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1.虐げられた片翼姫は夜伽の寝室で奪われる
5.欠けた翼
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「……俺がここに来たのは、王妃の命だ」
「え……?」
「王妃の裏の依頼を受けたんだ。この部屋で男を待っている女を穢せと……そうすれば、都合がいいと」
言葉は淡々としているのにどこか苦々しげだ。
「最悪の依頼だと思った。だが、俺が請け負えたのなら、せめてここにいるという不幸な女を助けてやれると思って、来た。……しかし」
「……」
「…………まさか、こうなるとは」
まっすぐに見つめられる。
「名を教えてくれ、俺のツガイ」
その言葉に、震えるほどの悦びが胸を満たす。
ツガイに求められるのは無条件の多幸感をもたらすと聞いていた。
これほどのものだとは知らなかった。
(そんなことしたら、また、責められる……)
彼がツガイだとは分かる。
けれど同時に彼は見知らぬ男性で、盗賊や暗殺者かもしれない。
素性も知らないそんな人に口づけを許して、身体を見られて。
それなのに、心の奥が勝手に震えて、何もかも委ねたくなっている。
見つめられて、求められると、抵抗の気持ちがとろけて抗えない。
(これが、ツガイってことなの……?)
「ノエリア、です。あなたは……」
「……グレン。そう呼んでくれ」
そして、ふっと自嘲するように嗤った。
「ツガイなどただの偶然だと思っていた。こんな……本能的な……抗えないものだとは……」
「私も、自分にそんな……」
自分なんかに、ツガイがいるとは思えなかった。
けれど彼がツガイだと、身体も心も強く叫んでいる。
彼の――グレンの指が私の頬に触れた。
その温度が、薬とは違う熱を灯す。
「だって私は、片翼で……欠けていて……」
そう言いかけた瞬間、背に触れられた。
左の痩せた翼を優しく、包むように。
そして右の、小さな付け根――誰かに触れられるのが一番怖い場所。
私は反射的に身を縮める。
「や、み、見ないで……」
「どうしてだ」
「…………みっともない、翼だから……」
ずっとそう言われてきた。
飛べない翼。二度と回復しなかった出来損ないの翼。
「こんな、みすぼらしい翼で……ツガイなんて……」
せっかくツガイを見つけてもこれではと、がっかりしたと言われる。そう思ったのに。
グレンは私の背中を見て、ふっと微笑んだようだった。
「……綺麗だ」
「え……」
「片側の翼は優美で、片側は可愛らしい。……飛べるのか?」
「……い、いいえ。全く……」
指先が、そっと羽を撫でる。唇が私の額に触れた。
彼の両翼が覆うように私の視界を埋めてしまう。
大きいくて力強い、濡れたように艶めいた漆黒の羽。
私のみすぼらしく毟られた片翼とはまるで違う。
ふられるとますます熱っぽくなる気がした。
今までの火照りとは違う、もっと深い、芯から広がる熱。
「え……?」
「王妃の裏の依頼を受けたんだ。この部屋で男を待っている女を穢せと……そうすれば、都合がいいと」
言葉は淡々としているのにどこか苦々しげだ。
「最悪の依頼だと思った。だが、俺が請け負えたのなら、せめてここにいるという不幸な女を助けてやれると思って、来た。……しかし」
「……」
「…………まさか、こうなるとは」
まっすぐに見つめられる。
「名を教えてくれ、俺のツガイ」
その言葉に、震えるほどの悦びが胸を満たす。
ツガイに求められるのは無条件の多幸感をもたらすと聞いていた。
これほどのものだとは知らなかった。
(そんなことしたら、また、責められる……)
彼がツガイだとは分かる。
けれど同時に彼は見知らぬ男性で、盗賊や暗殺者かもしれない。
素性も知らないそんな人に口づけを許して、身体を見られて。
それなのに、心の奥が勝手に震えて、何もかも委ねたくなっている。
見つめられて、求められると、抵抗の気持ちがとろけて抗えない。
(これが、ツガイってことなの……?)
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「……グレン。そう呼んでくれ」
そして、ふっと自嘲するように嗤った。
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「私も、自分にそんな……」
自分なんかに、ツガイがいるとは思えなかった。
けれど彼がツガイだと、身体も心も強く叫んでいる。
彼の――グレンの指が私の頬に触れた。
その温度が、薬とは違う熱を灯す。
「だって私は、片翼で……欠けていて……」
そう言いかけた瞬間、背に触れられた。
左の痩せた翼を優しく、包むように。
そして右の、小さな付け根――誰かに触れられるのが一番怖い場所。
私は反射的に身を縮める。
「や、み、見ないで……」
「どうしてだ」
「…………みっともない、翼だから……」
ずっとそう言われてきた。
飛べない翼。二度と回復しなかった出来損ないの翼。
「こんな、みすぼらしい翼で……ツガイなんて……」
せっかくツガイを見つけてもこれではと、がっかりしたと言われる。そう思ったのに。
グレンは私の背中を見て、ふっと微笑んだようだった。
「……綺麗だ」
「え……」
「片側の翼は優美で、片側は可愛らしい。……飛べるのか?」
「……い、いいえ。全く……」
指先が、そっと羽を撫でる。唇が私の額に触れた。
彼の両翼が覆うように私の視界を埋めてしまう。
大きいくて力強い、濡れたように艶めいた漆黒の羽。
私のみすぼらしく毟られた片翼とはまるで違う。
ふられるとますます熱っぽくなる気がした。
今までの火照りとは違う、もっと深い、芯から広がる熱。
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