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1章 アルとの転機
1-1. 契約終了
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アスファルトを蹴った右足がついたのは、見知らぬ土の上だった。
ある日突然、僕はこの世界に迷いこんだ。
いきなり世界が切り替わり、気づくと舗装されていない土の道にいた。
通り掛かりの商人に拾われ、着いた街で待っていたのは、暴力と絶望だった。この世界を知らない僕には、その状況を覆す伝手も手段も気力もなかった。
魔物が出るという森の中に逃げたのは、終わりを願っていたからかもしれない。そこで、神獣に出会い、保護された。
けれど、人は人の中でしか生きていけない。街に行こう、そう言われて従魔に扮した神獣と共に街に入ったが、人は怖い。人は裏切る。
そこで、勧められたのが、契約によって裏切ることのできない、奴隷の購入だった。暴力と絶望の代償として得たお金で、戦闘奴隷を購入した。決して僕を裏切らないという条件を入れて。
僕の購入した戦闘奴隷アレックス、通称アルは、元冒険者で、瀕死となったパーティーメンバーを助けるために、自身を奴隷として売って治療費を作った。
冒険者とは、森などに出る魔物や、ダンジョンのモンスターを倒すことで、生活の糧を得る者たちだ。複数人でチームを組んで、依頼に当たる。このチームをパーティーという。
奴隷となった時点で、アルの冒険者の資格は無効になって、今は僕の戦闘奴隷として登録されている。
この世界にはスキルがある。
人によりスキルの数は異なるが、半数以上はスキルを持っていない。持っている者も、ほとんどが一つで、二つ持っているのは一割にも満たない。まれに後天的に増えることもあるらしいが、先天的に得ていたものがほとんどだ。
珍しい有用なスキルを持っていると、国に保護されることもある。保護とは名ばかりで管理され、国のためにスキルを使うことを強要される。
僕は、最初の街で調べた時点で「アイテムボックス」と「付与」のスキルを持っていた。そしてブランと契約したことで「テイム」のスキルもついた。
その中の「アイテムボックス」が特に珍しく、軍事的な利用価値が高すぎて、国に知られれば監禁コースだ。こんな異世界転移者特典、欲しくなかった。
アルを購入してすぐ、僕のスキルはソント王国の冒険者ギルドによって公表されてしまったため、僕たちは今住んでいるモクリーク王国に逃げ込んだ。
モクリークは、定期的にダンジョンのモンスターによる被害を受けているため、国をあげてその対応を行ってくれる冒険者を歓迎している。この国なら、協力する姿勢を示せば自由を奪うことはないだろうと、アルが移動を提案してくれた。
実際、モクリークの国とギルドが最大限の便宜をはかってくれたおかげで、僕は貴族からも冒険者からも、絡まれたり不当な扱いを受けたりしないですんでいる。
この国に落ち着いてから僕たちは、ダンジョンに潜り、そのドロップ品を売って生計を立てている。
ダンジョンのモンスターは、倒すと光になって消え、ドロップ品を落とす。ダンジョンの難易度が上がるほど、倒すモンスターが強いほど、レアなドロップ品が出る確率が高くなる。冒険者は一攫千金を夢見て、ダンジョンに潜るのだ。
僕たちは、僕と、戦闘奴隷のアルと、従魔として登録されている神獣の、二人と一匹でチームとなっているが、戦闘奴隷と従魔は主人の持ち物という扱いになるので、公式にはソロでの活動だ。
ダンジョンのドロップ品を買い取ってもらった料金は、全額僕に入り、契約に従いそのうちの一部を報酬としてアルに渡している。
従魔のふりをしてくれている神獣マーナガルムは、バスくらいの大きさのオオカミのような姿で、氷を司り、人の言葉も話す。
なんの気まぐれか僕と契約してくれたので、銀のような白のような見事な毛並みから、ブランと呼んでいる。人目のあるところではちょっと大きめのオオカミの魔獣シルバーウルフに擬態してくれていて、会話は念話で行っている。
当たり前だがとても強い。ダンジョン攻略が楽しいようで、嬉々としてモンスターを倒しては、レアなドロップ品の山を作ってくれる。おかげで僕はお金持ちだ。
高額な借金のため、アルとの契約期間は二十年と、高ランクの冒険者としては長い。その契約の長さは、僕にとって安心の長さだ。
この世界の常識を教えてもらい、国やギルドに利用されないよう交渉や立ち回りを全て任せてきた。
ブランとアルがいてくれることで、暴力と裏切りによって不安定だった僕の心は、少しずつ癒されていった。
けれど、奴隷は報酬を貯めれば、契約期間満了前でも自分を買い戻すことができる。そして、ブランの狩ったモンスターのドロップ品の買い取り金額の一部も、契約通りアルの報酬となる。
契約から三年、アルは自身を買い戻せるだけの報酬をすでに貯めていた。
主人の僕は、アルの所持金を知ることができる。
アルの所持金が、自分を買い戻せる額を越えたときから、いつ契約を終了したいと言いだされるのかと、僕は怯えていた。
今の装備は僕からの貸与品になるが、今の所持金では買い取りできないから、まだ大丈夫。
新しい生活を始めるには多少の余裕が必要だろうから、まだ大丈夫。
そんな風に理由をつけて、なんとか自分の心を平穏に保とうとしていたけれど、アルが僕の奴隷でいる理由は何一つなくなってしまった。
「待遇がよければ、戦闘奴隷は契約を終了しても、パーティーメンバーとして残ってくれることが多いですよ」とアルを購入した奴隷商会の店主は言っていたけれど、パーティーメンバーは、双方の合意がなくてもやめたいと思ったらパーティーを抜けることができる。やりたいことができたら、別の道を歩むことになるだろう。それを止めるすべを僕は持たない。
さらに、僕をどこかの国に売り込めば、地位も名誉も金も、全てを手に入れることができる。アルはそんなことしないと思っているけど、僕のスキルにはそれだけの価値がある。パーティーメンバーになったら、いつか裏切られるかもしれない。
人の心を契約で縛るなんて、してはいけないことだ。けれど、縛られていない人の心は信用できない。
これだけ良くしてくれたアルの今後の邪魔をしてはいけない。置いていかないでほしい。
そんな葛藤に、心よりも先に身体が悲鳴をあげたのか、熱を出した。そして、悪夢にうなされる日々に戻ってしまった。
アルを購入し、この国に落ち着いた頃から、僕は頻繁に悪夢に飛び起きるようになった。
ごく平凡で平穏な家庭で、末っ子として両親にも兄と姉にも甘やかされ、暴力とは無縁に育った僕は、この国では一般的でも僕から見れば立派な体格の人たちに何度か殴られただけで、心が折れた。
逆らえば殴られる。逆らわなくても機嫌が悪ければ殴られる。抵抗しても全く歯が立たない。体格差のディスアドバンテージはとても大きい。しかも、暴力が表に出ないよう、暴力を揮われた後はポーションや治癒魔法で治療されるため、周りからは気づかれない。
ただただ身を小さくして、嵐が去るのを耐えていた。
その頃の夢を見て飛び起き、嫌だ、助けて、家に帰りたい、家族に会いたい、そう泣き叫ぶ僕を、ブランとアルは抱き締めて、もう大丈夫だ、ここは安全なのだと、繰り返し繰り返し宥めて教えてくれた。
少しずつ、少しずつ、ブランとアルのそばにいれば大丈夫なのだと心が納得していき、時間とともに悪夢を見る回数も減っていった。
それでも、朝起きたときにブランもアルも部屋にいないだけで、僕はパニックを起こしてしまう。
この世界にひとり取り残されてしまった。ブランとアルは僕が作り出した幻想で、まだあの暴力の中にいるのかもしれない。
部屋にひとりだと、何が現実なのか分からなくなってしまうのだ。
ブランとアルがいてくれれば、大丈夫。依存していると分かっていても、手を離すことはできなかった。
そうやって、僕の心は平穏を取り戻した。
取り戻したと、思っていた。
けれど、アルがいなくなる、そう思うだけで、僕の心の平穏は崩れてしまった。アルに看病され、熱は下がったけれど、悪夢にうなされ、飛び起きてしまう。
そんな僕の様子に、しばらくダンジョンに潜るのはやめて、のんびりすることにした。体調を崩した僕のために、アルが居心地の良い部屋を長期契約してくれたので、ブランのブラッシングをする以外、何もせずにぼんやりと過ごしている。
そんな日々を過ごすうち、奴隷契約を終了したい、とアルから告げられた。
宿の部屋を出て、奴隷商会へと向かう僕の足元には、ブランがぴったりとくっついている。
アルに契約終了を告げられて、分かったと答えて以来、僕はアルと何も話せないでいる。何か話すと嫌だという言葉が出てしまいそうで、けれどそれはアルに認められた権利なのだから言ってはいけない、そう思うと、結局何も言えなかった。
そんな僕をアルが複雑そうな顔で見ているのには気づいていたけれど、それすら見るのが辛くて、ブランに抱きついて視界に入れないようにしていた。
契約終了の手続きは、すぐに終わった。
俯いたまま、ほとんど言葉を発さない僕に、奴隷商会の主人が「契約内容に基づき契約終了の条件を満たしたため解除します」と言って、アルの奴隷紋を消した。
これで、僕とアルの繋がりは終わった。
「ユウ様、今までありがとうございました」
そう言って頭を下げるアルに、「こちらこそ今までありがとう、これから頑張って」と、なんとか声を絞り出したけれど、顔をあげることができなかった。笑顔で送り出さなきゃと思っていたのに。
僕のアイテムボックスに入れているアルの荷物は、装備も全てアルが買い取ったので、全てマジックバッグに入れて渡した。
アルが出ていっても、その場で動けずにいた僕は、ブランに促されてとぼとぼと宿に帰った。
部屋に入り、ブランに抱きついて、泣いた。
ある日突然、僕はこの世界に迷いこんだ。
いきなり世界が切り替わり、気づくと舗装されていない土の道にいた。
通り掛かりの商人に拾われ、着いた街で待っていたのは、暴力と絶望だった。この世界を知らない僕には、その状況を覆す伝手も手段も気力もなかった。
魔物が出るという森の中に逃げたのは、終わりを願っていたからかもしれない。そこで、神獣に出会い、保護された。
けれど、人は人の中でしか生きていけない。街に行こう、そう言われて従魔に扮した神獣と共に街に入ったが、人は怖い。人は裏切る。
そこで、勧められたのが、契約によって裏切ることのできない、奴隷の購入だった。暴力と絶望の代償として得たお金で、戦闘奴隷を購入した。決して僕を裏切らないという条件を入れて。
僕の購入した戦闘奴隷アレックス、通称アルは、元冒険者で、瀕死となったパーティーメンバーを助けるために、自身を奴隷として売って治療費を作った。
冒険者とは、森などに出る魔物や、ダンジョンのモンスターを倒すことで、生活の糧を得る者たちだ。複数人でチームを組んで、依頼に当たる。このチームをパーティーという。
奴隷となった時点で、アルの冒険者の資格は無効になって、今は僕の戦闘奴隷として登録されている。
この世界にはスキルがある。
人によりスキルの数は異なるが、半数以上はスキルを持っていない。持っている者も、ほとんどが一つで、二つ持っているのは一割にも満たない。まれに後天的に増えることもあるらしいが、先天的に得ていたものがほとんどだ。
珍しい有用なスキルを持っていると、国に保護されることもある。保護とは名ばかりで管理され、国のためにスキルを使うことを強要される。
僕は、最初の街で調べた時点で「アイテムボックス」と「付与」のスキルを持っていた。そしてブランと契約したことで「テイム」のスキルもついた。
その中の「アイテムボックス」が特に珍しく、軍事的な利用価値が高すぎて、国に知られれば監禁コースだ。こんな異世界転移者特典、欲しくなかった。
アルを購入してすぐ、僕のスキルはソント王国の冒険者ギルドによって公表されてしまったため、僕たちは今住んでいるモクリーク王国に逃げ込んだ。
モクリークは、定期的にダンジョンのモンスターによる被害を受けているため、国をあげてその対応を行ってくれる冒険者を歓迎している。この国なら、協力する姿勢を示せば自由を奪うことはないだろうと、アルが移動を提案してくれた。
実際、モクリークの国とギルドが最大限の便宜をはかってくれたおかげで、僕は貴族からも冒険者からも、絡まれたり不当な扱いを受けたりしないですんでいる。
この国に落ち着いてから僕たちは、ダンジョンに潜り、そのドロップ品を売って生計を立てている。
ダンジョンのモンスターは、倒すと光になって消え、ドロップ品を落とす。ダンジョンの難易度が上がるほど、倒すモンスターが強いほど、レアなドロップ品が出る確率が高くなる。冒険者は一攫千金を夢見て、ダンジョンに潜るのだ。
僕たちは、僕と、戦闘奴隷のアルと、従魔として登録されている神獣の、二人と一匹でチームとなっているが、戦闘奴隷と従魔は主人の持ち物という扱いになるので、公式にはソロでの活動だ。
ダンジョンのドロップ品を買い取ってもらった料金は、全額僕に入り、契約に従いそのうちの一部を報酬としてアルに渡している。
従魔のふりをしてくれている神獣マーナガルムは、バスくらいの大きさのオオカミのような姿で、氷を司り、人の言葉も話す。
なんの気まぐれか僕と契約してくれたので、銀のような白のような見事な毛並みから、ブランと呼んでいる。人目のあるところではちょっと大きめのオオカミの魔獣シルバーウルフに擬態してくれていて、会話は念話で行っている。
当たり前だがとても強い。ダンジョン攻略が楽しいようで、嬉々としてモンスターを倒しては、レアなドロップ品の山を作ってくれる。おかげで僕はお金持ちだ。
高額な借金のため、アルとの契約期間は二十年と、高ランクの冒険者としては長い。その契約の長さは、僕にとって安心の長さだ。
この世界の常識を教えてもらい、国やギルドに利用されないよう交渉や立ち回りを全て任せてきた。
ブランとアルがいてくれることで、暴力と裏切りによって不安定だった僕の心は、少しずつ癒されていった。
けれど、奴隷は報酬を貯めれば、契約期間満了前でも自分を買い戻すことができる。そして、ブランの狩ったモンスターのドロップ品の買い取り金額の一部も、契約通りアルの報酬となる。
契約から三年、アルは自身を買い戻せるだけの報酬をすでに貯めていた。
主人の僕は、アルの所持金を知ることができる。
アルの所持金が、自分を買い戻せる額を越えたときから、いつ契約を終了したいと言いだされるのかと、僕は怯えていた。
今の装備は僕からの貸与品になるが、今の所持金では買い取りできないから、まだ大丈夫。
新しい生活を始めるには多少の余裕が必要だろうから、まだ大丈夫。
そんな風に理由をつけて、なんとか自分の心を平穏に保とうとしていたけれど、アルが僕の奴隷でいる理由は何一つなくなってしまった。
「待遇がよければ、戦闘奴隷は契約を終了しても、パーティーメンバーとして残ってくれることが多いですよ」とアルを購入した奴隷商会の店主は言っていたけれど、パーティーメンバーは、双方の合意がなくてもやめたいと思ったらパーティーを抜けることができる。やりたいことができたら、別の道を歩むことになるだろう。それを止めるすべを僕は持たない。
さらに、僕をどこかの国に売り込めば、地位も名誉も金も、全てを手に入れることができる。アルはそんなことしないと思っているけど、僕のスキルにはそれだけの価値がある。パーティーメンバーになったら、いつか裏切られるかもしれない。
人の心を契約で縛るなんて、してはいけないことだ。けれど、縛られていない人の心は信用できない。
これだけ良くしてくれたアルの今後の邪魔をしてはいけない。置いていかないでほしい。
そんな葛藤に、心よりも先に身体が悲鳴をあげたのか、熱を出した。そして、悪夢にうなされる日々に戻ってしまった。
アルを購入し、この国に落ち着いた頃から、僕は頻繁に悪夢に飛び起きるようになった。
ごく平凡で平穏な家庭で、末っ子として両親にも兄と姉にも甘やかされ、暴力とは無縁に育った僕は、この国では一般的でも僕から見れば立派な体格の人たちに何度か殴られただけで、心が折れた。
逆らえば殴られる。逆らわなくても機嫌が悪ければ殴られる。抵抗しても全く歯が立たない。体格差のディスアドバンテージはとても大きい。しかも、暴力が表に出ないよう、暴力を揮われた後はポーションや治癒魔法で治療されるため、周りからは気づかれない。
ただただ身を小さくして、嵐が去るのを耐えていた。
その頃の夢を見て飛び起き、嫌だ、助けて、家に帰りたい、家族に会いたい、そう泣き叫ぶ僕を、ブランとアルは抱き締めて、もう大丈夫だ、ここは安全なのだと、繰り返し繰り返し宥めて教えてくれた。
少しずつ、少しずつ、ブランとアルのそばにいれば大丈夫なのだと心が納得していき、時間とともに悪夢を見る回数も減っていった。
それでも、朝起きたときにブランもアルも部屋にいないだけで、僕はパニックを起こしてしまう。
この世界にひとり取り残されてしまった。ブランとアルは僕が作り出した幻想で、まだあの暴力の中にいるのかもしれない。
部屋にひとりだと、何が現実なのか分からなくなってしまうのだ。
ブランとアルがいてくれれば、大丈夫。依存していると分かっていても、手を離すことはできなかった。
そうやって、僕の心は平穏を取り戻した。
取り戻したと、思っていた。
けれど、アルがいなくなる、そう思うだけで、僕の心の平穏は崩れてしまった。アルに看病され、熱は下がったけれど、悪夢にうなされ、飛び起きてしまう。
そんな僕の様子に、しばらくダンジョンに潜るのはやめて、のんびりすることにした。体調を崩した僕のために、アルが居心地の良い部屋を長期契約してくれたので、ブランのブラッシングをする以外、何もせずにぼんやりと過ごしている。
そんな日々を過ごすうち、奴隷契約を終了したい、とアルから告げられた。
宿の部屋を出て、奴隷商会へと向かう僕の足元には、ブランがぴったりとくっついている。
アルに契約終了を告げられて、分かったと答えて以来、僕はアルと何も話せないでいる。何か話すと嫌だという言葉が出てしまいそうで、けれどそれはアルに認められた権利なのだから言ってはいけない、そう思うと、結局何も言えなかった。
そんな僕をアルが複雑そうな顔で見ているのには気づいていたけれど、それすら見るのが辛くて、ブランに抱きついて視界に入れないようにしていた。
契約終了の手続きは、すぐに終わった。
俯いたまま、ほとんど言葉を発さない僕に、奴隷商会の主人が「契約内容に基づき契約終了の条件を満たしたため解除します」と言って、アルの奴隷紋を消した。
これで、僕とアルの繋がりは終わった。
「ユウ様、今までありがとうございました」
そう言って頭を下げるアルに、「こちらこそ今までありがとう、これから頑張って」と、なんとか声を絞り出したけれど、顔をあげることができなかった。笑顔で送り出さなきゃと思っていたのに。
僕のアイテムボックスに入れているアルの荷物は、装備も全てアルが買い取ったので、全てマジックバッグに入れて渡した。
アルが出ていっても、その場で動けずにいた僕は、ブランに促されてとぼとぼと宿に帰った。
部屋に入り、ブランに抱きついて、泣いた。
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