悪役令嬢、メイドさんになる~転生先は処刑待ちの牢屋スタートです~

文字の大きさ
38 / 60
第1章 悪役令嬢がメイドに至るまで

教科書事件

しおりを挟む
 
「私が彼女の教科書を破き、それを本人や殿下に見られた……」

 あの時、レオやリリアベル嬢と共に教室に入ると、一つの席に紙が散乱していた。
机の上にも周りにも教科書の残骸があり、そして───。

「でもあれ、私じゃないの」

側にはジゼレーナがいた。
レオはすぐに、彼女の両手にあった物を取り上げた。

「貴女が手にしていた二つの物を合わせたら、一つの教科書に近い形になった」

 嘘も大概にしろとその時あった事を言うと、彼女は苦笑して答えた。

「あれはタイミングが悪かったわ。彼女の教科書を破いた直後のようになっていた」

 直後も何もと俺は思わず眉を寄せたが、彼女はそれに反応することなく話を続けた。

「私は、彼女があの惨状を見る前に、全てを片付けるつもりだったの。あれはさすがに酷かったから。
教科書も元に戻しておこうと思ったの。彼女がどの教科を受けているのかを知らなかったから、くっつけて探していたの。
 先にどこかへ運ぶべきだったわ。でも、途中で誰かに見られたら面倒だし、貴方方も、もう帰ったものと思っていたのよ。
 でも彼女が来た。彼を連れて」

 普段なら帰っていた時間だったが、リリアベル嬢が忘れ物をしたとかで取りに戻ったのだ。嫌がらせも悪質化してきていて、一人での行動は危なく、俺達はリリアベル嬢についていった。

「そして彼は私を疑う。
 私だって弁明したかったわ。でも、彼と彼女が一緒にいる所を見たのはあの時が初めてで。動揺してしまって、何も話せなかったの。
 誤解をされるような状態でいたのは私だけれど、もっときちんとしっかり、私の話を聞いて欲しかったわ。後でもいいから、聞きに来て欲しかった。
 私からは行けなかったの。彼に会ったら、彼女を気遣う姿を思い出して、泣いてしまいそうで。
彼の婚約者として、そんな醜態を見せる訳にはいかないし、彼や王妃様に幻滅されたくなかったの」

「貴女自ら片付ける必要はなかった。普段の貴女なら人にやらせていた」

「そう。……そう。……そう」

 少し話を戻して彼女の反応を見ると口籠ったので、核心を突いたと思ったが、彼女はその後を綺麗に続けた。

「……そう、そうなのよ。そうなのよ。
私も、本当はあんな事したくなかったのよ。そのせいで、動きが遅くなってしまって……それも悪かったのね。
 でも、もし私のした事が伝わって、彼女からお礼を言われたら。そう考えると鳥肌が立って。

 でも、放っておいたら、私の所為になってしまうでしょう?
内密にと指示を出しても、情報は漏れるものなのよ。
自分でした事の後片付けだと言われるわ。教科書を破いたは良いけれど、結構な事をしてしまったのに気が付いた、みたいな。
それが嫌だったから、一人でやったの。

 結局、私は彼に見られて、噂は真実になってしまったのだけど」


 



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ

朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。 理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。 逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。 エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。

【完結】悪役令嬢の妹に転生しちゃったけど推しはお姉様だから全力で断罪破滅から守らせていただきます!

くま
恋愛
え?死ぬ間際に前世の記憶が戻った、マリア。 ここは前世でハマった乙女ゲームの世界だった。 マリアが一番好きなキャラクターは悪役令嬢のマリエ! 悪役令嬢マリエの妹として転生したマリアは、姉マリエを守ろうと空回り。王子や執事、騎士などはマリアにアプローチするものの、まったく鈍感でアホな主人公に周りは振り回されるばかり。 少しずつ成長をしていくなか、残念ヒロインちゃんが現る!! ほんの少しシリアスもある!かもです。 気ままに書いてますので誤字脱字ありましたら、すいませんっ。 月に一回、二回ほどゆっくりペースで更新です(*≧∀≦*)

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。

倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。 でも、ヒロイン(転生者)がひどい!   彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉ シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり! 私は私の望むままに生きます!! 本編+番外編3作で、40000文字くらいです。 ⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

処理中です...