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第4話、申し訳ございません!
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ちょっと待ってくれ! ちょっと! 待って!
「い、いいわけないです! クリーニング代請求してください! お支払いします! 払わせてください!」
それだけでは足りない、クリーニング代を払うだけで足りる事ではない。
倒れて、ここまで運んでもらって、挙句抱きついて一緒にベッドに寝かせただと!?
(ありえない!)
「わ、私の気がすみません! なにか、ちゃんとお詫びをさせてください!」
「お詫び……?」
「とりあえず! 絶対に! クリーニング代は支払わせてください!」
「斑鳩さん」
頭を下げ続ける私の名前を呼ぶ白鹿さんの声に息を飲む。フッと目の前の空気が揺れて体がびくりと揺れた。揺れたのはベッドも揺れたからか。思わず顔をあげたらグイッと顎を持ち上げられて真正面から見つめられた。
「――っ!」
(は、白鹿さんの顔面……強っ!)
さすが白王子、やっぱり白王子! こんな間近で直視するのは当たり前に初めてだがイケメンに真っ直ぐ見つめられて心臓が止まりそうである。
「クマ……」
「……へ?」
「さっき眠ってる顔を見ていて思ったんですけど。クマがひどいなって」
「……」
「倒れてしまうほど眠れていないんですか?」
「……」
真っ直ぐ見つめて、真っ直ぐ聞いてくる白鹿さん。その瞳から言葉から視線を逸らすことが出来ない。
「寝言、言ってましたよ?」
「え」
「離しちゃいや、って。あれ可愛かったな」
「……」
もはや顔面蒼白。血の気は完全に引いた、もはや抜け落ちた。いろいろ詰んだ気がする。
「すすす、すみません。ねご、寝言です。とてもふざけた戯言の様な寝言です、すみません」
「それじゃあ甘えてお詫び、してもらおうかな」
またニコリ、白鹿さんの笑顔はいつだって爽やかで好感度が良くて甘くて優しくて……でもなんだろう。だんだんこの笑顔が怖い、なんだかさっきよりもずっと、なんだか……怖い。
「連絡をください」
意味不明な言葉と共に名刺を取り出してサラサラと何かを書いてらっしゃる白鹿さん。字がとても綺麗だ、と呑気に観察していたら目の前にシュッと名刺を渡された。
「え?」
「手書きは僕の個人的な番号です。IDはチャットアプリの……検索してください」
「え、あ……え?」
言われるがまま差し出される名刺を受け取った私の頬にそっと熱が触れてきて、それが白鹿さんの指先だとわかって固まった。頬を撫でる指の動きが優しい。そっと滑る様に頬を撫でて……言われた。
「受付に戻るなら、しっかりメイクは直した方がいいですね? では、連絡待ってます」
そう言い、指が離れたと思ったら不敵な笑みを浮かべて白鹿さんは医務室の扉から出て行った。
ベッドの上にひとり取り残された私は放心状態で、白鹿さんから渡された名刺を握りしめていた。
「い、いいわけないです! クリーニング代請求してください! お支払いします! 払わせてください!」
それだけでは足りない、クリーニング代を払うだけで足りる事ではない。
倒れて、ここまで運んでもらって、挙句抱きついて一緒にベッドに寝かせただと!?
(ありえない!)
「わ、私の気がすみません! なにか、ちゃんとお詫びをさせてください!」
「お詫び……?」
「とりあえず! 絶対に! クリーニング代は支払わせてください!」
「斑鳩さん」
頭を下げ続ける私の名前を呼ぶ白鹿さんの声に息を飲む。フッと目の前の空気が揺れて体がびくりと揺れた。揺れたのはベッドも揺れたからか。思わず顔をあげたらグイッと顎を持ち上げられて真正面から見つめられた。
「――っ!」
(は、白鹿さんの顔面……強っ!)
さすが白王子、やっぱり白王子! こんな間近で直視するのは当たり前に初めてだがイケメンに真っ直ぐ見つめられて心臓が止まりそうである。
「クマ……」
「……へ?」
「さっき眠ってる顔を見ていて思ったんですけど。クマがひどいなって」
「……」
「倒れてしまうほど眠れていないんですか?」
「……」
真っ直ぐ見つめて、真っ直ぐ聞いてくる白鹿さん。その瞳から言葉から視線を逸らすことが出来ない。
「寝言、言ってましたよ?」
「え」
「離しちゃいや、って。あれ可愛かったな」
「……」
もはや顔面蒼白。血の気は完全に引いた、もはや抜け落ちた。いろいろ詰んだ気がする。
「すすす、すみません。ねご、寝言です。とてもふざけた戯言の様な寝言です、すみません」
「それじゃあ甘えてお詫び、してもらおうかな」
またニコリ、白鹿さんの笑顔はいつだって爽やかで好感度が良くて甘くて優しくて……でもなんだろう。だんだんこの笑顔が怖い、なんだかさっきよりもずっと、なんだか……怖い。
「連絡をください」
意味不明な言葉と共に名刺を取り出してサラサラと何かを書いてらっしゃる白鹿さん。字がとても綺麗だ、と呑気に観察していたら目の前にシュッと名刺を渡された。
「え?」
「手書きは僕の個人的な番号です。IDはチャットアプリの……検索してください」
「え、あ……え?」
言われるがまま差し出される名刺を受け取った私の頬にそっと熱が触れてきて、それが白鹿さんの指先だとわかって固まった。頬を撫でる指の動きが優しい。そっと滑る様に頬を撫でて……言われた。
「受付に戻るなら、しっかりメイクは直した方がいいですね? では、連絡待ってます」
そう言い、指が離れたと思ったら不敵な笑みを浮かべて白鹿さんは医務室の扉から出て行った。
ベッドの上にひとり取り残された私は放心状態で、白鹿さんから渡された名刺を握りしめていた。
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