あなたはキスだけしてくれない

sae

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番外編

6

 もっとちゃんと誘え、そんなこと言われると思わなかった瑠衣は困惑する。もっとスムーズにいくはずだった、そのための枕だったのに、そのための枕ではないのか!瑠衣は心の中で叫んでいる。

(さ、さ、誘うって……出来たらやってるよぉ!)

「枕押し付けてるだけじゃなぁー、瑠衣の気持ち?はっきりわかんねぇ」
 わかっているくせにわざわざそんな風に言う太刀川に瑠衣は赤くなって震える。言えないから枕を使って誘っているのに、言葉にできるなら枕なんかいらないではないか。

「ん?」
 かっこいい顔が余計に腹ただしい。余裕に上から目線で面白がっているその顔は瑠衣としても言い返したいが結局好きが勝って何も言えない。

「お、面白がってるでしょ」
「まさか」
「真面目に言ってるの?」
「ちょー真面目」
 余計質が悪い、瑠衣は思う。

「柾……意地悪だよね」
「今さらだろそれ」
 太刀川に口で勝てたことなど瑠衣にはないのだ。いつも何かしら言いくるめられている気がする。

「じゃ、じゃあ……誘惑するよ?」
「おう、来いや」
 覚悟を決めたような瑠衣に太刀川はますます面白くなって笑いそうになるが逆切れされたら元も子もないのでひとまず耐える。瑠衣がごくりと息を飲んだと思ったらジッと見上げて見つめてきた。
 距離を詰めて、ジッと、ジーッと見つめること数秒。

「「……」」

(……誘惑ってなんだよ、見つめるだけ?それだけ?ほかになんかねぇのかよ)

 瑠衣の恥ずかしそうに頬を染めた顔で真っ直ぐ見つめられると太刀川は内心いろいろ思うもののやっぱり可愛いで終わってしまう。
 結局視線を反らしたのは瑠衣が先だった、見つめ合う時間さえ負けた。瑠衣はそう思ったがここで引き下がれない。
 誘いたい気持ちはちゃんとある。押し付けていた枕をぎゅっと抱きかかえて太刀川を見上げる。

「……しよ?」

 どんな誘惑をされるのかと内心ワクワクはしていたけれど、一切触れずに直球の言葉だけで攻められた。それに真っ直ぐ受け止めてしまった太刀川も何も言えない。

「柾、してよ……エッチ、しよ?」
「……」
「柾?だめ?今日はしたくない?映画見てからでもいいから、待ってるから……して?」
「……」
「……したいよ、柾……」

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