続・ゆびさきから恋をするーclose the distance

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エピソード3

憂いの二カ月②

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 はぁ……と、乱れた息を整えると後ろから抱きしめてくる彼の唇が頬に触れて耳に触れて首筋をなぞる。

「ぅんっ」
 くすぐったいような気持ちいいような、この先何をされるのかと思う不安と期待。少し冷たい大きな手が身体のいたるところを這っていき、服の下では何が起きているのだろうと思う。

「んっ――」
 今日はもうずっとブラトップだけで過ごしているから手を入れればすぐに胸が露わになってしまう。包み込み、やわやわと触られると余計に感じて恥ずかしい。

「あん、ゃ、だ、もう……そんなに触らないで」
「だって気持ち良すぎて。なんでこんなに柔らかいの?」
「しらないよぉ、普通だと思う――んんっ」
「普通じゃない」
 首筋に吸いつかれて身がよじれた。

「ンあんっ」
 いっぺんに色々するのはやめてほしい。身体はまだ誠くんの動きについていけるほど慣れていないのに。

「もうっ!いろんなおっぱい、触ってきてるでしょっ、普通だよ、わたしのなんかっ」
「怒ってんの?」
 嫌味みたいに聞こえたのか、気遣うように聞いてくれるが別にそんなつもりで言ったわけじゃない。

「怒ってないっ」
「そんな覚えてないって」
「それはないっ、誠くんの脳みそがそんなバカなわけないもん……ぁあんっ!そ、れだめっ」
「千夏これ弱いよな」
 敏感になった乳首を爪先で弾かれて声が跳ねた。

「やぁ!も、なんか色々試すのやめてっ。怖くなるからぁ!」
 自分の体がどんどんおかしくなる気がする。もう私の知り得なかった未知の世界が開かれてしまっている。もう、絶対に戻れない、それがなにより怖い。

「色々しないとわかんないじゃん。千夏が何が好きかとかさ」
「いい!そんなの知りたいとか思ってないし!!」
「俺が知りたいんだわ」
「教えないっ!」
「あっそう。なら余計しないとわかんないってことだな、お前俺のこと煽っていちいちかわいいな?」
「なぁっ……!」
 耳を甘噛みされて背中から包み込むように抱きしめられると秘部が濡れるのがわかる。身体がどんどん湧き水のように溢れて濡れていくのが恥ずかしくて、自分がとても浅ましい人間になった様な気になった。
 知られたくないのに彼の手が私の身体を暴いていくから全部知られてしまう、それがまた恥ずかしいのに。

 見ないで欲しいと思う、こんな淫らな私のことを。でも同時に彼にしか見せれないんだから受け止めて欲しいとも思う。

 そんな矛盾や葛藤も触れられるほどに考えられなくなってしまうのだけど……。



 ―――



 過去のことを言われると心苦しくはなるけれど、千夏は案外フランクにそこを突っ込んでくるから時々どう捉えるべきかと悩んでしまう。前の彼女たちと比較することがないと言えば嘘になるけれど、殆どのことはもう記憶から薄れているのは事実で。覚えていないと言ったのはあながち嘘ではない。

「それはないっ、誠くんの脳みそがそんなバカなわけないもん……ぁあんっ!そ、れだめっ」
 感じながらも冷静にそう突っ込むから面白くていじめたくなった。

「もう、胸ばっかりやめてよぉ」
 触り心地が良すぎて胸ばかり攻めていたら千夏がそれだけでヘロヘロになってきた。

「じゃあ挿れる」
 そう言って体をそのまま倒すようにソファに手をつかせると千夏が四つん這いの姿勢になる。

「え!なんで?無理!」
「俺も無理。そういう千夏も絶対濡れてるだろ」
 手をウエストに突っ込んで足の間に入れ込むと、滑るように指が中に入り込んだ。

「ひゃあっ、あっ!」
「ほら。ヌルヌル」
「わかってたみたいな言い方やめてぇ!」

(恥ずかしがりかたが可愛すぎるんだよな)

「なんでそんな恥ずかしいわけ?俺のすることに素直に感じてさぁ、可愛いだけ。興奮しかない」
「こ、興奮しないでぇ……」
 ソファに顔を埋めて耳まで赤くしている。

(何言っても可愛いしかない。もう最近俺、千夏のこと可愛いしか思ってない気がする)

 恥ずかしがってるうちに下の服を脱がせるとまた悲鳴をあげた。

「ちょ!いきなり脱がすとかやめてぇ!」
「邪魔だもん」
 指を二本に増やすとそこはすんなりそれを受け入れた。

「あんんっ!まっ、やぁっ」
 卑猥な水音が響き出してまた千夏の羞恥心を煽ってしまう。

「やだ、やぁ、やめて、やめ、はずかし……やだぁ」
「いっぱい濡らして可愛いーなー」
「かわいくないぃぃ、っうんんん」
 なぜ素直に俺の言葉を受け入れないのか。

「へんたい、はぁ、みたい……恥ずかしい、やだ、あっぅ」
「どこが変態。千夏の変態レベル低いわ」
「なんっ、そんな言い方あるぅ?」
「レベル上げるには経験値だよな、もっと場数踏まないとレベル上がんないぞ」
 ニコッと微笑むと千夏の顔が赤く震えた。

「――へんたいなりたいなんか、言ってないぃ!!」
「もう挿れていい?挿れたい」
 蜜口に当てると千夏の体がビクリと震えた。

「ぜんぜん、はなしきいてくれないしぃ!!」

(涙目で見上げてこられても俺を滾らせるしかないんだけどな)

「どんなに乱れても俺しか見ないから大丈夫」
「えっち……ばかぁ」
 なんだかんだ言って千夏が目を瞑って受け入れる覚悟を見せる、その表情が可愛すぎる。

 仕事してる時は周りに振り回されず自分をコントロールできるくせに、俺と二人の時は制御不能なのか。頑固なところがあるのにバカみたいに素直に受け入れる千夏。時間を長く過ごして知るほどに千夏の可愛いしか見えなくなっていた。


 ―――


 夕方になってきたら途端に寂しくなってきた。時間が経つのが惜しい、このまま今日が終わらなければいいのに、そう思う。

「どうした?」
 そう聞かれても素直に言葉にはできない。

「――日曜、終わるなって」
「……そうだな」
 どこか楽しそうな声色に心なしかムッとする。

「明日も、別に会えるんだけど」
「うん」
「その、もう帰らないと……ダメだなって」
「うん」
「……なに?」
 睨むと楽しそうに笑っている。

「なにが?」
「なんでそんなニヤニヤするの?!」

(面白がっているかバカにしてるかのどっちかでしょ、その顔はぁ!)

「いや、何が言いたいのかなって思って」

(絶対わかってるくせに言わせようとするその感じ!)

「どうせ私ばっかり寂しいんだもん!余裕な態度みせて腹立つ!」
「別に余裕とかじゃないし」
「余裕だよ。私ばっかり……こんなにゆっくり二人で過ごしたから頭の中おかしくなるよ」
 もうネジなんか緩んで外れてどこかに落としてしまった。

「じゃあ今日も泊まればいいじゃんか」

(え)

「明日から一週間始まりますけど……」
「なにが心配?」
 問いかけられて視線を彷徨わせていたら笑われた。

「今日はもうしない。ちゃんと早くに寝させる。それなら遅刻もしないだろ?なんなら朝叩いてでも起こしてやる、約束する」
「……え」
「金曜着て行った服もあるし制服もうちで洗濯したからあるじゃん。部屋着はもうおいとけばいいんだし。明日は……まぁ時間差でどっちかが先に出たらいいよ。そんでもう普通に家に帰ればリセット完了、だめ?」
「……ちゃんと、起こしてくれる?」
「タイマーかけて起きれなかったら起こす。何時?」
「6時」
「了解」
「……今日もいて、いいの?」
「全然いいよ」
 そう言ってめちゃくちゃ甘い顔で笑うのダメじゃない?

 結局甘えてもう一晩誠くんの部屋で過ごした私。寝る前にベッドでたわいもない話をしたりしながらだんだん夢の中に引き込まれていく浮遊感がとんでもなく幸せな時間だった。人肌に触れながら、好きな人の息がすぐそばにある。こんな柔らかくて心地よい時間は知らない。どこからが夢で現実なんだろう、そう思えるほど夢みたいな時間だったんだ。

 好きな人と眠りにつく時間。そんな幸せに包まれた眠りから覚めた朝の時間もまたなんと例えればいいのか。

「おはよ。起こさなくても起きたじゃん」
「……ぉはよ」
 目覚めた目の前に誠くんがいる。夢じゃないかな、そう思うけど夢じゃない。大好きなゆびさきが、掌が頬に触れて髪を撫でてくれるから。

「……誠くんにね、起こしてもらえると思ったら楽しみで起きちゃった」
「なんだそれ」
 私の言葉にバカにしたように笑うけど本音だからしょうがない。好きな人に起こしてもらえると思ったら楽しみで仕方なかったんだ。

「遠足の前とかワクワクして早く起きちゃうとかあったでしょ?サンタさんが来る朝とか……」
「そこと一緒にするのおかしくないか」
「どうして?」
 どこがおかしいのだろう。私からしたら同じくらいドキドキしてワクワクすることだったのに。

「起こしてほしかったな……」
 思わず呟いたらまた笑われた。

「これから何回でもそんなチャンスあるだろ」
 さらっとそんな言葉言うんだからどうしよう。

「……あるの?」
「ないの?絶対あるだろ」

 どうしよう……もう人生の幸せを使い切ってしまわないかな、大丈夫かな。
 そう思えるほど、この週末どろどろに甘やかされた気がしていた。
 一気に距離が縮まった感。何気ない時間を過ごすことの意味を痛感する。職場とは違う誠くんとの時間は甘くて優しくて……数日前に感じていた胸の苦しさはもうなくなってしまった。

 今日仕事が終わったら自分のアパートに帰る、それが普通なのになんだか実感が湧かなくて寂しくて。

 ――甘すぎた時間からまだ抜けられずにいてる。


「ねぇねぇ、菱田さん」
 出勤後、ロッカー後ろの金田かねださんに声をかけられて我に返った。

 名前を呼ばれて振り向いたら相手がニコッと微笑んでいる。

「はい」
「菱田さんって開発の久世くんところのグループだった?」
「そうです」
「だよね?一個お願い頼んでもいいかなぁ」
 総務部の金田さんはすごく可愛い人だ。アイドル並みのルックスで女子力が社内でもずば抜けている。顔立ち、スタイル、話し方、どこをとっても際立っているのに不思議と嫌味がなくて私は結構好きな人だ。

「これさ、昨日渡してって頼まれてたんだけどバタバタしてて。朝イチもミーティングで持っていけないんだよ。預けてもいい?」
「渡すだけでいいんですか?それなら全然持っていきますよ」
「そう、渡すだけ!結城ゆうきさんからだって言ってくれればわかるから。ごめんね、お願い」
「わかりました」
 差しだされたA4サイズの茶封筒を受け取った。

「ありがとう~お願いします」
 そう笑う顔が見惚れるほど可愛い。女の私で思うんだからこの笑顔で微笑まれたら男性は100%落ちるだろう。

(久世くんって呼ぶくらいだから歳が近いのかな?え?30越えてたりするの?全然見えないけど)

 そんなことを思いつつ事務所に寄ったら誠くんがいないからもう実験室に降りてるのかなと自分の準備だけ持って降りていく。私より遅く出てるのに着いてるのが早いのが不思議でならない。実験室はまだ誰もいないから気持ちが緩んだ。

「誠くん」
 名前を呼んでしまってから間違えたと思うけどもう遅い。「ん?」と振り向く彼もまだ上司の顔じゃなかった。

「これ。さっき金田さんに頼まれたの。結城さん?て人からのだって。言えばわかるって」
「え」
 驚きと困惑と衝撃のような感じの声色で私が驚いた。

「……はい」
 渡すと少しためらってから受け取られた。

(なんだろう、この変な間)

 そこで他の人たちが降りてきてその場を離れた。チラッと見ると封筒を開ける気配はなくてここでは見れないものなんだろうかとなんとなく感じた。これをきっかけに私たちの関係がまたひとつ変化するのだけれど、この時の私にはまだ知る由もなかった。


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