続・ゆびさきから恋をするーclose the distance

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エピソード6

思い出の四カ月②

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 扉を開けてエプロン姿の千夏が「おかえりなさーい」と微笑む。この瞬間が好きだから俺はこの家に来る時は鍵をあえて使わないようにしていた。「ただいま」その言葉を家族以外の誰かに言う日が来るとは思わなかった。

「悪い、電話だ」
 夕食を食べ終えてティラミスを口に運ぼうとした千夏に断って席を立つ。昨日の事業部との会議で突かれた案件が尾を引いていて、現状進捗と納期の催促が止まらずにいた。数分電話をして千夏のそばに戻るとどこか心配そうに俺を見つめている。

「うまい?」
 気づかれないように話題を振った。

「美味しい」
 一口どう?と勧められて差し出されたスプーンを口に運んだ。ほろ苦いコーヒーの香りの後に濃厚なマスカルポーネのチーズが口の中に広がっていく。満たされた胃の中でこの甘さはまた別の意味で沁みていった。

「なんか、あったの?」
 結局察してしまうんだよな、千夏の顔を見たら不安にさせてるのがわかる。

「……うーん」
 言葉に迷ってる俺を静かに待つ。

(ダメだ、うまい言い訳も見つからないし、結局確認しないといけない)

「今してる仕事、最速でどれくらいで出せる?」
 苦戦してるのは知ってるのに聞いてしまった。

「……うまくいけば三日、ダメだったら早くても来週。でも出せるかわかんない」
 ごめんなさい、と謝られて咄嗟に言い返す。

「謝ることない、納期は月末なんだから」
「はやく値ほしいって?」
「ん。ちょっと現場でトラブルが起きてるらしい。わかった、悪いな、急かすようなこと聞いて」
 フルフルと首を横に振ってティラミスをスプーンでなでている。

「ごめん、気にしなくていい、自分のペースでやって?」
「うん、少しでも早く出せるようにするね」
 そう言いフッと笑った。

「あ、ごめん。大変なときに応えれないのに笑っちゃって。でも、初めてじゃない?仕事のことそんな風に相談してくれるの」
「そうか?」

(結構いつでも無茶な相談をしている気がするけど)

「応えれないと意味ないけど、相談してもらえるって部下としては嬉しいことだから。がんばる」
 部下としても、恋人としても、千夏はどこまでも俺を夢中にさせていくんだ、こんな風に。

 ティラミスを取り上げてそのまま口づけた。

「んっ」
 甘い口から甘い吐息が漏れる。

「――っ、まだ、たべてる」
「もう限界」
「お風呂、入りたい。仕事の後だもん」
「気にならないけど」
「私は気になるのっ!むしろなんで気にならないの?」
「じゃあ一緒に入る?」
「絶対無理!物理的にも無理!」

(全部言い返してくるな)

「――はぁ、抱きたいのって俺だけ?」
「そっ!そんなこと、言ってないでしょ?」
 頬をピンクに染めて困った顔で見つめるからもうたまらなくなる。

「……シャワーだけさせて?お願い」

(ここでお願いとか言うの卑怯だろ)

「五分」
「無理でしょ、せめて十五分」
「十分」
 えー、と千夏が呆れる。

「それ以上かかるなら俺も入……「わかったぁ!そのかわり扉閉めてから十分だよ?絶対だよ?!」
 そう言って逃げるように脱衣所に走っていった。


 ―――


 十分経ったら本当に脱衣所に入ってくるから悲鳴を上げた。

「きゃあ!」
 バスタオルを巻いただけの私にシラっとした顔で「十分すぎたら入るって言ったじゃん」とシャツを脱いでいく。

「どうせこのあと髪の毛乾かしたり色々するんだろ。俺もシャワーする」
 手早く服を脱いでお風呂場に消えていった。化粧水や乳液をして髪の毛を乾かしていたら誠くんが早々に上がってきた。

「男の人ってお風呂早いよね……」
「そ?まぁ女の人よりは早いわな」
 わしゃわしゃとタオルで拭く姿が大型犬みたいでなんだか可愛い。

「シャツ置いてあるやつ出しといたよ?」
「え、あーまぁいいや。すぐ脱ぐし」

(ろ、露骨な……)

 彼の発する言葉にいつまで私は一喜一憂してしまうんだろう。

「千夏は?もう終わった?」
 軽く濡れた誠くんに狭い脱衣所でギュッと抱きしめられるとそれだけで胸がどきどき。

「お、おわった」
 何回抱かれてたって、触れ合う前は緊張してしまうから声がうわずいた。それにフッと笑われて余計恥ずかしさが増す。誠くんのきめの細かい肌を見るとドキドキと胸が高鳴ってしまう。ジッと見つめていたら誠くんが視線に気づく。

「ん?」
「……ううん、その、違うなぁて」
「なにが」
 そっとゆびさきを誠くんの二の腕に触れさせる。

「……筋肉」
「……」
「男の人、だなって」
 当たり前なことを言って自分で照れた。

「俺そんな筋肉ついてないと思うよ」
「私よりはある」
「千夏と比較されてもなぁ……」
 笑われて、それはそうかとも思うがそこまで笑わなくてもとムッとしてしまう。どうせ筋肉なんかない脂肪だらけの体ですよ。そんな気持ちを表情で読んだのか。誠くんが抱きしめてくる。

「千夏は柔らかいからいいんだよ」
「……どうせ脂肪」
 不貞腐れたように言ったら首筋に吸い付かれる。

「んっ!」
「どこ触っても気持ちいい」
「だからそれは脂……んっ」
 言葉がキスに飲み込まれた。深く、喉の奥から息を吸いあげてきそうなほど深いキス。

「んんっ」
「こんな気持ちいい身体、知らない……」
 甘い声が、耳から胸をくすぐっていく。

「もう抱かせて」
 もう言い訳も愚痴も聞かない、といった圧をかけつつキスが落ちてくる。そのキスに返事の代わりとして素直に応え返す。誠くんの大きな手が腰を抱いて包み込んでくる。私と違う、硬い身体……その逞しい身体に抱きしめられて胸がキュンと締め付けられる。

「んぁ……」
「千夏、甘い匂いする……」
「ぁ、ま、ことくんだって……同じソープ使ってる、ン」
 肌と肌が交わって、香りが密に舞う。火照った体から熱が発してより香りが濃くなる気がした。同じ香りに包まれると初めて抱かれた日を思い出して余計に胸がドキドキするんだ。いつまでも、ずっとドキドキが止まらなくて。

「んあ……まことくん……こ、ここで、するの?」
 ここはまだ脱衣所なんですけど……そんなことをくらくらしかけた脳でなんとか伝える。

「……ガッつきました。ベッド、いこ」
 そう言ってゆびさきを絡めて手を繋がれて、ベッドまで連れられた。

「んっ、も、だ――っ」
 ビクビクと体を痙攣させながら彼の頭を鷲掴む。

「ぁ、うンっ!!」
 緩い波がいきなり強くなっては打ちつけるように私の体は快感に跳ね上がった。

「……も、やめ、イッてる――イったからあ、あっ、んっ、だめ、だ……また、イ――ッ」
 最近なんとなく誠くんの愛撫がしつこい気がしている。何度も絶頂へ導かれて息絶え絶えになったところに、ようやく顔を上げてくれたが悪びれた様子もなくまだ恐ろしいことを口にしてくる。

「もっとイッていいよ。ほら、中もめちゃくちゃ熱い」
「んっあんっ!」
 さきほどまで舐められまくって敏感になっているところを指でなぞってさすられた……と思ったらいきなり中に異物を感じて身体がまたビクリと跳ねた。

「んぁん!!」
「やらしーなぁ、千夏」

(や、やらしいのは絶対に誠くんの方だからぁぁ!!)

「っぅ、うんんっ!」
 何回はしたなく乱れればいいのか。またイキそうになって怖くなってきて手を伸ばすと、空いた左手がそれを掴んで指を絡めてくれた。

「もぉ、やだってばぁ……お願……ゆ、びっ、イクの……やぁっ」
「いやだ?なんで?」
「ぁ、だっ、てぇ……んっ、わ、わたし、ばっかり――っ」
 もうダメ。こんなこと、少し前の私にはとても言えなかった。だけど、このままじゃ耐えられない。

「私ばっかり、やだよぉ」

(我慢――できないのに……)

「ゆびは……ィヤ」
 奥をかき混ぜられて頭が沸く、思考回路がもうぐちゃぐちゃだ。熱くて、身体が熱くて、全身が燃えるように熱くておかしくなっている。

「誠くんとっ、一緒に……イキたい、のっ、あっ、おねが――」
「……かわいすぎ」
 指が引っこ抜かれてグチャグチャになったところに温かな硬いものが押しつけられたら息が止まりそうになる。

 熱い。身体だけじゃない、脳内も茹だるように熱くて、息が乱れて、もう何も考えられない。

 もう――目の前にある快楽のことしか頭にない。

「っあ、はぁ――」
 あてがわれた感触だけでこれから訪れる圧迫感に震えてしまう。

「はぁ、っ――」
 誠くんのこぼす吐息が艶っぽくて、感じてくれていることが嬉しくなる。私を求めてくれるなら――なんだってしたい。絡まる指先に力を込めて想いをぶつけた。

「……挿れてっ」
 ゆっくりと入り口に当てられたかと思うと奥まで一気に差し込まれた。



 ―――


 奥を突きながら、反り上がる胸の突起を甘噛みすると声にならない悲鳴をあげた。

「んあんっ!」
 白い肌がピンク色に染まってきて、胸の谷間から汗が伝い落ちていく。その汗を舐め取ったらまた身体を捩らせるから抱きしめてやるとすり寄ってくる。柔らかい身体が、肌に馴染むと色々こみ上がってくるんだよ――なのに。

「あ、っ、んんっ!おっきぃ……おっきいの、だめ、壊れるうっ……」

 感じたことをそのまま言葉にするのは無意識なのか。

(この感覚的な言い方……ずっとこんな感じなんだろうなぁ)

 そんなことを腰を打ち付けながらぼんやり思った。

「……はぁ、千夏の中やばい、熱いし吸い付いてくるし……なにこれ」

(――気持ち良すぎるんだよ、たまらん)

 何度抱いても飽きる気がしない、むしろもっと抱きたくなる。抱くたびに夢中になって……まるで麻薬のようだ。やめられなくて、溺れていく。気づいたときにはもう遅い、いやもう気づく前から溺れてた。

「やっ、やっあっ、ちょ、待っ、だ、……ぁ、イク、また何か、くるぅ――こわ、こぁいよぉ、や、あっ」
「いいよ、そのままイッてみ?」
 パチュんパチュんと、奥を突きつけると千夏が息を呑む。

「――っ!」

 少し前から中でもイケるようにすっかり開発されてしまった千夏の身体は、前以上に感度も上がって与えられる快感にただ素直に身を委ねる。涙目で俺を見つめながら首をゆるゆると横に振る。溶けて酔ったみたいな顔が、たまらなく可愛くて……。

「ん?なに?」
「……ぁ、も、らめ……からだ、へん、だからぁ」
「気持ちよくなかった?」
「ン、き、もち……ぃーけどぉ、んんっ!おくぅ、も、なん、なんで、まだ……そんなっ」
「んー、なんかずっといれそー、このなか」
 そういうとキューっと締まった。

「ぁー、ちなつ……」
「ぅ、あぅ……ん、だっこ……だっこ、してぇ」
 ギュッてして……そんな可愛いセリフを吐いて、両腕を伸ばしてしがみついてくるから抱きしめてやる。

「ンあんっ!」
 俺だってもう限界――、熱く滾りだしたモノが千夏の中を圧迫するのがわかる。

「――はっ、イってい?」
「ぁっ……んっ」
 汗や涙でドロドロになった千夏が顔を蕩けさせて俺を見つめる。

「ん……ぃ、よ?イッて……」
 耳元で囁くからギリギリに繋いでいた神経の糸がブチ切れた。

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