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鍵
しおりを挟む物心ついた頃から、「鍵」というものが病的に好きだった。
取り付けることで安全や秘密を守ってくれるーーーーーなにもそういった機能的な要素に惹かれたわけではない。ただただ「鍵」そのものが好きだった。
世界には様々な種類の、様々な名前を持つ鍵がある。
鍵の中でも私が特に愛するのは、ドア及び扉に付けられた錠前である。
二つで一つ。完璧に適合するその組み合わせによってのみ、その扉は開かれる。それはなんだか古い時代の恋愛小説みたいだ。しかし鍵は、人間同士の関係に必ず含まれるような、微塵のずれすら許さない。扉を開けるためには完全一致か破壊しかない。
鍵。なんという素晴らしい響きだ。
私がこの生涯で出会った中で一番心に残る錠前を一つあげるなら、フランスで見つけたとあるアパートメントのドアか、福島県の山中にある寺院の、大きな錠が付いた青銅の扉のどちらかだろう。
寺院の錠前に至っては、その見栄えも相当に私の好みであったが、その錠に鍵が差し込まれ、錠が開く音を聞いた瞬間に、一人果ててしまったほどである。
ああ、鍵。なんという甘美な響きなのだ!
子どもの頃から収集し続けてきた私の鍵は、もう数万本に及んでいる。
中にはもうこの世に錠が存在しない鍵も含まれるだろうが、その数万本の鍵が、同じ数だけのどこかのドア及び扉と通じている。それを考えただけで私の胸は高鳴り、心は躍るのだ。
これからも私は鍵を集め続ける。
それはなぜかって?
鍵が病的に好きだからさ。
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