オコジョに転生したので、可愛い飼い主の夜を覗いてます

犬派だんぜん

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ミリアル王国帰還編

3. 一斉討伐でオレ大活躍

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 やってきました。一斉討伐の日です。
 オレは5人分働かないといけないから、張り切って行こう!

「キリくん、後方は私に任せなさい」

 姫、頼もしいね。よろしく。

 姫は、治癒魔法を飛ばす練習も兼ねて、少し前から辺境に来ている。オレみたいに豊富に魔力があるわけじゃないから、一日に何度も練習できない。なので、辺境で治癒の料金をもらいながら、ワザとちょっと離れて治癒を飛ばして回復させるという練習の仕方をしている。
 ここの冒険者、なんだかんだと治癒術師に優しいから、姫がなんかワガママ言ってるけど仕方ないなって感じで練習に付き合っている。今回の一斉討伐では無駄な魔力を使わないように飛ばさないけどね。


 一斉討伐は、森の浅いところに後方支援のキャンプ地を作って、そこから森の奥へ向けて、20人くらいのグループで進んでいく。
 オレたちは一番奥まで行くグループに入っていて、リーダーはデレマッチョだ。去年までは、最強って言われててオレが原因で追放されたアルディラがリーダーを務めてたんだけど、いなくなって次は誰がやるかってなったときに、全員メンドクサイって辞退した。仕方がないので、リーダーやったらジルを撫でてもいいぞと、キュリアンがデレマッチョに押し付けたのだ。

 そんなこんなで、ジルはデレマッチョが連れている。
 オレは、ご主人が剣も使うかもしれないので、防御魔法中心のリュードにバッグごと預けられている。

「イタチ、腹壊したのはもういいのか?いいもん食い過ぎたんだろ?気をつけろよ」
「そうだぞ。長生きしてくれ」

 いや、オレはお腹壊したわけじゃないし、お前らはオレの治癒能力が惜しいだけだろ。リュードが苦笑している。

「うちのリーダーが『キリちゃんが大変なのに討伐なんか行ってられない』って使い物にならなかったから、もう倒れないでくれな」
「ウィラーはいい加減自分の使役獣を持ったらどうなんだ」
「そもそも動物全般逃げられるんだよ」

 いるよね、そういうヤツ。しつこくもしないし、嫌がることもしてないのに、なんでか嫌われちゃうヤツ。心優しきマッチョなのにな。


 1日目は森を進んで、開けたところで野営だ。
 え、戦闘はどうだったかって?そんなの、斬った、魔法撃った、魔物が倒された、くらいしかないよ。まだ森の浅いところだし、オレ戦闘しないから、よく分からないもん。人数もいるから、危ないときは誰かがカバーに入って大きな怪我もしなかったしね。

「ジルくん、今日はいっぱい魔物を倒して偉かったね」
「ワフッ」

 デレマッチョが猫なで声でジルに話しかけて、撫でまわしている。みんなまたやってるよと思いながらも、リーダーを押し付けたので生暖かく見守っている。
 一斉討伐中、ジルとオレへのおやつはギルドによって禁止されているので、撫でるだけだ。おやつの有り無しで治癒の順番が変わったとかそういう面倒が起きないように、ギルドが先手を打ったのだ。まあ、たくさんのおやつが集まって、またオレが倒れたら困るっていうのが本音みたいだけど。

「ウィラー、これジルのメシ。お前からやってくれ」
「ウォフウォッフ!」
「ありがとう。ジルくん、はいはい、おまたせしました。どうぞ、たくさん食べてね」

 ジルがデレマッチョの手から干し肉を貰ってバクバク食べている。それを見守るデレマッチョの顔が、おまわりさーん、って言いたくなるくらいデレデレだ。
 仕方がない、オレもデレマッチョからもらうことにするか。みんながやりたくないリーダー頑張ってくれているから、ご褒美がないとね。ご主人、よろしく。

「ウィラー、キリのご飯もあげてくれ」
「いいのか、ありがとう。キリくん、お腹が痛くならないように、ゆっくり食べようね」

 はーい、ゆっくり食べますよー。
 だから、一斉討伐が終わったらオレにもご褒美でショコラ下さい。1個くらいなら大丈夫だから!


 それからも討伐は順調に進んだ。森の奥に向かって、出会った魔物をバッサバッサ倒して進む。
 オレがいるんだもん、怪我をしても後方支援の姫のところまで戻らなくていいし、魔力切れもオレが回復させちゃうしね。ちゃんと5人分以上の仕事してるよね。だから、ショコラ1個下さい!

 そして、予定の地点までかなり早くに到達し、大物もたくさん倒して、引き返すにはまだ早いからと森の奥を他のグループがいるだろう方向に進んでいる時、ジルの耳が人の足音をとらえた。かなり慌てて3人走ってきているという。

「3人?どういうことだ。まさか他は全滅したのか?」
「イタチに助けを求めに来たのかもしれないぞ」
「分かれるのは危険だ。全員で足音のほうに向かおう」

 おそらく何か非常事態が起きたのだと判断して、ジルを先頭に全員で走ってくる人の方向へ進んでいくことになった。それなりに森の深いところなので、少人数で行動するのは危険だ。
 走っているとオレの耳にも足音が聞こえるようになってきたが、何かに追われているという感じではないので、おそらく俺たちのグループを探しているのだろう。
 そして、人にも足音が聞こえるようになったところで、デレマッチョが声をかけた。

「どうした!俺たちは最奥に向かったグループだ!俺たちを探しているのか!?」
「助かった!俺たちのグループが大物にあたった。応援を頼む!」

 かなりの大物に出会ってしまって、自分たちだけでは無理だと判断したリーダーの命令で、応援を呼ぶために本体から分かれた3人らしい。
 走って来て疲れている彼らをおいて、本体へと合流するために先を急ぐ。だいたいの方角を聞いたので、それなりに近くまで行けばジルが分かるという判断だ。
 そして先頭を走るジルが本体の戦闘している場所を感じ取ったが、人間の血の匂いがするらしい。オレには全然分からないのに、オオカミの嗅覚凄いな。

「ジルが人の血の匂いがすると言っている」
「ジルくん、キリちゃんを連れて先に行ってくれ」

 デレマッチョのその言葉に、オレはリュードが持つバッグから出されてジルの背中に乗せられた。

 キリ、つかまった?行くよ。
 ああ。行ってくれ。

 ばびゅーんとロケットスタートをきったジルのハーネスにオレは必死でしがみつく。ジルの遊びじゃない本気モードに乗るのは初めてだけど、リードで繋がってないから、離したら落ちちゃう。そういえばオレ、ジェットコースター苦手だった!
 前足はジルのハーネスに引っ掛け、後ろ足はジルの背中を挟むように、全身を使ってひっついているが、そろそろ落ちてしまう。そう思い始めた頃に、オレの鼻にも血の匂いが分かるようになった。これけっこうヤバいぞ。

 更に近づき、大きな魔物が暴れたために木が倒されてぽっかりと開けたところに見えたのは、ドラゴンだった。
 え、もしかしてオレがフラグ立てた?石の痛みで死にそうだって思ったときに、会いたいって思ったせい?!でもオレが会いたかったのは、もっと知性のある高位の存在って感じのドラゴンだったのに。
 こいつはところどころ腐ってる骨が見えているし、全体的にドロドロで、瘴気をまとっているグロテスクなドラゴンだ。気持ち悪い!こんな邪竜みたいなのなんて会いたくなかった。

 かなりヤバそうな感じで強く漂う血の匂いに、とりあえずドラゴンと対峙している冒険者のいるあたり向けて、治癒魔法の大盤振る舞いだ。怪我の回復、魔力の回復、ついでに軽く浄化もつけて、えいっ。

 わああ!
 えいってジルから手を離したら、当たり前だけど、ジルの背中から落ちた。ゴロゴロ転がって、木の根元にぶつかって止まったけど、痛いよう。

 キリ!大丈夫?
 大丈夫じゃないけど、大丈夫。それより、ドシンドシン足音がしてる気がするんだけど、もしかしてドラゴンがこっちに向かってきてない?気のせい??

 オレが落ちたことに気付いたジルが引き返してきてくれたけど、その向こうからドラゴンが迫ってきているような気がする。
 それはオレの臆病さが見せた幻ではなかったようで、ジルがオレの首を咥えて、ドラゴンから離れるようにご主人たちのほうへ走り出した。そんなオレたちをドラゴンが追ってくる。もしかして、オレたちロックオンされた?
 やだよ。オレちっちゃいから食べても美味しくないよーー。ご主人、助けてーーー!

「ワイバーンが来るぞ!散開しろ!」
「ジル、こっちだ!」

 リュードの声にジルが、首をぶんと振って、咥えていたオレを放り投げた。オレが、オレ自身が、放物線を描いてリュードのところへ飛んでいく。ひゃーーー!めっちゃ飛んでるーーー!!
 リュードがオレをキャッチして、バッグに押し込んだ。
 ヤダ、もうヤダ。ドラゴンも、空飛ぶのもヤダ!ドラゴンが倒されるまでオレはバッグの中から出ないから!治癒魔法欲しい人は自己申告してください!

 それから、オレたちのグループを呼びに来た3人と、オレが回復させたグループ本体の冒険者も加わって、ご主人を筆頭に魔法使いが魔法をガンガン撃って、剣士が尻尾とか身体の末端を切り刻んでいき、最後は風魔法をまとったジルが体当たりして、ドラゴンは倒された、らしい。
 グロいドラゴンを見たくないオレは、バッグの中からドラゴンにまで届かないように、味方がいるあたりに傷と魔力の回復魔法を適当にばら撒いていたので、実際の戦闘は見ていない。

「キリくん、終わったよ」
「キリ、終わったから出ておいで」

 ヤダよ。ドラゴン見たくないから、あれを燃やしてからにしてよ。オレは戦闘には向かない慈愛のオコジョだもん。

「キリ、あれはドラゴンじゃなくて、ワイバーンだよ。それより怪我人の治癒をしてほしいから出てきて」

 出たくないけど、5人分働かないといけないから、仕方がない。とりあえずご主人の首に巻き付いて、ドラゴン、あらため、ワイバーンは見ないようにしておこう。
 え、待って、あれがワイバーンってことは、オレの入ってるバッグ、アイツの皮?!
 ご主人に聞いたら、あのワイバーンは瘴気を浴びてゾンビっぽくなっているだけで、普通のワイバーンはあんなにグロテスクではないらしい。よかった。アイツからとった皮だって言われたら、せっかくお母さんがオレのために作ってくれたバッグだけど、もう入れなくなるところだったよ。

 それからオレは、最初にワイバーンと戦っていたところに倒れている冒険者のところへと連れて行かれた。
 そこには最初にオレが適当に放った治癒魔法でとりあえず止血はされたけど、瀕死を脱しただけでまだ起き上がることのできない血まみれの冒険者が2人いた。
 はいはい、キリ先生が治しますよ。彼らをなるべく見ないようにして上級魔法を使って、さらに診断の魔法で容態を確認した。うん、もう大丈夫。
 幸いにも瘴気は最初に投げた軽い浄化で充分だったようだ。魔法で攻撃されていたから、そこまで瘴気を浴びなかったらしい。
 無事に治癒できてホッとしたところで、急激な眠気に襲われたオレは、ご主人の首に巻き付いたまま眠ってしまった。
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