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3. 王宮のルール *
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「遅かったな」
「ちょっとな。家に帰っていた」
「こっちに来てよかったのか?」
「キリに美味しいものを食べさせるために行っただけだ。夕食を貰って来た」
キースがめっちゃ警戒してる。分かるよ、お母さんの手配でまたなんか入ってるかもしれないもんね。でも入っててもいいじゃん。今日はご主人を甘やかしてあげてよ。
なんか疲れてないか?と聞かれても、ご主人は王子様とのことは話さなかった。キースには前に話しているし、話すほどのことでもないと思ったのか。
媚薬なら多分オレが解毒できるから食べようよと提案して、侯爵家のご飯を美味しく食べた。
診断の魔法で見えるのかどうかわからないけど、料理には何も入ってなさそうだった。でも入ってるのが媚薬なら、オレの魔法はオレの気持ちを汲んで毒判定しない気もするから、実際のところは分からないな。
「キース、その、新しいベッドの寝心地を、確かめてみないか?」
寝る準備をしていた時に、ご主人が勇気を出してキースを誘った。
ご主人が自分から誘うのは初めてだ。ご主人、やればできる子!めっちゃ遠回しだけど、問題なし!
「疲れてるんじゃないのか?王城で何かあったのか?」
「特には。いや、昔の友人に会ったが」
「何か言われたのか?」
「いや」
「もう王城には行くな」
「第二王子殿下に近いうちに誘われると思う」
ええっ、あれ行かなきゃいけないの?オレ行きたくないんだけど。というかご主人を行かせたくないんだけど。
キースも、それは仕方ないなと言っているし、くっ、権力に負けた。ここはやっぱりオレが教皇になるべきか。
ふと気づくと、ご主人がキースの部屋着の袖の裾をちょっとだけ掴んでる。ずきゅん。これはやられた。可愛い。
これはキースもやられるだろうと思ったら、案の定、ちょっと下を向いてしまったご主人の頬に手を添えようとしたのか、腕を動かそうとして気付き、ちょっと目を見張った。
オレはリビングにいるから、ご主人のことよろしく!
ということで、本日も音声のみでお伝えてしていきます。
「んっ、はっ、いいっ、あっ」
「今日のは媚薬は入ってないんだろう?自分で誘って興奮したのか?」
「ああっ、あっ、ちがっ」
「じゃあなんでいつもより感じてんだ?」
「やあぁっ、やめっ、はなしてっ」
「ほら、言えよ。言ったらイかせてやる」
「やああっ!」
キースの鬼畜ぅ。ご主人が自分で前を触れないように腕を押さえた上で、キースの手を外そうともがくご主人を容赦なく責めている。
「やっ、イきたっ……触って」
「後ろだけでイけるだろう。言ったら触ってやるよ」
「やめっ、やあぁっ、おねがっ……いっ、ああぁーーっ!」
わあ、ご主人初めて後ろだけでイったみたい。日に日にキース好みに開発されてる。ちなみに初夜はクスリが入ってたのでノーカンだ。
「で、なんでだ?」
「や、うごか、ないでっ、ああぁっ!」
「くっ、言うまで何度でもイけ」
「まっ、とまっ、いうからっ、やあぁっ!」
「一度出すぞっ」
「やあっ、だめっ、あああーーーーっ!」
イってるご主人を責め立てて、キースも中に出した。いつもよりだいぶ早いのは、キースもご主人に煽られているんだろうな。
「それで、なんでだ?」
「……」
「フレデリク?」
キースはいつもはフレッドと呼ぶのに、ベッドの上でだけ、フレデリクと呼んでいる。
動くのを止めて、ご主人に理由を聞いているが、多分言うまでいじめられるから、ご主人早く白状しちゃいなよ。結果は一緒だよ。
「……っ、ふたりでえらんだ、はっ、あたらしいベッドだから」
まだ呼吸の整わない荒い息でご主人が白状したのは、とっても可愛い理由だった。ご主人、めっちゃ乙女!オ・ト・メ!!
あー、これはきっと、キースのハートを射抜いたね。
「やああぁぁっ!!」
「フレデリク、今日は寝れると思うなよ」
「まっ、んあぁっ、あっ、あぁん、ああーーーーーーっ!」
キースが煽られて、頑張り始めちゃった。そうなるよねー、分かる分かる。今夜もオレの出番がありそうだな。
でも、きっと王宮でのあれこれは、これで忘れられたよね。
ご主人が、キースを新しいベッドに誘った日以来、ふたりはご主人の新しいベッドで一緒に寝ている。
ぐふふな日もあるし、ただ一緒に寝るだけの日もあって、そういうときは、オレもご主人の部屋に置かれた特注ベッドで寝ている。
キースは昨日から依頼で隣街の近くの森へ魔物の素材を取りに行っているので、ご主人はお屋敷に戻っていて、オレはご主人のベッドに潜り込んでいる。
ご主人、キースがいなくて寂しそうだから、こんな時はオレのこのサラサラの毛の出番だ。
「キリ、巻き込んでごめん」
何に?と思ったら、明日の王子様とのお茶会のことみたいだ。
あれはそもそも、オレがご主人の友人もどきを威嚇したことから始まっているし、権力には勝てないので、仕方がない。
王子様は威嚇しないほうがよかったかなと思うけど、でも明日同じことがあったら、やっぱり威嚇すると思う。あんまりやるとご主人に迷惑がかかりそうだから控えめに。
それに、オレが治癒魔法使えなかったら、そもそも王宮に行くことがなかったんだから、ご主人は悪くないよ。
「キリ、ありがとう」
どういたしまして。こちらこそ養ってもらってありがとう。
ご主人の胸元に丸まって眠った。
お茶会@王宮の庭です。オレはご主人とお揃いの黒と緑のリボンだ。
最近ご主人は黒をベースにしたリボンばかりしている。もちろんキースがせっせと贈っているのだ。キースの独占欲が見え見えで、とてもいい。
今日のものは衣装と一緒にお母さんが用意したものだけど、きっと最近のご主人が着けているものを見て決めたのだろう。
「イタチがショコラが好きだと聞いたが、イヌやネコはショコラを食べると中毒を起こすらしい。イタチは大丈夫なのか?」
「キリくん、前に食べていたけど大丈夫だった?」
あ、やっぱりダメなんだ。でもオレは、毒なくなれって思って食べたから平気だよ。
「キリ、そうまでして食べたいのか?」
「何と言っているのだ」
「……解毒して食べているようです」
「キリくん……」
「治癒魔法のまさかの使い方だな」
みんなに信じられないものを見る目で見られているけど、だって美味しいんだもん。
その言葉に問題ないと思ったのか、執事さんがオレの前に、ショコラとクッキーを置いてくれた。
今日は、ご主人のすぐ横に置かれたオレ用の高い椅子に座っている。よくある子供用の椅子の豪華版。オレが食べやすいようにと、ショコラもクッキーもプチサイズだ。さすが王宮、ありがとう。
ショコラもクッキーも美味しい。特にこのナッツが入ったクッキー美味しい。うまうま。
「日頃、食事はどうしているのだ?」
「侯爵家の料理人に、薄味で作らせています」
「フレデリクは下町に冒険者と暮らしているのだろう?」
「母が毎日届けさせています」
あ、王子様にまで同棲がバレてる。まあそうだよね、それくらい調査済みだよね。
ご主人が固まってる。あはは、最近こういうの多いね。そろそろちょっとは慣れようね。
「実はフレデリクを私の正妃にという話があった」
「殿下」
「貴族への復籍を断った時点でなくなったから安心しろ。まあでも、私と仲良くしていて損はないと思うぞ」
「フレデリクに貴族の社交は無理です。殿下、どうかご容赦を」
やっぱりこの王子様は敵だな。威嚇はしないけど、愛想は振りまかないぞ。
ところで、執事さん、クッキーのお替りはないですか?
優秀な執事さんは、オレがクッキー欲しいなあ、と執事さんを見ていたら、気付いて近づいてきてくれた。
お皿と執事さんを交互に眺めていたら、オレの言いたいことに気付いてくれて、どのクッキーがお気に召しましたか?と全種類を並べて聞いてくれた。おもてなしの極意を見たね。
ナッツが入ったクッキーとショコラを綺麗に盛り付けてくれたので、お礼を込めて、執事さんの手袋をした手に鼻先で触れて、治癒の力を流しこんだ。
グエッ。
「キリっ!!」
え、なんで、いきなり執事さんに片手で掴まれたんだけど。待って、お腹を強く押さないで。
王子様の後ろの護衛も剣を抜いてるし、オレなんかした?!
「お待ちください!キリには攻撃魔法は使えません。攻撃する意図はなかったはずです」
え、攻撃って何?治癒魔法って攻撃できるの?
何かよく分からないけど、オレ疑われてるみたいなので、大人しくお腹を掴まれていよう。
オレに抵抗の意志がないと分かったのか、執事さんが解放してくれたので、とりあえずご主人の腕の中に逃げ込む。ご主人怖かったよー。
「イタチは何をしたのかな。魔法が発動した気配にライノが反応したようだが」
「キリ?」
執事さんが腰を痛めてるようだから、クッキーのお礼に治癒したのに。もうちょっとで食べたクッキーが出ちゃうところだったじゃない!
「ライノ様に治癒を行ったようです。申し訳ございません」
「恥ずかしながら、痛めておりました腰が、完治しております」
「イタチ、他人に無断で治癒をかけるな。善意であってもトラブルを引き起こす」
「キリ、王宮では魔法の使用は禁止されている。斬られても仕方がないんだ。教えてなくてごめん」
むう。でもオレが悪いから謝っておこう。ごめんなさい。
「殿下、申し訳ございません。きちんと王宮のルールを話しておくべきでした。謁見の間で治癒魔法の披露がありましたので、王宮での魔法の禁止を伝えておりませんでした。処分はいかようにもお受けいたします」
「使役獣は主人の命令なく魔法を使わないと思い込んで、その可能性を見落とした我々も迂闊だった。ライノも治ったようだし、この件は不問に処す」
よかった。俺の思い付きの行動でお兄さんたちにまで迷惑がかかるところだった。本当にごめんなさい。
オレはご主人のジャケットの中に潜り込んで、そこで丸くなった。
「キリ、怒ってないから機嫌を直して出てきて」
「キリくん、顔を見せてくれないかな。怪我はしてない?」
「イタチ、ライノがお礼にクッキーをたくさん盛ってくれているぞ」
ご主人の脇に籠城していたら、心配されてしまったし、クッキーで釣られてる。
怪我はしてないけど、これ以上なんかやらかしてご主人に迷惑をかけるのが怖いから、帰るまでご主人の服の中に居たいの。もう二度と王宮には来ないぞ。
「申し訳ございません。これ以上粗相をしないようにと隠れているようです」
オレのことは忘れてください。
ご主人の服の中は暖かくて安心するので、そこでウトウトしていたら、団体様が近づいてくる足音がした。
もうこれ以上トラブルは嫌なんだけど。
「ちょっとな。家に帰っていた」
「こっちに来てよかったのか?」
「キリに美味しいものを食べさせるために行っただけだ。夕食を貰って来た」
キースがめっちゃ警戒してる。分かるよ、お母さんの手配でまたなんか入ってるかもしれないもんね。でも入っててもいいじゃん。今日はご主人を甘やかしてあげてよ。
なんか疲れてないか?と聞かれても、ご主人は王子様とのことは話さなかった。キースには前に話しているし、話すほどのことでもないと思ったのか。
媚薬なら多分オレが解毒できるから食べようよと提案して、侯爵家のご飯を美味しく食べた。
診断の魔法で見えるのかどうかわからないけど、料理には何も入ってなさそうだった。でも入ってるのが媚薬なら、オレの魔法はオレの気持ちを汲んで毒判定しない気もするから、実際のところは分からないな。
「キース、その、新しいベッドの寝心地を、確かめてみないか?」
寝る準備をしていた時に、ご主人が勇気を出してキースを誘った。
ご主人が自分から誘うのは初めてだ。ご主人、やればできる子!めっちゃ遠回しだけど、問題なし!
「疲れてるんじゃないのか?王城で何かあったのか?」
「特には。いや、昔の友人に会ったが」
「何か言われたのか?」
「いや」
「もう王城には行くな」
「第二王子殿下に近いうちに誘われると思う」
ええっ、あれ行かなきゃいけないの?オレ行きたくないんだけど。というかご主人を行かせたくないんだけど。
キースも、それは仕方ないなと言っているし、くっ、権力に負けた。ここはやっぱりオレが教皇になるべきか。
ふと気づくと、ご主人がキースの部屋着の袖の裾をちょっとだけ掴んでる。ずきゅん。これはやられた。可愛い。
これはキースもやられるだろうと思ったら、案の定、ちょっと下を向いてしまったご主人の頬に手を添えようとしたのか、腕を動かそうとして気付き、ちょっと目を見張った。
オレはリビングにいるから、ご主人のことよろしく!
ということで、本日も音声のみでお伝えてしていきます。
「んっ、はっ、いいっ、あっ」
「今日のは媚薬は入ってないんだろう?自分で誘って興奮したのか?」
「ああっ、あっ、ちがっ」
「じゃあなんでいつもより感じてんだ?」
「やあぁっ、やめっ、はなしてっ」
「ほら、言えよ。言ったらイかせてやる」
「やああっ!」
キースの鬼畜ぅ。ご主人が自分で前を触れないように腕を押さえた上で、キースの手を外そうともがくご主人を容赦なく責めている。
「やっ、イきたっ……触って」
「後ろだけでイけるだろう。言ったら触ってやるよ」
「やめっ、やあぁっ、おねがっ……いっ、ああぁーーっ!」
わあ、ご主人初めて後ろだけでイったみたい。日に日にキース好みに開発されてる。ちなみに初夜はクスリが入ってたのでノーカンだ。
「で、なんでだ?」
「や、うごか、ないでっ、ああぁっ!」
「くっ、言うまで何度でもイけ」
「まっ、とまっ、いうからっ、やあぁっ!」
「一度出すぞっ」
「やあっ、だめっ、あああーーーーっ!」
イってるご主人を責め立てて、キースも中に出した。いつもよりだいぶ早いのは、キースもご主人に煽られているんだろうな。
「それで、なんでだ?」
「……」
「フレデリク?」
キースはいつもはフレッドと呼ぶのに、ベッドの上でだけ、フレデリクと呼んでいる。
動くのを止めて、ご主人に理由を聞いているが、多分言うまでいじめられるから、ご主人早く白状しちゃいなよ。結果は一緒だよ。
「……っ、ふたりでえらんだ、はっ、あたらしいベッドだから」
まだ呼吸の整わない荒い息でご主人が白状したのは、とっても可愛い理由だった。ご主人、めっちゃ乙女!オ・ト・メ!!
あー、これはきっと、キースのハートを射抜いたね。
「やああぁぁっ!!」
「フレデリク、今日は寝れると思うなよ」
「まっ、んあぁっ、あっ、あぁん、ああーーーーーーっ!」
キースが煽られて、頑張り始めちゃった。そうなるよねー、分かる分かる。今夜もオレの出番がありそうだな。
でも、きっと王宮でのあれこれは、これで忘れられたよね。
ご主人が、キースを新しいベッドに誘った日以来、ふたりはご主人の新しいベッドで一緒に寝ている。
ぐふふな日もあるし、ただ一緒に寝るだけの日もあって、そういうときは、オレもご主人の部屋に置かれた特注ベッドで寝ている。
キースは昨日から依頼で隣街の近くの森へ魔物の素材を取りに行っているので、ご主人はお屋敷に戻っていて、オレはご主人のベッドに潜り込んでいる。
ご主人、キースがいなくて寂しそうだから、こんな時はオレのこのサラサラの毛の出番だ。
「キリ、巻き込んでごめん」
何に?と思ったら、明日の王子様とのお茶会のことみたいだ。
あれはそもそも、オレがご主人の友人もどきを威嚇したことから始まっているし、権力には勝てないので、仕方がない。
王子様は威嚇しないほうがよかったかなと思うけど、でも明日同じことがあったら、やっぱり威嚇すると思う。あんまりやるとご主人に迷惑がかかりそうだから控えめに。
それに、オレが治癒魔法使えなかったら、そもそも王宮に行くことがなかったんだから、ご主人は悪くないよ。
「キリ、ありがとう」
どういたしまして。こちらこそ養ってもらってありがとう。
ご主人の胸元に丸まって眠った。
お茶会@王宮の庭です。オレはご主人とお揃いの黒と緑のリボンだ。
最近ご主人は黒をベースにしたリボンばかりしている。もちろんキースがせっせと贈っているのだ。キースの独占欲が見え見えで、とてもいい。
今日のものは衣装と一緒にお母さんが用意したものだけど、きっと最近のご主人が着けているものを見て決めたのだろう。
「イタチがショコラが好きだと聞いたが、イヌやネコはショコラを食べると中毒を起こすらしい。イタチは大丈夫なのか?」
「キリくん、前に食べていたけど大丈夫だった?」
あ、やっぱりダメなんだ。でもオレは、毒なくなれって思って食べたから平気だよ。
「キリ、そうまでして食べたいのか?」
「何と言っているのだ」
「……解毒して食べているようです」
「キリくん……」
「治癒魔法のまさかの使い方だな」
みんなに信じられないものを見る目で見られているけど、だって美味しいんだもん。
その言葉に問題ないと思ったのか、執事さんがオレの前に、ショコラとクッキーを置いてくれた。
今日は、ご主人のすぐ横に置かれたオレ用の高い椅子に座っている。よくある子供用の椅子の豪華版。オレが食べやすいようにと、ショコラもクッキーもプチサイズだ。さすが王宮、ありがとう。
ショコラもクッキーも美味しい。特にこのナッツが入ったクッキー美味しい。うまうま。
「日頃、食事はどうしているのだ?」
「侯爵家の料理人に、薄味で作らせています」
「フレデリクは下町に冒険者と暮らしているのだろう?」
「母が毎日届けさせています」
あ、王子様にまで同棲がバレてる。まあそうだよね、それくらい調査済みだよね。
ご主人が固まってる。あはは、最近こういうの多いね。そろそろちょっとは慣れようね。
「実はフレデリクを私の正妃にという話があった」
「殿下」
「貴族への復籍を断った時点でなくなったから安心しろ。まあでも、私と仲良くしていて損はないと思うぞ」
「フレデリクに貴族の社交は無理です。殿下、どうかご容赦を」
やっぱりこの王子様は敵だな。威嚇はしないけど、愛想は振りまかないぞ。
ところで、執事さん、クッキーのお替りはないですか?
優秀な執事さんは、オレがクッキー欲しいなあ、と執事さんを見ていたら、気付いて近づいてきてくれた。
お皿と執事さんを交互に眺めていたら、オレの言いたいことに気付いてくれて、どのクッキーがお気に召しましたか?と全種類を並べて聞いてくれた。おもてなしの極意を見たね。
ナッツが入ったクッキーとショコラを綺麗に盛り付けてくれたので、お礼を込めて、執事さんの手袋をした手に鼻先で触れて、治癒の力を流しこんだ。
グエッ。
「キリっ!!」
え、なんで、いきなり執事さんに片手で掴まれたんだけど。待って、お腹を強く押さないで。
王子様の後ろの護衛も剣を抜いてるし、オレなんかした?!
「お待ちください!キリには攻撃魔法は使えません。攻撃する意図はなかったはずです」
え、攻撃って何?治癒魔法って攻撃できるの?
何かよく分からないけど、オレ疑われてるみたいなので、大人しくお腹を掴まれていよう。
オレに抵抗の意志がないと分かったのか、執事さんが解放してくれたので、とりあえずご主人の腕の中に逃げ込む。ご主人怖かったよー。
「イタチは何をしたのかな。魔法が発動した気配にライノが反応したようだが」
「キリ?」
執事さんが腰を痛めてるようだから、クッキーのお礼に治癒したのに。もうちょっとで食べたクッキーが出ちゃうところだったじゃない!
「ライノ様に治癒を行ったようです。申し訳ございません」
「恥ずかしながら、痛めておりました腰が、完治しております」
「イタチ、他人に無断で治癒をかけるな。善意であってもトラブルを引き起こす」
「キリ、王宮では魔法の使用は禁止されている。斬られても仕方がないんだ。教えてなくてごめん」
むう。でもオレが悪いから謝っておこう。ごめんなさい。
「殿下、申し訳ございません。きちんと王宮のルールを話しておくべきでした。謁見の間で治癒魔法の披露がありましたので、王宮での魔法の禁止を伝えておりませんでした。処分はいかようにもお受けいたします」
「使役獣は主人の命令なく魔法を使わないと思い込んで、その可能性を見落とした我々も迂闊だった。ライノも治ったようだし、この件は不問に処す」
よかった。俺の思い付きの行動でお兄さんたちにまで迷惑がかかるところだった。本当にごめんなさい。
オレはご主人のジャケットの中に潜り込んで、そこで丸くなった。
「キリ、怒ってないから機嫌を直して出てきて」
「キリくん、顔を見せてくれないかな。怪我はしてない?」
「イタチ、ライノがお礼にクッキーをたくさん盛ってくれているぞ」
ご主人の脇に籠城していたら、心配されてしまったし、クッキーで釣られてる。
怪我はしてないけど、これ以上なんかやらかしてご主人に迷惑をかけるのが怖いから、帰るまでご主人の服の中に居たいの。もう二度と王宮には来ないぞ。
「申し訳ございません。これ以上粗相をしないようにと隠れているようです」
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ご主人の服の中は暖かくて安心するので、そこでウトウトしていたら、団体様が近づいてくる足音がした。
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