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本編
17話・彼の部屋で(燈子)
トイレに駆け込んで勢いよく戻した彼は吐いたら少しスッキリしたようだったが、そのままトイレにうなだれるようにして息をついた。
「――ぉえ……」
「大丈夫ですか?」
その背中がしんどそうで。気持ち悪いものを全部出してあげたいという思いで背中をさすさすと撫でた。
「っ……は、ぅっ――」
もう胃液しか出ないんじゃないかというような辛そうな嗚咽に背中を撫でてあげることしかできない。
(何もしてあげられないな……かわいそう、どうしよう、出せるなら全部出した方がいいよね)
「高宮さん……大丈夫?」
広くて骨ばった背中を何度も撫でる。だんだん背中に熱が帯びているのが分かる。もしかして熱がある?体調も悪かった?不調があったところにあんな強いお酒を飲まさせてしまったのだろうか。考えれば考えるほど申し訳なくなってせめて私に出来ることはないか、そればかりが頭の中をめぐっていた。
「しんどい?なにか、欲しいものとかないですか?してほしいこととか……私で何か役に立てることありますか?」
そばにいた私の膝に手が触れて、それが背中をさするのはもういいというサインだとわかった。
「――タオル……洗面から取ってきてもらっていいですか?」
「あ、待ってくださいね」
トイレを出てきょろっと室内を見渡せば脱衣所らしい場所はすぐにわかった。暗い部屋の中をそこだけ目指してかけられていたフェイスタオルを取ってくる。トイレに戻ると壁にもたれて空を仰いでいる彼がいた。
「タオルです」
「――あ、すいませ……」
受け取って口を拭う姿をそばで見つめた。顔色は吐く前よりはマシかな、そんなくらいでとても良くなったとは思えない。とてもしんどそうだ、その辛そうに瞳を閉じる青白い横顔を見つめながら不謹慎にも思う。
(――俳優みたいに雰囲気のある人だな……)
なにかの撮影現場にいるのだろうか、そんなわけないのはわかっているのに空を仰ぐ横顔が、スッと通る鼻筋が、伏せられるまつげのどれもが色っぽくて様になりすぎていてただ見とれてしまいそうになる。
「大丈夫、ですか?」
「……はぁー、なんとか」
「た、立てます?」
「……ぅー、なんとか」
そういう割に立つ気配はないし、多分無理だろうと判断して自然と手が体を支えた。
「ずっとトイレにもいれないでしょう?とりあえず横になれるところに移って体休ませてあげてください。掴まってください」
そう言ったら彼のトロンとした瞳に見つめられてパッと視線を反らした。
(無理、至近距離無理すぎる)
「――すいません」
少しためらいを見せていた彼だけど素直に手を私の体に回してくる。その行動にドキリとした自分を一括した。
(ち、ちがうちがう、これは介抱、救助、勘違いするな私!自分から言い出して勘違いするな!!)
シトラスの爽やかな香りが鼻をかすめた。それくらい彼の近くにいて触れ合っているという事実にドキドキしてしまうけど、とにかく気持ちを無心にして大きな体を寝室まで運んだ。
「――ぉえ……」
「大丈夫ですか?」
その背中がしんどそうで。気持ち悪いものを全部出してあげたいという思いで背中をさすさすと撫でた。
「っ……は、ぅっ――」
もう胃液しか出ないんじゃないかというような辛そうな嗚咽に背中を撫でてあげることしかできない。
(何もしてあげられないな……かわいそう、どうしよう、出せるなら全部出した方がいいよね)
「高宮さん……大丈夫?」
広くて骨ばった背中を何度も撫でる。だんだん背中に熱が帯びているのが分かる。もしかして熱がある?体調も悪かった?不調があったところにあんな強いお酒を飲まさせてしまったのだろうか。考えれば考えるほど申し訳なくなってせめて私に出来ることはないか、そればかりが頭の中をめぐっていた。
「しんどい?なにか、欲しいものとかないですか?してほしいこととか……私で何か役に立てることありますか?」
そばにいた私の膝に手が触れて、それが背中をさするのはもういいというサインだとわかった。
「――タオル……洗面から取ってきてもらっていいですか?」
「あ、待ってくださいね」
トイレを出てきょろっと室内を見渡せば脱衣所らしい場所はすぐにわかった。暗い部屋の中をそこだけ目指してかけられていたフェイスタオルを取ってくる。トイレに戻ると壁にもたれて空を仰いでいる彼がいた。
「タオルです」
「――あ、すいませ……」
受け取って口を拭う姿をそばで見つめた。顔色は吐く前よりはマシかな、そんなくらいでとても良くなったとは思えない。とてもしんどそうだ、その辛そうに瞳を閉じる青白い横顔を見つめながら不謹慎にも思う。
(――俳優みたいに雰囲気のある人だな……)
なにかの撮影現場にいるのだろうか、そんなわけないのはわかっているのに空を仰ぐ横顔が、スッと通る鼻筋が、伏せられるまつげのどれもが色っぽくて様になりすぎていてただ見とれてしまいそうになる。
「大丈夫、ですか?」
「……はぁー、なんとか」
「た、立てます?」
「……ぅー、なんとか」
そういう割に立つ気配はないし、多分無理だろうと判断して自然と手が体を支えた。
「ずっとトイレにもいれないでしょう?とりあえず横になれるところに移って体休ませてあげてください。掴まってください」
そう言ったら彼のトロンとした瞳に見つめられてパッと視線を反らした。
(無理、至近距離無理すぎる)
「――すいません」
少しためらいを見せていた彼だけど素直に手を私の体に回してくる。その行動にドキリとした自分を一括した。
(ち、ちがうちがう、これは介抱、救助、勘違いするな私!自分から言い出して勘違いするな!!)
シトラスの爽やかな香りが鼻をかすめた。それくらい彼の近くにいて触れ合っているという事実にドキドキしてしまうけど、とにかく気持ちを無心にして大きな体を寝室まで運んだ。
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