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続 4章 この世界の一人として

14-5. 合同攻略ダンジョン選び

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 ソントで別れてからどうしていたのか、お互いの報告が終わって、聞きたいことも聞いて、話は一段落した。

「しばらくは王都ですか?」
「ああ。この近くのダンジョンもまだ全部攻略できてないからな」
「アルが、ティガーのみんなが来たら一緒にダンジョンに行こうと言ってくれたので、僕も行きます」
「……大丈夫なのか?」

 最近僕がダンジョンに行っていないので心配されたけど、それはリネの騒動があったからだ。冬のカークトゥルス合宿以来になるけど、体力は回復しているのだから問題ないはず。

「どこか行きたいダンジョンはありますか?」
「うーん、まだ王都から東しか行ったことがないんだけど、西側で興味があるのは、剣がドロップする」
「そこはダメです!」
『行くぞ』
「やだ!」

 突然始まったブランと僕の喧嘩に、ティガーの三人が驚いているけど、これは譲れないのだ。

「ブロキオンは人が多いから、まだ無理」
『獣道にこやつらがいれば問題ないだろう。行くぞ』
「絶対いや」
「えっと、ブロキオンって、魔剣がドロップするって有名だけど、何かあるのか?」
「……」
『ダンジョンとしては面白い。ユウは最下層の首なし騎士が嫌いだから、行きたくないだけだ』
「そ、そうですか……」

 ブランが行く気になっているけど、僕は行きたくない。あそこは人が多いから、この先十年は行かないと思っていたのに。

「ティグ君、なぐさめて。ブランがひどいよ。僕、あそこには行きたくないのに」
「グルゥ」

 仕方ないので、ティグ君に抱き着いて、つるつるの毛を堪能しよう。ブランのことはしばらく無視だ。当分ブラッシングもしないから。


 ティガーの三人は、これから司教様の聞き取り調査があるのでお別れだ。でも近いうちにダンジョンに行くことが決まっているので、またそのときに会える。

「ダンジョンについては、アルが帰ってきたら相談して、ギルドに伝言を残しますね」
「ああ。それまで王都にいるよ」
「ブランがティグ君の場所は分かるようなので、移動してもらっても構いません」

 加護をあげたからその気になれば居場所は掴めるそうだ。リネも獣道の場所は分かるようだし、神獣には気に入った相手の位置情報を追跡できる能力があるのだろう。

「それから、これ、使ってください。時間停止はないんですけど、容量大のマジックバッグです」
「いや、さすがにこれはもらえない」
「アルの許可ももらってます。あのとき助けてもらえなければ、こうして今僕たちがモクリークで生活できていたかは分かりませんから」
「それは、マーナガルム様から十分すぎるほどの恩恵をいただいている。ティグの氷魔法がなければ、ここまで早くSランクになれたかどうか」

 あのとき僕には彼らの厚意に返せるものが何もなかった。だからこそ、ブランがウィズ君とティグ君に加護をあげてくれたんだろう。でも今、返せるものを手に入れているのだから、ちゃんと報いたい。
 使ってほしい、受け取れない、の押し問答の結果、ティガーのみんなが折れてくれた。

「じゃあさ、カークトゥルスでマジックバッグを手に入れるまで借りるよ」
「カークトゥルスは階層が多いので、使ってください」

 この冬の合宿には三年間活動の条件を満たせなくて一緒に行けないので、来年の夏あたりに予定しているという挑戦のときには使ってほしい。

 部屋の隅に待機してくれていたツェルト助祭様の案内で、聞き取り調査に向かうために、部屋を出ようとしたところで、ツェルト助祭様が振り返った。

「一つ確認を忘れていました。ティガーのみなさんは、馬には乗れますか?」
「それなりには」
「でしたら、ユウさんがあふれの対応に行く際の護衛をお願いしたいので、一日走り通せるように訓練をお願いいたします」

 ギルドから冒険者が護衛につくことになっているけれど、僕の顔見知りで馬に乗って移動できる冒険者は少ない。今のところ、ライダーズの二人だけだ。ただ乗るだけならできるけど、一日中走り続けるのは大変だ。ライダーズが捕まらないときのために、リリアンダにも頼んでくれていたし、その気遣いが嬉しい。
 ダンジョン前では馬を預かってくれるサービスもあるので、馬で行って訓練をしようかとティガーのみんなが検討してくれている。

「僕もブランに乗る訓練をしたほうがいいですね」
「ユウさん、無理はいけませんよ」
「でも毎回フラフラになっていては迷惑をかけるので」

 きっとあふれの対応のために僕がなすべき一番のことは、体力をつけることだ。どこかブランに乗って走り回れるところがないか、聞いてみよう。少しずつ練習すれば、きっと体力もつくはず。

 ちなみにティグ君に乗って走らないのかと聞いてみたら、歩くのならいいけど、走ると振り落とされてしまうと教えてくれた。ネコ科は背中が柔らかいイメージだから、きっと全身のバネを使って走るんだろうな。全力疾走しているところ、見てみたいなあ。
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