世界を越えてもその手は

犬派だんぜん

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続 1章 神なる存在

11-8. 懐かしい人との再会

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 王子と面会した翌日、ドガイから大司教様が到着した。
 俺が神獣の契約者になったので、俺と繋がりの深いドガイの方々をモクリークの教会が招待したそうだ。他の教会からも神獣様への面会依頼が殺到しているらしいが、ダンジョンに潜っていないときはどこかに飛んでいっているので、まず会えない。ブランによると、リネはモクリーク内にはいるらしい。
 迎えに出るのは止められたので、面会の部屋で待っていると、大司教様以下、グザビエ司教様や、俺との関係からだろうケネス司祭様とサリューが入ってきた。
 まずはブランに挨拶し、ユウが元気になったことを喜び、それから俺への挨拶だ。これが本来の身分の順番だと、ユウは分かっていないだろうな。ブランの横にいるから俺より先に挨拶されたと思っていそうだ。

「アレックス様、神獣様とのご契約、お慶び申し上げます」
「ありがとうございます。グァリネ、いつもはリネと呼んでいますが、リネはどこかをふらふらしているようです。申し訳ございません」
「風が留まることはないように、風の御方もまた翼の赴くままでいらっしゃるのでしょう。お祝いになるかは分かりませんが、今回はソント王国を通ってまいりまして、おふたりにご縁のある方々をお連れしました」

 そう言って紹介されたのは、十年前、ソント王国のカージで、戦闘奴隷としてユウと契約した直後に泊った宿の店主夫妻だった。
 スキルをバラされてしまったユウのソントからの脱出準備を手伝ってくれた二人と、ブランが加護を与えたフォレストオウルだ。

「ウルドさんとオリシュカさん! それにオウルくんも!」
「マーナガルム様、大変ご無沙汰しております。ユウさん、アレックスさん、お久しぶりですね」

 ずっとユウは会いに行きたいと望みながらも、ソント王国に行けば国に監禁されかねないからと、一度も実現しなかった。
 主人の肩に止まっていたフォレストオウルが、ブランのすぐそばへと飛んで着地した。そしてとても控えめに、とことこと歩いてブランに少しずつ近づいていく。ブランのそばに近寄りたいけれど遠慮があるのが分かって、ユウがおいでとフォレストオウルを呼んだ。

「オウルくん、羽の色が変わりましたか?」
「ウィズと言います。撫でてやってください。マーナガルム様の加護をいただいてから、銀色の羽根が混じるようになりました」

 聞くと、加護を貰ってから氷魔法が使えるようになり、今は夕食の飲み物に氷が入っている宿として人気になっているそうだ。
 幸せそうにブランの足にすり寄っているウィズを、ユウが撫でている。それを司教様たちが笑顔で眺めている。なんとも平和な光景だ。

「ギルドに調べていただきましたが、宿でご一緒だった『ティガー』という冒険者パーティーは、二年前よりモクリークにいるようですよ」
「カークトゥルス狙いでしょうか」
「そのようですね」

 それならしばらくモクリークにいるだろうから、きっと会えるだろう。ギルドに居場所を聞いて、一緒にダンジョンに潜ってみるか。ユウはあのティグリスを撫でたがっていたから喜ぶだろう。

 一行はしばらくここに滞在するそうなので、今日は移動の疲れもあるだろうと、また明日から話す機会を設けることにして、解散した。ウィズはブランと離れたくなさそうだが、それ以上にユウがウィズと離れたくないという雰囲気を出していることに、ブランがため息をついていた。
 ブランはユウに関しては、意外と心が狭い。


 翌朝起きるとすぐに、チルダム司教様が部屋に来た。

「料理棟の前に、ブラックバイソンが一頭が置いてあるのですが、ご存じでしょうか」
『俺への捧げものだろう』

 しれっとブランが答えているが、自分で狩ってきたんだろうな。ブラックバイソンの肉はブランのお気に入りだ。
 あの宿で食べたバイソンのシチューはとても旨かった。久しぶりに温かい食事を食べたから、というのを差し引いても旨かった。ブランも夢中で食べていたから、あの味を思い出したのだろう。あの宿で食べたシチューがまた食べたいと言っている。
 ブランが昨夜出ていったことには気づかなかったが、そのために俺たちが寝るのを待って、わざわざ探して狩ってきたんだろう。
 客として招いた宿の女将には申し訳ないが、今夜の夕食はブラックバイソンのシチューに決まった。神獣様の一声に異を唱えられるわけがない。
 それに合わせてブランがリネを呼び戻すというので、美味しいものがあると聞けば戻ってくるだろう。

 ブランが帰ってきてから、ユウはブランから片時も離れようとせず、夜もブランをベッドに入れて一緒に寝ている。それでも、朝起きてまずはブランを探しているので、気持ちが落ち着くまでユウの好きなようにすればいいと思っている。
 俺が何もしないで教会にいることをユウは望んでいないし、リネのこともあるので、俺はあまりユウのそばにいてやれない。
 俺の襲撃の後、知らない冒険者を怖がったために、ユウのダンジョンへの復帰は少しずつゆっくり進めていく予定だったが、それもブランの不在とリネの登場でこの先どうなるか不透明だ。
 俺は前のようにユウとブランと、今後はリネも一緒にダンジョンを攻略して回る日々に戻りたいと思っているが、もともと戦闘に不向きな性格のユウには今の生活のほうが合っているようにも思う。リネの騒動が落ち着いたら、一度じっくりと話してみよう。


 夕食の準備をする夫妻のために、ウィズは俺たちが預かることにした。というよりも、ユウが構いたくて仕方がないので、貸してもらったというほうが正しい。

「ユウさん、ではウィズをお願いします。たくさん撫でてやってください」
「もちろんです!」

 ウィズはブランにぴったりとくっついてご満悦のようで、そんなウィズを撫で放題のユウも上機嫌だ。
 ユウがリネを撫でると不機嫌になるブランも、多少呆れてはいるがウィズには寛容なようだ。神獣であるリネにユウが構うという状況が許せないのか。
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