夢の中にいさせて~今日からイケメンと添い寝生活始めます!~

sae

文字の大きさ
35 / 71

第35話、夢と現実との戸惑い

しおりを挟む
 いつから? 私はいつから白鹿さんをそんな目で見るようになってしまった!?

(いやいやいや、すすす好きじゃないし! そそそソフレだし!)

 だいたい白鹿さん、私のことなんか好きじゃないし! ここがそもそも大幅な勘違いをしている!
 
「みゅーちゃん」
「はいぃ!」
「どうしたの? もう定時だよ? はやく片付けちゃおうか」
「すす、すみません」

 そう言いながら美登里先輩がパソコン電源を落としたりと後片付けをしてくれているので慌ててそれを手伝う。
 
「また寝不足? 最近体調も良さそうだったけど……調子よくないなら無理しないで。また倒れたら大変だしね」

 よく眠れるようになって、ひとりで夜を過ごすことがなくなった私は今まで抱えていたストレスをかなり減らして暮らせるようになった。体調が良いはそうだ、調子がよくないなどどの口が言えるのか。おかしいところがあるとすればそれは……私の脳内だ! 業務中でもこの始末だ。今のところ大きなミスなんかはしていないけれどそのうち何かやらかしてしまいそうで、非常に良くない予感がする。

 (あんな……夢を見るなんて……)

 白鹿さんに見つめられて、手を差し伸ばされて……抱きしめられて……甘い声で好きだと囁かれる夢。

 あの、ベッドの中で囁かれた「好きだよ」という声。現実じゃないってわかってるのに、耳に残って離れないから始末に悪い。まるで、真夜中の熱に浮かされて見た幻みたいな錯覚。だって全部が全部夢じゃないから……だからまるでそれは私を縛る呪いみたいに。

 (……いや、呪いなのか? これがもし私の願望で……)
 
 本当は、あの言葉を現実でも欲しがってる……?

「まさかぁ!」
「なにが?」
「ぎゃあ!」
「人が帰宅しただけで化け物が出たみたいな声をあげないでくれる?」

 いきなり背後から声をかけられて悲鳴をあげてしまった。気づくと白鹿さんが帰宅するような時間に……だからやっぱり悶々考えすぎて生活のいたるところに支障が出てきている。
 
 白鹿さんがオフィスを歩いている姿を見かけるたび、胸の奥がじわりと熱くなる。背筋を伸ばし、無駄のない足取りで歩くその後ろ姿。声をかけられれば柔らかな笑みで応じ、誰にでも等しく礼儀正しい。それは完璧な姿でまるで二次元のキャラクターみたいに、でもそれが職場での白鹿さん。でも私は知っているのだ。その完璧な笑顔の裏で、夜になると無言でソファに沈んで、ネクタイを緩めながら、カバンを床に落としてめんどくさそうなため息を吐く雑な白鹿さんを。

「だるいわー。人間関係マジでメンドい」
「……おかえり、おつかれさま」
「あー、あいつどっか飛ばないかな」

 またそんな辛辣な言葉を吐きながらぶつぶつ言う姿なんか誰が知っているだろう。

「あいつ? 嫌な人いるの?」
「嫌っつーか、頭が弱いヤツいるんだよね。しょうもないことにばっかり労力働かせてるようなさ。そいつと絡むだけでドッと疲れる」
「それはお疲れさま……」

 外ではいっぱい気を張って、気遣って笑顔を振りまいて。嗅覚刺激を最小限にするために神経を閉ざして暮らしている。だから家の中では無防備で、弱さがにじむようなそんな姿を見せる。それを知ってるのは、たぶん……私だけなのだ。

 (……それが、なんだっていうのよ)

 そう思おうとしても、抑えられないものがある。きっと、外では誰にも見せない顔。誰にも話さないようなこと。それを私だけが知ってるという、どうしようもない優越感を抱え出していた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

逢いたくて逢えない先に...

詩織
恋愛
逢いたくて逢えない。 遠距離恋愛は覚悟してたけど、やっぱり寂しい。 そこ先に待ってたものは…

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

鬼上官と、深夜のオフィス

99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」 間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。 けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……? 「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」 鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。 ※性的な事柄をモチーフとしていますが その描写は薄いです。

ワケあり上司とヒミツの共有

咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。 でも、社内で有名な津田部長。 ハンサム&クールな出で立ちが、 女子社員のハートを鷲掴みにしている。 接点なんて、何もない。 社内の廊下で、2、3度すれ違った位。 だから、 私が津田部長のヒミツを知ったのは、 偶然。 社内の誰も気が付いていないヒミツを 私は知ってしまった。 「どどど、どうしよう……!!」 私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?

【完結】エリート産業医はウブな彼女を溺愛する。

花澤凛
恋愛
第17回 恋愛小説大賞 奨励賞受賞 皆さまのおかげで賞をいただくことになりました。 ありがとうございます。 今好きな人がいます。 相手は殿上人の千秋柾哉先生。 仕事上の関係で気まずくなるぐらいなら眺めているままでよかった。 それなのに千秋先生からまさかの告白…?! 「俺と付き合ってくれませんか」    どうしよう。うそ。え?本当に? 「結構はじめから可愛いなあって思ってた」 「なんとか自分のものにできないかなって」 「果穂。名前で呼んで」 「今日から俺のもの、ね?」 福原果穂26歳:OL:人事労務部 × 千秋柾哉33歳:産業医(名門外科医家系御曹司出身)

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! *全28話完結 *辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 *他誌にも掲載中です。

定時で帰りたい私と、残業常習犯の美形部長。秘密の夜食がきっかけで、胃袋も心も掴みました

藤森瑠璃香
恋愛
「お先に失礼しまーす!」がモットーの私、中堅社員の結城志穂。 そんな私の天敵は、仕事の鬼で社内では氷の王子と恐れられる完璧美男子・一条部長だ。 ある夜、忘れ物を取りに戻ったオフィスで、デスクで倒れるように眠る部長を発見してしまう。差し入れた温かいスープを、彼は疲れ切った顔で、でも少しだけ嬉しそうに飲んでくれた。 その日を境に、誰もいないオフィスでの「秘密の夜食」が始まった。 仕事では見せない、少しだけ抜けた素顔、美味しそうにご飯を食べる姿、ふとした時に見せる優しい笑顔。 会社での厳しい上司と、二人きりの時の可愛い人。そのギャップを知ってしまったら、もう、ただの上司だなんて思えない。 これは、美味しいご飯から始まる、少し大人で、甘くて温かいオフィスラブ。

処理中です...