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第13話、ついていけない現実
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私は今自分の頭の中を整理できないのだ。だから少し待ってほしい。
「夢を応援するって甘い言葉で釣って、結局は使い捨て。努力させても最初から餌としか見られてない。人の信用と希望を担保にして、きっちり利益だけ回収していく会社……立派な詐欺じゃない?」
(待ってなに? 今これ白鹿さんが話してる? ええ?)
驚いて顔を見ると、白鹿さんはにっこり笑ったまま運ばれてきた食後の紅茶を優雅にすすっていた。
「しかもそいつ、粘着そうでタチも悪いね。嘘つき詐欺師がバレたら気持ち悪いストーカーに転向か……ゲスにも程がある」
(だから待って!)
「ああ、あの、白鹿さんっ!」
「……なにか?」
「な、なんか……口悪くないですか? 白鹿さんが? 白鹿さんなのに……」
思わずこぼした私の言葉に白鹿さんはニコッと微笑み、軽く首を傾げてきて逆に聞かれた。
「俺なのに? ああ、白王子の白鹿さんなら、もっと優しくて丁寧に話すのに? みたいな?」
「……」
(笑ってるのになんだろう……なんか、なんかぁ)
全然笑ってない感がすごい。
「でもそれ斑鳩さんの中の勝手な理想でしょ?」
口元だけ笑って、目が全く笑っていない白鹿さんがいる。
「斑鳩さんもそういう“見る目”だから、既婚者に騙されて、最悪ストーカーにまでなりさがるような奴に好かれるんだよ」
「……」
正論だ。わかってる、白鹿さんはなにひとつ間違えたことを言ってはいないと。わかっちゃいるがぁ!
「あ、あのぉ!」
私は気づいたら声を上げてしまっていた。
落ち着けー、とりあえず落ち着くんだ私! いつもの私、カムバック! 目の前にいる白鹿さんはいつも見ている通りの眉目秀麗、白王子だ。白……。
(どっこが白じゃーい!)
全然冷静になれない自分がいた。
「そうですけど……おっしゃるとおりなんですけどって、いや、例えそうでもそこまで言うことないじゃないですか! 確かに私に見る目はなかったけど、それをあっさり信じたのは私の落ち度ででもなんていうか私……ええ? でもそんな全部見抜くとか無理でしょ!?」
みんないろんな顔を持って生きている。親しくならないとわからないことばかり。親しくなったところで全てがわかるわけでもないのに……そんな思いを沸々と湧き上がらせてしまい言い返してしまった。
「わ、わかるわけないじゃないですか! すごく自然に出会っちゃって……何度か話をしたらだんだん好意を持つのだって誰でもなっちゃうものでしょ!? 指輪だってしてなかったし、既婚者なんて疑ったりします!?」
「だから信用しない方がいいし、確認する方法もある。どうしてそんな優良物件が独身なんだろうとか少しくらい疑っても良かったんじゃないかなと」
「そっ……」
「それよりも目先の欲が勝ったわけでしょう? そこが浅はかでしたね」
「おっ……」
(な、なにも言い返せない)
「それでもこれはさすがに男がクズすぎる。災難でしたね」
微笑む顔に哀れさが滲んで全く素直に受け取れない私がいる。とどのつまり……ムカつく!
(なんか、なんか白鹿さん思ってた人とちがうー!)
「……こ、これからは人を簡単に信用しないようにシマス……」
「それをオススメします」
「……」
カチャリ、と静かにカップを置いてにこやかに微笑む白鹿さん。いつも笑顔で優しくて、キラキラした白王子……その笑顔の下にはこんな顔を隠し持っていたのか。人を簡単に信じるなと笑顔で言う白鹿さんの言葉を心に刻み込む私。
(ええ! 私、あなたのことも絶対信用しません!)
私は、とんでもない人に悩みをこぼしてしまった。
「夢を応援するって甘い言葉で釣って、結局は使い捨て。努力させても最初から餌としか見られてない。人の信用と希望を担保にして、きっちり利益だけ回収していく会社……立派な詐欺じゃない?」
(待ってなに? 今これ白鹿さんが話してる? ええ?)
驚いて顔を見ると、白鹿さんはにっこり笑ったまま運ばれてきた食後の紅茶を優雅にすすっていた。
「しかもそいつ、粘着そうでタチも悪いね。嘘つき詐欺師がバレたら気持ち悪いストーカーに転向か……ゲスにも程がある」
(だから待って!)
「ああ、あの、白鹿さんっ!」
「……なにか?」
「な、なんか……口悪くないですか? 白鹿さんが? 白鹿さんなのに……」
思わずこぼした私の言葉に白鹿さんはニコッと微笑み、軽く首を傾げてきて逆に聞かれた。
「俺なのに? ああ、白王子の白鹿さんなら、もっと優しくて丁寧に話すのに? みたいな?」
「……」
(笑ってるのになんだろう……なんか、なんかぁ)
全然笑ってない感がすごい。
「でもそれ斑鳩さんの中の勝手な理想でしょ?」
口元だけ笑って、目が全く笑っていない白鹿さんがいる。
「斑鳩さんもそういう“見る目”だから、既婚者に騙されて、最悪ストーカーにまでなりさがるような奴に好かれるんだよ」
「……」
正論だ。わかってる、白鹿さんはなにひとつ間違えたことを言ってはいないと。わかっちゃいるがぁ!
「あ、あのぉ!」
私は気づいたら声を上げてしまっていた。
落ち着けー、とりあえず落ち着くんだ私! いつもの私、カムバック! 目の前にいる白鹿さんはいつも見ている通りの眉目秀麗、白王子だ。白……。
(どっこが白じゃーい!)
全然冷静になれない自分がいた。
「そうですけど……おっしゃるとおりなんですけどって、いや、例えそうでもそこまで言うことないじゃないですか! 確かに私に見る目はなかったけど、それをあっさり信じたのは私の落ち度ででもなんていうか私……ええ? でもそんな全部見抜くとか無理でしょ!?」
みんないろんな顔を持って生きている。親しくならないとわからないことばかり。親しくなったところで全てがわかるわけでもないのに……そんな思いを沸々と湧き上がらせてしまい言い返してしまった。
「わ、わかるわけないじゃないですか! すごく自然に出会っちゃって……何度か話をしたらだんだん好意を持つのだって誰でもなっちゃうものでしょ!? 指輪だってしてなかったし、既婚者なんて疑ったりします!?」
「だから信用しない方がいいし、確認する方法もある。どうしてそんな優良物件が独身なんだろうとか少しくらい疑っても良かったんじゃないかなと」
「そっ……」
「それよりも目先の欲が勝ったわけでしょう? そこが浅はかでしたね」
「おっ……」
(な、なにも言い返せない)
「それでもこれはさすがに男がクズすぎる。災難でしたね」
微笑む顔に哀れさが滲んで全く素直に受け取れない私がいる。とどのつまり……ムカつく!
(なんか、なんか白鹿さん思ってた人とちがうー!)
「……こ、これからは人を簡単に信用しないようにシマス……」
「それをオススメします」
「……」
カチャリ、と静かにカップを置いてにこやかに微笑む白鹿さん。いつも笑顔で優しくて、キラキラした白王子……その笑顔の下にはこんな顔を隠し持っていたのか。人を簡単に信じるなと笑顔で言う白鹿さんの言葉を心に刻み込む私。
(ええ! 私、あなたのことも絶対信用しません!)
私は、とんでもない人に悩みをこぼしてしまった。
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