あの夜をもう一度~不器用なイケメンの重すぎる拗らせ愛~

sae

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本編

30話・終わらせたくないこと(高宮)

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 三杯目までは覚えていたが、これが何杯目になるのかもう記憶にない。

「もうやめとけ」
 久世にグラスを取られたがさすがにもう取り返す気にならなくなっていた。

「――酔えん」
「いや、絶対酔ってる」
「もういやだ、最悪。死にてー」
 机に突っ伏して本気で泣きそうになる俺に久世は呆れたように笑う。


「あの女……疫病神だわ。あれは!あの女に言ってんの!あの女に――くそっ」
「まぁ、タイミングは最悪だったな。逆に狙ったみたいじゃん、お前持ってるな」
「むしろないわ!見放されてる、もう終わってる、もー終わった」


 思い出しただけでも悔しくて頭が痛くなる。あのタイミングであのセリフをなぜ彼女の耳にいれないといけないのか。俺が彼女の立場なら間違いなく自分のことも同じように思っていると思うだろう。


 ―勘違いされるのが嫌
 ―めんどくさい
 ―期待もさせたくない
 ―わざわざ思わせぶりなこともしたくない


(見事に言ってるよな、自分で言ってて嫌になるわ)


「終わってないだろ、まだ」
「え?」
 久世の言葉に顔を上げると冷たい目で言われた。

「しっかり振られろ」


(―――そうなんだけど……言い方ぁ)


「お前、自分の気持ち何にも伝えてねぇじゃん。それが一番ダセーと思う」


(それを言われたら本気で辛い)


「さっさと振られて忘れろ、そんで終わり」


 彼女を傷つけている俺に嘆く権利なんかどこにもない。
 出来ることなら時計の針をあの日の朝に戻したかった。目覚めた朝にちゃんと彼女を追いかければよかった。追いかけてすれ違う気持ちをしっかりと擦り合わせていたらもっと違う今があった気がする。
 彼女をじゃない、自分が傷つきたくなかっただけだ。彼女を傷つけても、自分が傷つくことが嫌だった。その弱さが今の事態を招いている。


 ずっともう昔から、人に本気になって突き放されるのが怖い。だから踏み込まずに当たり障りのない関係だけを作って生きているのだ。それを彼女はちゃんと分かっていたのかもしれない、きっと、俺が本気で向き合わないだろうと悟っていたんだろう。そう思われても仕方ない、俺はもうずっとそうやって生きてきたんだから。

 愛想だけで、上辺だけの関係を作って人当たりの良さそうな人、彼女はきっと俺をそう見てる、そしてそれは何も間違いじゃない。


 俺のために忘れてほしいと言ったのだと、今になってようやく気づく。あれは、彼女の優しさと精一杯の強がりだったんだ。



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