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目標のある幸せ ー卒業ー 第十話
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高校卒業後初めて次のシングルのチーム編成が発表された。
さなえが全然チームアルファーで一緒にならないといつものように一通りグチられたあとで、そんなこといわれてもなぁと思いながら帰る準備をしていた。
「チームベータか、ベータライブとか予定無いのかな、結構楽しいんだけど」
そんなことを言っていたら、華さんがどうしたらいいのかと私に話しかけてきた。
「紗良、私今回チームアルファーになっちゃった」
別に華さんは初めてチームアルファーになったわけではない。
「一緒にいましたから知っていますよ。なっちゃったって何を言っているんですか。おめでとうございますですよね。華さんは何か駄目なことでも?」
「私はすごくうれしいけど、チームベータをまとめる人が誰かなってなるじゃない」
「みんな大人ですから、大丈夫ですよ」
「大人とか子供とか大して年も違わないし、そもそも最年少は美香だけどチームアルファーだし。私も何を言っているんだか、わからないんだけど」
「心配されるのはわかりますが、華さんはチームアルファーで自分ができることを全力で行ったらいいですよ、チームベータはチームベータにいる私たちでやりますから」
「そうだけど、チームベータの一番年長でちょっと長かったから。ほら、なんか愛着がわいちゃって」
「みんなの面倒をすごくみておられましたからね。私もその節ではいろいろとご面倒をおかけしましたので申し訳ないです」
「本当に申し訳なかったって思う?」
華さんが私の顔に近づいて両肩をむんずと掴んでくる。
「そう思いますよ。すごく近いんですけど、なんですか?」
「じゃあ、紗良は私の代わりにみんなのことよく見てあげてね」
「じゃあって何ですか? いや、別に私が見なくてもみんなやりますよ」
「美咲みたいなリーダーっていうわけじゃなくて、チームベータはそういうのは無いからさ。ただみんなの相談に乗ってあげてっていうこと。それじゃお願いね。それだけ言いたかったの」
私が頷くまで逃げられないようにするためか、ずっと両肩をつかみながらそう言うと、これで肩の荷が下りたと言って華さんが去っていった。
「なんだったのだろうか?」
華さんは心配そうにしていたが、みんな初めてということでもない。わからなかったら聞くだろうし何が心配なのか、そのほうがさっぱりわからない。
華さんが私に話しかけてきてから、「はい、これ」という軽い感じで何か大きな荷物を渡されたような気がするものの、これといったことでもないので、まあいいかと考えていた。
チームベータはチームアルファーほどメディアへの露出は無いもののシングルについてのミニライブもあり、ネットの配信や外仕事もあるのでそれなりに忙しく、チームベータの楽曲の振り入れなどもしていた。
「紗良、この部分ってこれで良かったっけ?」
同期で最年長の河合陽子さんが訊いてきた。
「それでいいと思いますよ。あの、陽子さんちょっと訊いていいですか? なんかすごいみんなに相談されるのですが何故なのでしょうか?」
「そう? 紗良は聞いてないの? 華さんが分からないことがあったら紗良に訊いてくれたら良いって。頼んでおいたからって。華さんがチームアルファーになったから」
あの時のあれかと、先日肩をつかまれた記憶がよみがえり、このグループの人たちは私に対する段取りが良すぎるような気がするが、誰にでもこういう感じになっているのだろうか? と思いながらみんなの振り入れを見ていた。
さなえと会ったときに、そういうことがあったが、私はそういうものに向いていないのではないかと思う、という話しをしていた。
「紗良は自分が思っているほど、人見知りしてないと思うけど。むしろ周りが話しかけずらい」
「そうですか? それはさぁちゃんほど、初対面の人と話しができませんが」
「本当はただ普通に愛想がないだけでしょ。基本仏頂面だし。でも、すごい人のこと見ているし、何かあったらすぐに音もなく寄ってくるし、人に寄り添ってないわけではないでしょうに」
「ただ仲間だからじゃないですかね」
「仲間だけなんて人が、轢かれそうな車に向かって走っていかないでしょ。知らない子なのに」
さなえにそういわれてもピンとこなかったが、よく考えてみると私が変わったのはこのグループに入ってからじゃないかと思っていた。
今までは幼馴染の春代だけだったが、あのオーディションを受けてからさなえを始めとして私が何をしても「すごいね」と言ってそれを肯定して受け止めてくれる仲間がいるから、私は自分を出せるようになった気がする。
「なんか体全体が昔より柔らかくなったような気がします。さぁちゃんもありがとう」
「はあ? 何でお礼をいっているのかわからないけど。柔軟の話?」
あいかわらず紗良の言うことはわからない、と言いながらさなえは現場に向かって行った。
ゴールデンウイークと梅雨が過ぎて、沖縄の方で台風が発生したというニュースが流れ始めたころに美咲さんにご飯に誘われた。
「紗良は明日の仕事終わり暇?」
「暇というか、家に帰りますけど」
「だったら、ご飯一緒に食べに行こうよ。紗良とご飯に行ったことがないし、話しもしてみたいんだよね、何か嫌いなものとかあるの?」
「いえ、特にはありませんが、何かあるのですか?」
「まあいいじゃないたまには。二人っきりでもいいけど、他の子も誘うからさ」
私と二人っきりで耐えられるのは春代くらいしかいないように思うと考えながら、リーダーから誘われて断る理由もないので、訳が分からず承諾した。
さなえに今日は何かあるのかと訊かれたので、美咲さんにご飯に誘われたというと「ふーん、そうなんだ」と言って珍しく何も言わずに去っていく。
「何か知ってそう、でもああいう時さなえは絶対に口を開かないから余計気になる」
一人でそういいながら帰りの準備をしていた。
美咲さんから中華料理のお店の住所が送られてきていたので、予約した神室ですけどというと奥の個室に案内され、部屋に入って来ているメンバーをみて私は愕然とした。
「……私以外全員一期生じゃないですか」
絵里奈が「紗良が来た」と嬉しそうに言って、ここに座れと隣の椅子を指で指した。
「なんの会なんですか? 私以外一期生しかいないですけど。誰が来るのか知らなかったんですよ」
居たのは高坂絵里奈、石田恵美、原彩、三浦華、高橋梨乃の五人だった。
「言い出しっぺの美咲が来てないけどね」
恵美さんがそういうと、一期生だけがいたからってたいそうなことでもないでしょと言うと同時に美咲さんが入ってきた。
「お待たせ、時間通りに来たはずだけど、もうみんな揃ってるの? 感心感心」
「何言ってるのよ、十分遅刻よ、時間通りに来たのは紗良」
えっそうだっけ? といつもの調子でとぼける美咲さんをジト目で恵美さんが見ていた。
「ところで、今日は何の会なのよ?」
「何って、今度ドームでライブをすることになったから、そのおめでとう会」
みんなが「はぁ?」という感じで止まっている。
「とりあえずここは美味しいって村雨さんが言ってたからここにしたの、料理は頼んであるから食べよ」
料理が運ばれてきて、みんなは一応その流れに従った。
「それじゃあ、ドームでのライブ開催決定にかんぱーい」
「「かんぱーぃ……」」
怪しすぎる開催目的にみんなどうしたものかと思いながらも、私以外の一期生メンバーはだんだん何かを察してきた感じになり、とりあえず黙々と食べ始めた。
私は持っている情報が少なすぎるので関係のない話をすることにする。
「絵里奈はよく来られましたよね、こんなにみなさんが揃う日に合わせて」
「夜ごはんだけなら何とか大丈夫だよ、ちょっと急いだけど」
「何か今日のこと知っていますか?」
「この会のこと? 何も聞いてないけどこのメンツならだいたいはわかるよ、付き合い長いし、彩を見てみて」
「何か泣きそうなのを我慢しているような顔をしていますね」
「多分美咲が最後に話しをしようとしていると思うから、とりあえず今は楽しく食べよ」
そういいながら彩も食べなさいよと言って絵里奈が取ってあげると、うんうんと言いながら食べていた。
「そういえば紗良は記憶が無かった時のことは、どんなふうに覚えているの?」
「記憶が無かったということ自体は覚えていますが、普通に記憶がつながっていますね。なんというか私の記憶が無いという舞台で皆さんがそれに合わせた演技をしていたような」
「いまだから言えるけど、おもしろい経験をするよね。紗良なら何かやらかすと思っていたけど記憶をなくして見せるということまでするとはね」
「恵美さんは私を誤解していると思います」
「そうかな? 全然そんな雰囲気がないのに、いつも何かしでかしているイメージしかないよ」
「しでかしているとは? それは周りが私にそうさせるようなことになるからです」
「でも車に突っ込んで行ったのは自分でしょ」
「梨乃さんまで。あれは轢かれそうな子がいたから助けに行ったのであって、車に突っ込むのが趣味ということではないですから」
「そう言われれば、そうかもしれないって……言うわけがないでしょ、自分から首を突っ込んでいっているんだから。間違いじゃないじゃない。なんだかんだ言ってしでかしてるって言うのはそういうとこよ」
「そこが紗良のいいところだからね」
絵里奈が食べながらそう言った。
「絵里奈は紗良が自分の女神様だから何でもいいんでしょうが。事故の時一番動揺してたのに」
華さんがそう言って、紗良のことで無茶苦茶わがまま言ってたしといった。
「それは言わないで、本当にあの時はごめんて。何かしたくて必死だったから」
重たい空気が少しだけ和らいだ気がした。
そんな他愛のない話をしていたら最後のデザートが運ばれてきて、みんながそれに口をつけた時、美咲さんが「皆さんにお話があります」と言った。
絵里奈を見るとついに来たという顔をしていたので、この会の本当の話がここから始まるのかと思いながら聞いた。
「えーコホン、私、神室美咲は次のシングルの活動を持ってグループを卒業することに致しました」
周りを見るとみんなやっぱりという感じで驚く様子もなく、そうですかという雰囲気を出していた。私はというと、そういう話だったのかとそっちの疑問が解決したことにとりあえず満足していた。
「ちょっちょっと、みんなもう少し驚くとかないの? 卒業しちゃうよ私」
「この会のメンツを見たらだいたいわかったよ、結成当初からよくつるんでたメンバーばっかりだし、本当かどうかわからないけど美咲がご飯をこんな人数でご馳走すること自体おかしいもの」
絵里奈がそう言うので始めから感じていた疑問をぶつけてみた。
「よくつるんでたって言われていますが、私は二期生ですがどうしてですか?」
「どうせ、二期生代表として呼んだんでしょ。わかりやすすぎるのよ」
梨乃さんが代わりに答えてくれた。
「何でみんな切れ気味なの? もうちょっと卒業しないでとか違う反応を期待してたんだけど」
「そりゃあさみしいからに決まってるでしょ。前置きが長いし泣いて引き留められないなら笑える話でもない。今は怒るくらいしかできないわ」
恵美さんが腕を組んでそう言った。
「そうか、失敗だったか」
彩さんはこらえきれずに泣いている。
「あの、質問してもいいですか?」
「いいよ、紗良。なんでもどうぞ」
本当にあなたも驚かないよね、といいながら促された。
「それって自分で勝手に昨日決めたという訳ではないですよね?」
「いくら私でもそんなことはしないわ。村雨さんとも話しをして決めました。結構何回も話しをして今後のことなんかも打ち合わせをしたよ」
「美咲は芸能界続けるの?」
「続けるよ。事務所も取り敢えずは今のまま。その先はわからないけどね」
「やっぱり目標にたどり着いたからですか?」
「それは大きいよね、もともと考えてはいたけど、ドームでライブができるようになるっていう目標に到達した今、私としてはここしかないと思った。これ以上いたら辞め時がわからなくなりそうで」
「それなら分からなくなってずっと居たらいいのに」
彩さんが涙声でそう言うと、優しい目で美咲さんは微笑んだ。
「妹みたいな彩がそういってくれるのはうれしいけど、やっぱりそんなことはできないよ。このグループは居心地が良すぎて、ずっといるって言ったら冗談にならなそうだから自分で決めないと」
恵美さんが彩さんの頭を撫でて慰めてあげていた。
「そういえば、さっき梨乃が紗良は二期生代表だからって言ってたけど半分は不正解」
私を含めてみんなが半分ってどういうこと? という顔で美咲さんを見た。
「私こと神室美咲はヴァルコスマイルのリーダーをやっていまして、その私が卒業するということはリーダーが不在になるということです」
「もったいつけずに早く言いなさいよ」
彩さんの肩を抱いて恵美さんが言った。
「リーダーの候補を村雨さんから訊かれたので、二人出しました。華と紗良です」
美咲さんがパチパチと言って手を叩く。
「私は絶対にあり得ません」
「そんなことはないでしょ。チームベータでもみんな頼りにしてるよ」
「適当なことを言わないでください。美咲さんは私が入ってからずっとチームアルファーだから実際のところはあまり知らないじゃないですか」
「つっこみが鋭いな。でもみんなからも話を聞くし、紗良の名前をあげたのは本当。ただ村雨さんが紗良はないって言ってた。ですので次期リーダー候補は華ちゃんです」
「美咲は何馬鹿なことを言ってるのよ、私がリーダーなんてできるわけないでしょ」
「できるよ、華はチームベータでも頑張ってたじゃない、現リーダーの私が保証する。それにみんなが助けてくれるから大丈夫、もしも華がリーダーになっても恵美も梨乃も絵里奈も彩も私の時みたいに助けてくれるでしょ」
卒業のことだと思っていた以上のことを聞かされてみんな戸惑っていたが、まとめられるのは華くらいしかいないかという感じになっていた。
「絵里奈を呼びつけてきちんと叱れるのなんて、他のメンバーにはいないしね」
恵美さんがそう言うと「普通はそんな叱られるようなことはしないから…」と絵里奈が小さな声で言っていた。
「今日の話しはこれでおしまい。リーダーの件はこれから村雨さんたちで話し合うと言っていたので、まだ決まったことではないし、卒業の件も一応正式に発表するまでオフレコでね。あっそうだ紗良のことは村雨さんが考えるとか言っていたからね」
最後にさらっと変なことを付け加えて食事会はお開きとなったあと、お会計は済ませてあると言われて、みんながおごりというのは本当だったのかと卒業の話よりもそっちに驚いていた。その様子を見て美咲さんは紗良以外は割り勘で徴収しようかと言っていた。
絵里奈を一人で帰したくなかったのでマンションまで送っていくことにして、二人で並んで話しながら帰ることにした。
「一人で帰られるのに」
「彩さんも心配ですが恵美さんが一緒に帰りましたし、絵里奈は私が一緒に帰ります」
「子供じゃないんだから」
「そうですが、直前まで一緒にいて何か有った時にいなかったとなると後悔してもしきれませんので、私の主義というか趣味だとでも思ってください」
「わかったそうする。でも心配してくれてありがとう」
「いえいえ。それにしても、意外でした」
「何が?」
「美咲さんはああいうときは泣くものだと思っていました。実際泣いているように思いましたが、意外とあっけらかんとしていて、よくわからなかったです」
「人の心の中を読みすぎ。でもまだまだだね」
「どういうことですか?」
「美咲は華と一緒に帰ったでしょ、カラオケにでも行くって」
「そう言われていましたね」
「いまごろカラオケボックスで大号泣して、それを華が慰めてる」
あんなに明るいのに、いつも華さんの前だけでは泣くのだそうで、華さんがいつも美咲さんが泣き続けて大変だったと愚痴っていたらしい。
「そうやって、心のバランスをとっているんですね」
「昔はそこまででもなかったけど、リーダーになってから特にみんなの前では務めて明るくして、そういう自分が泣くと言う姿を見せなくなったの。一期生のみんなは結構そういうことを知っているし、少しくらいおっちょこちょいでもきちんと考えていて一生懸命だから、何とか助けてあげなきゃって」
そう言いながら、二人で歩いていると、ため息を付きながら絵里奈が話をつづけた。
「むしろ華の方が心配」
「何故ですか?」
「美咲は華に自分の気持ちをぶちまけてすっきりするだろうけど、多分華は慰めてあげるだけ。華にはそういう全部をさらけ出すことはしないし、私たちに相談はしても基本一人で頑張っちゃうタイプだから」
「だから、みんなで支えてねって美咲さんが言っていたんですか?」
「それだけじゃないけどね。普通にみんなで支えないといけないし」
それはそうですねと言いながら歩いていると、絵里奈のマンション前についた。
「紗良も女の子なんだから気を付けて帰ってね」
「私は大丈夫です。私に勝てるのはガードレールくらいですから」
「その冗談は笑えない」
「美香にもそういわれました。おもしろくないですかね」
「紗良のは冗談に聞こえないって。もう少しギャグセンスも磨いてね。それじゃお休みなさい」
笑いながら手を振って中に入っていく絵里奈を見届けると、一応不審者がマンションの周りにいないかを確認してから自宅へと帰った。
お母さんが「今日のお店はおいしかった?」と訊いてきたので、すごくおいしかったから、今度はお父さんに連れて行ってもらいましょうというと、絶対そうすると言っていた。
さなえが全然チームアルファーで一緒にならないといつものように一通りグチられたあとで、そんなこといわれてもなぁと思いながら帰る準備をしていた。
「チームベータか、ベータライブとか予定無いのかな、結構楽しいんだけど」
そんなことを言っていたら、華さんがどうしたらいいのかと私に話しかけてきた。
「紗良、私今回チームアルファーになっちゃった」
別に華さんは初めてチームアルファーになったわけではない。
「一緒にいましたから知っていますよ。なっちゃったって何を言っているんですか。おめでとうございますですよね。華さんは何か駄目なことでも?」
「私はすごくうれしいけど、チームベータをまとめる人が誰かなってなるじゃない」
「みんな大人ですから、大丈夫ですよ」
「大人とか子供とか大して年も違わないし、そもそも最年少は美香だけどチームアルファーだし。私も何を言っているんだか、わからないんだけど」
「心配されるのはわかりますが、華さんはチームアルファーで自分ができることを全力で行ったらいいですよ、チームベータはチームベータにいる私たちでやりますから」
「そうだけど、チームベータの一番年長でちょっと長かったから。ほら、なんか愛着がわいちゃって」
「みんなの面倒をすごくみておられましたからね。私もその節ではいろいろとご面倒をおかけしましたので申し訳ないです」
「本当に申し訳なかったって思う?」
華さんが私の顔に近づいて両肩をむんずと掴んでくる。
「そう思いますよ。すごく近いんですけど、なんですか?」
「じゃあ、紗良は私の代わりにみんなのことよく見てあげてね」
「じゃあって何ですか? いや、別に私が見なくてもみんなやりますよ」
「美咲みたいなリーダーっていうわけじゃなくて、チームベータはそういうのは無いからさ。ただみんなの相談に乗ってあげてっていうこと。それじゃお願いね。それだけ言いたかったの」
私が頷くまで逃げられないようにするためか、ずっと両肩をつかみながらそう言うと、これで肩の荷が下りたと言って華さんが去っていった。
「なんだったのだろうか?」
華さんは心配そうにしていたが、みんな初めてということでもない。わからなかったら聞くだろうし何が心配なのか、そのほうがさっぱりわからない。
華さんが私に話しかけてきてから、「はい、これ」という軽い感じで何か大きな荷物を渡されたような気がするものの、これといったことでもないので、まあいいかと考えていた。
チームベータはチームアルファーほどメディアへの露出は無いもののシングルについてのミニライブもあり、ネットの配信や外仕事もあるのでそれなりに忙しく、チームベータの楽曲の振り入れなどもしていた。
「紗良、この部分ってこれで良かったっけ?」
同期で最年長の河合陽子さんが訊いてきた。
「それでいいと思いますよ。あの、陽子さんちょっと訊いていいですか? なんかすごいみんなに相談されるのですが何故なのでしょうか?」
「そう? 紗良は聞いてないの? 華さんが分からないことがあったら紗良に訊いてくれたら良いって。頼んでおいたからって。華さんがチームアルファーになったから」
あの時のあれかと、先日肩をつかまれた記憶がよみがえり、このグループの人たちは私に対する段取りが良すぎるような気がするが、誰にでもこういう感じになっているのだろうか? と思いながらみんなの振り入れを見ていた。
さなえと会ったときに、そういうことがあったが、私はそういうものに向いていないのではないかと思う、という話しをしていた。
「紗良は自分が思っているほど、人見知りしてないと思うけど。むしろ周りが話しかけずらい」
「そうですか? それはさぁちゃんほど、初対面の人と話しができませんが」
「本当はただ普通に愛想がないだけでしょ。基本仏頂面だし。でも、すごい人のこと見ているし、何かあったらすぐに音もなく寄ってくるし、人に寄り添ってないわけではないでしょうに」
「ただ仲間だからじゃないですかね」
「仲間だけなんて人が、轢かれそうな車に向かって走っていかないでしょ。知らない子なのに」
さなえにそういわれてもピンとこなかったが、よく考えてみると私が変わったのはこのグループに入ってからじゃないかと思っていた。
今までは幼馴染の春代だけだったが、あのオーディションを受けてからさなえを始めとして私が何をしても「すごいね」と言ってそれを肯定して受け止めてくれる仲間がいるから、私は自分を出せるようになった気がする。
「なんか体全体が昔より柔らかくなったような気がします。さぁちゃんもありがとう」
「はあ? 何でお礼をいっているのかわからないけど。柔軟の話?」
あいかわらず紗良の言うことはわからない、と言いながらさなえは現場に向かって行った。
ゴールデンウイークと梅雨が過ぎて、沖縄の方で台風が発生したというニュースが流れ始めたころに美咲さんにご飯に誘われた。
「紗良は明日の仕事終わり暇?」
「暇というか、家に帰りますけど」
「だったら、ご飯一緒に食べに行こうよ。紗良とご飯に行ったことがないし、話しもしてみたいんだよね、何か嫌いなものとかあるの?」
「いえ、特にはありませんが、何かあるのですか?」
「まあいいじゃないたまには。二人っきりでもいいけど、他の子も誘うからさ」
私と二人っきりで耐えられるのは春代くらいしかいないように思うと考えながら、リーダーから誘われて断る理由もないので、訳が分からず承諾した。
さなえに今日は何かあるのかと訊かれたので、美咲さんにご飯に誘われたというと「ふーん、そうなんだ」と言って珍しく何も言わずに去っていく。
「何か知ってそう、でもああいう時さなえは絶対に口を開かないから余計気になる」
一人でそういいながら帰りの準備をしていた。
美咲さんから中華料理のお店の住所が送られてきていたので、予約した神室ですけどというと奥の個室に案内され、部屋に入って来ているメンバーをみて私は愕然とした。
「……私以外全員一期生じゃないですか」
絵里奈が「紗良が来た」と嬉しそうに言って、ここに座れと隣の椅子を指で指した。
「なんの会なんですか? 私以外一期生しかいないですけど。誰が来るのか知らなかったんですよ」
居たのは高坂絵里奈、石田恵美、原彩、三浦華、高橋梨乃の五人だった。
「言い出しっぺの美咲が来てないけどね」
恵美さんがそういうと、一期生だけがいたからってたいそうなことでもないでしょと言うと同時に美咲さんが入ってきた。
「お待たせ、時間通りに来たはずだけど、もうみんな揃ってるの? 感心感心」
「何言ってるのよ、十分遅刻よ、時間通りに来たのは紗良」
えっそうだっけ? といつもの調子でとぼける美咲さんをジト目で恵美さんが見ていた。
「ところで、今日は何の会なのよ?」
「何って、今度ドームでライブをすることになったから、そのおめでとう会」
みんなが「はぁ?」という感じで止まっている。
「とりあえずここは美味しいって村雨さんが言ってたからここにしたの、料理は頼んであるから食べよ」
料理が運ばれてきて、みんなは一応その流れに従った。
「それじゃあ、ドームでのライブ開催決定にかんぱーい」
「「かんぱーぃ……」」
怪しすぎる開催目的にみんなどうしたものかと思いながらも、私以外の一期生メンバーはだんだん何かを察してきた感じになり、とりあえず黙々と食べ始めた。
私は持っている情報が少なすぎるので関係のない話をすることにする。
「絵里奈はよく来られましたよね、こんなにみなさんが揃う日に合わせて」
「夜ごはんだけなら何とか大丈夫だよ、ちょっと急いだけど」
「何か今日のこと知っていますか?」
「この会のこと? 何も聞いてないけどこのメンツならだいたいはわかるよ、付き合い長いし、彩を見てみて」
「何か泣きそうなのを我慢しているような顔をしていますね」
「多分美咲が最後に話しをしようとしていると思うから、とりあえず今は楽しく食べよ」
そういいながら彩も食べなさいよと言って絵里奈が取ってあげると、うんうんと言いながら食べていた。
「そういえば紗良は記憶が無かった時のことは、どんなふうに覚えているの?」
「記憶が無かったということ自体は覚えていますが、普通に記憶がつながっていますね。なんというか私の記憶が無いという舞台で皆さんがそれに合わせた演技をしていたような」
「いまだから言えるけど、おもしろい経験をするよね。紗良なら何かやらかすと思っていたけど記憶をなくして見せるということまでするとはね」
「恵美さんは私を誤解していると思います」
「そうかな? 全然そんな雰囲気がないのに、いつも何かしでかしているイメージしかないよ」
「しでかしているとは? それは周りが私にそうさせるようなことになるからです」
「でも車に突っ込んで行ったのは自分でしょ」
「梨乃さんまで。あれは轢かれそうな子がいたから助けに行ったのであって、車に突っ込むのが趣味ということではないですから」
「そう言われれば、そうかもしれないって……言うわけがないでしょ、自分から首を突っ込んでいっているんだから。間違いじゃないじゃない。なんだかんだ言ってしでかしてるって言うのはそういうとこよ」
「そこが紗良のいいところだからね」
絵里奈が食べながらそう言った。
「絵里奈は紗良が自分の女神様だから何でもいいんでしょうが。事故の時一番動揺してたのに」
華さんがそう言って、紗良のことで無茶苦茶わがまま言ってたしといった。
「それは言わないで、本当にあの時はごめんて。何かしたくて必死だったから」
重たい空気が少しだけ和らいだ気がした。
そんな他愛のない話をしていたら最後のデザートが運ばれてきて、みんながそれに口をつけた時、美咲さんが「皆さんにお話があります」と言った。
絵里奈を見るとついに来たという顔をしていたので、この会の本当の話がここから始まるのかと思いながら聞いた。
「えーコホン、私、神室美咲は次のシングルの活動を持ってグループを卒業することに致しました」
周りを見るとみんなやっぱりという感じで驚く様子もなく、そうですかという雰囲気を出していた。私はというと、そういう話だったのかとそっちの疑問が解決したことにとりあえず満足していた。
「ちょっちょっと、みんなもう少し驚くとかないの? 卒業しちゃうよ私」
「この会のメンツを見たらだいたいわかったよ、結成当初からよくつるんでたメンバーばっかりだし、本当かどうかわからないけど美咲がご飯をこんな人数でご馳走すること自体おかしいもの」
絵里奈がそう言うので始めから感じていた疑問をぶつけてみた。
「よくつるんでたって言われていますが、私は二期生ですがどうしてですか?」
「どうせ、二期生代表として呼んだんでしょ。わかりやすすぎるのよ」
梨乃さんが代わりに答えてくれた。
「何でみんな切れ気味なの? もうちょっと卒業しないでとか違う反応を期待してたんだけど」
「そりゃあさみしいからに決まってるでしょ。前置きが長いし泣いて引き留められないなら笑える話でもない。今は怒るくらいしかできないわ」
恵美さんが腕を組んでそう言った。
「そうか、失敗だったか」
彩さんはこらえきれずに泣いている。
「あの、質問してもいいですか?」
「いいよ、紗良。なんでもどうぞ」
本当にあなたも驚かないよね、といいながら促された。
「それって自分で勝手に昨日決めたという訳ではないですよね?」
「いくら私でもそんなことはしないわ。村雨さんとも話しをして決めました。結構何回も話しをして今後のことなんかも打ち合わせをしたよ」
「美咲は芸能界続けるの?」
「続けるよ。事務所も取り敢えずは今のまま。その先はわからないけどね」
「やっぱり目標にたどり着いたからですか?」
「それは大きいよね、もともと考えてはいたけど、ドームでライブができるようになるっていう目標に到達した今、私としてはここしかないと思った。これ以上いたら辞め時がわからなくなりそうで」
「それなら分からなくなってずっと居たらいいのに」
彩さんが涙声でそう言うと、優しい目で美咲さんは微笑んだ。
「妹みたいな彩がそういってくれるのはうれしいけど、やっぱりそんなことはできないよ。このグループは居心地が良すぎて、ずっといるって言ったら冗談にならなそうだから自分で決めないと」
恵美さんが彩さんの頭を撫でて慰めてあげていた。
「そういえば、さっき梨乃が紗良は二期生代表だからって言ってたけど半分は不正解」
私を含めてみんなが半分ってどういうこと? という顔で美咲さんを見た。
「私こと神室美咲はヴァルコスマイルのリーダーをやっていまして、その私が卒業するということはリーダーが不在になるということです」
「もったいつけずに早く言いなさいよ」
彩さんの肩を抱いて恵美さんが言った。
「リーダーの候補を村雨さんから訊かれたので、二人出しました。華と紗良です」
美咲さんがパチパチと言って手を叩く。
「私は絶対にあり得ません」
「そんなことはないでしょ。チームベータでもみんな頼りにしてるよ」
「適当なことを言わないでください。美咲さんは私が入ってからずっとチームアルファーだから実際のところはあまり知らないじゃないですか」
「つっこみが鋭いな。でもみんなからも話を聞くし、紗良の名前をあげたのは本当。ただ村雨さんが紗良はないって言ってた。ですので次期リーダー候補は華ちゃんです」
「美咲は何馬鹿なことを言ってるのよ、私がリーダーなんてできるわけないでしょ」
「できるよ、華はチームベータでも頑張ってたじゃない、現リーダーの私が保証する。それにみんなが助けてくれるから大丈夫、もしも華がリーダーになっても恵美も梨乃も絵里奈も彩も私の時みたいに助けてくれるでしょ」
卒業のことだと思っていた以上のことを聞かされてみんな戸惑っていたが、まとめられるのは華くらいしかいないかという感じになっていた。
「絵里奈を呼びつけてきちんと叱れるのなんて、他のメンバーにはいないしね」
恵美さんがそう言うと「普通はそんな叱られるようなことはしないから…」と絵里奈が小さな声で言っていた。
「今日の話しはこれでおしまい。リーダーの件はこれから村雨さんたちで話し合うと言っていたので、まだ決まったことではないし、卒業の件も一応正式に発表するまでオフレコでね。あっそうだ紗良のことは村雨さんが考えるとか言っていたからね」
最後にさらっと変なことを付け加えて食事会はお開きとなったあと、お会計は済ませてあると言われて、みんながおごりというのは本当だったのかと卒業の話よりもそっちに驚いていた。その様子を見て美咲さんは紗良以外は割り勘で徴収しようかと言っていた。
絵里奈を一人で帰したくなかったのでマンションまで送っていくことにして、二人で並んで話しながら帰ることにした。
「一人で帰られるのに」
「彩さんも心配ですが恵美さんが一緒に帰りましたし、絵里奈は私が一緒に帰ります」
「子供じゃないんだから」
「そうですが、直前まで一緒にいて何か有った時にいなかったとなると後悔してもしきれませんので、私の主義というか趣味だとでも思ってください」
「わかったそうする。でも心配してくれてありがとう」
「いえいえ。それにしても、意外でした」
「何が?」
「美咲さんはああいうときは泣くものだと思っていました。実際泣いているように思いましたが、意外とあっけらかんとしていて、よくわからなかったです」
「人の心の中を読みすぎ。でもまだまだだね」
「どういうことですか?」
「美咲は華と一緒に帰ったでしょ、カラオケにでも行くって」
「そう言われていましたね」
「いまごろカラオケボックスで大号泣して、それを華が慰めてる」
あんなに明るいのに、いつも華さんの前だけでは泣くのだそうで、華さんがいつも美咲さんが泣き続けて大変だったと愚痴っていたらしい。
「そうやって、心のバランスをとっているんですね」
「昔はそこまででもなかったけど、リーダーになってから特にみんなの前では務めて明るくして、そういう自分が泣くと言う姿を見せなくなったの。一期生のみんなは結構そういうことを知っているし、少しくらいおっちょこちょいでもきちんと考えていて一生懸命だから、何とか助けてあげなきゃって」
そう言いながら、二人で歩いていると、ため息を付きながら絵里奈が話をつづけた。
「むしろ華の方が心配」
「何故ですか?」
「美咲は華に自分の気持ちをぶちまけてすっきりするだろうけど、多分華は慰めてあげるだけ。華にはそういう全部をさらけ出すことはしないし、私たちに相談はしても基本一人で頑張っちゃうタイプだから」
「だから、みんなで支えてねって美咲さんが言っていたんですか?」
「それだけじゃないけどね。普通にみんなで支えないといけないし」
それはそうですねと言いながら歩いていると、絵里奈のマンション前についた。
「紗良も女の子なんだから気を付けて帰ってね」
「私は大丈夫です。私に勝てるのはガードレールくらいですから」
「その冗談は笑えない」
「美香にもそういわれました。おもしろくないですかね」
「紗良のは冗談に聞こえないって。もう少しギャグセンスも磨いてね。それじゃお休みなさい」
笑いながら手を振って中に入っていく絵里奈を見届けると、一応不審者がマンションの周りにいないかを確認してから自宅へと帰った。
お母さんが「今日のお店はおいしかった?」と訊いてきたので、すごくおいしかったから、今度はお父さんに連れて行ってもらいましょうというと、絶対そうすると言っていた。
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