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第35話、夢と現実との戸惑い
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いつから? 私はいつから白鹿さんをそんな目で見るようになってしまった!?
(いやいやいや、すすす好きじゃないし! そそそソフレだし!)
だいたい白鹿さん、私のことなんか好きじゃないし! ここがそもそも大幅な勘違いをしている!
「みゅーちゃん」
「はいぃ!」
「どうしたの? もう定時だよ? はやく片付けちゃおうか」
「すす、すみません」
そう言いながら美登里先輩がパソコン電源を落としたりと後片付けをしてくれているので慌ててそれを手伝う。
「また寝不足? 最近体調も良さそうだったけど……調子よくないなら無理しないで。また倒れたら大変だしね」
よく眠れるようになって、ひとりで夜を過ごすことがなくなった私は今まで抱えていたストレスをかなり減らして暮らせるようになった。体調が良いはそうだ、調子がよくないなどどの口が言えるのか。おかしいところがあるとすればそれは……私の脳内だ! 業務中でもこの始末だ。今のところ大きなミスなんかはしていないけれどそのうち何かやらかしてしまいそうで、非常に良くない予感がする。
(あんな……夢を見るなんて……)
白鹿さんに見つめられて、手を差し伸ばされて……抱きしめられて……甘い声で好きだと囁かれる夢。
あの、ベッドの中で囁かれた「好きだよ」という声。現実じゃないってわかってるのに、耳に残って離れないから始末に悪い。まるで、真夜中の熱に浮かされて見た幻みたいな錯覚。だって全部が全部夢じゃないから……だからまるでそれは私を縛る呪いみたいに。
(……いや、呪いなのか? これがもし私の願望で……)
本当は、あの言葉を現実でも欲しがってる……?
「まさかぁ!」
「なにが?」
「ぎゃあ!」
「人が帰宅しただけで化け物が出たみたいな声をあげないでくれる?」
いきなり背後から声をかけられて悲鳴をあげてしまった。気づくと白鹿さんが帰宅するような時間に……だからやっぱり悶々考えすぎて生活のいたるところに支障が出てきている。
白鹿さんがオフィスを歩いている姿を見かけるたび、胸の奥がじわりと熱くなる。背筋を伸ばし、無駄のない足取りで歩くその後ろ姿。声をかけられれば柔らかな笑みで応じ、誰にでも等しく礼儀正しい。それは完璧な姿でまるで二次元のキャラクターみたいに、でもそれが職場での白鹿さん。でも私は知っているのだ。その完璧な笑顔の裏で、夜になると無言でソファに沈んで、ネクタイを緩めながら、カバンを床に落としてめんどくさそうなため息を吐く雑な白鹿さんを。
「だるいわー。人間関係マジでメンドい」
「……おかえり、おつかれさま」
「あー、あいつどっか飛ばないかな」
またそんな辛辣な言葉を吐きながらぶつぶつ言う姿なんか誰が知っているだろう。
「あいつ? 嫌な人いるの?」
「嫌っつーか、頭が弱いヤツいるんだよね。しょうもないことにばっかり労力働かせてるようなさ。そいつと絡むだけでドッと疲れる」
「それはお疲れさま……」
外ではいっぱい気を張って、気遣って笑顔を振りまいて。嗅覚刺激を最小限にするために神経を閉ざして暮らしている。だから家の中では無防備で、弱さがにじむようなそんな姿を見せる。それを知ってるのは、たぶん……私だけなのだ。
(……それが、なんだっていうのよ)
そう思おうとしても、抑えられないものがある。きっと、外では誰にも見せない顔。誰にも話さないようなこと。それを私だけが知ってるという、どうしようもない優越感を抱え出していた。
(いやいやいや、すすす好きじゃないし! そそそソフレだし!)
だいたい白鹿さん、私のことなんか好きじゃないし! ここがそもそも大幅な勘違いをしている!
「みゅーちゃん」
「はいぃ!」
「どうしたの? もう定時だよ? はやく片付けちゃおうか」
「すす、すみません」
そう言いながら美登里先輩がパソコン電源を落としたりと後片付けをしてくれているので慌ててそれを手伝う。
「また寝不足? 最近体調も良さそうだったけど……調子よくないなら無理しないで。また倒れたら大変だしね」
よく眠れるようになって、ひとりで夜を過ごすことがなくなった私は今まで抱えていたストレスをかなり減らして暮らせるようになった。体調が良いはそうだ、調子がよくないなどどの口が言えるのか。おかしいところがあるとすればそれは……私の脳内だ! 業務中でもこの始末だ。今のところ大きなミスなんかはしていないけれどそのうち何かやらかしてしまいそうで、非常に良くない予感がする。
(あんな……夢を見るなんて……)
白鹿さんに見つめられて、手を差し伸ばされて……抱きしめられて……甘い声で好きだと囁かれる夢。
あの、ベッドの中で囁かれた「好きだよ」という声。現実じゃないってわかってるのに、耳に残って離れないから始末に悪い。まるで、真夜中の熱に浮かされて見た幻みたいな錯覚。だって全部が全部夢じゃないから……だからまるでそれは私を縛る呪いみたいに。
(……いや、呪いなのか? これがもし私の願望で……)
本当は、あの言葉を現実でも欲しがってる……?
「まさかぁ!」
「なにが?」
「ぎゃあ!」
「人が帰宅しただけで化け物が出たみたいな声をあげないでくれる?」
いきなり背後から声をかけられて悲鳴をあげてしまった。気づくと白鹿さんが帰宅するような時間に……だからやっぱり悶々考えすぎて生活のいたるところに支障が出てきている。
白鹿さんがオフィスを歩いている姿を見かけるたび、胸の奥がじわりと熱くなる。背筋を伸ばし、無駄のない足取りで歩くその後ろ姿。声をかけられれば柔らかな笑みで応じ、誰にでも等しく礼儀正しい。それは完璧な姿でまるで二次元のキャラクターみたいに、でもそれが職場での白鹿さん。でも私は知っているのだ。その完璧な笑顔の裏で、夜になると無言でソファに沈んで、ネクタイを緩めながら、カバンを床に落としてめんどくさそうなため息を吐く雑な白鹿さんを。
「だるいわー。人間関係マジでメンドい」
「……おかえり、おつかれさま」
「あー、あいつどっか飛ばないかな」
またそんな辛辣な言葉を吐きながらぶつぶつ言う姿なんか誰が知っているだろう。
「あいつ? 嫌な人いるの?」
「嫌っつーか、頭が弱いヤツいるんだよね。しょうもないことにばっかり労力働かせてるようなさ。そいつと絡むだけでドッと疲れる」
「それはお疲れさま……」
外ではいっぱい気を張って、気遣って笑顔を振りまいて。嗅覚刺激を最小限にするために神経を閉ざして暮らしている。だから家の中では無防備で、弱さがにじむようなそんな姿を見せる。それを知ってるのは、たぶん……私だけなのだ。
(……それが、なんだっていうのよ)
そう思おうとしても、抑えられないものがある。きっと、外では誰にも見せない顔。誰にも話さないようなこと。それを私だけが知ってるという、どうしようもない優越感を抱え出していた。
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