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本編
44話・寂しさに寄り添えるように(燈子)
「え?」
振り向いた私はコンビニで買ってきてくれた歯ブラシをくわえていた。
「だから、どうしてあの時総務の子と話してたんですか?」
「あー、話してたというか……私が勝手に割り込んだだけです」
「どういうこと?」
眉を顰めた高宮さんに詰め寄られている。
「向こうが何か言ってきたわけじゃなくて?美山さんから口を挟んだってことですか?なんでわざわざそんなこと」
「……そのぉ」
先に洗っちゃっても?と歯ブラシを指さすと「あぁ、どうぞ」と促された。タオルを借りて口を拭きつつ言いたくないが聞かれた以上ごまかせないのでその時のことをフワ~っと解説した。
「たまたま居合わせたところに……その、いらっしゃって。お話を聞いてたら……そのなんか……違うんじゃないかなぁ~みたいなことをおっしゃってて、そのぉー」
チラリと彼を見ても、顰められた眉が直らない。全然納得してない、そんな顔だ。
「ハッキリ言っていいですよ。むしろハッキリ言いましょうか」
(怖い……笑ってるけど目が全然笑ってない)
「……高宮さんが勘違いしたら困るから距離をあけようかなって。出世に利用できるような子を選びそうだなんて酷いこと言うから……」
そんなことわざわざ耳に入れたくないし、聞いたら嫌な気にしかならない、傷つけるのではないかと心配して顔を見上げたら、「――フンっ」と、鼻で笑った。
「……怒らないんですか?」
「別に。美山さんがもう怒ってくれたじゃないですか」
(それは、そうだけど……あんなのが怒った内に入るのかは疑問なんだけど)
「どーでもいいですよ、どこで何言われたって。しかもあんな女に」
(あんな女……そんな言い方もするんだ)
「よくわかったでしょ?そんなもんなんですよ、俺なんか。チヤホヤされたって勝手に理想像作られて期待されて挙句それですよ。アホらしくなりません?うまくやってるつもりでも結局そんなんです。誰も、なんにも俺自身見てくれてる人なんかいないし、知らないところでそんな風に言われるんですよ」
遠い目でそんな風に言うから胸が締め付けられた。そう思う私の気持ちに気づいたのか困ったように笑って言う。
「慣れてるんで、大丈夫ですよ」
「……慣れないで、そんなことに」
その姿はまるで私と同じだ。
諦めやそれを受け入れることの寂しさを私は知っている。
悲しいことにも悔しいことにも平気だと受け入れる切なさは誰よりもわかる。
「……自分には言えないのに、人には言えちゃうんですね……」
私は背中からギュッと彼に抱きついた。
「美山さん?」
「そんな風に、自分のこと諦めないでください。高宮さんは素敵な人ですから」
そう言って抱きしめる腕に力を込める。
「ひとりで受け入れるのは楽だけど――寂しいです」
「――そうですね……じゃあ、これからは一緒に受け止めてくれますか?」
胸の前で組まれた手をそっと包みこまれて彼の優しい声がそんな風に言ってくるから――。
「……私でよかったら」
「あなたが寂しいときは、俺が抱きしめます」
囁かれる言葉ひとつひとつは私の心を満たして幸せにしていく。
彼の言ってくれる言葉にまた目頭が熱くなって、それを悟られないように背中にさらにくっついた。
「――はい」
きっと震えた声でバレている。それでも彼は何も言わずに私の手を握り返してくれたのだ。
+++++++++++++
本編完結~お付き合いありがとうございます!
番外編、もう少しお付き合いください^^
振り向いた私はコンビニで買ってきてくれた歯ブラシをくわえていた。
「だから、どうしてあの時総務の子と話してたんですか?」
「あー、話してたというか……私が勝手に割り込んだだけです」
「どういうこと?」
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「……そのぉ」
先に洗っちゃっても?と歯ブラシを指さすと「あぁ、どうぞ」と促された。タオルを借りて口を拭きつつ言いたくないが聞かれた以上ごまかせないのでその時のことをフワ~っと解説した。
「たまたま居合わせたところに……その、いらっしゃって。お話を聞いてたら……そのなんか……違うんじゃないかなぁ~みたいなことをおっしゃってて、そのぉー」
チラリと彼を見ても、顰められた眉が直らない。全然納得してない、そんな顔だ。
「ハッキリ言っていいですよ。むしろハッキリ言いましょうか」
(怖い……笑ってるけど目が全然笑ってない)
「……高宮さんが勘違いしたら困るから距離をあけようかなって。出世に利用できるような子を選びそうだなんて酷いこと言うから……」
そんなことわざわざ耳に入れたくないし、聞いたら嫌な気にしかならない、傷つけるのではないかと心配して顔を見上げたら、「――フンっ」と、鼻で笑った。
「……怒らないんですか?」
「別に。美山さんがもう怒ってくれたじゃないですか」
(それは、そうだけど……あんなのが怒った内に入るのかは疑問なんだけど)
「どーでもいいですよ、どこで何言われたって。しかもあんな女に」
(あんな女……そんな言い方もするんだ)
「よくわかったでしょ?そんなもんなんですよ、俺なんか。チヤホヤされたって勝手に理想像作られて期待されて挙句それですよ。アホらしくなりません?うまくやってるつもりでも結局そんなんです。誰も、なんにも俺自身見てくれてる人なんかいないし、知らないところでそんな風に言われるんですよ」
遠い目でそんな風に言うから胸が締め付けられた。そう思う私の気持ちに気づいたのか困ったように笑って言う。
「慣れてるんで、大丈夫ですよ」
「……慣れないで、そんなことに」
その姿はまるで私と同じだ。
諦めやそれを受け入れることの寂しさを私は知っている。
悲しいことにも悔しいことにも平気だと受け入れる切なさは誰よりもわかる。
「……自分には言えないのに、人には言えちゃうんですね……」
私は背中からギュッと彼に抱きついた。
「美山さん?」
「そんな風に、自分のこと諦めないでください。高宮さんは素敵な人ですから」
そう言って抱きしめる腕に力を込める。
「ひとりで受け入れるのは楽だけど――寂しいです」
「――そうですね……じゃあ、これからは一緒に受け止めてくれますか?」
胸の前で組まれた手をそっと包みこまれて彼の優しい声がそんな風に言ってくるから――。
「……私でよかったら」
「あなたが寂しいときは、俺が抱きしめます」
囁かれる言葉ひとつひとつは私の心を満たして幸せにしていく。
彼の言ってくれる言葉にまた目頭が熱くなって、それを悟られないように背中にさらにくっついた。
「――はい」
きっと震えた声でバレている。それでも彼は何も言わずに私の手を握り返してくれたのだ。
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