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続 4章 この世界の一人として
14-15. マジック
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今日は、孤児院の子どもたちと遊ぶ予定になっている。これは大司教様に頼まれた、僕の仕事だ。
王妃様が王都の孤児院でお茶会をしているように、僕も旅先の孤児院に顔を出して、子どもたちと遊んでほしいとお願いされた。そんなことでいいならと受けたけれど、誰かが気にかけていてくれるというのが子どもたちにとっては励みになるのだという、その理由に納得した。僕はカイドのギルドで、みんなが見ているのに誰も助けてくれないという状況に絶望した。だから、誰か一人でも自分を見ていてくれる、そう感じることが一縷の望みになるのだということを、身をもって知っている。
孤児院ではたくさんの司祭様や助祭様がいるから、孤独になることはないと思うけど、アルがいた孤児院のように、孤児院自体があまりよくない可能性もないとはいえない。僕が行くことが何かの希望になるなら、喜んで協力しよう。正直子どもたちは僕よりもブランに喜ぶだろうけど。
アルは、僕がまた子どもに責められることがあるんじゃないかと心配してくれたけど、そういうことも分かって引き受けた。同じようなことがあったときに、僕にできることはなかったと割り切れるかどうかは分からないけど、でもただの可能性で活動を狭めることはしたくない。きっと王妃様が言っていた「不満を受け止める覚悟」というのは、ああいうことも含んでいるのだろう。王族は大変だ。
孤児院に着くと、子どもたちが並んで待っていてくれた。予想通り、みんなの視線がブランに釘付けだ。大きいもふもふって魅力的だよね。分かるよ。
「今日は、有名な冒険者の氷花のパーティーから、ユウさんと従魔が来てくれました。みなさん、従魔には触らないようにしましょう」
「はーい」
みんなお行儀よく返事をしているけど、本当は触りたくて仕方がないというのが見て取れる。ここは僕がブランに近寄らせないように、気をつけるしかないな。
今後、子どもたちにはブランに触らせないと決めた。ティグ君のテイマーさんは万が一に備えて子どもにティグ君を近づけないようにしていると言っていたし、他のテイマーも基本的には他人に従魔を触らせないそうだ。もしも事故が起きたら、関わった全員が辛い思いをするのだから、初めから近寄らせないのが一番だ。ブラン相手ならそういう事故は起きないけれど、時と場合によって基準を変えると子どもが混乱してしまうので、僕が他の人に合わせる。ただ、王都の孤児院では、突然方針を変えるのはよくないので、少しずつ子どもたちからブランを離していく予定だ。
さて、まずは挨拶がわりに、ちょっとした出し物をしよう。
「右手に、氷のお花が二個あります」
「きらきらして、きれい」
「左手にも二個あります。合わせたら、いくつでしょう」
それぞれの手のひらに、ブランに作ってもらった小さな氷の花を置いて見せ、その氷の花を包むように、手を合わせた。
計算ができる子はすぐに答え、小さい子は指を折って数えている。
「えーっと、よっつ」
「じゃあ、見てみようね」
子どもたちの目の前で手を開いて見せると、手のひらからこぼれ落ちたたくさんの氷の花に、子どもたちから歓声が上がった。
「わあ!」
「いっぱい!」
何のことはない、僕のアイテムボックスからたくさんの氷の花を取り出して見せたのだ。魔法のある世界では、僕にも手品ができる。イカサマだけど、子どもたちが目を輝かせているので、掴みはばっちりだったようだ。
子どもたちと遊ぶといっても、僕はアルのように子どもたちと走り回ったり、剣の稽古をしたりはできない。どう考えても僕のほうが体力がないので、部屋の中での遊びに限定されている。じゃあ子どもたちが興味を持ちそうなものは何かと考えて、できそうなのが手品だった。といっても、これしかできないけど。
アイテムボックスを使ったと気づいて喜ぶ子、ずるいと文句を言う子、性格が見えて面白い。もっといろいろ出してみせてとせがまれて、アイテムボックスから果物を取り出した。
「サンギョの果物ダンジョンで、冒険者がみんなのために取ってくれたんだよ。好きなのをどうぞ」
「さあ、みんな、お礼を言って、一つずつもらいなさい」
教会に寄付してほしいと冒険者から渡された果物を机の上に並べると、自分の好きなものを選び始めた。一つに決められなくてウロウロしている子もいて可愛い。お友達と半分ずつ分ける相談をしているちゃっかりした子もいる。選んだ果物は、お昼ご飯のデザートにしてもらえることになっている。
「ぼくも、アイテムボックスつかえるようになる?」
「スキルがあったらね。でもとっても珍しいスキルだから、どうかな?」
「わたしは、風のまほうがいい!」
果物を選び終わった子たちが、どんなスキルが欲しいか、みんなそれぞれ理由をあげながら教えてくれるけど、魔法スキルが欲しいという子が多い。冒険者になって活躍したいから、という現実的な理由の子もいるけど、やっぱり魔法ってワクワクするよね。付与魔法はまだ人気がないのか誰もあげなかった。安全で就職には困らないからお勧めなんだけどな。
その後は、簡単な計算のクイズをしたり、お絵かきをしたり、遊びというよりはゆるい授業のような時間を子どもたちと過ごした。
ブランは部屋のすみに寝っ転がっていて、孤児院の助祭様が近づく子どもを止めてくれた。最初は興味津々でブランに近づいていた子どもたちも、畏れ多さからか助祭様が必死に止めるので、そのうち近づかなくなっていた。子どもたちはちゃんと言いつけを守ってくれる。やっぱりブランが気にしないからと僕が気軽に触らせるのが問題なんだろう。
王妃様が王都の孤児院でお茶会をしているように、僕も旅先の孤児院に顔を出して、子どもたちと遊んでほしいとお願いされた。そんなことでいいならと受けたけれど、誰かが気にかけていてくれるというのが子どもたちにとっては励みになるのだという、その理由に納得した。僕はカイドのギルドで、みんなが見ているのに誰も助けてくれないという状況に絶望した。だから、誰か一人でも自分を見ていてくれる、そう感じることが一縷の望みになるのだということを、身をもって知っている。
孤児院ではたくさんの司祭様や助祭様がいるから、孤独になることはないと思うけど、アルがいた孤児院のように、孤児院自体があまりよくない可能性もないとはいえない。僕が行くことが何かの希望になるなら、喜んで協力しよう。正直子どもたちは僕よりもブランに喜ぶだろうけど。
アルは、僕がまた子どもに責められることがあるんじゃないかと心配してくれたけど、そういうことも分かって引き受けた。同じようなことがあったときに、僕にできることはなかったと割り切れるかどうかは分からないけど、でもただの可能性で活動を狭めることはしたくない。きっと王妃様が言っていた「不満を受け止める覚悟」というのは、ああいうことも含んでいるのだろう。王族は大変だ。
孤児院に着くと、子どもたちが並んで待っていてくれた。予想通り、みんなの視線がブランに釘付けだ。大きいもふもふって魅力的だよね。分かるよ。
「今日は、有名な冒険者の氷花のパーティーから、ユウさんと従魔が来てくれました。みなさん、従魔には触らないようにしましょう」
「はーい」
みんなお行儀よく返事をしているけど、本当は触りたくて仕方がないというのが見て取れる。ここは僕がブランに近寄らせないように、気をつけるしかないな。
今後、子どもたちにはブランに触らせないと決めた。ティグ君のテイマーさんは万が一に備えて子どもにティグ君を近づけないようにしていると言っていたし、他のテイマーも基本的には他人に従魔を触らせないそうだ。もしも事故が起きたら、関わった全員が辛い思いをするのだから、初めから近寄らせないのが一番だ。ブラン相手ならそういう事故は起きないけれど、時と場合によって基準を変えると子どもが混乱してしまうので、僕が他の人に合わせる。ただ、王都の孤児院では、突然方針を変えるのはよくないので、少しずつ子どもたちからブランを離していく予定だ。
さて、まずは挨拶がわりに、ちょっとした出し物をしよう。
「右手に、氷のお花が二個あります」
「きらきらして、きれい」
「左手にも二個あります。合わせたら、いくつでしょう」
それぞれの手のひらに、ブランに作ってもらった小さな氷の花を置いて見せ、その氷の花を包むように、手を合わせた。
計算ができる子はすぐに答え、小さい子は指を折って数えている。
「えーっと、よっつ」
「じゃあ、見てみようね」
子どもたちの目の前で手を開いて見せると、手のひらからこぼれ落ちたたくさんの氷の花に、子どもたちから歓声が上がった。
「わあ!」
「いっぱい!」
何のことはない、僕のアイテムボックスからたくさんの氷の花を取り出して見せたのだ。魔法のある世界では、僕にも手品ができる。イカサマだけど、子どもたちが目を輝かせているので、掴みはばっちりだったようだ。
子どもたちと遊ぶといっても、僕はアルのように子どもたちと走り回ったり、剣の稽古をしたりはできない。どう考えても僕のほうが体力がないので、部屋の中での遊びに限定されている。じゃあ子どもたちが興味を持ちそうなものは何かと考えて、できそうなのが手品だった。といっても、これしかできないけど。
アイテムボックスを使ったと気づいて喜ぶ子、ずるいと文句を言う子、性格が見えて面白い。もっといろいろ出してみせてとせがまれて、アイテムボックスから果物を取り出した。
「サンギョの果物ダンジョンで、冒険者がみんなのために取ってくれたんだよ。好きなのをどうぞ」
「さあ、みんな、お礼を言って、一つずつもらいなさい」
教会に寄付してほしいと冒険者から渡された果物を机の上に並べると、自分の好きなものを選び始めた。一つに決められなくてウロウロしている子もいて可愛い。お友達と半分ずつ分ける相談をしているちゃっかりした子もいる。選んだ果物は、お昼ご飯のデザートにしてもらえることになっている。
「ぼくも、アイテムボックスつかえるようになる?」
「スキルがあったらね。でもとっても珍しいスキルだから、どうかな?」
「わたしは、風のまほうがいい!」
果物を選び終わった子たちが、どんなスキルが欲しいか、みんなそれぞれ理由をあげながら教えてくれるけど、魔法スキルが欲しいという子が多い。冒険者になって活躍したいから、という現実的な理由の子もいるけど、やっぱり魔法ってワクワクするよね。付与魔法はまだ人気がないのか誰もあげなかった。安全で就職には困らないからお勧めなんだけどな。
その後は、簡単な計算のクイズをしたり、お絵かきをしたり、遊びというよりはゆるい授業のような時間を子どもたちと過ごした。
ブランは部屋のすみに寝っ転がっていて、孤児院の助祭様が近づく子どもを止めてくれた。最初は興味津々でブランに近づいていた子どもたちも、畏れ多さからか助祭様が必死に止めるので、そのうち近づかなくなっていた。子どもたちはちゃんと言いつけを守ってくれる。やっぱりブランが気にしないからと僕が気軽に触らせるのが問題なんだろう。
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