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結婚エトセトラ
Hello baby……宝物を見つけに③
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(ラインに添付された店はここっぽいんだけどな……)
若干の不安を抱きつつも、店の名前を再度確認して扉を開けたら店員さんに勢いよく声をかけられてしまった。
「いらっしゃいませ!ご予約のお客様ですか?」
「いえ、連れが先に来てるんですけど」
しまった、先に誠くんに電話すれば良かった……は後の祭りで。言葉に詰まりかけたら「もしかして菱田さん?」と、聞き慣れない声に振り向いた。
大柄だけど柔らかい雰囲気のその人は屈託のない笑顔で近づいてくる。
「はい、あの……」
「ああ、良かった!思わず声かけて間違えてたらどうしようかと。初めまして、大きいだけの森山です」
(大きいだけの……?)
その言葉にさっきの佐藤さんの奥さんの電話の内容が結びつく。
「森山さん!はじめまして」
仕事で何回か依頼を受けたことがあるけど会うのは初めてだ。大柄な人と聞いていたけど本当に大きい。ラグビー部?と思うようなガッチリした大柄さだ。
「何回か依頼も頼んでたのに会うのが今って不思議。やっと会えたわぁ、いつも定期測定もありがとう!あとおめでとう!」
自分のお腹を撫でながらそう言ってくれて好感度しか沸かない。誠くんの同期の人たちの中で少しだけ雰囲気が違うのは体育会系だからなのか。体が大きくても怖い雰囲気はひとつもない。人柄の良さがにじみ出ている優しい人だった。
「部屋こっち」
手招きされて付いて行きつつもこそっと伺ってみる。
「あの……甘えて来てしまいましたが、本当にお邪魔して良かったんですか?」
「もちろん!呼んだのはこっちだし、むしろ断れなかったよな?夏目怖いもんな、久世が断れないのに無理だよなぁ」
わはは、と豪快に笑われてしばし固まる。
(え。誠くん、断りたかったの?)
余計に来てよかったんだろうか……悶々としかけてももう部屋の前。襖を開けられて固まった私の背中を森山さんがそっと押してくれたことで踏みとどまっていた足が一歩前に出る。
「奥さん到着~!」
踏み込んだ部屋を視界に入れた瞬間にまた固まる。
(こ、これはっ!)
なんだここの集まりは。顔面スキルが高すぎる華やかな空気感!どうしてここまで揃ってしまった?!そう突っ込みたくなるほどの面々。
(いやいや、そもそも誠くん単体でかっこいんですけどね?!高宮さん、社内で多分トップ3くらいのモテ社員でね?和泉さんってチャラッとはしてるけどめちゃくちゃきゃあきゃあ言われてるポジでね?佐藤さんって物静かな癒し系クール上司でかっこよくてね?金田さん!アイドルばりに可愛いんですよ!)
目が眩む、はこのことか。この空間の中にちんちくりんの私が入っていいんだろうか。場違い感が半端ない。
「菱田さ~ん♡こっちこっち~」
アイドル金田さんがまたきゅるっとした可愛い声で手招きしてくれる。金田さんが誠くんの同期とは知らなかったんだ。以前、”久世くん”と呼んでいたことに多少の違和感を持ったものの年齢が見えなくて。
(やっぱり三十くらいってこと?私より年上なの?み、見えない……)
「ちょっとぉ、なに?森山入ってよ……って、千夏さん?来た?!」
初めて聞く声に振り向くものの森山さんが陰になって見えない。後ろを気にしていたらグイっと手首を掴まれて体がその力の方に向けられる。
「千夏、いいから入れ」
誠くんに手を引かれて部屋に入ると森山さんの背中から顔を出したのは黒髪をゆるく巻いた綺麗な人だった。
(今度はモデルが現れた……)
「あ……」
それでもいつかの後ろ姿が瞬間で蘇った。誠くんが名古屋に出張だった時、駅で一緒にいた女性を思い出してそこでようやく納得できる。
(本当に佐藤さんの奥さんだった……)
「想像してたのと違った!ちっちゃぁーい!可愛いねぇ、へぇぇ、ふぅーん」
「あの、佐藤さんの……?」
「笑美です。はじめまして、やっと会えたね」
ニコッと笑うその顔、ウルトラ眩しい!思わず目を瞑りかけるほどである。それでも私も同意見だった。勝手ながら想像していた佐藤さんの奥様……佐藤さんが静かな人だから大人しい感じの奥さんなのかとなと思いきや……。
「ちょっと、久世くん!家で独り占めしてんでしょ。千夏ちゃんはこっちにちょうだい。手!離して」
なかなかガツガツした感じの方である。サバサバよりかはガツガツ系……不快感はないけれども。
(バリバリ姉御肌!みたいな方かな……)
「……夏目さ、千夏が引いてるから」
「どこが?引いてないでしょ。私の印象悪くなるようなこと言わないでよ」
若干引きはあったのは事実だが、もちろんそんな事は言えない。
「社畜な旦那なんかほっといてさぁ、こっちで色々話そ~。家での久世くんどんなんか聞かせて~」
「そうそう、色々聞きたいことあるのよ、ふふふ」
綺麗な顔だけに含み笑いをしても目を奪われる。そして誠くんを言いくるめる女性陣……なかなか強い。誠くんは完全に憂鬱そうな顔をしている。それを見上げていると目が合って呆れたようにフッと微笑まれた。その表情では私が来たことに困っているという感じは見受けられないんだけれど。
「……」
まだ不安が隠せない私の気持ちを汲み取ったのか。頭をポンッと大きな掌に撫でられて言われた。
「食われそうになったら逃げて来いよ?」
「え?」
「ちょっと!だから印象わるくなるようなこと言わないでよ!誰が食うのよ」
「夏目だよ」
「食ってほしいわけぇ?この可愛い子猫」
ぎゅうっと背後から抱きしめられて大きなお腹が体に押し付けられると何とも言えない気持ちになる。
「あ、あの、お腹負担になっちゃう!」
「やだぁ、可愛い良い子!食べちゃおうかな、本当に」
むぎゅっと今度は頬を両手で包まれて私今絶対変な顔。
「マジでやめて」
「大丈夫、私骨まで綺麗に食べれるタイプだから」
真面目な声で言い返した誠くんに真面目な声で返す佐藤さんの奥様。
「さいっあくだな」
「菱田ちゃんはもう骨も残らない」
和泉さんが言葉とは裏腹に面白そうに笑って、それに高宮さもまた楽しそうに同意している。はぁぁ、っと大きなため息をこぼした誠くんは横に座っていた佐藤さんに投げるように言った。
「お前の嫁なんとかしろ」
「いや、もうほんとすいません」
「まぁ、飲めや久世~諦めろ!」
森山さんに肩を組まれて奥に連れられた誠くんを見送りつつ私は女性陣の輪の中に連れられて……戸惑う暇もないくらい誠くんの同期会に参加することになってしまった。
―――
夏目と金田に挟まれる千夏は終始楽しそうである。
会話まではわからず、一体何を言われてるのか……そうは思うものの。
(楽しそ……)
横目に見てもそう思えるほど、ずっと笑顔で話し込んでいる千夏は可愛かった。夏目と金田に挟まれている分より可愛さが増す。同期二人は見てくれは確かに華やかなのだが性格が……もう性格が……。
同期としては仕事の面でも人間的にも信用は出来るものの、性的対象としては許容範囲外である。
(千夏みたいな可愛さがミクロでもあればな……あいつら女じゃねぇ)
そんな風に思っていることがバレたらぶっ殺される。
たまに高宮と和泉と森山がその輪に入ってはこっちに戻ってを繰り返している。佐藤と俺だけは一切あの輪の中には入らない――入れない、ともいうが。
「絶対聞きたくないわ、俺」
佐藤の言葉に同意しかない。千夏にはさておき俺らの事でいい話なんかするわけがない。
「夏目って全然変わらないのな」
「子供産まれても変わらなさそう。もうあのまま死ぬよ、あいつきっと」
(それは怖すぎる)
「ねぇねぇ、そういえばさ、久世くん知ってた?」
いつのまにか金田が近くにきていた。千夏の様子をチラッとだけ見て会話が盛り上がってるのを確認して顔を寄せてくる。
「人事の柏木さんわかる?」
「わからん」
「うちらの二個上かな。朝熊さんところの同期って言ってた」
「朝熊?って本社の?」
「そうそう、そこの同期で柏木さんはずっとこっち勤務なんだけど……千夏ちゃんのこと前から狙ってたんだって。しかもね、杉崎部長から落とそうとしてたらしいよ」
佐藤と顔を見合わせる。
「で、時間かけて部長と関係作って、親しくなった部長にあいだに入ってもらってお見合い話まで持ってったんだってさ」
(お見合い?それは初耳だ)
「けど、久世くんと結婚したでしょ?その前に部長がストップかけてお見合いは流れたって話。久世くん、部長に話した?」
「した」
「それ、もう少し遅かったら千夏ちゃん、柏木さんとお見合いしてるよ?危なかったね」
「柏木さんってどんな人なの?」
佐藤が聞くと金田はう~ん、と空を仰いで考える。
「野心家でプライド高い系?ちょっとストーカーぽいっていうか、なんだろヤンデレタイプ?」
「「ストーカー?!」」
佐藤と声がハモってしまう。
「タイプ的にって話よ?本気でストーカーとかじゃなくねちっこそうって意味。部長がストップかけたのも納得いかないって感じでしつこく頼んだみたい。でもほら、それ久世くんが結婚するって言った直後とかでしょ?まだ公にはできないわけで、部長も理由はいえないじゃない?なんかそれでまた揉めたって聞いた」
内容にも驚くが、ここまで情報を掴む金田にも驚いている。そのせいで口を噤んでいる俺とは対称に佐藤が思ったことを突っ込んできた。
「今も人事にいるの?」
「本社に飛んで、人事部長補佐に昇進。怖いよねぇ」
「それってそのことが絡んでるってこと?」
佐藤の矢継ぎ早の問いに金田は肩をすくめる。
「タイミング的に疑うよな、そこ」
佐藤の苦笑いに俺の胸中も複雑だ。あの時部長の妙な沈黙はそういうことなのか?
「菱田さんってさー」
佐藤が笑いながら言い淀むと金田が引き継いだ。
「なかなかややこしいところに気に入られちゃってるよね。目の届かないところに配属されるならやめさせた方が絶対いいよ」
金田が笑っていうと「俺もそう思った」佐藤も同意した。
「教えてくれてありがと」
「和泉も色々知ってるけどまぁ情報量なら私の方が上かな」
金田がドヤるから佐藤と笑ってしまった。
「あいつ、無自覚だからなぁ……自分のことなんか誰も見てないと思ってるし」
「それは困ったちゃんだねぇ……よく今まで無傷でいられたね」
「そりゃ、杉崎さんのおかげだわな?」
「そうなるな」
三人で哀れみを含む目で会話に笑う千夏を見て呟いていた。
若干の不安を抱きつつも、店の名前を再度確認して扉を開けたら店員さんに勢いよく声をかけられてしまった。
「いらっしゃいませ!ご予約のお客様ですか?」
「いえ、連れが先に来てるんですけど」
しまった、先に誠くんに電話すれば良かった……は後の祭りで。言葉に詰まりかけたら「もしかして菱田さん?」と、聞き慣れない声に振り向いた。
大柄だけど柔らかい雰囲気のその人は屈託のない笑顔で近づいてくる。
「はい、あの……」
「ああ、良かった!思わず声かけて間違えてたらどうしようかと。初めまして、大きいだけの森山です」
(大きいだけの……?)
その言葉にさっきの佐藤さんの奥さんの電話の内容が結びつく。
「森山さん!はじめまして」
仕事で何回か依頼を受けたことがあるけど会うのは初めてだ。大柄な人と聞いていたけど本当に大きい。ラグビー部?と思うようなガッチリした大柄さだ。
「何回か依頼も頼んでたのに会うのが今って不思議。やっと会えたわぁ、いつも定期測定もありがとう!あとおめでとう!」
自分のお腹を撫でながらそう言ってくれて好感度しか沸かない。誠くんの同期の人たちの中で少しだけ雰囲気が違うのは体育会系だからなのか。体が大きくても怖い雰囲気はひとつもない。人柄の良さがにじみ出ている優しい人だった。
「部屋こっち」
手招きされて付いて行きつつもこそっと伺ってみる。
「あの……甘えて来てしまいましたが、本当にお邪魔して良かったんですか?」
「もちろん!呼んだのはこっちだし、むしろ断れなかったよな?夏目怖いもんな、久世が断れないのに無理だよなぁ」
わはは、と豪快に笑われてしばし固まる。
(え。誠くん、断りたかったの?)
余計に来てよかったんだろうか……悶々としかけてももう部屋の前。襖を開けられて固まった私の背中を森山さんがそっと押してくれたことで踏みとどまっていた足が一歩前に出る。
「奥さん到着~!」
踏み込んだ部屋を視界に入れた瞬間にまた固まる。
(こ、これはっ!)
なんだここの集まりは。顔面スキルが高すぎる華やかな空気感!どうしてここまで揃ってしまった?!そう突っ込みたくなるほどの面々。
(いやいや、そもそも誠くん単体でかっこいんですけどね?!高宮さん、社内で多分トップ3くらいのモテ社員でね?和泉さんってチャラッとはしてるけどめちゃくちゃきゃあきゃあ言われてるポジでね?佐藤さんって物静かな癒し系クール上司でかっこよくてね?金田さん!アイドルばりに可愛いんですよ!)
目が眩む、はこのことか。この空間の中にちんちくりんの私が入っていいんだろうか。場違い感が半端ない。
「菱田さ~ん♡こっちこっち~」
アイドル金田さんがまたきゅるっとした可愛い声で手招きしてくれる。金田さんが誠くんの同期とは知らなかったんだ。以前、”久世くん”と呼んでいたことに多少の違和感を持ったものの年齢が見えなくて。
(やっぱり三十くらいってこと?私より年上なの?み、見えない……)
「ちょっとぉ、なに?森山入ってよ……って、千夏さん?来た?!」
初めて聞く声に振り向くものの森山さんが陰になって見えない。後ろを気にしていたらグイっと手首を掴まれて体がその力の方に向けられる。
「千夏、いいから入れ」
誠くんに手を引かれて部屋に入ると森山さんの背中から顔を出したのは黒髪をゆるく巻いた綺麗な人だった。
(今度はモデルが現れた……)
「あ……」
それでもいつかの後ろ姿が瞬間で蘇った。誠くんが名古屋に出張だった時、駅で一緒にいた女性を思い出してそこでようやく納得できる。
(本当に佐藤さんの奥さんだった……)
「想像してたのと違った!ちっちゃぁーい!可愛いねぇ、へぇぇ、ふぅーん」
「あの、佐藤さんの……?」
「笑美です。はじめまして、やっと会えたね」
ニコッと笑うその顔、ウルトラ眩しい!思わず目を瞑りかけるほどである。それでも私も同意見だった。勝手ながら想像していた佐藤さんの奥様……佐藤さんが静かな人だから大人しい感じの奥さんなのかとなと思いきや……。
「ちょっと、久世くん!家で独り占めしてんでしょ。千夏ちゃんはこっちにちょうだい。手!離して」
なかなかガツガツした感じの方である。サバサバよりかはガツガツ系……不快感はないけれども。
(バリバリ姉御肌!みたいな方かな……)
「……夏目さ、千夏が引いてるから」
「どこが?引いてないでしょ。私の印象悪くなるようなこと言わないでよ」
若干引きはあったのは事実だが、もちろんそんな事は言えない。
「社畜な旦那なんかほっといてさぁ、こっちで色々話そ~。家での久世くんどんなんか聞かせて~」
「そうそう、色々聞きたいことあるのよ、ふふふ」
綺麗な顔だけに含み笑いをしても目を奪われる。そして誠くんを言いくるめる女性陣……なかなか強い。誠くんは完全に憂鬱そうな顔をしている。それを見上げていると目が合って呆れたようにフッと微笑まれた。その表情では私が来たことに困っているという感じは見受けられないんだけれど。
「……」
まだ不安が隠せない私の気持ちを汲み取ったのか。頭をポンッと大きな掌に撫でられて言われた。
「食われそうになったら逃げて来いよ?」
「え?」
「ちょっと!だから印象わるくなるようなこと言わないでよ!誰が食うのよ」
「夏目だよ」
「食ってほしいわけぇ?この可愛い子猫」
ぎゅうっと背後から抱きしめられて大きなお腹が体に押し付けられると何とも言えない気持ちになる。
「あ、あの、お腹負担になっちゃう!」
「やだぁ、可愛い良い子!食べちゃおうかな、本当に」
むぎゅっと今度は頬を両手で包まれて私今絶対変な顔。
「マジでやめて」
「大丈夫、私骨まで綺麗に食べれるタイプだから」
真面目な声で言い返した誠くんに真面目な声で返す佐藤さんの奥様。
「さいっあくだな」
「菱田ちゃんはもう骨も残らない」
和泉さんが言葉とは裏腹に面白そうに笑って、それに高宮さもまた楽しそうに同意している。はぁぁ、っと大きなため息をこぼした誠くんは横に座っていた佐藤さんに投げるように言った。
「お前の嫁なんとかしろ」
「いや、もうほんとすいません」
「まぁ、飲めや久世~諦めろ!」
森山さんに肩を組まれて奥に連れられた誠くんを見送りつつ私は女性陣の輪の中に連れられて……戸惑う暇もないくらい誠くんの同期会に参加することになってしまった。
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夏目と金田に挟まれる千夏は終始楽しそうである。
会話まではわからず、一体何を言われてるのか……そうは思うものの。
(楽しそ……)
横目に見てもそう思えるほど、ずっと笑顔で話し込んでいる千夏は可愛かった。夏目と金田に挟まれている分より可愛さが増す。同期二人は見てくれは確かに華やかなのだが性格が……もう性格が……。
同期としては仕事の面でも人間的にも信用は出来るものの、性的対象としては許容範囲外である。
(千夏みたいな可愛さがミクロでもあればな……あいつら女じゃねぇ)
そんな風に思っていることがバレたらぶっ殺される。
たまに高宮と和泉と森山がその輪に入ってはこっちに戻ってを繰り返している。佐藤と俺だけは一切あの輪の中には入らない――入れない、ともいうが。
「絶対聞きたくないわ、俺」
佐藤の言葉に同意しかない。千夏にはさておき俺らの事でいい話なんかするわけがない。
「夏目って全然変わらないのな」
「子供産まれても変わらなさそう。もうあのまま死ぬよ、あいつきっと」
(それは怖すぎる)
「ねぇねぇ、そういえばさ、久世くん知ってた?」
いつのまにか金田が近くにきていた。千夏の様子をチラッとだけ見て会話が盛り上がってるのを確認して顔を寄せてくる。
「人事の柏木さんわかる?」
「わからん」
「うちらの二個上かな。朝熊さんところの同期って言ってた」
「朝熊?って本社の?」
「そうそう、そこの同期で柏木さんはずっとこっち勤務なんだけど……千夏ちゃんのこと前から狙ってたんだって。しかもね、杉崎部長から落とそうとしてたらしいよ」
佐藤と顔を見合わせる。
「で、時間かけて部長と関係作って、親しくなった部長にあいだに入ってもらってお見合い話まで持ってったんだってさ」
(お見合い?それは初耳だ)
「けど、久世くんと結婚したでしょ?その前に部長がストップかけてお見合いは流れたって話。久世くん、部長に話した?」
「した」
「それ、もう少し遅かったら千夏ちゃん、柏木さんとお見合いしてるよ?危なかったね」
「柏木さんってどんな人なの?」
佐藤が聞くと金田はう~ん、と空を仰いで考える。
「野心家でプライド高い系?ちょっとストーカーぽいっていうか、なんだろヤンデレタイプ?」
「「ストーカー?!」」
佐藤と声がハモってしまう。
「タイプ的にって話よ?本気でストーカーとかじゃなくねちっこそうって意味。部長がストップかけたのも納得いかないって感じでしつこく頼んだみたい。でもほら、それ久世くんが結婚するって言った直後とかでしょ?まだ公にはできないわけで、部長も理由はいえないじゃない?なんかそれでまた揉めたって聞いた」
内容にも驚くが、ここまで情報を掴む金田にも驚いている。そのせいで口を噤んでいる俺とは対称に佐藤が思ったことを突っ込んできた。
「今も人事にいるの?」
「本社に飛んで、人事部長補佐に昇進。怖いよねぇ」
「それってそのことが絡んでるってこと?」
佐藤の矢継ぎ早の問いに金田は肩をすくめる。
「タイミング的に疑うよな、そこ」
佐藤の苦笑いに俺の胸中も複雑だ。あの時部長の妙な沈黙はそういうことなのか?
「菱田さんってさー」
佐藤が笑いながら言い淀むと金田が引き継いだ。
「なかなかややこしいところに気に入られちゃってるよね。目の届かないところに配属されるならやめさせた方が絶対いいよ」
金田が笑っていうと「俺もそう思った」佐藤も同意した。
「教えてくれてありがと」
「和泉も色々知ってるけどまぁ情報量なら私の方が上かな」
金田がドヤるから佐藤と笑ってしまった。
「あいつ、無自覚だからなぁ……自分のことなんか誰も見てないと思ってるし」
「それは困ったちゃんだねぇ……よく今まで無傷でいられたね」
「そりゃ、杉崎さんのおかげだわな?」
「そうなるな」
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