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第1章:運命の出会い
しおりを挟む誠は携帯電話の画面を見つめながら、カフェの前で落ち着かない様子で立ち尽くしていた。友人からの紹介で、今日初めて会う女性とのお見合いだった。
「田中さん?」
後ろから聞こえた柔らかな声に、誠は慌てて振り返った。
そこには、清楚な白のワンピースを着た女性が立っていた。黒髪が春の風にそよぎ、優しい笑顔が誠の心を瞬時に捉えた。
「あ、はい。佐藤さんですか?」
「はい、佐藤美咲です。お待たせしてごめんなさい」
二人は軽く会釈を交わし、カフェに入った。
席に着くと、誠は緊張のあまり、何を話していいのか分からなくなった。しかし、美咲の穏やかな雰囲気に徐々に心が和らいでいくのを感じた。
「田中さんは、お仕事は何をされているんですか?」美咲が会話の糸口を作ってくれた。
「あ、はい。システムエンジニアをしています。プログラミングや、システムの設計などを担当しています」
誠は自分の仕事について話し始めた。美咲は興味深そうに聞いていたが、ふと目を輝かせた。
「それはきっと大変でしょうね。私は看護師をしているんですが、患者さんのケアと同時に、小さなレストランも経営しているんです」
「レストラン?それはすごいですね。看護師とレストラン経営、両立は大変じゃないですか?」
美咲は少し照れたように微笑んだ。「そうですね。でも、料理をすることが私の癒しなんです。特に、新しいレシピを考えるのが好きで...」
彼女の目が遠くを見つめるように輝いた。その瞬間、誠は彼女の中に何か特別なものを感じ取った。
「そのレストラン、今度行ってみたいです」誠は思わず口にした。
美咲の顔がぱっと明るくなった。「ぜひいらしてください。特別なメニューをご用意しますね」
二人の会話は弾み、時間が経つのも忘れるほどだった。別れ際、次のデートの約束をする二人の表情は、希望に満ちていた。
しかし誠は、その時はまだ知らなかった。この出会いが、彼の人生を大きく変えることになるとは。そして、美咲の「特別なメニュー」が、想像を絶するものだとは。
それから数週間、誠と美咲は頻繁に会うようになった。休日には映画を見に行ったり、公園を散歩したりと、二人の関係は順調に進展していった。
誠は美咲の優しさと知性に惹かれていった。彼女は患者の話をする時、目を輝かせ、その情熱に誠は心を打たれた。しかし、時折美咲の目に宿る何か深い影に、誠は言いようのない不安を感じることがあった。
約一ヶ月が経ち、ついに誠は美咲のレストラン「美咲亭」を訪れる日が来た。
レストランは街の喧騒から少し離れた場所にあり、アンティークな外観が印象的だった。店内に入ると、柔らかな照明と落ち着いた雰囲気が誠を包み込んだ。
「いらっしゃい、誠さん」美咲が厨房から顔を出し、嬉しそうに微笑んだ。「特別なコースを用意したのよ」
誠は特等席に案内され、美咲の腕によるフルコースを堪能した。どの料理も見たことのない独創的な盛り付けで、味は絶品だった。
「美咲さん、この料理、本当に素晴らしいよ。こんな味、初めてだ」誠は感激して言った。
美咲は嬉しそうに微笑んだが、その目には何か捉えどころのない光が宿っていた。「ありがとう。私の料理を楽しんでもらえて本当に嬉しいわ。この味は...特別な食材のおかげなの」
その言葉に、誠は一瞬違和感を覚えた。しかし、美咲の魅力的な笑顔に、すぐにその感覚は掻き消されてしまった。
食事の後、二人は店の裏手にある小さな庭で月を見ながら話をした。美咲は誠の隣に寄り添い、彼の手を優しく握った。
「誠さん、私...あなたのことが好きになってしまったみたい」
誠の心臓が大きく高鳴った。「僕も同じだよ、美咲さん」
月明かりの下、二人は静かに見つめ合い、そっと唇を重ねた。
その後の数ヶ月、誠と美咲の関係はさらに深まっていった。誠は休日になると「美咲亭」を手伝うようになり、彼女の仕事ぶりを間近で見る機会が増えた。
しかし、付き合いが深まるにつれ、誠は美咲の不可解な行動に気づき始めた。深夜に突然外出したり、謎めいた電話を受けたりすることが増えていった。また、レストランの食材の仕入れについて尋ねても、美咲はいつも曖昧な返事しかしなかった。
ある夜、誠が予告なしに美咲亭に立ち寄ったとき、店の裏口から大きな袋を運び込む美咲の姿を目撃した。美咲は誠に気づくと、慌てた様子で袋を隠した。
「あ、誠さん。どうしたの?」美咲の声には、いつもの優しさの中に緊張が混じっていた。
「ちょっと様子を見に来ただけだよ。...その袋は何?」
「ああ、これ?ただの...食材よ。新しい仕入れ先からの特別なものなの」
美咲の説明に、誠は何か釈然としないものを感じた。その夜、帰り道で誠は考え込んだ。美咲の優しさと、時折見せる不可解な行動。そして、あの独特の味わいを持つ料理。
誠の心に、小さな疑念の種が植え付けられた。しかし、彼はまだ知らなかった。その疑念が、やがて恐ろしい真実へと彼を導くことになるとは。
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