愛を知らないAランク冒険者は最愛を手に入れる

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閑話-ジルの迷う苦悩な日々-5

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 やはり鉱山と繋がっていたダンジョンから別ルートで抜け出せた俺は久々に下界の空気に触れられた。テキトーに川で体を洗ってから街まで戻りかけたとき思いもかけない人物に声をかけられた。

「ジルベルトさんっ!」

相手はなにやら慌てて焦っている。

「ああ、ご無事で……よかった!でもそれより今はアリシアさんをっ……!」
「え?」
「私ではあれ以上どうすることもできなくて……お願い、アリシアさんを助けて!」

 アリシアがあの憎たらしいクソと一緒だと、受付嬢が半泣きで訴えてきてそれを聞いたらもう足は勝手に動いていた。


 失くしたいものばっかりだった。自分の中でなにかに縛られると未練がましくなるから手放して生きる。それが一番生きやすかった。でも手放せないものがある、この世界には。それを見つけたら、もうだめだ。


 諦めるのが嫌になった。

 俺だって……自分以外の誰かを守って生きてみたい。


 目の前で首を絞められているアリシアを見たら血管が何本か切れた。瞬殺してやりたかったけど、簡単に死なれたら気が済まない。言ってやりたいこともある、なにより、苦しめてやりたかった。その手でアリシアを苦しめたように、お前も……そう思っていたらアリシアが泣いて止めるから。


 泣きながら……俺に縋るみたいに泣いて名前を呼ぶ。ボロボロの顔して泣きじゃくるその顔が可愛すぎて、もうどうしようもなく可愛くてたまらなくて。

 俺を待っていたのか、そう思うと胸が痛い。こんな痛みは知らない、今まで一度も感じたことのない痛みに苦しめられる。それでもどうしてだ、この痛みがとてつもなく俺を興奮させる。心を鷲掴みにしてくるから。

 湧きだっていた殺気が嘘みたいにどこかに流れるように去っていく。こんな奴のことよりも、俺がこの手で掴みたいのは……その思いででかい体を投げ捨ててアリシアに触れる。ああ、アリシアが俺の手に頬にと触れてくる。熱を感じたらたまらなくなった。俺だってこの熱を抱きしめたかった。


 ずっとずっと――どんな時だって……。


「会いたくなっちまった……」


 もう死ねない。もう俺は……お前のそばにいたいんだ。お前のそばで、ずっと――。


「抱きしめたくなった」


 抱きしめさせて――その身体全部を、心だって。アリシアのすべてなにもかもをもう……離したくない。

 
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