末端から辿る手がかりは少なくなるが。
 代わりに本人が手薄になったと。
 駒が市民ではなく。
 騎士とは言わずとも、兵士並みであれば変わっていた可能性もあった。
 それこそ。
 市民を陽動する建前ではなく本当に国をどうこうしていたかも。
 やつが加工する魔力結晶の性質上。
 数は文字通り力になるし。
 信頼のおける仲間であれば尚のこと。

 ……あぁ、そっか。
 それの代わりがウーヌと港町との間にいた山賊だったのか。
 俺が片付けてしまったが。
 確定ではない。
 でも、その説もありそう。
 運が悪かったな。
 まぁ、俺も散々迷惑被ったのだ。
 牢屋に入れられるは、ノアに縛られるは。
 結果死にかけたし。
 散々な目に遭った。
 俺もかなり運が悪かったし。
 ここは、おあいこかな。
 自業自得?
 いや、奴がいなければこうはならなかった。
 だから向こうのせいであり。
 言うなれば、向こうの奴らこそ自業自得ってことで。

 視線を戻すと、ノアが褒めてと言わんばかりの表情。
 視線からも強い意志を感じる。
 まぁ、俺も被害被ったしな。
 初めは自分でどうこうしようとしていたのだ。
 その分で言えば、助かったか。

「よく頑張ったな」

 頭を撫でてやる。
 嬉しそう。

 さっきまでの様子はどこへやら。
 こうやって見ると可愛いんだけどなぁ。
 いや。
 普段から可愛いけどね。
 ただ、縛られた時。
 アレはちょっと怖くもあった。

 俺が適当やって、色々混乱させたせいもあるのだろうが。
 多分。
 溜まってたのも大きいんじゃないかなって。
 直前でお預けされ。
 その後一回やったけど、あの時は隣室にメスガキもいたし。
 あれでも多少は遠慮してたんじゃないかなと。
 冷静じゃなかったのだ。

 ……色欲って怖いね。
しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主』

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。