オコジョに転生したので、可愛い飼い主の夜を覗いてます

犬派だんぜん

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ミリアル王国帰還編

7. オレのお嫁さん?

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「殿下がお嫁さんを紹介してくれるそうだ」

 え、お嫁さん?誰の?
 ご主人にはキースというちょっと鬼畜だけど最愛の人がいるよ、と思ったら、なんとジルと俺のお嫁さんだった。
 お嫁さん、それ美味しいの?って感じのジルの反応はさておき、オレのお嫁さんって、やっぱりイタチだよね?

「3日後に王宮の獣舎で会うことになったから、キリくん、楽しみにしていてね」

 いやいやいやいやいや、オレ、イタチのお嫁さんもらうの?
 でも冷静に考えて、人間のお嫁さんを貰っても困るし、やっぱりイタチなのか。そうなのか。

 このお見合い、オレの治癒能力を引き継ぐ子供が欲しいという王様の発案だそうだ。
 オレのために野生のイタチを捕まえてきているらしい。ジルのためには国内のフォレストウルフをテイムしている貴族に声をかけたそうだけど、イタチをテイムしている人なんて、冒険者を含めてご主人以外に聞いたことないからね。

 うーん、お嫁さん。全く想像できない。
 考え込んでしまったオレを、嫌なのかとご主人が心配しているけど、そうじゃなくて、自分のこととして考えられないだけだ。それに、王様発案だと断るのはあんまりよくないよね。
 なんだかよく分かっていないジルは、3日後にもここに来て肉がもらえると分かって、喜んでいる。よし、オレもそれくらいの気持ちでいよう。


 さて、お見合いの日がやってきました。
 本日はご主人とお揃いのリボンでおめかしです。ハーネスはお見合い相手に警戒されるといけないから、今日はなしだ。

 獣舎に行くと、イタチがたくさんいた。イタチに会うのは、あの巣穴を出て以来初めてだ。大きさも色合いもおかあさんと同じだから、やっぱりオレはオコジョじゃなくてイタチなんだろう。オレの兄弟たちは元気かな?この中にいても兄弟って気づけないけど。
 でもみんなオレより大きいんだけど、オレ成獣になったんじゃなかったの?

―坊や、どうしたの?坊やも人間に捕まっちゃったの?
―違うよ。オレは人間の使役獣なんだ。
―まあ、恐ろしい。人間は怖いわよ。逃げなさい。
―ご主人は優しいよ。
―私たち、こうやって捕まって檻に入れられているのよ。しかもメスだけ。
―あのね、それね、オレのお嫁さんを探すためなんだ。ごめんね。
―まあ、坊やのお嫁さん?坊やにはまだ早いわよ。
―もうちょっと大きくなってからね。

 どうしましょう。オレ、子供だと思って相手にされないんだけど。
 いや、オレも相手に出来ないけどさ。こうやって会ってみて分かったけど、オレの恋愛対象はイタチじゃない。ついでにオレの息子くんも仕事をしそうにない。
 かといって人間が恋愛対象かと言われると、それも違う。エマさんとか姫とか可愛いなと思うけど、恋愛はできそうにない。できても体の大きさが違いすぎてどうにもならないけどさ。

 それにちょっと待って、オレの息子くんって、初仕事まだじゃない?あれ?あれれ?
 ご主人とキースのむふふで楽しんでるけど、それはなんというか、映画やスポーツを見るような娯楽というか。
 待って待って、オレまだ子どもなだけだよね?まさかこのままオレの息子くんは働かないままニートで一生を終えるとかじゃないよね?!
 確かに生まれ変わってもう働きたくないって思ったけど、息子くんは働こうよ!!

 落ち込んでしまったオレを、イタチのお姉さんたちが慰めてくれるけど、ほんとに子どもとしか見られていないのが分かってさらに落ち込んだ。


「キリ、上手くいかなかったの?何かあった?」

 見られていると恥ずかしいからってお願いして、オレのお見合いはだれも見てないところで行われた。
 ある程度時間もたってそろそろいいだろうって頃に、どうなったかご主人たちが見に来たので、ご主人に泣きついた。

 ご主人、子どもとしか見られなかったよー。オレの息子くんが仕事しないんだけど、一生このままかなあ。ふえーん。

「キリくん、どうしたって?」
「兄上、子どもとしてしか見られなかったと泣いています。あと、キリの息子が一生仕事をしない、と言っていますが、メスに相手にされなかったのに子どもとは、どういうことでしょう?」
「フレッド、キリの名誉のためにそれ以上言ってやるな」

 キースが止めてくれたけど、オレが不能だってご主人が公表しちゃった。みんなに可哀そうな子って目で見られてる。
 お兄さん、ご主人がひどいよ!うわーん!

 王宮に冒険者だけで向かわせるわけにはいかないからとついてきてくれたお兄さんに、ご主人の腕から飛び移った。
 よしよし、うちの弟がごめんねって優しく撫でてくれるけど、キリくんのライフはもうゼロなので、帰りたいです。
 でもこの後は、王子様とお茶会なのだ。まだ帰れないよう。しくしく。

 オレとは別のところでお見合いしていたジルを待って、お茶会の会場へ移動だ。
 獣舎の人に連れられてきたジルも合流したけど、ジルが上機嫌だ。メスがたくさん寄って来たよってルンルンしている。

「キリくん、申し訳ないんだけど、ジルの通訳してくれるかな?とっても楽しかったみたいなんだけど」
「ジルはメスたちにモテたらしい」
「ええ、集まったフォレストウルフのメスすべてと交尾をしました」

 お前、据え膳全部喰ったのか?!
 オオカミってハーレム作らないんじゃなかったっけ?
 ジルの裏切りものーー!

 リュードは唖然としているし、キュリアンも半笑いだ。
 まさかジルがそんなちゃっかりしているとはみんな思っていなかったよ。バ可愛いだけじゃなくて、お前は文字通りオオカミだったのか。
 魔法が使えて強いジルは、メスたちから見ると有望株だったようだ。獣の世界では強いは正義なんだな。
 ってことはオレダメじゃん。ますます落ち込むよ。

「集められたイタチは一回りは身体が大きかったようですので、彼はまだ子どもなのではないでしょうか」
「1年たてば普通は成獣だろう?キリくんは魔法が使えるから違うのかな」
「王宮ではイタチを飼育していませんので、実際は分かりませんが、他の動物を見るとだいたい1年で成獣ですね」
「キリくん、来年またお見合いをお願いしよう。だから元気出して」

 獣舎の人にまで心配されちゃった。
 治癒魔法と引き換えに、オレの息子くんはニートを決め込んじゃったのかな。ぐすん。
 それとも人間の成長と同じ時間がかかるんだろうか。だったら先が長いなあ。


 3日前にもお茶会をした庭に行くと、執事さんがすでに俺たちの肉を用意してくれていた。
 ジルは執事さんを見つけるなり、ダッシュで駆け寄って行った。

「ジル様、お手、おかわり、ハイタッチ、スパッ」

 ジルは高速エアお手おかわりハイタッチをして、執事さんの言葉よりも先にコロンとしてる。
 執事さんが苦笑しながら、どうぞと肉を勧め、リュードが頷くのを見てから、ジルはバクバクと肉を食べ始めた。3日前にジルが一番気にいったビーフジャーキーみたいなのが山盛りで出されてる。
 なんでこいつがモテて、オレがモテないんだ。解せぬ。

「キリくん、ドライフルーツとお肉をもらおう?美味しいものを食べたら、辛いことも忘れられるよ」
「……キッ」

 いじけてお兄さんの首に巻き付いていたら、お兄さんが心配して食事を勧めてくれた。
 ちくしょう。やけ食いしてやる。
 執事さん、生ハムとショコラを山ほど下さい。

「キリ、ダメ。お腹痛くなっちゃうから、ショコラはダメ。お肉山盛りもダメだよ」
「フレデリク、今日くらいはいいだろう。こんなに落ち込んでいるんだし」
「しかし兄上、また痛くなってしまったらキリが可哀そうです」
「今日だけならそこまで影響はないだろう。それに解毒魔法も使えるし、万が一痛くなっても命にはかかわらないんだろう?教会も近いんだし。ライノ殿、少し大目に出してやってもらえますか?」
「かしこまりました。キリ様お気に入りのショコラもご用意いたします」

 お兄さん、ありがとう!執事さん、ありがとう!
 それから、王子様が来て、結果の報告を聞いているのを視界の端で見ながら、オレは生ハムとショコラ、そしてドライフルーツとナッツ入りのクッキーを心行くまで味わった。うまうま。
 キリくん、美味しいものを食べて幸せ。

 そうだよ、飼いオコジョを目指すっていうオレの当初の目的を忘れるところだった。危ない危ない。
 オレはみんなに可愛がられてぐーたらしたいのであって、ハーレムの王になりたいわけじゃないから、息子くんがニートでも問題ないや。
 働いたら負けって言うし、ご主人たちに一生養ってもらうなら、息子くんの働きっぷりは関係ないよね!

 お色気担当はご主人に任せるから、キースと頑張って励んでね。
 オレはしっかり観察させてもらうよ。うひひ。




 後の王宮では、報告を聞いた王が残念がっていた。

「イタチの繁殖は失敗だったのか」
「はい。メスからは子どもだと相手にされなかったようです」
「ウルフのほうはどうだ」
「全てのメスと交尾したそうなので、何頭かは期待が持てるのではないかと」
「あのイタチはまだ子どもなのか?」
「飼育員によると、年齢的には成獣しているはずですが、あの身体の大きさは子どもだと。オスとしての機能もまだ未発達なようです」
「ということは、いずれは繁殖が期待できるのか?」
「ハルキスは来年また挑戦しようと言っていたようです」

 もし治癒魔法を持つイタチを王家で繁殖させられれば、教会に頼らずともよくなる上に、他国への貸し出しなど国家間の政治にも使えると思ったのだが、やはりそう上手くはいかないか。
 魔法を使う使役獣同士を掛け合わせると、魔法を使える子どもが生まれやすいのではないかと言われているが、まだそれほど例も多くないため、詳しくは分かっていない。あのウルフの子ができたとなれば、そのあたりの研究も進むだろう。

「宰相、騎士団に使役獣を持つものを集めた部隊を作ってみるのはどうか」
「冒険者のように戦闘目的の使役獣を飼育するのですか。獣舎のものに検討させましょう」
「あのイタチのように、希少な魔法を使えるものが出てくるかもしれない」

 今は移動の手段となる馬などしか飼育されていないが、戦闘を行う動物を育てて使役してみるのもいいかもしれない。
 貴族たちの使役獣は愛玩目的で繁殖させられたもので野生ではないが、あのウルフとの間にどのような子ができるか、楽しみだ。
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