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続 3章 ドロップ品のオークション

13-15. 孤児院再訪

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 カリラスさんと話して、気持ちの落ち着いた僕は、カリラスさんとグザビエ司教様と一緒に孤児院へ向かう馬車に乗っている。
 カリラスさんの、このままだと僕のことを心配するアルが孤児院からすぐに帰ってきそうだから、こちらから行こうという提案に、無理をしないという約束でブランの許可が出た。まだアルと向き合う心の準備はできていないけど、子どもたちのためだと言われると、断れない。きっとカリラスさんも僕のそういうところを分かったうえで、自分から動き出す機会を作ってくれたのだと思う。
 部屋の外で待っていてくれたツェルト助祭様に孤児院に行くことを伝えると、バタバタと準備が進み、案内された馬車の前にはグザビエ司教様がいた。

「司教様も一緒ですか?」
「はい。また何か子どもたちから病気をもらってもいけませんからね」
『心配ない。ヴィゾーヴニルを呼ぶ』
「えっと、ブラン、孤児院の子どもたちにリネは……」
『大人しくさせる』

 それは実力行使で大人しくさせるってことでしょうか、ブランさん。
 ブランとリネの力関係がよく分からないけど、言葉の端々から戦闘力でいえばブランのほうが上だと感じることが多い。だけど本気でやりあえば、街の一つや二つは跡形もなくなくなりそうなので、実践はしないでほしい。
 今までとは違う緊張感を漂わせる司教様も一緒に馬車に乗って孤児院へ向かう途中、街中が前回よりもにぎやかなことに気づいた。

「人が多いですが、お祭りでもあるんですか?」
「ユウさん、オークションは明日ですよ。お祭りと言えなくもありませんね」

 すっかり忘れていたけど、僕たちのせいだった。オークションが始まる前に僕たちはモクリークに戻る予定だったのに、結局オークションまでいることになってしまった。

「装飾品目当てに商人が、武具目当てに軍人や冒険者が集まっていますが、そこに神獣様目当てに王族も集まっています」
「僕たちはいない予定だったのに?」
「わずかでも可能性があるなら、ということでしょう。後はこの機にモクリーク王国からマジックバッグの融通を受けたいという目論見もありそうです」

 そういえば、アルの襲撃以降、僕たちだけでなく冒険者たちも国へマジックバッグを売らないと宣言してしまったので、国外へのマジックバッグの輸出が滞っていると聞いたっけ。今は再開されているはずだけど、マジックバッグの人気は高いから、需要に供給が追い付いていないんだろう。

「オークションにはマジックバッグも出してるの?」
「出していないです。出しているのは、ギルドに買い取ってもらえなかったドロップ品ばかりなので」
「それにしては、高価なものばかりって聞いたけど」
「高すぎても、ギルドに買い取ってもらえないんですよ」

 その答えにカリラスさんがあ然としているけど、ギルドにも予算があるから仕方がない。買い取ってもらえないものの筆頭は魔剣だろう。買い取りに出したことがないから知らないけど。魔剣のような今までほとんど取引されてこなかったものは、どうやって値段をつけるんだろう。
 僕の場合は、高すぎて買い取ってもらえないものはとりあえずアイテムボックスに入れておけるけど、他の人はどうしているんだろうか、と元冒険者のカリラスさんに質問すると、グザビエ司教様が答えてくれた。

「ドガイでは、商業ギルドのオークションにかけます。めったにありませんが、盛り上がりますよ」
「へえ。ちょっと見てみたいです」
「明日のオークションをこっそりご覧になってみては? その比ではないくらい盛り上がるでしょう」

 うーん、それは何かのトラブルに巻き込まれそうな気がするから、遠慮したい。でも面白そうだから、モクリークでも同じようなオークションがあるなら、見学させてもらおう。


 孤児院の敷地内に馬車が入っても、グザビエ司教様に、部外者がいないか確認するまでここで待っていてほしいと言われてしまった。先日のことがあるから、慎重を期してだ。
 許可が出たので馬車から降りると、カキンカキンと剣のあたる音が聞こえてくる。順調に剣の訓練が行われているようだ。
 前回はアルが子どもたちと走り回っていた中庭のような広場へと足を踏み入れると、誰よりも早くアルが気づいた。

「ユウ! どうした? 出歩いて大丈夫なのか?」
「大丈夫。あのね」
『いたいたー。ユウ、体調は平気?』
「うん。リネ、あらためてありがとね」
「リネ、どうしたんだ?」
『ユウに病気がうつらないようにしろって呼ばれたんだよ。オレを万能なポーションか何かだと思ってない?』

 そんなリネの愚痴は、空から舞い降りてきて、アルの肩にとまった鳥が神獣だと気づいた子どもたちの大歓声にかき消された。リネを見て興奮する子どもたちや世話係の人たちの声に、部屋の中にいた小さな子たちまで出てきて大騒ぎだ。剣の訓練どころではなくなってしまった。
 ここに来ることになった経緯をカリラスさんがアルに説明している横で、僕はグザビエ司教様と一緒に、ブランに突撃してくる小さな子どもたちの相手をしている。

「わんわん!」
「鳥さんよりもわんわんが好きなのかな?」
「うん! わんわん、すき!」

 もふもふ大好き仲間だ。優しくなでてね、という言いつけをちゃんと守ってくれる子どもたちが可愛い。
 なでやすいように横になってくれたブランと子どもたちを見ていると、その中に前に来たときに鼻水を出していた子を見つけたけど、もう体調は問題なさそうで、元気になっていてよかった。

「ユウ、ブランと一緒に建物の中に入ってくれるか?」
「再開できそう?」
「なんとかする」

 アルの肩から飛び立ったリネを追いかけて、広場を走り回っている子どもたちを見て苦笑している。万が一を考えると、訓練の最中に小さな子どもが周りにいると危険だ。ブランをなでている子たちは、ブランと一緒に屋内に入ってくれるだろうけど、走り回っている子は言うことを聞いてくれるかな。

「邪魔してごめんね」
「いや、来てくれて嬉しかった」

 子どもたちのためにと、カリラスさんの口車に乗せられたところはあるけど、そう言ってもらえると僕も嬉しい。
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