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続 4章 この世界の一人として

14-16. 王子様と会議

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 石の運搬を終えて、王都に戻った次の日は、王子様と会議だ。
 一年に一度の王様との話し合いは、今年からは王子様との話し合いに変わった。アルがそのほうが僕に負担が少ないだろうと王子様に提案してくれて、王様も賛成したらしい。すでに僕たちの要望をもとに、僕の代理人である大司教様と王様の間では話し合いが済んでいて、王子様とは合意内容の最終確認だ。王様側からどういう要求が出ていたのかは詳しく僕には知らされていないけど、一言でいうなら現状維持だ。
 僕もアルもちゃんと合意しているという確認のためだけに顔を合わせるので、今回は気がとても楽だ。

 大司教様と一緒に、ちょっと早めに会議のための部屋に出向くと、ギルドマスターがすでに待っていた。全員そろってから呼ぶと言われたけど、僕は人がずらっと待っているところに入るのが苦手なのだ。

「ユウさん、ユラカヒまでの魔石の搬送、ありがとうございました。こちらはお礼です」
「いつもすみません」

 いつものように、ブランへお肉の貢ぎものを渡された。さすがにこれから会議が始まるここで食べ始めるわけにはいかないので、アイテムボックスに収納したけど、それまでお肉にロックオンしていたから、終わったらすぐに出さないと怒られそうだ。
 今日の会場は、会議室ではなくて応接室っぽいところなので、僕たちの席はソファで、座るとブランは僕の足元に寝そべった。やっぱりこういう雰囲気のほうが気が楽でいい。

「剣の貸し出しが上手くいっているようで、よかったです」
「今はユウさんからご寄付いただいた剣だけですが、ブロキオンの上層の剣を集めようか、という話も出ています」

 買取価格に影響が出ないように、カークトゥルスの魔石祭りのような数日限定などで上層の剣を集める案が出ているらしい。そのときは僕も協力したいけど、絶対ブランが上層だけで終わってくれないのは分かっているから、参加しますと言いたくない。だけど興味のないフリをしながらもブランの耳がギルドマスターのほうに向いているので、行くことになるんだろう。行きたくないのに。
 春にはティガーのみんなとブロキオンに行く予定だとアルが伝えていると、部屋の外から喧騒が聞こえてきた。

「お前たちはここにいろ」
「ですが……」
「くどい。命令だ」

 どうやら王子様の護衛が中に入ろうとするのを、王子様が止めているらしい。お付きの人がいると僕が委縮してしまうから、アルが言ってくれたんだろう。最後は命令という言葉に引き下がらざるを得なかった護衛を残して、王子様が一人で入ってきた。入り口からちらっと見えた護衛が、苦虫をかみ潰したような顔をしている。

「実は、もう一人参加したいってくっついてきちゃったんだけど、いいかな?」
「テオリウス殿下、ようこそおいでくださいました。もうお一方とは?」
「兄上がね、廊下で待ってるんだ」
「そうですか。ユウさん、王太子殿下とお会いになりますか?」
「え?」

 えーっと、王太子ってことは、次の王様だよね。その人を廊下で待たせてるってこと?
 あまりのことに驚いて立ち上がった僕にみんなが驚いているけど、偉い人を廊下に立たせてるってマズいんじゃないの?

「ユウ、どうした? 落ち着け」
「ユウさん、大丈夫です。深呼吸をしましょう」

 どうしていいか分からなくて、無駄に手を上げたり下げたりしている僕の慌てっぷりに、落ち着くように言われるけど、むしろなんでみんなそんなに落ち着いてるの。

「テオ、ユウは突発事態に弱いんだ。事前に知らせてくれ」
「すまない」

 これは、僕がサプライズが苦手とか、そういう問題なんだろうか。次の王様を廊下に立たせてるって、そんな落ち着き払っていられる状況じゃないよね?
 とりあえず部屋に入ってもらったけど、血のつながりを感じる顔立ちだ。頭脳派っぽいお兄さんのほうが、王妃様に似ている気がする。僕が王妃様とのお茶会に出たので、それなら大丈夫だろうと思って、一緒に来たのだと弁解してくれたけど、それよりも僕には他のことが気になる。

「王子様って、二人だけ?」
「テイマー殿、我々は二人兄弟で、王女はいないよ。安心して」
「俺より王太子のほうがいいのか?」

 小声でアルに聞いたのに、王子様にも聞こえてしまったようだ。王子様が王女に言及したのはソントの王女様の件があったからだろうけど、そういうことじゃない。アルも分かっているのに、こういうところでそういう、からかうようなことを聞かないでほしい。
 王子様が二人だけなら、ここにその二人が護衛なしにいるのはまずいだろう。何かあったら、次の王様がいなくなってしまう。それは護衛も食い下がるよなあ、と納得してしまった。

「そうじゃなくて、護衛がいなくていいのかなって」
「テイマー殿、心配してくれてありがとう。だけど、貴方がいる限り、護衛がいたところで意味がないだろう?」

 ブランには護衛が何人いたって関係ないだろうけど、と僕の足元にいるブランに目を向けると、王子様が意外なことを言った。

「確かにその従魔もだけど、テイマー殿はどんな武器も持ち込み放題だからね。矢を使われたら、護衛も止められないよ」
「……まあこの距離なら、当たるかもしれないな」

 ちょっと待って、アル。これだけ近くなら当てられるよ、多分。ギルドマスターも、なんで笑ってるの。

「ユウさん、テオリウス殿下は、冒険者で言えばAランクの実力はお持ちですよ」
「王族じゃなければ、Sランクを目指したんだけどね」

 僕の恨みがましい目にギルドマスターが教えてくれたけど、それはつまり、僕なんか片手でひねりつぶせるから余裕ってことですね。
 だけど思い返せば、ドガイで王子様と会ったときも、王妃様のお茶会でも、武器を隠し持っていないかなどの確認はされなかった。それは、僕がアイテムボックスを持っているから、そもそも確認したところで無駄だからだったのか。アルは、剣もマジックバッグも持っていないのは教会内だからだと思っていたけど、王子様への礼儀なのかもしれない。まあ僕がアイテムボックスから剣を取り出して渡せば関係ないけど。
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