悪役令嬢、メイドさんになる~転生先は処刑待ちの牢屋スタートです~

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第1章 悪役令嬢がメイドに至るまで

迷子のユリネイラ医師

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ユリネイラ医師は、楽しそうに包帯を巻いていく。

「先生は、なぜあの場所にいたのでしょう?」

アレンはたずねたが、医師は質問には答えず、これまた一瞬で巻き終わった私の足を撫でていた。なぜ。

「……可愛い足だね。傷は残らないから、安心して」

話す時に視線を向けてくれるのは、嬉しい。
若干上目遣いなのも、また素晴らしい。
布越しなのに目が合っているのは、怖い。
ユリネイラ医師……あなたにはやっぱり透視能力が───。

「またですか」

アレンに思考をぶった切られた。
また、とは。また透視してるよこの人、とか。

「道に迷った時はその場で人を待って下さい。決して動かずに」

それを聞いた医師は、悩ましげに眉を寄せると息を吐いた。
人の足を撫でながらそんな顔しないで下さい。

「……やっぱり迷子なのかな」
「いい加減自覚しましょうか」

アレンは冷たく言うと、医師の手を掴んで私の足から払った。

「もういいですよね。先生の言うように、あまり長くはいられないんです」

アレンが布を下ろして私の足が隠れた。
そろそろ、医師と別れるようだ。

「ああ、もう行っちゃうんだ。安静にね」

医師は目を細め、私に優しく微笑んだ。その微笑みをアレンへと向けて、医師は立ち上がる。

「て事でアレン。彼女を抱いて行って。さっきみたいにさ」

いたずらですか本気ですか。
ユリネイラ医師は、変わらず美しい微笑みのままで、本心は分からない。アレンは医師に言われた通りに、私をまた抱き上げてくれた。まあ。その方が逃げ辛いしね。妥当だとう。妥当。
ユリネイラ医師は扉を押さえて、私達を通してくれた。

外に出ると、アレンはゆっくりと医師に言い聞かせる。

「動かずに、この場に、居て下さい。いいですね」
「いいよ」
「本当は連れて行きたいのですが、今は駄目なので……動かないで下さいね」
「はいはい」

ひらひらと手を振るユリネイラ医師とさよならした後、私達は少し進んだ所で、また知り合いに遭遇した。

「どうしてここに……」
「アレンさんこそ、殿下の護衛だった筈では。転職ですか?今そばにいなくて良いのですか」
「どうした。機嫌が悪いのは分かるが、疲れているみたいだ」

アレンが優しく声を掛けると、彼は大きく溜め息を吐いてその姿に合わない低い声を出した。

「こうなったのもあの女の所為ですよ。そりゃリリアさんが危ないなんて、知れて良かったですけれども」

なんなんだろうこれは。元兄に医師に、立て続けに会うなんて……。偶然じゃないよね。そして美少年。君の言うあの女は目の前にいるぞ。アレンの腕の中で布になってるよ。

偶然出会った美少年、エイレン・ジグルは、とてもお疲れの様子だった。


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皆様ありがとうございます!
まだ、主人公が、メイドになってないんですが……これからもよろしくお願いします!

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