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7. 他人の修羅場ってワクワクするよね *
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王様が来た理由は、オレの実態を聞きたいのもあったけど、妹さんがしたことへの謝罪もあったみたいだい。王様だからそこははっきり言わなかったけど、知能が高いオレは察したよ。
ご主人にも希望があれば貴族への復籍を叶えると言った。除籍したのもある意味被害者なわけだし、ご主人が騎士になればオレも一緒にっていう目論見もあったんだろうけど、ご主人は断った。
偉い人がみんな帰って、部屋にはご主人とお父さんとキースとエマさんだけになった。
この部屋はご主人とオレが使わせてもらっていて、キースは騎士団の宿舎にいる。キースはオレの護衛としていたけど、そこら中に騎士が立っている王宮内で護衛は必要なく、けれどキースも教会に襲われた当事者だから放り出せず、落としどころがそこだった。なので、お父さんがキースに会うのは初めてだ。
「フレデリク、彼を紹介してくれるかな」
「はい、父上、私が冒険者になった当初からいろいろと助けてくれて、今はよく一緒に依頼を受けている、剣士のキースです」
「彼があの襲撃の夜、宿に泊まると連絡を寄越した冒険者かな」
「そうです。キース、私の父のヒラリク侯爵です」
「初めまして。冒険者のキースです」
お父さんはキースをじっと眺めた後、おもむろに切り出した。
「キース、私はね、たしかに力及ばず息子を貴族籍から抜いたけど、でも親子の縁を切った訳じゃないんだ。除籍したのは公爵家から息子を守るためであって、どこの馬の骨ともつかない男にやるためではないんだよ」
まさかまさかの修羅場。シュ・ラ・バ!ワクワクしてきた!
部屋の隅にいたエマさんがそっと出て行った。聞かないほうがいいと判断したんだろう、使用人の鑑だ。
ご主人は突然の展開にオロオロしている。
さあ、キース、どう答える?!
「確かに私は孤児院出身ですのでどこの馬の骨か知れませんが、フレッドが冒険者に登録してからずっと彼を見てきました。不慣れな環境に戸惑う彼を助けてきたつもりです」
「冒険者がフレデリクを養っていけるとでも?この子は貴族として育ったんだよ」
「育ちや教養の違いを感じることがありますので、それは重々承知しています。それでも、彼を幸せにしたいという想いは、身分に関係ないものではありませんか?フレッドはもう守られているだけの子どもではありません。自分で稼いでいける冒険者です」
「この子は弱いところがあるから大切に大切に育てていたのに、外に出さなきゃいけなくなって、そうしたら横からかっさらって行かれるなんて、許せるわけないだろう!」
「父上、そういう話はお酒でも飲みながらしましょうね。あからさまにお互いの髪の色のリボンで主張してるふたりに何を言っても無駄ですよ。反対すれば余計に燃え上がるのが恋の炎です」
いいタイミングでお兄さん来た。王宮でお仕事してるから、ときどきお部屋に来てくれるんだよね。
「それで陛下も復籍を断念されたというのもあるんだろうから怒るに怒れないけどね、でもね、親の行き場のない気持ちって言うのがあるんだよ!」
ああ、復籍ってそういうことか。王家の誰かと結婚させて取り込みたかったのか。
リボンを指摘されて、ご主人が真っ赤になっている。
お父さん、今度ヤケ酒に付き合うよ。花婿の父は辛いね。
「侯爵様、私はフレッドと、フレデリクと一緒に歩いて行きたいのです。彼もそう願ってくれています。我々の想いを認めていただけませんでしょうか」
「許さん!」
出た!息子さんを僕に下さい!ここは許さんって怒るのがセオリーだよね。パパ、ナイス!
「父上、私からもお願いします。ずっと侯爵家の支援を受けている身で勝手なことは承知しておりますが、私はキースと共に歩んでいきたいのです。お願いします」
「父上、フレデリクは自分の足で立って、歩く道を見つけたのです。応援してあげましょう」
お兄さんのアシスト来たー。これはお父さんが折れるしかないパターンだ。
結局修羅場は、息子が可愛くて仕方がないお父さんが、息子の幸せのために怒りを飲みこんで、終わった。
お兄さんに、なんでキリくんが興奮してるのって言われたけど、オレの中の野次馬が全力疾走したからだよ。いい走りだった。
それから1か月ほど、教会が落ち着くまではと言われ、オレたちは王宮に滞在した。
2度目の魔力切れでなかなか許可が下りなかったオレも、騎士団の医務室での治癒に復帰し、ご主人も騎士団の訓練に参加させてもらった。
キースはすでに騎士団の宿舎を出て冒険者の仕事に復帰したけど、宿舎にいる間は騎士団の訓練に参加させてもらったようで、いい勉強になったと言っていた。ご主人はそれに刺激を受けたのだろう。
もともと騎士団に入るのを目標にしていたのに、こんな形で参加するのは複雑な思いがあるんじゃないかと心配したけど、もう吹っ切れているそうだ。キースと気持ちが通じ合ったから人生バラ色なのかも。
王宮の滞在が終わっても、オレたちはしばらく騎士団に通う。なんと教会から治癒魔法を教えてもらえることになったのだ。
次にトップになった人は、教会の方針に反対して辺境の小さな教会で細々と治癒魔法を使っていた人だそうで、今まで秘伝とされていた治癒魔法を積極的に公開している。
人じゃなくても使用者が増えるのは大歓迎ということで、でもオレに何かあると困るので、騎士団の目があるところで教わることになった。
教会と言えばぼったくられるところと人々に認識されているので、それを変えていくのは容易ではないだろうけど、頑張ってほしい。
王宮を出て、ご主人は真っ先に侯爵家に帰った。
お父さんとお兄さんには会っていたけど、お母さんは無事なご主人を見ていない。まずはお母さんに無事な顔を見せようと思ったのだ。
けれど、帰ってきた息子を見て、お母さんがダメ出しをした。
「貴方、王宮からまっすぐここに帰ってきたの?そんなことをしていては恋人に振られるわよ」
あ、ご主人が固まった。
「まったく。キリくんは置いて行ってもいいわよ。うちでちゃんと面倒をみますからね」
「い、いえ、キリは連れて行きます。母上、あの、また帰ってきてもいいですか?」
「ここは貴方の家よ。許可なんていらないわ。次はキースさんを連れていらっしゃい」
そっとご主人の頬に触れたお母さんの微笑みがとても優しくて、オレまで心がとても温かくなった。
お父さんには反対されたような、あれは相手が誰でも反対するような、まあ微妙な感じだけど、お母さんは応援してくれてるんだ。よかったね。
「お前、明日じゃなかったのか。家はいいのか?」
「……母上に、一番に実家に帰るようでは振られると言われてしまった」
少し下を向いて恥ずかしそうに告げるご主人に、キースがハートを撃ち抜かれた。分かる!今のご主人、可愛かった!
ご主人はそんなことには気づかず、持ってきたバスケットを見せて、食事を持ってきたから食べようとキースを誘った。
「多分こっちに帰ってくると思ったから、食事を用意させたの。持って行ってキースさんと食べなさい」と、お母さんが渡してくれたバスケットだ。
お母さんグッジョブ。バスケットがなかったらご主人がぺろりと食べられてたね。
キースは王都に小さな家を借りた。
今までずっと宿で暮らしていたけど、それだと同じ依頼を受けないとすれ違ってしまうので、一緒に住む家を借りたのだ。キースもご主人も冒険者としては腕がいいのでけっこう稼いでいて、特に使うあてもないので貯まっていたようだ。
ご主人も半分払うと言っているが、キースはここじゃなくても家があるんだから払わなくていいけど、でもここに住んでくれと言っていて、この議論は平行線だ。きっとキースは自分だけでご主人を養っていけると、侯爵家に見せたいのだろう。
家具などはこれからふたりで少しずつ揃えていくことにしていて、備え付けのもの以外はまだ用意していない。それでも生活できるくらいには揃っている。
食事を終えて、キースが部屋を案内しているが、2LDKなので、すぐに終わってしまった。LDKは共通で使って、2部屋をはそれぞれ個人専用にするようだ。
「こっちにオレのベッドを入れてしまったから、こっちがオレの部屋でいいか?」
「構わない」
「じゃあ明日、フレッドのベッドも買いに行こう」
「ああ」
部屋の中をきょろきょろと見ていたご主人の顎を持って自分のほうに向かせて顔を寄せ、今日は一緒でいいよな?と意味ありげにささやいた。顎クイきたーーー!
途端に真っ赤になって目を泳がせるご主人にキースが口付け、そのまま深くなっていく。
「あれ以来触れられなくて飢えてんだ。覚悟しろよ」
「んっ、はぁ」
合間にキースがオレをチラッと見た。はいはい、お邪魔虫は消えますよ。
リビングに行くと、大きな藤の籠に柔らかい毛布が敷いてあるものがあった。オレのベッドだな。キース、やるな。
本日も別室より、音声のみでお伝えしています。
「まって、やっ、あぁっ」
「オイル使ってるから、前回より楽だろう?」
「あぁぁっ……、だめっ、なんっか、ちがうっ……ああっ」
「何が違うんだ」
「こんな、っああ、しらな、ああぁっ!」
ご主人、めっちゃよがってる。これはキースの腕がいいのか、ご主人の感度がいいのか、それともオイルが媚薬入りか?
「フレデリク、そんなにイったら、最後までもたないぞ」
「やあぁあぁぁっ、そこ、だ、めぇぇっ!」
「ここか」
「ああぁ……っ!」
「今日はやけに敏感だな。新居に興奮してるのか?」
「っひ、まって、おね、が……い」
「待たない。入れるぞ」
ご主人さっきから何度もイってる。一応ご両親に認められたし、これ実質、初夜か!それは盛り上がるね!
「ああぁぁっ!」
「くっ!」
「いやぁあぁ、うごかないで、まっ、あぁぁ……っ!」
「イきすぎだっ」
「あっ、やあっ、ああっ、んぁ」
ご主人はキースの腰の動きに合わせて、喘ぐ以外何もできないでいる。ご主人の反応の良さに、キースもここぞとばかり責め続けて、息があがってる。
「そこっ、いやっ、あっ、ああっ」
「そういうとき、何て言うんだった」
「あっ、きもち……ひっ……いいっ、きもちいいからっ、まっ、てっ」
「待ってじゃない、もっとだっ」
「ああっ、そこっ、だめっ、あっ、もっとっ、もっとぉ」
「いいぞっ」
「ああっ、きもち……いいっ、もっとっ、だめっ、もっと、やぁっ」
「中がうねってる」
「まっ、なんかくるっ、だめっ、やあぁ、きちゃう、こわいっ、やだ、だめ、だめっ、あああああーーーーーーっ!!」
「くっ!」
「ぁぁーーぁ……あああぁぁ!」
ご主人、初めてドライでイったのに、なお責め立てるキース、鬼畜。いいぞ、もっとやれ!
「フレデリク、好きだ」
「ああーーーぁっあぁ!」
「んっ」
「あぁぁ……ぁ……」
「っ!」
「ぁ……ぁぁ……ぁ…………」
結局ご主人が気を失うまで、キースは何度も体勢を変えて、責め続けた。
終わってからものすごく申し訳なさそうな顔をしたキースが来たので、無視しようかと思っていたけど、助けてあげよう。初夜だしね。
ご主人の頬を舐めて、治癒の力を流し入れた。泣きすぎて瞼が腫れそうな目の周りと、喘ぎすぎて枯れそうな声と、ちょっと切れちゃってるところとね。
後は明日。多分足腰立たないだろうけど、それも新婚のだいご味だよね。
ってことで、邪魔者は退散します。たたたっと自分のベッドに帰って丸くなった。
明日起きたら、ご主人はキースに怒るだろうな。怒って、それで、キースに甘々のご主人は許しちゃうんだろうな。
冒険者をしているときはキリっとしていてカッコいいのに、家族とキースの前ではポンコツなところが漏れ出てしまうご主人は、オレから見るととても可愛い。
オコジョに転生したら、可愛い飼い主が出来ました。
ご主人にも希望があれば貴族への復籍を叶えると言った。除籍したのもある意味被害者なわけだし、ご主人が騎士になればオレも一緒にっていう目論見もあったんだろうけど、ご主人は断った。
偉い人がみんな帰って、部屋にはご主人とお父さんとキースとエマさんだけになった。
この部屋はご主人とオレが使わせてもらっていて、キースは騎士団の宿舎にいる。キースはオレの護衛としていたけど、そこら中に騎士が立っている王宮内で護衛は必要なく、けれどキースも教会に襲われた当事者だから放り出せず、落としどころがそこだった。なので、お父さんがキースに会うのは初めてだ。
「フレデリク、彼を紹介してくれるかな」
「はい、父上、私が冒険者になった当初からいろいろと助けてくれて、今はよく一緒に依頼を受けている、剣士のキースです」
「彼があの襲撃の夜、宿に泊まると連絡を寄越した冒険者かな」
「そうです。キース、私の父のヒラリク侯爵です」
「初めまして。冒険者のキースです」
お父さんはキースをじっと眺めた後、おもむろに切り出した。
「キース、私はね、たしかに力及ばず息子を貴族籍から抜いたけど、でも親子の縁を切った訳じゃないんだ。除籍したのは公爵家から息子を守るためであって、どこの馬の骨ともつかない男にやるためではないんだよ」
まさかまさかの修羅場。シュ・ラ・バ!ワクワクしてきた!
部屋の隅にいたエマさんがそっと出て行った。聞かないほうがいいと判断したんだろう、使用人の鑑だ。
ご主人は突然の展開にオロオロしている。
さあ、キース、どう答える?!
「確かに私は孤児院出身ですのでどこの馬の骨か知れませんが、フレッドが冒険者に登録してからずっと彼を見てきました。不慣れな環境に戸惑う彼を助けてきたつもりです」
「冒険者がフレデリクを養っていけるとでも?この子は貴族として育ったんだよ」
「育ちや教養の違いを感じることがありますので、それは重々承知しています。それでも、彼を幸せにしたいという想いは、身分に関係ないものではありませんか?フレッドはもう守られているだけの子どもではありません。自分で稼いでいける冒険者です」
「この子は弱いところがあるから大切に大切に育てていたのに、外に出さなきゃいけなくなって、そうしたら横からかっさらって行かれるなんて、許せるわけないだろう!」
「父上、そういう話はお酒でも飲みながらしましょうね。あからさまにお互いの髪の色のリボンで主張してるふたりに何を言っても無駄ですよ。反対すれば余計に燃え上がるのが恋の炎です」
いいタイミングでお兄さん来た。王宮でお仕事してるから、ときどきお部屋に来てくれるんだよね。
「それで陛下も復籍を断念されたというのもあるんだろうから怒るに怒れないけどね、でもね、親の行き場のない気持ちって言うのがあるんだよ!」
ああ、復籍ってそういうことか。王家の誰かと結婚させて取り込みたかったのか。
リボンを指摘されて、ご主人が真っ赤になっている。
お父さん、今度ヤケ酒に付き合うよ。花婿の父は辛いね。
「侯爵様、私はフレッドと、フレデリクと一緒に歩いて行きたいのです。彼もそう願ってくれています。我々の想いを認めていただけませんでしょうか」
「許さん!」
出た!息子さんを僕に下さい!ここは許さんって怒るのがセオリーだよね。パパ、ナイス!
「父上、私からもお願いします。ずっと侯爵家の支援を受けている身で勝手なことは承知しておりますが、私はキースと共に歩んでいきたいのです。お願いします」
「父上、フレデリクは自分の足で立って、歩く道を見つけたのです。応援してあげましょう」
お兄さんのアシスト来たー。これはお父さんが折れるしかないパターンだ。
結局修羅場は、息子が可愛くて仕方がないお父さんが、息子の幸せのために怒りを飲みこんで、終わった。
お兄さんに、なんでキリくんが興奮してるのって言われたけど、オレの中の野次馬が全力疾走したからだよ。いい走りだった。
それから1か月ほど、教会が落ち着くまではと言われ、オレたちは王宮に滞在した。
2度目の魔力切れでなかなか許可が下りなかったオレも、騎士団の医務室での治癒に復帰し、ご主人も騎士団の訓練に参加させてもらった。
キースはすでに騎士団の宿舎を出て冒険者の仕事に復帰したけど、宿舎にいる間は騎士団の訓練に参加させてもらったようで、いい勉強になったと言っていた。ご主人はそれに刺激を受けたのだろう。
もともと騎士団に入るのを目標にしていたのに、こんな形で参加するのは複雑な思いがあるんじゃないかと心配したけど、もう吹っ切れているそうだ。キースと気持ちが通じ合ったから人生バラ色なのかも。
王宮の滞在が終わっても、オレたちはしばらく騎士団に通う。なんと教会から治癒魔法を教えてもらえることになったのだ。
次にトップになった人は、教会の方針に反対して辺境の小さな教会で細々と治癒魔法を使っていた人だそうで、今まで秘伝とされていた治癒魔法を積極的に公開している。
人じゃなくても使用者が増えるのは大歓迎ということで、でもオレに何かあると困るので、騎士団の目があるところで教わることになった。
教会と言えばぼったくられるところと人々に認識されているので、それを変えていくのは容易ではないだろうけど、頑張ってほしい。
王宮を出て、ご主人は真っ先に侯爵家に帰った。
お父さんとお兄さんには会っていたけど、お母さんは無事なご主人を見ていない。まずはお母さんに無事な顔を見せようと思ったのだ。
けれど、帰ってきた息子を見て、お母さんがダメ出しをした。
「貴方、王宮からまっすぐここに帰ってきたの?そんなことをしていては恋人に振られるわよ」
あ、ご主人が固まった。
「まったく。キリくんは置いて行ってもいいわよ。うちでちゃんと面倒をみますからね」
「い、いえ、キリは連れて行きます。母上、あの、また帰ってきてもいいですか?」
「ここは貴方の家よ。許可なんていらないわ。次はキースさんを連れていらっしゃい」
そっとご主人の頬に触れたお母さんの微笑みがとても優しくて、オレまで心がとても温かくなった。
お父さんには反対されたような、あれは相手が誰でも反対するような、まあ微妙な感じだけど、お母さんは応援してくれてるんだ。よかったね。
「お前、明日じゃなかったのか。家はいいのか?」
「……母上に、一番に実家に帰るようでは振られると言われてしまった」
少し下を向いて恥ずかしそうに告げるご主人に、キースがハートを撃ち抜かれた。分かる!今のご主人、可愛かった!
ご主人はそんなことには気づかず、持ってきたバスケットを見せて、食事を持ってきたから食べようとキースを誘った。
「多分こっちに帰ってくると思ったから、食事を用意させたの。持って行ってキースさんと食べなさい」と、お母さんが渡してくれたバスケットだ。
お母さんグッジョブ。バスケットがなかったらご主人がぺろりと食べられてたね。
キースは王都に小さな家を借りた。
今までずっと宿で暮らしていたけど、それだと同じ依頼を受けないとすれ違ってしまうので、一緒に住む家を借りたのだ。キースもご主人も冒険者としては腕がいいのでけっこう稼いでいて、特に使うあてもないので貯まっていたようだ。
ご主人も半分払うと言っているが、キースはここじゃなくても家があるんだから払わなくていいけど、でもここに住んでくれと言っていて、この議論は平行線だ。きっとキースは自分だけでご主人を養っていけると、侯爵家に見せたいのだろう。
家具などはこれからふたりで少しずつ揃えていくことにしていて、備え付けのもの以外はまだ用意していない。それでも生活できるくらいには揃っている。
食事を終えて、キースが部屋を案内しているが、2LDKなので、すぐに終わってしまった。LDKは共通で使って、2部屋をはそれぞれ個人専用にするようだ。
「こっちにオレのベッドを入れてしまったから、こっちがオレの部屋でいいか?」
「構わない」
「じゃあ明日、フレッドのベッドも買いに行こう」
「ああ」
部屋の中をきょろきょろと見ていたご主人の顎を持って自分のほうに向かせて顔を寄せ、今日は一緒でいいよな?と意味ありげにささやいた。顎クイきたーーー!
途端に真っ赤になって目を泳がせるご主人にキースが口付け、そのまま深くなっていく。
「あれ以来触れられなくて飢えてんだ。覚悟しろよ」
「んっ、はぁ」
合間にキースがオレをチラッと見た。はいはい、お邪魔虫は消えますよ。
リビングに行くと、大きな藤の籠に柔らかい毛布が敷いてあるものがあった。オレのベッドだな。キース、やるな。
本日も別室より、音声のみでお伝えしています。
「まって、やっ、あぁっ」
「オイル使ってるから、前回より楽だろう?」
「あぁぁっ……、だめっ、なんっか、ちがうっ……ああっ」
「何が違うんだ」
「こんな、っああ、しらな、ああぁっ!」
ご主人、めっちゃよがってる。これはキースの腕がいいのか、ご主人の感度がいいのか、それともオイルが媚薬入りか?
「フレデリク、そんなにイったら、最後までもたないぞ」
「やあぁあぁぁっ、そこ、だ、めぇぇっ!」
「ここか」
「ああぁ……っ!」
「今日はやけに敏感だな。新居に興奮してるのか?」
「っひ、まって、おね、が……い」
「待たない。入れるぞ」
ご主人さっきから何度もイってる。一応ご両親に認められたし、これ実質、初夜か!それは盛り上がるね!
「ああぁぁっ!」
「くっ!」
「いやぁあぁ、うごかないで、まっ、あぁぁ……っ!」
「イきすぎだっ」
「あっ、やあっ、ああっ、んぁ」
ご主人はキースの腰の動きに合わせて、喘ぐ以外何もできないでいる。ご主人の反応の良さに、キースもここぞとばかり責め続けて、息があがってる。
「そこっ、いやっ、あっ、ああっ」
「そういうとき、何て言うんだった」
「あっ、きもち……ひっ……いいっ、きもちいいからっ、まっ、てっ」
「待ってじゃない、もっとだっ」
「ああっ、そこっ、だめっ、あっ、もっとっ、もっとぉ」
「いいぞっ」
「ああっ、きもち……いいっ、もっとっ、だめっ、もっと、やぁっ」
「中がうねってる」
「まっ、なんかくるっ、だめっ、やあぁ、きちゃう、こわいっ、やだ、だめ、だめっ、あああああーーーーーーっ!!」
「くっ!」
「ぁぁーーぁ……あああぁぁ!」
ご主人、初めてドライでイったのに、なお責め立てるキース、鬼畜。いいぞ、もっとやれ!
「フレデリク、好きだ」
「ああーーーぁっあぁ!」
「んっ」
「あぁぁ……ぁ……」
「っ!」
「ぁ……ぁぁ……ぁ…………」
結局ご主人が気を失うまで、キースは何度も体勢を変えて、責め続けた。
終わってからものすごく申し訳なさそうな顔をしたキースが来たので、無視しようかと思っていたけど、助けてあげよう。初夜だしね。
ご主人の頬を舐めて、治癒の力を流し入れた。泣きすぎて瞼が腫れそうな目の周りと、喘ぎすぎて枯れそうな声と、ちょっと切れちゃってるところとね。
後は明日。多分足腰立たないだろうけど、それも新婚のだいご味だよね。
ってことで、邪魔者は退散します。たたたっと自分のベッドに帰って丸くなった。
明日起きたら、ご主人はキースに怒るだろうな。怒って、それで、キースに甘々のご主人は許しちゃうんだろうな。
冒険者をしているときはキリっとしていてカッコいいのに、家族とキースの前ではポンコツなところが漏れ出てしまうご主人は、オレから見るととても可愛い。
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フレデリクとキースのカラミも最高でした。
続編も今から読んできます!
この小説すっごくよきでした₍ᐢ⸝⸝› ̫ ‹⸝⸝ᐢ₎
まなしゃん様
お返事遅くなりまして申し訳ございません。
すっごくうれしいです♪ありがとうございます。
続編もお楽しみください!