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結婚エトセトラ
Hello baby……宝物を見つけに②
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心拍の確認が取れて母子手帳をもらってようやく実感がもてた。それは誠くんも同じみたいで。
「安定期に入る前に佐藤にだけは伝えた方がいい」
誠くんにそう言われた。
「でも初期流産とかもあるって聞くから安定期に入ってからの方がよくない?」
「そもそも一回倒れてるんだから言った方がいい。初期だから色々あるだろうし仕事を続けるなら必要最低限の人間に周知させておく方がいいよ。俺も安心だし」
倒れたことを言われるともう何も言い返せなくて頷いた。
「わかりました。じゃあ明日私から伝えます」
「ん。よろしく」
(今のすごい職場っぽかった……)
久しぶりの上司の久世さん、みたいな感じで胸キュン。私はいつまで誠くんにときめき続けるんだろう。もう旦那様だ、上司でもない。想像しなかった関係で傍にいれるのに。
(しかももうすぐパパとママ?)
ニヤニヤが止まらない私だ。
そして私は翌日佐藤さんが一人の時を見計らって声をかけた。
「……おめでとう」
そう言った佐藤さんの顔は少し驚いている。
「またご迷惑おかけすることもあると思いますけど……できる範囲で精一杯務めさせていただきます」
頭を下げると笑われた。
「精一杯しないで。自分の体調優先でお願いします。そうかぁ、じゃあ同級生だね」
「え?」
「うちも今安定期入ったんだ」
「――え、え?そうなんですか?」
「うん、一回流れててさ。それからちょっと嫁も落ち込んでたんだけど、また授かれて。でもナーバスな時も多くてさ。神経質になってたっていうか……ようやく安定期入ったでやっと落ち着いてきた。普通に暮らしててもそんなことは起きるから仕事してたら無理もしがちだし本当に負担にならないようにして?」
そんな思いやり溢れる佐藤さんの言葉に胸がじーんとする。
「負担はかけないようにするけど、調整は菱田さんがキッチリしてね?」
「はい、ありがとうございます」
「良かったね。久世も喜んでる?」
「――多分?心拍とれてやっと信じたって感じでしたけど」
「久世らしいな」
「安定期に入ってから報告した方がいいんじゃないかって言ったんですけど、一回ご迷惑かけてるので佐藤さんには言った方がいいって言われて……」
「そうだね。俺でもそう言うと思うな。言ってくれて良かった、何かあってからじゃ遅いしフォローできる方がい。周りにはまたおいおいでいいけど……勝手にバレていくだろうな。なんかあっても久世がどうとでもするよ。任せとこう」
佐藤さんと誠くんの信頼関係ってすごいなと最近よく感じる。思考回路が同じというか、先を見越す矛先が全然ブレないからすごい。タイプは少し違うけど同じような理解ある上司で幸せだなとつくづく感じていた。
「とりあえず体優先で。無理はしない、それは徹底して下さい」
佐藤さんの優しいけれど厳しい指示に、はいと頷いた。けれど実際早めに伝えたのは正解だった。しばらくしたら私の体にはしっかり異変が訪れて吐きつわりが始まったのだ。
「……ぅ、うっ……え」
なにも食べてないのに船酔いみたいな吐き気が常に襲ってきてトイレに籠る。
「千夏、大丈夫?俺も休もうか?」
「……いい、いつものことだし。もう時間でしょ?遅刻しちゃうから行って?」
「なんかほしいもんあったらラインいれて?買ってくるから」
「……ぅん」
夕方になるとお腹が空いて無性にマックのポテトが食べたくなる。あとレトルトカレー。ストックが尽きたので誠くんに甘えてラインをいれた。
(食べてから絶対ギットギトのモノを吐くのになんでこんなに食べたいんだろ……謎)
―――
携帯を見て考える風に見えたのか、佐藤が「どうした?」と聞いてくる。
「なぁ、なんでこんな脂っこいもん欲しがるの?夏目もそうだった?」
「なに?」
「マックのポテトとレトルトカレー食いたいって。一昨日も買って帰ったんだけど、ポテト」
「妊娠つわりのマックのポテトってあるあるらしいよ。うち、それにUFOだった」
(おえ。聞くだけで気持ち悪い組み合わせ)
「うちもつわりひどい方だったけど、どっちかっていうと食べづわり?常になんか食ってたなぁ」
「ふーん……どっちが辛いとかないだろうけど、食ってるほうが楽だろうな、千夏は……食うの好きだから」
「そんな吐いてんの?」
「二キロ落ちたって」
「そりゃかわいそうだな」
そうこういってると妊娠も四ヶ月に入り、千夏のつわり時期がいきなり抜けた。
「ごはんが美味しい~」
嬉しそうに食べる姿は見ていて俺も嬉しい。千夏はやっぱり何か食べてるのがいい。そして二キロ落ちた体重は一気に三キロ戻ってしまい先生に注意を受けて帰ってきては落ち込んでいた。
つわり時期は休みがちだったことで周囲になんとなく千夏の妊娠がバレかけたので佐藤がグループ内に公表したら、開発の方に一気に周知された。あれ以来倒れたり、休んだりすることもなかったが千夏が妊婦扱いをされることが日常になり、千夏自身も仕事を順調にこなしつつ妊婦生活を満喫していた。
そんなある日。
前に高宮から話のあった佐藤のところとうちの妊娠のお祝いを名目に同期会が行われた。夏目――佐藤の奥さんが九ヶ月のデカい腹を抱えてやってきた。
「ここから最後に大きくなるっていうからビビるよね~もうね、腰痛いし足浮腫むし臨月怖いんだけど」
「逆子治ったの?」
金田の問いに夏目が首を横に振りつつ答える。
「まだー。毎日ストレッチしてるけど変わんないぽい」
夏目の腹のようにいずれ千夏もこれくらいに膨らむのかと思うとなんだか信じ難い。
「久世くんところは性別わかったの?」
夏目が聞いてくる。
「男っぽい」
「うちと一緒じゃん~、いっぱい遊ばせようね。てかさ、私まだ奥さんのこと知らないんだけど。情報だけでいうとかなり身近な人なのにさぁ」
「あれ、笑美って会ったことないの?」
「ないよ、私ずっと関西支社だもん。結婚してこっち来てるし」
「なんで金田は知ってるの?絡みあるっけ」
佐藤の問いに金田が答える。
「ロッカー背中合わせなんだよね。朝とか帰りたまに会うと軽く世間話くらいしてるよ?感じのいい子。しっかりしてるし……いつもめっちゃ可愛い下着つけてる、ね、久世くん」
「……俺に振るな」
「ね~呼びなよ~」
突拍子もない夏目の言葉に目を剥いた。
「お、それいいな。俺もまだ見てないんだよ、久世の奥さん」
森山まで便乗してくるからおいおいと思う。けれど実際その通りで、森山は同じ社内にいるのに未だに千夏に会ったことがない。
「高宮くんも和泉も薫も知ってるんでしょ?私と森山だけじゃん、知らないの。久世くんが呼びにくいなら修二が呼んでよ」
「旦那が呼ばずに上司の俺が呼べばただのパワハラだろうが」
「めんどくさ!じゃあいいよ、私が話すから。久世くん呼んじゃダメなの?」
「……俺はいいけど……このメンツに来たいとかなるか?」
(ならねぇだろ。そもそも来させたくないし絡ませたくないんだが)
「俺は菱田ちゃんに会いたい~」
「俺も~」
高宮と和泉のチャラいコンビがさらに煽るからイラッとする。
「お前らうるさい」
「いいなら電話して。大丈夫無理強いはしないから」
目力の強い夏目にキッと睨まれるように見つめられて言葉に詰まる。
(夏目はそう言うけど――)
多分周りもみんな思っている。夏目は元営業トップ、とにかく口が立つのだ。
時間はまだ18時半。今日は買い物したいからと行ってたからもしかしたらまだ外かもしれない。夏目を説得するより諦めた方が早いと判断して携帯を取り出して電話をかける。何回かの通信音の後に千夏の声が耳に震えた。
『もしもし?』
「ごめん、今平気?」
『平気だよ。どうしたの?』
背後のざわつく音で外なのがわかる。
「あー、今飲んでる」
『……うん。知ってる』
「えっと――夏目……佐藤の奥さんが……」
歯切れの悪い俺をイラつくように、夏目が手をちょいちょいとして携帯を貸せと促してくる。
(もうやだわ、怖いわーこいつー)
「ごめん、ちょっと替わる」
圧に負けた。
「久世が圧に負けるのって夏目と金田くらいだよな」
和泉の言葉に高宮が笑っている。
「もしもし、はじめまして。佐藤の家内です。いつもお世話になってます。いえいえ、こちらこそ突然電話ごめんなさいね。ううん、千夏さんこそおめでとうございます、うん、あはは、ありがとう。うん、一緒に出産までがんばろうね。私も初めてのことだしまた相談乗ってほしい、うん、ぜひぜひ!それでさぁ……突然こんなの困るってわかってるんだけど。私、ずっと千夏さんに会いたくて。もし今時間が合うなら来てもらえないかなって。あ、大丈夫!ほぼ知った人ばっかり。私ともう一人事業部の人がいるけど体が大きいだけの人だから平気!高宮くんと和泉と総務の金田でしょ、そんで旦那達。知ってるでしょ?全然!むしろ呼ぼうってなったからこうして久世くんに頼んで電話させてもらってるんだから!全然!むしろ来て!会いたい!うん、嬉しい!待ってるね、ありがとう!じゃあ久世くんに変わりまーす」
はい、よろしく、と携帯を突き返された。
「……捲し立て方がすごい」
和泉が言う。
「否定できるタイミングがまずないんだよ。こっちの意見なんか聞く気ねぇーの」
高宮がそう言って同意した。
「俺、デカいだけの人だって」
森山が呆れて呟くから、それに金田が笑って返す。
「笑美だよ?雑な説明になるでしょ」
「雑すぎんだろ。お前の嫁どうなってんだ、マジで」
森山に言われて佐藤が肩をすくめた。
「なんかすいません」
「えー!めっちゃ楽しみだわ!どんな子かな!」
るんるんな夏目に金田が言う。
「菱田さん、笑美と趣味合うと思うな。こないだ持ってたマークの鞄可愛かったな~。どこのコスメ使ってるか聞いてみよ~」
「女子力高そうだね、薫がそう言うなら」
「高いね。しかも媚びてない感じなんだよね、あれが良き。自分の好きなものちゃんとある、みたいな感じ。私は好きだよ、あの子」
「なら私も間違いなく好きだな」
女子たちの会話を聞きながら千夏がこの二人とこれから絡むのかと思うとゾッとした。
「安定期に入る前に佐藤にだけは伝えた方がいい」
誠くんにそう言われた。
「でも初期流産とかもあるって聞くから安定期に入ってからの方がよくない?」
「そもそも一回倒れてるんだから言った方がいい。初期だから色々あるだろうし仕事を続けるなら必要最低限の人間に周知させておく方がいいよ。俺も安心だし」
倒れたことを言われるともう何も言い返せなくて頷いた。
「わかりました。じゃあ明日私から伝えます」
「ん。よろしく」
(今のすごい職場っぽかった……)
久しぶりの上司の久世さん、みたいな感じで胸キュン。私はいつまで誠くんにときめき続けるんだろう。もう旦那様だ、上司でもない。想像しなかった関係で傍にいれるのに。
(しかももうすぐパパとママ?)
ニヤニヤが止まらない私だ。
そして私は翌日佐藤さんが一人の時を見計らって声をかけた。
「……おめでとう」
そう言った佐藤さんの顔は少し驚いている。
「またご迷惑おかけすることもあると思いますけど……できる範囲で精一杯務めさせていただきます」
頭を下げると笑われた。
「精一杯しないで。自分の体調優先でお願いします。そうかぁ、じゃあ同級生だね」
「え?」
「うちも今安定期入ったんだ」
「――え、え?そうなんですか?」
「うん、一回流れててさ。それからちょっと嫁も落ち込んでたんだけど、また授かれて。でもナーバスな時も多くてさ。神経質になってたっていうか……ようやく安定期入ったでやっと落ち着いてきた。普通に暮らしててもそんなことは起きるから仕事してたら無理もしがちだし本当に負担にならないようにして?」
そんな思いやり溢れる佐藤さんの言葉に胸がじーんとする。
「負担はかけないようにするけど、調整は菱田さんがキッチリしてね?」
「はい、ありがとうございます」
「良かったね。久世も喜んでる?」
「――多分?心拍とれてやっと信じたって感じでしたけど」
「久世らしいな」
「安定期に入ってから報告した方がいいんじゃないかって言ったんですけど、一回ご迷惑かけてるので佐藤さんには言った方がいいって言われて……」
「そうだね。俺でもそう言うと思うな。言ってくれて良かった、何かあってからじゃ遅いしフォローできる方がい。周りにはまたおいおいでいいけど……勝手にバレていくだろうな。なんかあっても久世がどうとでもするよ。任せとこう」
佐藤さんと誠くんの信頼関係ってすごいなと最近よく感じる。思考回路が同じというか、先を見越す矛先が全然ブレないからすごい。タイプは少し違うけど同じような理解ある上司で幸せだなとつくづく感じていた。
「とりあえず体優先で。無理はしない、それは徹底して下さい」
佐藤さんの優しいけれど厳しい指示に、はいと頷いた。けれど実際早めに伝えたのは正解だった。しばらくしたら私の体にはしっかり異変が訪れて吐きつわりが始まったのだ。
「……ぅ、うっ……え」
なにも食べてないのに船酔いみたいな吐き気が常に襲ってきてトイレに籠る。
「千夏、大丈夫?俺も休もうか?」
「……いい、いつものことだし。もう時間でしょ?遅刻しちゃうから行って?」
「なんかほしいもんあったらラインいれて?買ってくるから」
「……ぅん」
夕方になるとお腹が空いて無性にマックのポテトが食べたくなる。あとレトルトカレー。ストックが尽きたので誠くんに甘えてラインをいれた。
(食べてから絶対ギットギトのモノを吐くのになんでこんなに食べたいんだろ……謎)
―――
携帯を見て考える風に見えたのか、佐藤が「どうした?」と聞いてくる。
「なぁ、なんでこんな脂っこいもん欲しがるの?夏目もそうだった?」
「なに?」
「マックのポテトとレトルトカレー食いたいって。一昨日も買って帰ったんだけど、ポテト」
「妊娠つわりのマックのポテトってあるあるらしいよ。うち、それにUFOだった」
(おえ。聞くだけで気持ち悪い組み合わせ)
「うちもつわりひどい方だったけど、どっちかっていうと食べづわり?常になんか食ってたなぁ」
「ふーん……どっちが辛いとかないだろうけど、食ってるほうが楽だろうな、千夏は……食うの好きだから」
「そんな吐いてんの?」
「二キロ落ちたって」
「そりゃかわいそうだな」
そうこういってると妊娠も四ヶ月に入り、千夏のつわり時期がいきなり抜けた。
「ごはんが美味しい~」
嬉しそうに食べる姿は見ていて俺も嬉しい。千夏はやっぱり何か食べてるのがいい。そして二キロ落ちた体重は一気に三キロ戻ってしまい先生に注意を受けて帰ってきては落ち込んでいた。
つわり時期は休みがちだったことで周囲になんとなく千夏の妊娠がバレかけたので佐藤がグループ内に公表したら、開発の方に一気に周知された。あれ以来倒れたり、休んだりすることもなかったが千夏が妊婦扱いをされることが日常になり、千夏自身も仕事を順調にこなしつつ妊婦生活を満喫していた。
そんなある日。
前に高宮から話のあった佐藤のところとうちの妊娠のお祝いを名目に同期会が行われた。夏目――佐藤の奥さんが九ヶ月のデカい腹を抱えてやってきた。
「ここから最後に大きくなるっていうからビビるよね~もうね、腰痛いし足浮腫むし臨月怖いんだけど」
「逆子治ったの?」
金田の問いに夏目が首を横に振りつつ答える。
「まだー。毎日ストレッチしてるけど変わんないぽい」
夏目の腹のようにいずれ千夏もこれくらいに膨らむのかと思うとなんだか信じ難い。
「久世くんところは性別わかったの?」
夏目が聞いてくる。
「男っぽい」
「うちと一緒じゃん~、いっぱい遊ばせようね。てかさ、私まだ奥さんのこと知らないんだけど。情報だけでいうとかなり身近な人なのにさぁ」
「あれ、笑美って会ったことないの?」
「ないよ、私ずっと関西支社だもん。結婚してこっち来てるし」
「なんで金田は知ってるの?絡みあるっけ」
佐藤の問いに金田が答える。
「ロッカー背中合わせなんだよね。朝とか帰りたまに会うと軽く世間話くらいしてるよ?感じのいい子。しっかりしてるし……いつもめっちゃ可愛い下着つけてる、ね、久世くん」
「……俺に振るな」
「ね~呼びなよ~」
突拍子もない夏目の言葉に目を剥いた。
「お、それいいな。俺もまだ見てないんだよ、久世の奥さん」
森山まで便乗してくるからおいおいと思う。けれど実際その通りで、森山は同じ社内にいるのに未だに千夏に会ったことがない。
「高宮くんも和泉も薫も知ってるんでしょ?私と森山だけじゃん、知らないの。久世くんが呼びにくいなら修二が呼んでよ」
「旦那が呼ばずに上司の俺が呼べばただのパワハラだろうが」
「めんどくさ!じゃあいいよ、私が話すから。久世くん呼んじゃダメなの?」
「……俺はいいけど……このメンツに来たいとかなるか?」
(ならねぇだろ。そもそも来させたくないし絡ませたくないんだが)
「俺は菱田ちゃんに会いたい~」
「俺も~」
高宮と和泉のチャラいコンビがさらに煽るからイラッとする。
「お前らうるさい」
「いいなら電話して。大丈夫無理強いはしないから」
目力の強い夏目にキッと睨まれるように見つめられて言葉に詰まる。
(夏目はそう言うけど――)
多分周りもみんな思っている。夏目は元営業トップ、とにかく口が立つのだ。
時間はまだ18時半。今日は買い物したいからと行ってたからもしかしたらまだ外かもしれない。夏目を説得するより諦めた方が早いと判断して携帯を取り出して電話をかける。何回かの通信音の後に千夏の声が耳に震えた。
『もしもし?』
「ごめん、今平気?」
『平気だよ。どうしたの?』
背後のざわつく音で外なのがわかる。
「あー、今飲んでる」
『……うん。知ってる』
「えっと――夏目……佐藤の奥さんが……」
歯切れの悪い俺をイラつくように、夏目が手をちょいちょいとして携帯を貸せと促してくる。
(もうやだわ、怖いわーこいつー)
「ごめん、ちょっと替わる」
圧に負けた。
「久世が圧に負けるのって夏目と金田くらいだよな」
和泉の言葉に高宮が笑っている。
「もしもし、はじめまして。佐藤の家内です。いつもお世話になってます。いえいえ、こちらこそ突然電話ごめんなさいね。ううん、千夏さんこそおめでとうございます、うん、あはは、ありがとう。うん、一緒に出産までがんばろうね。私も初めてのことだしまた相談乗ってほしい、うん、ぜひぜひ!それでさぁ……突然こんなの困るってわかってるんだけど。私、ずっと千夏さんに会いたくて。もし今時間が合うなら来てもらえないかなって。あ、大丈夫!ほぼ知った人ばっかり。私ともう一人事業部の人がいるけど体が大きいだけの人だから平気!高宮くんと和泉と総務の金田でしょ、そんで旦那達。知ってるでしょ?全然!むしろ呼ぼうってなったからこうして久世くんに頼んで電話させてもらってるんだから!全然!むしろ来て!会いたい!うん、嬉しい!待ってるね、ありがとう!じゃあ久世くんに変わりまーす」
はい、よろしく、と携帯を突き返された。
「……捲し立て方がすごい」
和泉が言う。
「否定できるタイミングがまずないんだよ。こっちの意見なんか聞く気ねぇーの」
高宮がそう言って同意した。
「俺、デカいだけの人だって」
森山が呆れて呟くから、それに金田が笑って返す。
「笑美だよ?雑な説明になるでしょ」
「雑すぎんだろ。お前の嫁どうなってんだ、マジで」
森山に言われて佐藤が肩をすくめた。
「なんかすいません」
「えー!めっちゃ楽しみだわ!どんな子かな!」
るんるんな夏目に金田が言う。
「菱田さん、笑美と趣味合うと思うな。こないだ持ってたマークの鞄可愛かったな~。どこのコスメ使ってるか聞いてみよ~」
「女子力高そうだね、薫がそう言うなら」
「高いね。しかも媚びてない感じなんだよね、あれが良き。自分の好きなものちゃんとある、みたいな感じ。私は好きだよ、あの子」
「なら私も間違いなく好きだな」
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