世界を越えてもその手は

犬派だんぜん

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続 5章 カークトゥルス合宿

15-2. 水の魔石

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 夕方、獣道の四人が部屋を訪れた。

「ユウ、調子はどうだ? 行けるか?」
「はい」
「そうか。アレックス、神獣様は?」
「その辺を飛んでいるはずだ。明日の夜には帰ってくるように言ってある」

 まずは必要なことを確認をすませて、夕食を一緒にとることになった。
 宿のご飯を七人分、僕たちの部屋に運んでもらう。獣道四人分、アルと僕、そしてブランの分だ。そのはずだけど、十人分以上に見える食事が運ばれてきて、大きな机の上がいっぱいだ。相変わらず、獣道たちはよく食べる。

「宿が取れなかったと聞きましたけど、カークトゥルスの中も変わっているか知っていますか?」
「ああ。下層は分からないが、上層にはモクリークの冒険者とは少し毛色の違うやつらが増えている。周辺の国から来て、モクリーク滞在三年の条件を満たした新しいパーティーだろうな」

 早めに来てカークトゥルスでないダンジョンにも潜っていた獣道が、去年との違いを説明してくれる。
 この宿はサネバの中では高級宿なので、いままでは比較的空いていたが、最近は僕たちの泊まっているお風呂付きの部屋以外は埋まっていることが多い。それは人が増えて宿が足りないため仕方なく泊っているのもあるだろうが、貴族などの支援を受けて周辺国から来ている、金銭的に余裕のあるパーティーも増えたからだ。

「ルフェオ、トラブルも増えていそうか?」
「カークトゥルスは推薦性にしたからか、今のところはなさそうだが、神獣様が現れてどうなるか」
「ギルドから警告が出ているから、なんとかなるとは思うよ。ただここは、他の国のパーティーが多いからねえ」

 リネはあちこちのダンジョンに出入りしているので、モクリークの冒険者たちはだいぶ慣れてきた。リネのことは、遠くから眺めてありがたがる存在で、近寄れば面倒に巻き込まれると思っている節があると、アルに聞いている。面倒な存在から逃れたいのではなく、面倒が起きてリネがこの国から出ていってしまうことを心配しているそうだ。怒らせなければ、ダンジョンで会えるというのは、かなり魅力的なのだろう。
 けれど、他の国からカークトゥルス目当てに来ている冒険者たちがどう思っているか分からない。むしろこの国を出て、自分の国に来てくれればいいと思っているだろうから、リネがこの国で嫌な思いをすることに抵抗はないだろう。それに、リネが怒って暴れれば、この国に影響が出る。まあ、そうなる前にブランが止めてくれる気がするけれど、その余波で何が起きるのかは、僕にも分からない。

 できるなら上層は早めに通り過ぎよう。不安なのは、絡まれることでなく、リネがどうするか分からないことだ。アルと契約してすぐのころ、パーティーに加えてほしいと言った冒険者の髪を燃やしたリネだから、トラブルには実力行使で対抗するだろう。それで大事になって合宿がなくなると、ブランがキレる気がする。
 ブランは、ここのところ僕に付き合ってダンジョンにはあまり潜っていないので、今回のカークトゥルス合宿をとても楽しみにしていた。おそらく下層で羽目を外すんだろうなあ。

「ユウたちは、あとから神獣様と一緒に来るか?」
「うーん、リネがブランを乗せてくれるかなあ」
「獣道と一緒に行って、トラブルが起きるようならリネに頼むことにしよう」

 リネはブランを乗せたがらない。ブランは自分で空を駆けることができるから、乗せたくないというリネの気持ちは分かるし、尊重してあげたい。だから、最初は獣道と一緒にブランに乗って進もう。僕が歩くと全体の進みが遅くなってしまうからで、横着しているわけではない。

「ギルドにはもう行ったか? 水の魔石があっただろう?」
「ああ。見た」
「水の魔石って、テルリくんの?」
「そうだ。ギルド内に置いてあって、誰でも水をくめるようになっている」

 アルがカークトゥルスの前に水の魔石をおいてはどうかと言っていたけど、ギルドの中になったのか。おそらく管理の関係だろう。あれを持ってカークトゥルスに入れば、水に困らない。

「あれを見て、カークトゥルスの魔石の買取量が一気に増えたらしい」
「そのために、いまは全階層のセーフティーエリアに籠とつかみが置かれているって聞いた」

 あの水を生み出す魔石を見れば、多くの人が拾ってくるようになるだろうという、アルとギルドの目論見通りになったということだ。さすがだな。

「あれは欲しいよ」
「マジックバッグがあるから、水には困らないですよね?」
「それでも、持っていたら、いざってときに助かる」

 食料がなくても、少しは生き延びられるけれど、水がなければ命運は尽きる。ダンジョン内にいて水がなくなった場合、地上に帰るまでもたない可能性がある。

「そういえば、いままでダンジョン内で水を売ってほしいと言われたことはないですね」
「そりゃ、水が足りなくなりそうだと分かった時点で引き返す。ポーションとは違うさ」

 僕たちはダンジョン内で、ポーションや食料、そして水を冒険者に地上価格で売ると、ギルドと約束している。それはギルドが僕たちをトラブルから守ってくれているから、そのお礼というかお返しとして、僕のアイテムボックス内のものを提供している。
 けれど、水は頼まれたことがない。予想以上の強敵と当たって、怪我をしたからポーションが必要になる、という状況とは、そもそもが違うのだ。
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