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エピソード10
誠のリクエスト⑤
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なにを言わせたいのかさすがの私でもわかっている。
わかっているけど――。
攻めまくられる快感と羞恥心が入り混じって襲ってくる恐怖に耐えられなくなる。
ペロッと涙を舐められて、とんでもなく優しい瞳で見つめてくるから、やってる事の性悪さと甘い態度にもう胸が振り切れそうで。
「やぁ、だ……もぅ……っ――た、ぃっ」
「ん?」
(だから聞こえてるよねぇ?!)
「もぅ、ばかぁっ!ぅ――っん、イキたいのぉ、もぅイきたいぃっ……きちくぅ!いじわるしないでぇっ」
負けて泣き叫んでいた。
「――鬼畜」プッと吹き出したら、ズンっと奥に硬いものが押し入れられてくる。
「んあんっ!!」
「あったか……はぁ、ヌルヌルすぎる」
気持ちいいな?そう言って優しい声で囁くからまた涙が出て、もう脳内が崩壊した。
「き、もち……いぃ、もっと、もっと……してっ」
狂ったように求めてしまう。もう自分が何者でもない気がした。ただの欲望に落ちた女という生き物なだけ。ただそれだけだ。
「はぁ、ぁ……お前可愛すぎるわ。もっとしてほしいの?」
「ぅんっ、はぁ、ンンン、もっ……と、いっぱ……ぃ」
もっと、もっと抱きしめてほしい。壊れるくらい、どうなってもいいくらい、何も残らなくなるほど抱き潰してくれていい。
「……あつっ、溶けそう……」
溶けてしまいたい。
私もこのまま、彼の熱を包んで溶け落ちてしまいたい。
「ぜんぶ……っ、ほしい……」
体も心も熱も……こぼれる汗も吐き出される吐息さえ全部全部私が欲しい。
「――っ、は、もう、イくっ……」
漏らされる熱い声に胸が高鳴って彼の背中をギュッと引き寄せて抱きしめる。それに潰されるように抱き返されてそのまま何も考えられなくなった。
「……千夏?」
呼び声にフッと意識が戻って汗ばんで張り付く前髪をかき分けられて目を開ける。
「……フっ、力尽きてる」
「お手柔らかにって……言ったぁ」
このあとクリスマスメニューを作るのに体力奪うほど抱かれたら困るのだ。
「千夏が悪いわ」
「なんでよ……」
「コスプレだめだな。興奮しすぎてめちゃくちゃにしてしまう」
「……それは、良かったという意味ですか?」
「良かったです」
「……ちゃんとサンタさんだった?」
「こんなエロいサンタはいない」
二人抱き合って笑う。
幸せな時間、この他愛もないあったかい時間を永遠にしたい。それが私のクリスマスの願い事。ずっとずっと彼とこうしてバカみたいなことで笑って毎年クリスマスを過ごせたらいいな、そう思っていた。
それからなんとか体を起こしてクリスマスメニューを作った。
普段は買わないホールケーキを買ってそのまま食べたいという私の夢に誠くんは笑って付き合ってくれた。
「やばい、ケーキおいしすぎ。これ全部食べたらさすがに太るよね?」
「大丈夫じゃない?千夏、今日かなり運動したし」
笑いながら言われて恥ずかしいしかない。
「このあとどっか行く?」
「え?今から?」
「どっか……イルミネーションとか?」
誠くんはそう言ってくれたけどそこまで心惹かれなくて。
「……誠くんが行きたいなら……いいけど」
「俺は別に。千夏が行きたいところとかないの?俺、最近どこも連れてってやれてない気がするけど」
そう言われてクリームがついたスプーンを舐めながら考えてしまう。
「……何で?どっか連れて行かないとダメなの?」
「そういうわけではないけど……クリスマスも忘れてるしさ。俺、さすがにヤバくないか?」
「なにがヤバいの?」
「彼氏としてヤバくないかって話」
「……そうなの?そもそも今年のクリスマスって平日だったし。日にちはズレたかもしれないけど、こうして一緒にクリスマス過ごしてて何もヤバいことないって思うけど。私は、この家で誠くんとゆっくりしてるの好き。一緒にいたい人と大好きな場所で幸せな気持ちでいてる。何がダメなのかわかんない」
そう言ったら誠くんが黙ってしまった。
面白味のない女と思われただろうか。せっかく連れ出してやろうと言う気持ちを無下にしてしまったかな、そう思ったけど目の前のケーキに我慢できなくて聞いてしまった。
「ねぇ、ここのチョコのところ全部食べてもいい?」
「……お前さぁ」
「だめ?」
「……全部好きなところ食っていいよ」
「いいの?」聞くと頷いてくれた。
「やったぁ、嬉しい」スプーンで大きく切っているとその手をいきなり掴まれた。
「あ、やっぱり食べたい?」
「千夏さ、一緒に暮らさない?」
(へ?)
―――――――――――――――――
初めてのクリスマスなのに日にちを忘れてプレゼントさえやってない。
せめてどこか連れてやりたいと思ったのにどこにも行かなくていいと言う。
「私は、この家で誠くんとゆっくりしてるの好き。一緒にいたい人と大好きな場所で幸せな気持ちでいてる。何がダメなのかわかんない」
そう言う千夏をもう閉じ込めたくなった。
一緒に暮らさないか、その言葉に千夏の体は固まった。
「……ここで?」
「ここでもいいし、別に引っ越してもいいし」
「えっと……はやくない?」早いとは?
「同棲ってこと?付き合ってまだ一年も経ってないよ?」
「結構前から考えてたけど」
「え?!」そんなに驚くことか。
視線をそらしてどこかそわそわした表情を見せながらスプーンでケーキをほじくり始めた。
「えっと……すごい嬉しいお誘いなんですけど」
「けど?」
言いにくそうに言葉を選んでいる。
「なに?言いたいことは言って?」
そういうと、千夏はうーん……と悩みながら決心したように言った。
「私、同棲反対派」
(気持ちいいほどハッキリ言うな)
「なるほど。理由は?」
「同棲するなら結婚したい派。ごめん、気にしないで」
「ふうん、じゃあ結婚しようか」
「は?」
「だから、結婚」
丸い目がさらに丸くなる。
「あーっと……ん?え?誠くん、本気で言ってるの?」
「本気だけど」
しれっと言ったら千夏は息を呑んだ。
「――そ、それこそ、早くない?」
「そう?このまま付き合って一年経っても、そのあと半年後にしてもそんな変わんないだろ」
「待って」「なに?」「待って待って」「だからなに?」
千夏は相変わらず待ってが多い。
「お互いいい歳だし、別に遅かれ早かれだろ。俺は一緒に暮らしたいし、千夏が結婚しないと暮らせないって言うなら、結婚したらいいと思う。ダメ?」
「ダメって聞くのは私の方だと思うけど」
「うん?なんで?」
「いや、だって、え、あ……ダメ、じゃない、の?」
「ダメじゃないよ」
「ってそうじゃなくて!」
「なんだよ、なにがそんな引っかかるわけ?」
いちいち突っかかってくるから呆れて笑ってしまう。
「逆になんでそんな簡単に言うの?笑うところじゃないよ?結婚だよ?結婚ってそんな簡単に決めていいものじゃないよ?」
「別に簡単に決めたつもりはないけど。千夏は俺と結婚は考えられないってこと?」
「したいよっ!」半泣きになって言う。
(おい、いちいち可愛いな)
「結婚しようか」
プロポーズをこんな簡単に言ってしまって、はっと気づく。
(あ、これか?千夏の言いたいことって)
「ごめん、もっとちゃんとやれって話だよな?」
「違う……」そんなんじゃない、そう言って首をぶんぶん振った。
潤んだ瞳から涙を溢れさせて言う。
「――わたしで、いいの?」
(ああ、そうか。千夏はいつもこうだったよな)
付き合うときからそうだった。自己評価が低くていつも自分のことを卑下してる。
「……千夏がいい」
ゆびさきを絡めて言う。
「千夏以外、もう考えられない」
わかっているけど――。
攻めまくられる快感と羞恥心が入り混じって襲ってくる恐怖に耐えられなくなる。
ペロッと涙を舐められて、とんでもなく優しい瞳で見つめてくるから、やってる事の性悪さと甘い態度にもう胸が振り切れそうで。
「やぁ、だ……もぅ……っ――た、ぃっ」
「ん?」
(だから聞こえてるよねぇ?!)
「もぅ、ばかぁっ!ぅ――っん、イキたいのぉ、もぅイきたいぃっ……きちくぅ!いじわるしないでぇっ」
負けて泣き叫んでいた。
「――鬼畜」プッと吹き出したら、ズンっと奥に硬いものが押し入れられてくる。
「んあんっ!!」
「あったか……はぁ、ヌルヌルすぎる」
気持ちいいな?そう言って優しい声で囁くからまた涙が出て、もう脳内が崩壊した。
「き、もち……いぃ、もっと、もっと……してっ」
狂ったように求めてしまう。もう自分が何者でもない気がした。ただの欲望に落ちた女という生き物なだけ。ただそれだけだ。
「はぁ、ぁ……お前可愛すぎるわ。もっとしてほしいの?」
「ぅんっ、はぁ、ンンン、もっ……と、いっぱ……ぃ」
もっと、もっと抱きしめてほしい。壊れるくらい、どうなってもいいくらい、何も残らなくなるほど抱き潰してくれていい。
「……あつっ、溶けそう……」
溶けてしまいたい。
私もこのまま、彼の熱を包んで溶け落ちてしまいたい。
「ぜんぶ……っ、ほしい……」
体も心も熱も……こぼれる汗も吐き出される吐息さえ全部全部私が欲しい。
「――っ、は、もう、イくっ……」
漏らされる熱い声に胸が高鳴って彼の背中をギュッと引き寄せて抱きしめる。それに潰されるように抱き返されてそのまま何も考えられなくなった。
「……千夏?」
呼び声にフッと意識が戻って汗ばんで張り付く前髪をかき分けられて目を開ける。
「……フっ、力尽きてる」
「お手柔らかにって……言ったぁ」
このあとクリスマスメニューを作るのに体力奪うほど抱かれたら困るのだ。
「千夏が悪いわ」
「なんでよ……」
「コスプレだめだな。興奮しすぎてめちゃくちゃにしてしまう」
「……それは、良かったという意味ですか?」
「良かったです」
「……ちゃんとサンタさんだった?」
「こんなエロいサンタはいない」
二人抱き合って笑う。
幸せな時間、この他愛もないあったかい時間を永遠にしたい。それが私のクリスマスの願い事。ずっとずっと彼とこうしてバカみたいなことで笑って毎年クリスマスを過ごせたらいいな、そう思っていた。
それからなんとか体を起こしてクリスマスメニューを作った。
普段は買わないホールケーキを買ってそのまま食べたいという私の夢に誠くんは笑って付き合ってくれた。
「やばい、ケーキおいしすぎ。これ全部食べたらさすがに太るよね?」
「大丈夫じゃない?千夏、今日かなり運動したし」
笑いながら言われて恥ずかしいしかない。
「このあとどっか行く?」
「え?今から?」
「どっか……イルミネーションとか?」
誠くんはそう言ってくれたけどそこまで心惹かれなくて。
「……誠くんが行きたいなら……いいけど」
「俺は別に。千夏が行きたいところとかないの?俺、最近どこも連れてってやれてない気がするけど」
そう言われてクリームがついたスプーンを舐めながら考えてしまう。
「……何で?どっか連れて行かないとダメなの?」
「そういうわけではないけど……クリスマスも忘れてるしさ。俺、さすがにヤバくないか?」
「なにがヤバいの?」
「彼氏としてヤバくないかって話」
「……そうなの?そもそも今年のクリスマスって平日だったし。日にちはズレたかもしれないけど、こうして一緒にクリスマス過ごしてて何もヤバいことないって思うけど。私は、この家で誠くんとゆっくりしてるの好き。一緒にいたい人と大好きな場所で幸せな気持ちでいてる。何がダメなのかわかんない」
そう言ったら誠くんが黙ってしまった。
面白味のない女と思われただろうか。せっかく連れ出してやろうと言う気持ちを無下にしてしまったかな、そう思ったけど目の前のケーキに我慢できなくて聞いてしまった。
「ねぇ、ここのチョコのところ全部食べてもいい?」
「……お前さぁ」
「だめ?」
「……全部好きなところ食っていいよ」
「いいの?」聞くと頷いてくれた。
「やったぁ、嬉しい」スプーンで大きく切っているとその手をいきなり掴まれた。
「あ、やっぱり食べたい?」
「千夏さ、一緒に暮らさない?」
(へ?)
―――――――――――――――――
初めてのクリスマスなのに日にちを忘れてプレゼントさえやってない。
せめてどこか連れてやりたいと思ったのにどこにも行かなくていいと言う。
「私は、この家で誠くんとゆっくりしてるの好き。一緒にいたい人と大好きな場所で幸せな気持ちでいてる。何がダメなのかわかんない」
そう言う千夏をもう閉じ込めたくなった。
一緒に暮らさないか、その言葉に千夏の体は固まった。
「……ここで?」
「ここでもいいし、別に引っ越してもいいし」
「えっと……はやくない?」早いとは?
「同棲ってこと?付き合ってまだ一年も経ってないよ?」
「結構前から考えてたけど」
「え?!」そんなに驚くことか。
視線をそらしてどこかそわそわした表情を見せながらスプーンでケーキをほじくり始めた。
「えっと……すごい嬉しいお誘いなんですけど」
「けど?」
言いにくそうに言葉を選んでいる。
「なに?言いたいことは言って?」
そういうと、千夏はうーん……と悩みながら決心したように言った。
「私、同棲反対派」
(気持ちいいほどハッキリ言うな)
「なるほど。理由は?」
「同棲するなら結婚したい派。ごめん、気にしないで」
「ふうん、じゃあ結婚しようか」
「は?」
「だから、結婚」
丸い目がさらに丸くなる。
「あーっと……ん?え?誠くん、本気で言ってるの?」
「本気だけど」
しれっと言ったら千夏は息を呑んだ。
「――そ、それこそ、早くない?」
「そう?このまま付き合って一年経っても、そのあと半年後にしてもそんな変わんないだろ」
「待って」「なに?」「待って待って」「だからなに?」
千夏は相変わらず待ってが多い。
「お互いいい歳だし、別に遅かれ早かれだろ。俺は一緒に暮らしたいし、千夏が結婚しないと暮らせないって言うなら、結婚したらいいと思う。ダメ?」
「ダメって聞くのは私の方だと思うけど」
「うん?なんで?」
「いや、だって、え、あ……ダメ、じゃない、の?」
「ダメじゃないよ」
「ってそうじゃなくて!」
「なんだよ、なにがそんな引っかかるわけ?」
いちいち突っかかってくるから呆れて笑ってしまう。
「逆になんでそんな簡単に言うの?笑うところじゃないよ?結婚だよ?結婚ってそんな簡単に決めていいものじゃないよ?」
「別に簡単に決めたつもりはないけど。千夏は俺と結婚は考えられないってこと?」
「したいよっ!」半泣きになって言う。
(おい、いちいち可愛いな)
「結婚しようか」
プロポーズをこんな簡単に言ってしまって、はっと気づく。
(あ、これか?千夏の言いたいことって)
「ごめん、もっとちゃんとやれって話だよな?」
「違う……」そんなんじゃない、そう言って首をぶんぶん振った。
潤んだ瞳から涙を溢れさせて言う。
「――わたしで、いいの?」
(ああ、そうか。千夏はいつもこうだったよな)
付き合うときからそうだった。自己評価が低くていつも自分のことを卑下してる。
「……千夏がいい」
ゆびさきを絡めて言う。
「千夏以外、もう考えられない」
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