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1.虐げられた片翼姫は夜伽の寝室で奪われる
10.辱め
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「わ、私は……」
「寝室へ来てほしいと」
「身体が熱くてたまらないと……」
笑いを噛み殺す気配が広間に広がる。
衛兵のひとりは、さらに具体的な言葉を並べ立てている。
私がどんな声色だったか、どんな風にしなだれかかって、どんな目で見上げたか。
口にした覚えの無いいやらしい言葉が、私の発言として語られていく。
そんなこと、言っていない。してもいない。
けれど、薬で意識が曖昧だったのは確かだ。
――まさか、私は。
胸の奥がサーッと冷たくなる。
もし、あれが――グレンが来てくれたのが、夢だったら。
黒い翼も、温もりも、すべて、救いを求めた私の願望が作り出した幻だったら。
(考えてみれば、そんなに都合よくツガイが現れて、私を助けてくれるなんて、おかしい……)
(すぐに戻ると言った彼が結局帰って来ないのも、すべては私の、夢だったから、で……)
(その間に、私は本当に、この方たちを誘って……?)
羞恥が頭を焼く。
視界が狭まり、床の模様しか見えなくなる。
「ちがっ……ちがいます……っ!」
私が混乱している間に、衛兵が次々と証言を重ねていく。
「ノエリア様は我慢できないと自分から衣を脱がれて」
「うそ、うそ……っ」
皆が私を舐め回すように見ている。
恥ずかしくて恥ずかしくて、言おうとしていた言葉もばらばらになってしまう。
「お諌めしようとした我々は、ノエリア様の手でベッドへ引き込まれました」
「国王陛下が来るまで火照った身体をお慰めせよと命じられ、抗えず……」
「ちがいます、私、そんなこと……っ」
言葉は弱く、繰り返すほどに、空虚になっていく気がした。
私がベッドでどんな風に乱れたかまで詳しく語られて、下卑た笑い声が広がる。けれど私は違う違うとしか言えなくて。
ぱん、と王妃が扇子を閉じた。
「聞くに堪えないわ。生かしてもらっておきながら、淫らな欲で周囲を惑わせて。あなたの行いは、王家への侮辱です」
合図とともに、衛兵が私の背に回る。鞭が床を擦る音がした。
息が止まる。
「ノエリア。色欲の罪を洗い清めなさい」
「……」
「ノエリア」
「ああっ」
衛兵の手で引き倒される。
床に倒れ伏した私の背に、最初の一撃が落ちた。
鋭い痛みが走り、喉から声が漏れる。広間の空気が揺れる。
もう一度。
もう一度。
布越しでも容赦ない衝撃が、傷跡の上に重なる。
私は歯を食いしばる。けれど涙は止まらない。
打たれるたびに、昨夜の感触が遠のく。
それからたくさんの手が伸びてきて、ぶちぶちと羽根を毟り取られた。
彼が優美だと褒めてくれた、残っている片翼も薄くなってしまう。
黒い翼の温もりが、痛みに上書きされる。
もしかしたら、あれは夢だったのではないか。
私はずっと孤独で、救いを欲しがっていた。だから、都合のいい幻を見ただけなのではないか。
もしそうなら、罪は私にある。
薬で朦朧としながら、勝手に淫らな欲に溺れていたのが、本当の私なのではないか。
羞恥と自己嫌悪が、痛みよりも鋭く胸を刺す。
また鞭が振り下ろされる。背が焼けるように熱い。視界が滲み、王妃の白い翼が揺れるのがぼんやりと見える。
黒い翼の影が、ほんの一瞬、脳裏をよぎる。
けれど、それすら自分の妄想ではないかと疑う心が、痛みとともに膨らんでいった。
「寝室へ来てほしいと」
「身体が熱くてたまらないと……」
笑いを噛み殺す気配が広間に広がる。
衛兵のひとりは、さらに具体的な言葉を並べ立てている。
私がどんな声色だったか、どんな風にしなだれかかって、どんな目で見上げたか。
口にした覚えの無いいやらしい言葉が、私の発言として語られていく。
そんなこと、言っていない。してもいない。
けれど、薬で意識が曖昧だったのは確かだ。
――まさか、私は。
胸の奥がサーッと冷たくなる。
もし、あれが――グレンが来てくれたのが、夢だったら。
黒い翼も、温もりも、すべて、救いを求めた私の願望が作り出した幻だったら。
(考えてみれば、そんなに都合よくツガイが現れて、私を助けてくれるなんて、おかしい……)
(すぐに戻ると言った彼が結局帰って来ないのも、すべては私の、夢だったから、で……)
(その間に、私は本当に、この方たちを誘って……?)
羞恥が頭を焼く。
視界が狭まり、床の模様しか見えなくなる。
「ちがっ……ちがいます……っ!」
私が混乱している間に、衛兵が次々と証言を重ねていく。
「ノエリア様は我慢できないと自分から衣を脱がれて」
「うそ、うそ……っ」
皆が私を舐め回すように見ている。
恥ずかしくて恥ずかしくて、言おうとしていた言葉もばらばらになってしまう。
「お諌めしようとした我々は、ノエリア様の手でベッドへ引き込まれました」
「国王陛下が来るまで火照った身体をお慰めせよと命じられ、抗えず……」
「ちがいます、私、そんなこと……っ」
言葉は弱く、繰り返すほどに、空虚になっていく気がした。
私がベッドでどんな風に乱れたかまで詳しく語られて、下卑た笑い声が広がる。けれど私は違う違うとしか言えなくて。
ぱん、と王妃が扇子を閉じた。
「聞くに堪えないわ。生かしてもらっておきながら、淫らな欲で周囲を惑わせて。あなたの行いは、王家への侮辱です」
合図とともに、衛兵が私の背に回る。鞭が床を擦る音がした。
息が止まる。
「ノエリア。色欲の罪を洗い清めなさい」
「……」
「ノエリア」
「ああっ」
衛兵の手で引き倒される。
床に倒れ伏した私の背に、最初の一撃が落ちた。
鋭い痛みが走り、喉から声が漏れる。広間の空気が揺れる。
もう一度。
もう一度。
布越しでも容赦ない衝撃が、傷跡の上に重なる。
私は歯を食いしばる。けれど涙は止まらない。
打たれるたびに、昨夜の感触が遠のく。
それからたくさんの手が伸びてきて、ぶちぶちと羽根を毟り取られた。
彼が優美だと褒めてくれた、残っている片翼も薄くなってしまう。
黒い翼の温もりが、痛みに上書きされる。
もしかしたら、あれは夢だったのではないか。
私はずっと孤独で、救いを欲しがっていた。だから、都合のいい幻を見ただけなのではないか。
もしそうなら、罪は私にある。
薬で朦朧としながら、勝手に淫らな欲に溺れていたのが、本当の私なのではないか。
羞恥と自己嫌悪が、痛みよりも鋭く胸を刺す。
また鞭が振り下ろされる。背が焼けるように熱い。視界が滲み、王妃の白い翼が揺れるのがぼんやりと見える。
黒い翼の影が、ほんの一瞬、脳裏をよぎる。
けれど、それすら自分の妄想ではないかと疑う心が、痛みとともに膨らんでいった。
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