世界を越えてもその手は

犬派だんぜん

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続 6章 災禍の中の希望

16-16. 物資の補給

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 翌日は、朝から領主の館に向かう。
 何があってもいいように、僕たちの使っているベッドを収納し、会議室を元の状態にしてから馬車に向かうと、王子様の側近が待っていた。

「おはようございます。今日はよろしくお願いいたします」
「お、おはようございます」

 まさか迎えに来ていると思わなくて、うろたえてしまう。どうやら一緒の馬車に乗るようだが、断るわけにもいかない。思わずコーチェロくんの服をつかむと、安心させるように笑ってくれる。

「ユウくんの護衛だから、一緒に乗るよ。よろしいですか?」
「もちろんです。領主の館では司教様がお待ちですから、安心してください」
「ありがとうございます」

 だったら領主の館で待っていてくれてよかったのに、と思うけれど、貴族が押しかけてきたときのための保険なのだろう。馬車の周りを取り囲むようにいる領兵だけでは対応できない貴族でもいるのだろうか。
 僕たちが乗り込むと、馬車がゆっくりと動き出す。キリシュくんとスリナザルくんは、もう一台の馬車に乗っている。

「ちゃんとした自己紹介がまだでしたね。ティボルトと申します。第二王子殿下とは、子どものころから一緒に育ちました」
「ユウです。冒険者です。従魔のブランです。それから、友だちのコーチェロくんです」

 最近は冒険者としてあまり活動していないので、冒険者と名乗っていいのか分からないが、それ以上言えることがない。ブランとコーチェロくんも紹介してみたけれど、すぐに終わってしまった。他に何を言えばいいのか分からず、足元に座っているブランをなでてごまかす。

「シリウスのリーダーですね。護衛と聞いていますが、本当に仲がよろしいようで」
「はい……」

 その言葉に他意はないのだろうけれど、リネに言われたことを思い出してしまい、落ち込んでしまう。

「ユウくん?」
「何か気に障ることを言ってしまいましたか?」
「いえ、その、えっと……、リネに、僕の友だちはシリウスの三人だけだと言われてしまったのを思い出しただけです」

 返事を待たれているけど上手なごまかし方が分からず、正直に答えたら、二人から同情的な視線を向けられている。ますます傷をえぐられるから、やめてほしい。

「テイマー殿の立場では、難しいでしょうね」
「そうだよ、ユウくんが悪いんじゃないよ」
「シリウスのみなさんは、どうやって友人となられたのですか?」

 話を変えるためか、僕に話を振っても会話にならないからか、王子様の側近は、コーチェロくんに話しかけている。

「テシコユダハの初心者講習で、一緒になりました」
「テイマー殿が、この国で一番初めに寄った街ですね」

 きっと僕がこの国に来てからのことはすべて調べてあるのだろう。そのころの僕たちがどんなふうだったのかと、コーチェロくんに聞いている。
 過去の自分の話をされるのは恥ずかしいけど、かといって他の話題もないので、大人しく聞いているうちに、馬車は領主の館に到着した。

 馬車を降りると、司教様と一緒に地位の高そうな人が出迎えてくれている。きっと領主なのだろうけれど、顔色が悪いし、必要以上に低姿勢だ。

「テイマー殿、ご協力いただきありがとうございます」
「あ、はい。よろしく、お願いします?」

 なんと答えていいのか言葉が見つからなかったので、よく分からない返事になってしまった。
 微妙な空気が漂う中、司教様がニコニコしながら僕の横に並び、「ユウさんとアレックス様の優しさに感謝しませんとね」と言うと、領主の顔が引きつった。これは、僕が来る前に何かしらやり取りがあって、あまり当てにするなと司教様が釘を刺してくれたのかもしれない。
 王子様の側近もニコニコしているけど、なんとなくその笑顔から圧力を感じる気がする。集まっているという貴族と、何かあったのだろうか。
 考えてみても答えは分からない。多分こういうことには気づかないほうが平和だ。僕自身のために、何も気づかなかったことにしよう。

 案内されてたどり着いた場所には、たくさんの馬車が並べられていて、そこではギルドマスターが待っている。どの馬車に何を載せるか、先に到着して調整してくれていた。

「まずは、預けているギルドの物資から、食料を馬車二台分、ポーションを一台分出してくれ」
「分かりました」
「おおっ!」

 僕のアイテムボックスに入っているギルドの物資の中の、馬を用意すればすぐに出発できるようになっている馬車の荷台を出すと、アイテムボックスからものを取り出すところを初めて見たからだろう、領兵のいるあたりからざわめきが聞こえた。

「馬車ごととは」
「仕分けが出来ない状況も想定していますので」

 王子様の側近のひとりごとのつぶやきに、ギルドマスターがいろいろな状況に対応できるように準備してあるのだと説明している。
 誰よりも僕の能力を把握し活用しているのが冒険者ギルドなのは、間違いない。ついでに僕の性格も、どういえば僕が協力するかも把握されているように感じるが、それで嫌な気分になったことがないので問題ない。

「上級ポーションを二箱、中級を三箱、追加してくれ」
「大きいほうの箱でいいですか?」
「ああ、頼む」

 僕一人では持ち上げられない大きさの、ポーションの入った箱を取り出し、指定された空の馬車の荷台に置く。先に取り出した馬車には、初級ポーションから上級ポーションが、いつものあふれで消費される割合で入っているが、今回は二つ同時ということもあるのか、上級の減りが速いそうだ。
 それからも、指定された物資を取り出し、馬車の荷台に並べていった。

「冒険者ギルドは、かなりの量の物資をテイマー殿に預けているのか」
「氷花とは、あふれに際しては可能な限りギルドに協力してもらうと合意しています。いままで築き上げた信頼がありますので」

 王子様の側近の質問に答えたギルドマスターの言葉に、なんとなく棘がある気がする。一度見限られた軍とは違うのだと言いたいのかもしれない。きっと王子様の側近もそれには気づいただろうが、笑顔でさらりと流している。狐と狸の化かし合いのような会話に、僕は再び気付かないふりをすることにした。
 ブランの毛がさらさらなのは、しっかりブラッシングしているからだね。もふもふ。
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