ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上

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十五章

平常 10

ーーーーーーーーーー
 ロルフ先生へ

本当に、ありがとうございました。
魔力が上手く扱えなくて大会に出られるかすら怪しかった私が、あっという間に魔法を使えるようになり。
それどころか決勝まで勝ち進む事が出来て。
全てロルフ先生のおかげです。

杖の事、少しだけノア先生から教えて貰いました。
良く手に馴染み、魔力の通りもスムーズで。
せめて大会が終わるまでは使っていたかったと言うのが本音だったのですが。
その効果の程を改めて言葉にされて。
性能に驚愕しました。
私になんかでは本来手も出ないはずの一品。
初対面だった私相手に。
快く貸し出して頂き感謝しかありません。
それ故に、情勢も加味して私の身の安全の為だと聞き更に感動しました。

ロルフ先生の個人授業を受けた後、自分の実力が順調に伸びていく事は感じつつ。
それでも決勝の舞台にふさわしいほどの力があるとは思えずに。
どこか現実感の無いまま大会を戦っていたのですが、改めて言葉にした事で杖の性能頼りで勝ち進んだという事への納得感。
それと同時に、この事実への後ろめたさを覚え。
一瞬。
棄権という言葉が頭の隅をチラつきました。
練習のためにと貸してもらった杖を大会で使ったのは私なのに、勝手な人間でごめんなさい。
でも、別にズルをした訳じゃないし高い装備を使ってる子はかなり多いのだから気に病むことはないって。
そうノア先生とフィオナ先生に励まされ。
結局棄権する事もせず。
ただ、この後ろめたさとは別にあの杖なしで戦う事への恐怖も芽生え。
良かれと思って貸してくれた物なのに。
勝手に後ろめたさを覚えて勝手に依存して、私は自分が情けなくなりました。

当然のように決勝では敗れ、準優勝という結果に。
しかし、私の精神状態とは裏腹にここまで勝ち上がってきた相手に戦闘が成立。
以前とは比べ物にならないほど強くなっていた事に気がつきました。
瞬殺されて。
恥をかく姿しか想像出来ていなかったのに。
最終的には負けてしまいましたが、確かな成長を実感出来。
落ちこぼれだった私をここまで導いて頂きありがとうございます。

私の人生の恩人で、とてつもなく感謝してるのに。
素直に尊敬できないのが残念です。
ーーーーーーーーーー

 ……軽くディスられてね?
 まぁ、宛名が浮気者へとかじゃなくて良かった。
 そう思うことにしよう。

 手紙の文面から人となりが伝わってくる。
 真面目な人間なのだ。
 本当は書きたくないこともあっただろうに、誠実だな。
 ただ、例の杖の件。
 あまり考えず適当に貸した訳だが。
 少し、重しにすら感じさせちゃったみたいで。
 ちょっと申し訳なく思う。

 この手紙、話の内容的にも近々の事だし。
 急ぎ気味で書いたのだろう。
 多少の乱れも感じるが、それ以上に感情がそのまま伝わってくる。
 どう思われてるのか不安だったけど。
 感謝してくれてたのか。
 その上で、尊敬はしてくれないらしいけど。

 にしても、大会の続き本当にやったんだな……
 いくら大元が捕まったとはいえ。
 凄い騒ぎだったのに。
 ノアがテロには屈さない事をアピールするためにも、的なことを言っていて。
 半信半疑だったが、その通りになった。

 どっちみち、残って見れるほどでは無かっただろうが。
 ま、来年の楽しみってことで。

 ……でもそうか、大会の決勝は結局負けちゃったか。
 俺は期待してたんだけどね。
 ノアにせがまれ暴動の黒幕探すのに魔眼使った時。
 メスガキも近くにいたのだ。
 その魔力が目に入った。
 一目見て。
 以前に比べかなり魔力が安定していたのを覚えている。

 ミスリルの杖、補助輪代わりにと思って貸し出して。
 補助輪以上の効果があり。
 ノアに回収してもらった訳だが。
 実際の所、期待していた効果もしっかり出ていたらしい。

 魔力がそれなりに安定した上で。
 補助輪付きとは言え、トーナメントを勝ち上がり経験を積んだのだ。
 それに。
 メスガキはノア達に同行して黒幕捕まえに行ってるし。
 英雄級同士の戦闘。
 直接見たかは知らないが、近くで肌で感じた事だろう。
 それはとんでもない財産であり強み。

 だから、ワンチャンあると思ったんだけどね。
 ま、結果としてはそうご都合主義とはいかないらしい。
 準優勝。
 まともに魔法使えるようになったのが最近だもんな。
 やはり、経験の差はデカい。
 それでもある程度善戦できた様だし。
 自信も持てたたっぽいから、結果オーライか。

ーーーーーーーーーー
話が初対面の頃に戻ってしまうんですが。
覚えてますか?
私が魔力をうまく使えないのを見て。
ロルフ先生に、誰かを魔力で傷つけたことがあるんじゃないかって聞かれ。
そこまで当てて。
でも、詳しくは聞かないでくれましたよね。

嬉しかったです。
そして、話した方がいいと理解しながら。
あの時の私にそんな勇気は無かった。
今更ですが。
少し聞いて貰ってもいいですか?

弱いままで居たく無いから。
自分を変えたいから。
手紙でってのはずるいかもしれないですけど。
直接はまだ、ハードルが高くて。
信用出来て。
でも、ちょっと距離のあるロルフ先生に。

魔力もまともに扱えない状態で、それでも大会に出たかった事と繋がるんです。
私はいわゆる下級貴族の出で。
と言っても、実は父親と言うか種は上級貴族の物なんです。
浮気とかじゃなくって、私達の派閥の長。
どっちも納得の上、と言うか多分両親が頼み込んだんだと思います。

私の家は3代限りの貴族で、両親がちょうど3代目。
普通に子供を育てたとして。
おそらく、その子が貴族として家を引き継ぐ事はまずない。
残したかったんだと思います。
私のために。
いや、多分違いますね。
自分たちの為に、自分たちが生きた証を。

ただ、私が背負うにはその両親の期待は少し重すぎました。
無茶をして魔力を暴走させてしまい。
先生も褒めてくれましたが、両親の目論見通り下級貴族にしては私の魔力ってかなり多いんです。
でも、それが良く無かった。
上級貴族だったら人も設備も揃っているから、そのレベルの魔力が暴走しても対応できたのでしょうけど。
下級貴族の私の家ではそうはいかなかった。
使用人を……
同い年ぐらいの、遊び相手であり友達だった子です。

それから鍛えるどころか魔力の制御すら覚束なくなって。
でも、諦める選択肢はなく。
私が落ちこぼれたら、家が消えてしまう。
両親の期待を裏切る事になってしまう。
私が役立つと示れば。
血のつながりは強烈なコネになる。
うちもまた数代は大丈夫。
だから、その証明の為にどうしてもこの大会で優勝したかったんです。

でも、今はもういいんです。
諦めた訳じゃなくて。
ロルフ先生に出会って視野が広がったと言うか。
ーーーーーーーーーー

 ……まぁ、なんと言うか。
 複雑なご家庭らしい。

 魔力が多かった理由はそれか。
 そして、魔法を使えなくなる様なトラウマを抱えた理由も。
 苦労人だ。
 初め、少し攻撃的だったのはここら辺も影響ありそうだな。
 ストレスすごそうだし。
 でも、両親は両親だからな。
 真面目だし。
 期待を裏切れないってのがメスガキらしい。

 でも、良かった。
 都合よく大会を優勝とはいかなかったけど。
 縛り付けていた物。
 それが多少なりとも緩んだっぽいし。

ーーーーーーーーーー
先生への感謝はこれぐらいにして。
少しだけ文句を。

実は今、ノア先生とフィオナ先生の研究を手伝ってるんです。
私はあの杖のお陰で救われましたし。
とんでもなく凄い杖だってことは、少しの間使ってて十分理解出来ていますから。
もしその再現に成功したら。
自分の血とか関係なく、家を存続させる道なんじゃないかなって思って。
それに、実際にしばらく使用していた。
症状が改善したデータが欲しいとの話で、必要とされるのも嬉しくて。

まぁ、これはいいんですけど。
2人の会話に生々しい下ネタが多くて困ってるんです。
直接言う勇気はなくて。
しかも、その内容がほとんどロルフ先生で。

(ノア先生となんて羨ま)

ヤリチンの貴方の責任ですよね?
どうにかしてください!

 エリスより
ーーーーーーーーーー

 結局、文句で終わった!?
 間男が浮気者になり、最終的にはヤリチンへ。
 これはマシになってるのだろうか?
 ……分からん。

 にしても、あいつら生徒側に置いて何やってるんだか。
 多分、あれだな。
 メスガキが家にいる状態で、隣の部屋で致したから。
 色々、生徒相手だという前提から何からぶっ飛んじゃったのかもしれない。
 フィオナもその場いたし。
 どうも結構聞こえちゃってたっぽいからな。

 教師の下の話とかただでさえキツイだろうに。
 多少吹っ切れてはいそうだが、それでも思い人のその手の話。
 地獄である。
 哀れ。
 メスガキはまだ、脳破壊される運命にあるらしい。

「何ニヤニヤしてるんです?」
「んな事ねぇよ」

 すっと、受付嬢が覗き込んできた。
 人の手紙を見るんじゃないよ。
 ったく、俺が関わる相手ってこんなん多いんだよな。

 ……まぁ、類友って奴か。
 俺がこんなんだからな、仕方がない。
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