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第38話、ドキドキの種類
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理論を述べて言い訳する道を絶ってくる。とても話しにくい人だ。そしてまたツラツラと述べてくるワードにまた無駄に汗が滲む。だってなんだか当てはまるものがたくさんあったから……。
「どの感情か一番当てはまってるのかなぁ?」
「……」
「とりあえず今は焦ってるね? 嘘がバレそう、誤魔化さないと……そんな状況かな?」
「……」
「なにを誤魔化したいわけ?」
「べべべ……べつに」
これは……誤魔化せるわけ? 嘘なんかなにもついていないけどこの状況……嘘をついているみたいになってるの!?
「わわ、私もよくわかんないんだもん!」
若干パニックに陥った私は思わずそんな言葉を吐いていた。
「なんか、緊張して……変なこと考えないようにしようって……でもなんか考えちゃって……」
テンパってあれこれと言ってしまってからハッとした。見つめてくる白鹿さんは私の瞳の奥まで見透かすようにジッと見つめてくるから。
「変なこと……って、なに?」
「ええ!?」
「変なこと……」
(く、繰り返さないでぇ……)
「なな、なにがぁ!?」
「自分で言ってる。俺は聞き返してるだけだけど」
無理だ。無理無理、無理だ。話すほど墓穴を掘りそう、でももううまく言い訳や誤魔化せる言葉が思い浮かばない。なにより自分が一番聞きたい。
(変なことってなんだよっ!)
「なるほど」
なるほど? この流れでなるほどときた。なにが? 白鹿さんはなにに納得されたのか。
「な、ななにが?」
「いろんなことが要因としてある、ということか」
「えぇ!?」
「そのドキドキの理由だよ……それをちょっと確かめようか」
「え、ちょ、なん……白鹿さんっ!」
くるんと、身体を転がされていつもの定位置、白鹿さんにバックハグされる状態。え、なに!?
「は、白鹿さん!? なに……」
「ドキドキの理由と解決策。これも試してみよう」
そう言っていつも通り私を背中から抱きしめて耳元で囁いてくるのだ。
「胸……」
「ひゃあ!」
直接触られてはいない。それでもぎゅっと抱きしめる白鹿さんの腕が胸のあたりをわかりやすく押さえてくる。
「興奮してるんだ?」
「……っ!」
「ドキドキは……性的興奮?」
「いい、言い方意地悪だと思います!」
素直に言い返す私に白鹿さんは少し楽し気に笑ってまだ言う。
「心拍数が上がってる。またドキドキしてる」
「な、なに言って……」
目の前の現実から目を逸らした私を逃がそうとはしない。むしろふっと笑って言い放つ。
「眠れない原因は、興奮してるからじゃない? 興奮して……放っておかれるからだ」
「……え?」
「興奮したまま、何もしない。ドキドキしっぱなしの状態が続くと、交感神経が優位なままになって逆に眠れなくなる。だけど、ドキドキのピークを過ぎて快感に変わればそこにくるのは圧倒的な疲労とリラックス。副交感神経が働き始めて、心身は強制的に休息モードに入る。つまり――」
白鹿さんがぐっと身を寄せ、耳元で囁いた。
「みゅーちゃんドキドキさせて、興奮させて、極限まで気持ちよくさせてあげる」
(は?)
「そうすればあとは……ぐっすり深い眠りが待ってる」
「なぁ! そ、そんな理屈……!」
「理屈じゃない。世間一般論、実証されてる。人は、絶頂のあとに最もよく眠れる。深く、長く、気持ちよく」
「……!」
「俺に触れられるの、嫌じゃないでしょ?」
その聞きかたもズルいと思う!
「嫌とか……っ! そういう話じゃ……」
「君を眠らせるための施術みたいなもんだよ」
「せ、施術……?」
「そう。愛撫と安眠の完全セット。ドキドキして交感神経を乱すみゅーちゃんに必要なのは、俺の手と体温と……」
「……な、なに?」
「ちょっとだけエロい刺激」
「エッ――!」
衝撃的な言葉に思わず喉が詰まって言葉が出きらずに固まった。白鹿さんの口から、その優しげな白王子の顔から似つかわぬまさかのワード……エロ!
「なんでエロ!? 私たちソフレでしょ!?」
「そうだね。でもね、俺的にもちょっと困ってたんだよね」
「ええ? なにが!?」
「ここ最近のみゅーちゃんのその落ち着かない興奮状態の身体から発汗する香り……やばかったよね」
やばい? なにがやばいの? 今度はなんなの!?
「臭かったってこと!?」
「だからみゅーちゃん臭いとかないから」
「やだぁ!」
「あんまり俺のことも興奮させないでくれる?」
「ささ、させてないんだけどぉ!」
どこまで本気なのか。これは本気なのか!?
(ええ!? 本気!?)
これは揶揄ってるんでしょ? 揶揄ってるんだよね? そう思う私の気持ちを当然読み取っているような余裕な白鹿さん。その目がふっと和らぐと、さっきまでのからかい混じりの声色とは違う、深くて落ち着いたトーンで言うのだ。
「……ちゃんと眠れるまで俺が責任持つから」
「……っ!」
そう囁いた彼の顔が近すぎて私の心臓がバクンと跳ねた。
「どの感情か一番当てはまってるのかなぁ?」
「……」
「とりあえず今は焦ってるね? 嘘がバレそう、誤魔化さないと……そんな状況かな?」
「……」
「なにを誤魔化したいわけ?」
「べべべ……べつに」
これは……誤魔化せるわけ? 嘘なんかなにもついていないけどこの状況……嘘をついているみたいになってるの!?
「わわ、私もよくわかんないんだもん!」
若干パニックに陥った私は思わずそんな言葉を吐いていた。
「なんか、緊張して……変なこと考えないようにしようって……でもなんか考えちゃって……」
テンパってあれこれと言ってしまってからハッとした。見つめてくる白鹿さんは私の瞳の奥まで見透かすようにジッと見つめてくるから。
「変なこと……って、なに?」
「ええ!?」
「変なこと……」
(く、繰り返さないでぇ……)
「なな、なにがぁ!?」
「自分で言ってる。俺は聞き返してるだけだけど」
無理だ。無理無理、無理だ。話すほど墓穴を掘りそう、でももううまく言い訳や誤魔化せる言葉が思い浮かばない。なにより自分が一番聞きたい。
(変なことってなんだよっ!)
「なるほど」
なるほど? この流れでなるほどときた。なにが? 白鹿さんはなにに納得されたのか。
「な、ななにが?」
「いろんなことが要因としてある、ということか」
「えぇ!?」
「そのドキドキの理由だよ……それをちょっと確かめようか」
「え、ちょ、なん……白鹿さんっ!」
くるんと、身体を転がされていつもの定位置、白鹿さんにバックハグされる状態。え、なに!?
「は、白鹿さん!? なに……」
「ドキドキの理由と解決策。これも試してみよう」
そう言っていつも通り私を背中から抱きしめて耳元で囁いてくるのだ。
「胸……」
「ひゃあ!」
直接触られてはいない。それでもぎゅっと抱きしめる白鹿さんの腕が胸のあたりをわかりやすく押さえてくる。
「興奮してるんだ?」
「……っ!」
「ドキドキは……性的興奮?」
「いい、言い方意地悪だと思います!」
素直に言い返す私に白鹿さんは少し楽し気に笑ってまだ言う。
「心拍数が上がってる。またドキドキしてる」
「な、なに言って……」
目の前の現実から目を逸らした私を逃がそうとはしない。むしろふっと笑って言い放つ。
「眠れない原因は、興奮してるからじゃない? 興奮して……放っておかれるからだ」
「……え?」
「興奮したまま、何もしない。ドキドキしっぱなしの状態が続くと、交感神経が優位なままになって逆に眠れなくなる。だけど、ドキドキのピークを過ぎて快感に変わればそこにくるのは圧倒的な疲労とリラックス。副交感神経が働き始めて、心身は強制的に休息モードに入る。つまり――」
白鹿さんがぐっと身を寄せ、耳元で囁いた。
「みゅーちゃんドキドキさせて、興奮させて、極限まで気持ちよくさせてあげる」
(は?)
「そうすればあとは……ぐっすり深い眠りが待ってる」
「なぁ! そ、そんな理屈……!」
「理屈じゃない。世間一般論、実証されてる。人は、絶頂のあとに最もよく眠れる。深く、長く、気持ちよく」
「……!」
「俺に触れられるの、嫌じゃないでしょ?」
その聞きかたもズルいと思う!
「嫌とか……っ! そういう話じゃ……」
「君を眠らせるための施術みたいなもんだよ」
「せ、施術……?」
「そう。愛撫と安眠の完全セット。ドキドキして交感神経を乱すみゅーちゃんに必要なのは、俺の手と体温と……」
「……な、なに?」
「ちょっとだけエロい刺激」
「エッ――!」
衝撃的な言葉に思わず喉が詰まって言葉が出きらずに固まった。白鹿さんの口から、その優しげな白王子の顔から似つかわぬまさかのワード……エロ!
「なんでエロ!? 私たちソフレでしょ!?」
「そうだね。でもね、俺的にもちょっと困ってたんだよね」
「ええ? なにが!?」
「ここ最近のみゅーちゃんのその落ち着かない興奮状態の身体から発汗する香り……やばかったよね」
やばい? なにがやばいの? 今度はなんなの!?
「臭かったってこと!?」
「だからみゅーちゃん臭いとかないから」
「やだぁ!」
「あんまり俺のことも興奮させないでくれる?」
「ささ、させてないんだけどぉ!」
どこまで本気なのか。これは本気なのか!?
(ええ!? 本気!?)
これは揶揄ってるんでしょ? 揶揄ってるんだよね? そう思う私の気持ちを当然読み取っているような余裕な白鹿さん。その目がふっと和らぐと、さっきまでのからかい混じりの声色とは違う、深くて落ち着いたトーンで言うのだ。
「……ちゃんと眠れるまで俺が責任持つから」
「……っ!」
そう囁いた彼の顔が近すぎて私の心臓がバクンと跳ねた。
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