158 / 226
続 3章 ドロップ品のオークション
13-17. 仲直りの朝
しおりを挟む
次の朝、朝食を一緒にとろうとカリラスさんが部屋に来たので、ダイニングテーブルに向かおうとしたところで、アルに抱き上げられて運ばれてしまった。しばらく触れられなかったからと、アルが放してくれない。それを見て、カリラスさんがニヤニヤしている。
ここ数日お互いに触れるのをためらっていた反動なのかアルに触れていたくて、恥ずかしいと抵抗しながら、僕も実はまんざらではない。心は久しぶりに穏やかで満たされている。
やっぱり僕にはアルが必要なんだと思って、前回もこの部屋で同じように思ったことを思い出した。僕はあれからまったく成長できていないらしい。
「仲直りしたみたいで、よかったよ」
「カリラスには感謝してる」
自分で思うよりもずっと大きく僕の心に影を差していた心配事が一つ解決して、心は澄みきって穏やかだ。この世界に来て初めて、ちゃんと地面に立っていると感じる。
足元が定まると、アルと一緒に生きていくという未来が、色をもって現実のこととして考えられるようになった。まだ自信はないけど、それでもアルと一緒なら乗り越えていける、そう思えた。
アルが僕を椅子に座らせて、頭のてっぺんにチュッとしてから隣の席に座るのを見て、ツェルト助祭様が耳をピンと立ててから満面の笑みを浮かべた。ここ数日ギクシャクしていたから、たくさん心配をかけてしまったんだろうけど、そこまで喜ばれると面映ゆい。
僕だけ果物中心の軽めの朝食を終えて、カリラスさんも含めてゆっくりと話をしている。僕の体調も回復したので、そろそろモクリークに帰ることになるけれど、リネは僕の流行り病の治療のために中断した薬箱ダンジョンに行きたそうにしているから、それを待ってから帰るか相談だ。
「ユウ、今日は一緒にオークションを見に行かないか?」
「え?」
「ユウと一緒にいるところを見せれば、あんなことも少なくなるはずだ」
「……人前には出たくない」
「分かっている。でも、少しだけでいいから、考えてみてくれないか? カリラスもどうだ?」
「オークションは見てみたいけど、アレックスと一緒にいると目立つから、遠慮しておく」
オークションにはいろんな国から人が集まっているから、きっとアルと僕が一緒に出れば、僕たちの仲をアピールできる。アルの襲撃以降、別行動していることで、僕たちの仲があまり上手くいっていないんじゃないかと思われてしまっているので、それを払拭するチャンスではあるんだろう。
でも僕は人前に出るのが苦手だ。裏からこっそり見るのならいいけど、今回は目立つことこそが目的だ。
嫌だと言えば、アルは無理強いしない。でもそうすると、アルだけが矢面に立たされ続ける。そして、僕の知らないところであんなことが繰り返されるのだろう。
そもそも、それは僕の立場のはずだったのだ。僕は目立ちたくなくてブランとのことを公表しないでいたのに、そのブランがアルのために連れてきてくれたリネとの契約で、アルは否応なく表に出ることになった。
「少しでいいなら、出るよ」
「ユウ、ありがとう」
きっとアルだって僕を表に出したいわけじゃないはずだ。でもそうすることが最善だと判断したのだ。だったら、少しだけ頑張ってみよう。
きっと今踏み出さなければ、二度と踏み出せない。この世界に受け入れられたのだと知った今、この世界で生きていくための一歩を踏み出そう。
僕たちの決定をツェルト助祭様が伝えてくれて、オークションの責任者である司教様も部屋にきてくれた。土壇場で参加者を増やすことになって、申し訳ない。
「お二人で参加されますか?」
「はい」
「マーナガルム様とヴィゾーヴニル様は?」
「ブランはユウのそばに。リネは来ないと思います」
「承知いたしました」
リネは張り切って薬箱ダンジョンに出かけていったので、しばらく帰ってこないはずだ。
オークション会場はいくつかあって、そのどれに参加するのか、落札する気はあるのかなど、いろいろ聞かれて答えると、司教様は慌ただしく部屋を出ていった。これから会場のレイアウト変更も必要になるから、時間との勝負らしい。なるべく周りからの視線は遮るような配置にすると言ってくれたから、お昼過ぎの開始までに準備が間に合うように祈っておこう。
カリラスさんは、マジックバッグを持ってモクリークとドガイを往復しているその役目からも、あまり顔を知られないほうがいいということで、助祭の服を着て、お付きの人として紛れることになった。僕もそっちがよかったなあ。
「そういえば、僕たちは何を着ればいいんだろう」
「お二人の正装は、ユウさんが持っていらっしゃった荷物に入っていますよ」
「え、そうなの?」
今回の旅の間の服として、サジェルが用意してくれた衣装ケースをアイテムボックスに収納して、ここに着いたときに出したけど、その中に正装も入っているらしい。こういう事態を見越していたということか。
「じゃあブランも」
『断る』
お揃いでおしゃれしようよ、と最後まで言う前に、ブランに断られてしまった。残念だ。マントをつけたブラン、かっこよかったのになあ。
ツェルト助祭様が荷物の中から出してきた僕たちの正装は、とても気合が入ったペアルックだった。アルは黒を基調として、そこに赤やオレンジの暖色の刺しゅう、僕は薄い緑を基調として銀の刺しゅうが入っている。お互いの目の色に、それぞれの神獣の色を差し色として入れている。着るかどうかも分からない服が用意されているだけでも驚きなのに、今回のアピールのためにあるような色遣いだなんて、用意したサジェルには予知能力もあるのかもしれない。ベテラン執事、恐るべし。
ここ数日お互いに触れるのをためらっていた反動なのかアルに触れていたくて、恥ずかしいと抵抗しながら、僕も実はまんざらではない。心は久しぶりに穏やかで満たされている。
やっぱり僕にはアルが必要なんだと思って、前回もこの部屋で同じように思ったことを思い出した。僕はあれからまったく成長できていないらしい。
「仲直りしたみたいで、よかったよ」
「カリラスには感謝してる」
自分で思うよりもずっと大きく僕の心に影を差していた心配事が一つ解決して、心は澄みきって穏やかだ。この世界に来て初めて、ちゃんと地面に立っていると感じる。
足元が定まると、アルと一緒に生きていくという未来が、色をもって現実のこととして考えられるようになった。まだ自信はないけど、それでもアルと一緒なら乗り越えていける、そう思えた。
アルが僕を椅子に座らせて、頭のてっぺんにチュッとしてから隣の席に座るのを見て、ツェルト助祭様が耳をピンと立ててから満面の笑みを浮かべた。ここ数日ギクシャクしていたから、たくさん心配をかけてしまったんだろうけど、そこまで喜ばれると面映ゆい。
僕だけ果物中心の軽めの朝食を終えて、カリラスさんも含めてゆっくりと話をしている。僕の体調も回復したので、そろそろモクリークに帰ることになるけれど、リネは僕の流行り病の治療のために中断した薬箱ダンジョンに行きたそうにしているから、それを待ってから帰るか相談だ。
「ユウ、今日は一緒にオークションを見に行かないか?」
「え?」
「ユウと一緒にいるところを見せれば、あんなことも少なくなるはずだ」
「……人前には出たくない」
「分かっている。でも、少しだけでいいから、考えてみてくれないか? カリラスもどうだ?」
「オークションは見てみたいけど、アレックスと一緒にいると目立つから、遠慮しておく」
オークションにはいろんな国から人が集まっているから、きっとアルと僕が一緒に出れば、僕たちの仲をアピールできる。アルの襲撃以降、別行動していることで、僕たちの仲があまり上手くいっていないんじゃないかと思われてしまっているので、それを払拭するチャンスではあるんだろう。
でも僕は人前に出るのが苦手だ。裏からこっそり見るのならいいけど、今回は目立つことこそが目的だ。
嫌だと言えば、アルは無理強いしない。でもそうすると、アルだけが矢面に立たされ続ける。そして、僕の知らないところであんなことが繰り返されるのだろう。
そもそも、それは僕の立場のはずだったのだ。僕は目立ちたくなくてブランとのことを公表しないでいたのに、そのブランがアルのために連れてきてくれたリネとの契約で、アルは否応なく表に出ることになった。
「少しでいいなら、出るよ」
「ユウ、ありがとう」
きっとアルだって僕を表に出したいわけじゃないはずだ。でもそうすることが最善だと判断したのだ。だったら、少しだけ頑張ってみよう。
きっと今踏み出さなければ、二度と踏み出せない。この世界に受け入れられたのだと知った今、この世界で生きていくための一歩を踏み出そう。
僕たちの決定をツェルト助祭様が伝えてくれて、オークションの責任者である司教様も部屋にきてくれた。土壇場で参加者を増やすことになって、申し訳ない。
「お二人で参加されますか?」
「はい」
「マーナガルム様とヴィゾーヴニル様は?」
「ブランはユウのそばに。リネは来ないと思います」
「承知いたしました」
リネは張り切って薬箱ダンジョンに出かけていったので、しばらく帰ってこないはずだ。
オークション会場はいくつかあって、そのどれに参加するのか、落札する気はあるのかなど、いろいろ聞かれて答えると、司教様は慌ただしく部屋を出ていった。これから会場のレイアウト変更も必要になるから、時間との勝負らしい。なるべく周りからの視線は遮るような配置にすると言ってくれたから、お昼過ぎの開始までに準備が間に合うように祈っておこう。
カリラスさんは、マジックバッグを持ってモクリークとドガイを往復しているその役目からも、あまり顔を知られないほうがいいということで、助祭の服を着て、お付きの人として紛れることになった。僕もそっちがよかったなあ。
「そういえば、僕たちは何を着ればいいんだろう」
「お二人の正装は、ユウさんが持っていらっしゃった荷物に入っていますよ」
「え、そうなの?」
今回の旅の間の服として、サジェルが用意してくれた衣装ケースをアイテムボックスに収納して、ここに着いたときに出したけど、その中に正装も入っているらしい。こういう事態を見越していたということか。
「じゃあブランも」
『断る』
お揃いでおしゃれしようよ、と最後まで言う前に、ブランに断られてしまった。残念だ。マントをつけたブラン、かっこよかったのになあ。
ツェルト助祭様が荷物の中から出してきた僕たちの正装は、とても気合が入ったペアルックだった。アルは黒を基調として、そこに赤やオレンジの暖色の刺しゅう、僕は薄い緑を基調として銀の刺しゅうが入っている。お互いの目の色に、それぞれの神獣の色を差し色として入れている。着るかどうかも分からない服が用意されているだけでも驚きなのに、今回のアピールのためにあるような色遣いだなんて、用意したサジェルには予知能力もあるのかもしれない。ベテラン執事、恐るべし。
252
あなたにおすすめの小説
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる