世界を越えてもその手は

犬派だんぜん

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続 2章 新たな日々

12-12. 友人との再会

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 応接室に入ると、コーチェロくんとソマロさんだけがソファに座っていた。キリシュくんとスリナザルくんは窓のそばで外を見ている。

「ユウくん、元気そうでよかった」
「コーチェロくん、お久しぶり。ありがとう。キリシュくん、外に何かいるの?」
「あ、いや。ユウくん、お久しぶり。神獣様が見えないかなあと思って」
「リネならここにいるよ」

 この部屋から大きなリネが着陸するところが少し見えたから、また飛んでいくところが見えないかと窓の外を見ていたそうだ。
 そのリネなら、僕の肩に止まっている。

「え? あれ? アルさんは?」
「お屋敷のことが何かあるみたいで、でもすぐ来るよ」

 アルはサジェルと何か話をしていたから、急いで決めないといけないことがあるのだと思う。僕はそれを待っていられなくて先に来た。襲撃後、ドガイから帰ってきたときに会いに来てくれた、あれ以来の再会だ。

「リネ、紹介するね。僕の友達で、コーチェロくん、キリシュくん、スリナザルくん。キリシュくんの恋人のソマロさん。コーチェロくんたちは冒険者をしているから、もしダンジョンで困っているところを見つけたら、助けてあげてね」
『おやつをくれたら助けてあげるよ』

 返しが相変わらずリネだなあと思っていたけど、紹介された四人はそろって固まっている。
 しばらくすると突然ソマロさんがソファから立ち上がって、床に膝をついた。それを見て、シリウスの三人も床に膝をついている。そういえば、普通はそういう反応になるんだったと思い至ったけど、これどうすればいいの。

「どうした?」
「アル、助けて」

 おろおろしていたら、用事が終わったのか応接室にアルが入ってきたので、助けてもらおう。僕はリネの契約相手じゃないから、僕から立っていいよっていうのもおかしいし、どうしていいか分からない。

「リネ、ユウの友人たちだから、何かあったら助けてやってくれ。屋敷の探検に行っていいぞ」
『じゃあね~』
「もう出ていったから、普通にしてくれ。久しぶりだな」

 リネが部屋を出ていったので、ソファに座ってくれというアルに少し抵抗を見せながらも、全員がソファに座ったところで、サジェルがお茶を持ってきてくれた。
 そうか。リネが飛んでいっちゃえば全部解決するのか。今度困ったらその手でいこう。

「アルさん、お久しぶりです。ユウくん、出来れば先に知らせてくれると、心の準備ができたんだけど」
「ごめんね。いるのに慣れちゃってたから」

 リネが僕たちのそばにいるようになってから初めて、アルも教会の人も抜きでリネと一緒に会う相手だった。今まではアルやツェルト助祭様が何とかしてくれていたから、気にしたことがなかった。

「アルさんを乗せて飛んでいるって聞いていたんだけど、あの大きさは?」
「好きな大きさになれるみたいだよ」

 僕の返事に、コーチェロくんの視線が、ブランと僕を行ったり来たりしている。あれ、そういえばブランの正体はちゃんと話してなかったっけ。カークトゥルスでブランが大きくなったのをシリウスの三人は見ているし、子犬ブランも見ているような気がする。

「アル、ブランのこと話してもいいよね?」
「待った! ユウくん、それは俺たちや、ソマロさんが聞いてもいいことなの? ソマロさんは冒険者じゃない」
「キリシュくんがソマロさんに秘密を持つことになっちゃうし……」

 なぜかコーチェロくんに止められている。ダメなのかなと思ってアルを見ると、苦笑しているから、言わないほうがいいことなんだろうか。

「ユウ、今回はやめておけ。知っておかなければ困ることではないだろう」
「そう、だね」
「話そうと思ってくれたことは嬉しかったよ」
「うん。ちゃんと考えてなくてごめんね」

 多分コーチェロくんたちは、僕が何を言おうとしたのかは分かっていて、それをソマロさんには知らせないほうがいいと思っている。僕がただ知ってほしいと思うのは、僕の自己満足なのだと反省した。
 ソマロさんは一連のやり取りを、全く気に留めていません、という顔で流してくれた。大人だな。

「それで、最近はどうしてるんだ?」
「ここのところは護衛依頼が多いです。神獣様がいらっしゃってから、王都に向かう荷物が増えたので」

 リネ会いたさに王都に人が集まっているのと、リネへの献上品で、王都へ向かって運ぶ荷物が増えているらしい。だから今までは護衛依頼の合間にダンジョンに潜っていたけど、今年はその時間がないそうだ。

「じゃあ、ソマロさんも忙しいんですよね? 呼び出してご迷惑だったんじゃありませんか?」
「ありがたかったですよ。氷花に呼ばれたとあれば、どれほど仕事があろうと休みが取れますので、久しぶりにキリシュとゆっくりできます」

 僕が気にしないように、冗談めかして言ってくれた。
 フェリア商会に勤めているソマロさんは、もしかしたらキリシュくん以上に休みが取れないのかもしれない。呼び出してしまったので、このお屋敷でゆっくりしてくれるといいな。

「ユウくん、オークションにすごい品を出したって聞いたけど」
「買い取ってもらえなくて、アイテムボックスに入れていたものを全部出しただけだよ」
「ソマロさんが商会でも噂になってるって」
「かなり高価な装飾品が出品されるということで、フェリア商会のものもドガイに向かいますよ」

 コーチェロくんが、ソマロさんも話題に入れるようにさりげなく話を振ってくれた。こういうところは見習いたいと思うけど、難易度が高い。
 ソマロさん情報によると、モクリークでのオークションが武具中心だったので、貴族の依頼で装飾品を買うために、複数の商会がドガイに行く予定にしているらしい。

「ソマロ、ユウくんにどんな宝石が出品されるか聞いてみろよ。教えてくれるぞ」
「いや、それは良くないだろう」
「大丈夫だって。ユウくん、どんな宝石が出品されるんだ?」
「えーっと、一番高いのは、緑のキラキラしたのだったと思う」
「違うな。黄色だ」

 あれ、そうだったっけ? アルに訂正されてしまった。それをキリシュくんがニヤニヤしながら見ている。
 僕が宝石については「キラキラしている」か「高そう」しか分かっていないのを知ってて聞いてくるなんて、キリシュくんは意地悪だ。こんな形で先に情報を仕入れるのはよくないと眉をしかめていたソマロさんも、気の抜けた表情をしている。
 キリシュくんがソマロさんに、僕がアルのためにペンダントを作ろうとして宝石店に行ったときのやり取りを、面白おかしく話しているけど、そういうキリシュくんだってきっと宝石の良し悪しは分かっていないのに、ひどいな。

「ユウくんがお金をかけるのは、食べ物と宿だから、宝石は分からなくても仕方ないよな」
「食べ物はブランだよ。宿というかお風呂は僕だけど」

 スリナザルくんがフォローしてくれたけど、食い意地が張っているのは僕じゃなくてブランだから。そこは間違えないでほしい。
 ブランのせいで僕が流れ弾に当たってしまったので、ブランはもふもふの刑だ。もふもふ。
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