11 / 15
1.虐げられた片翼姫は夜伽の寝室で奪われる
11.逃れられない繋がり ※
しおりを挟む
その後、グレンが現れることはなかった。
離宮に戻された私は、傷の手当ても最低限のまま、冷えたベッドに横たわりながら、何度も扉の方へ視線を向けた。
夜になれば、また彼が来てくれるのではないかと、愚かにも期待していたのだ。
けれど、何も起こらない。
戸が軋むこともなければ、黒い羽根が影を落とすこともない。
次第に、あの夜の記憶が曖昧になっていく。
私はベッドの上で膝を抱えながら、何度も自問した。
あれは、本当にあったことなのだろうか。
薬で朦朧とした頭が見せた幻ではなかったのか。
もしそうなら、私はひどく滑稽だ。
ありもしない救いに縋り、前後不覚のまま誰かを誘って自分の身を穢しておきながら、それでも夢見るなんて。
考えれば考えるほど、胸の奥が冷えていった。
けれど、身体は冷えない。
――むしろ、逆だった。
「はぁ……っ、ぁ……」
あの夜を境に、身体かおかしくなっていた。
最初は傷の痛みのせいだと思った。けれど違う。
鞭の痕が疼くのとは別に、胸の奥や翼の付け根や……お腹の奥が、じんわりと熱を帯びるのだ。
(熱い……身体がおかしい……っ)
片方しかない翼が勝手に平たく開いて、お尻が高く上がって揺れる。
「グレン……たすけて……」
日を追うごとに、むしろ強くなる。
風が背に触れると、片翼の付け根がひどく敏感になり、息が詰まる。
身体が勝手に反応して、全身で少しでも彼の存在を感じ取ろうとする。
ツガイには出逢えば分かる、と幼い頃に教えられた。
身体が共鳴し、どうしようもなく互いを求め合い、――しばらくは見境なく互いに溺れてしまう、とも。
だから、出逢ったツガイたちはしばらくの間は他者を遠ざけ、互いの存在を馴染ませ、身体と心をしっかりと結びつける。
その時間は大切なもので、巣にこもって満足するまで愛し合って過ごす。
それがなければ、ツガイはひどく不安定になるのだと。
身体はそれを知っているかのように、不安に揺れていた。
胸の奥に空洞があるようで、グレンに触れられた記憶を思い出すと一瞬だけ落ち着くのに、すぐに余計に渇きが増す。
それは、羞恥よりも深い、欠乏の感覚だった。
けれど、誰にもこんなことを相談できない。
ツガイがいるのは王家の血を引く者と、それに選ばれた者だけ。王宮の誰にもこの感覚は分からない。
「いやぁ…………っ、もう、いや……」
夢の中でもグレンに逢うことはできなかった。
それなのに、私は浅い夢の中で毎夜、優しい影のような存在に身体中を愛撫されていた。
あの夜に初めて知った達する感覚を求めて、夢の中ではしたなく身をくねらせて求めても終わらない。
(もう、終わりにして……あの時みたいに、して……)
(お願い、……グレン……)
夢の中のそれは熱を解放してくれるようなものではなくて、ただ溜め込んでいく。
自分でふれようとしても、いつ誰に見られているか分からない状況では躊躇いが先に立った。
侍女たちは私の様子を観察する目を持っているけれど、そこに同情はない。
ある朝、湯浴みのあと、背中を拭いているときに、片翼の付け根がひどく敏感になっていることに気づかれた。
布が触れただけで息が漏れる。私は慌てて布を落とし、膝をついた。
その様子を見ていた侍女が、馬鹿にした様子で私を見た。
「どうなさいました、ノエリア様。そんなところが痒いのですか?」
私は首を振る。否定したいのに、顔が赤くなる。
「やはり色欲に溺れた証ですわね」
私は必死に唇を噛んだ。違う。けれど説明できない。
息を殺して、下着が濡れていくのを気づかれないように蹲るので精一杯だった。
別の侍女が囁く。
「一晩では足りなかったのでは?」
「仮にも王女だったくせに。恥を知る心があるなら、もう少し慎ましくしなさいよ」
その言葉に、胸の奥がひりつく。
慎ましくしてきた。ずっと、ずっと。
自分を押し殺し、欲を否定し、存在を小さくしてきた。
それでも、身体がどうしても言うことをきかない。
グレンにふれられたことを思い出しては、身体が甘く疼き、浅ましい自分が恥ずかしくて堪らなくなる。
あの夜に愛された感覚が消えてくれないまま、いやらしい夢を見て目を覚まし、傍にいられないことで呼吸が浅くなる。
身体は我儘に、またとろけるほどツガイに愛されたいと訴え、心はツガイに逢えない寂しさで壊れかけていた。
(グレン……どこにいるの、グレン……)
(私が変だったから、もう嫌なの?)
(それとも、やっぱり全部……私の都合の良い、幻だったの……?)
綺麗だと、可愛いと言われて、みっともない片翼にすら愛おしげに唇を寄せられて。
はしたない身体も指先まで愛撫されて。いじめられて。可愛がられて。
その記憶が、今は私を却って苛んでいた。
私は枕に顔を押しつけて、声を殺して泣いた。
離宮に戻された私は、傷の手当ても最低限のまま、冷えたベッドに横たわりながら、何度も扉の方へ視線を向けた。
夜になれば、また彼が来てくれるのではないかと、愚かにも期待していたのだ。
けれど、何も起こらない。
戸が軋むこともなければ、黒い羽根が影を落とすこともない。
次第に、あの夜の記憶が曖昧になっていく。
私はベッドの上で膝を抱えながら、何度も自問した。
あれは、本当にあったことなのだろうか。
薬で朦朧とした頭が見せた幻ではなかったのか。
もしそうなら、私はひどく滑稽だ。
ありもしない救いに縋り、前後不覚のまま誰かを誘って自分の身を穢しておきながら、それでも夢見るなんて。
考えれば考えるほど、胸の奥が冷えていった。
けれど、身体は冷えない。
――むしろ、逆だった。
「はぁ……っ、ぁ……」
あの夜を境に、身体かおかしくなっていた。
最初は傷の痛みのせいだと思った。けれど違う。
鞭の痕が疼くのとは別に、胸の奥や翼の付け根や……お腹の奥が、じんわりと熱を帯びるのだ。
(熱い……身体がおかしい……っ)
片方しかない翼が勝手に平たく開いて、お尻が高く上がって揺れる。
「グレン……たすけて……」
日を追うごとに、むしろ強くなる。
風が背に触れると、片翼の付け根がひどく敏感になり、息が詰まる。
身体が勝手に反応して、全身で少しでも彼の存在を感じ取ろうとする。
ツガイには出逢えば分かる、と幼い頃に教えられた。
身体が共鳴し、どうしようもなく互いを求め合い、――しばらくは見境なく互いに溺れてしまう、とも。
だから、出逢ったツガイたちはしばらくの間は他者を遠ざけ、互いの存在を馴染ませ、身体と心をしっかりと結びつける。
その時間は大切なもので、巣にこもって満足するまで愛し合って過ごす。
それがなければ、ツガイはひどく不安定になるのだと。
身体はそれを知っているかのように、不安に揺れていた。
胸の奥に空洞があるようで、グレンに触れられた記憶を思い出すと一瞬だけ落ち着くのに、すぐに余計に渇きが増す。
それは、羞恥よりも深い、欠乏の感覚だった。
けれど、誰にもこんなことを相談できない。
ツガイがいるのは王家の血を引く者と、それに選ばれた者だけ。王宮の誰にもこの感覚は分からない。
「いやぁ…………っ、もう、いや……」
夢の中でもグレンに逢うことはできなかった。
それなのに、私は浅い夢の中で毎夜、優しい影のような存在に身体中を愛撫されていた。
あの夜に初めて知った達する感覚を求めて、夢の中ではしたなく身をくねらせて求めても終わらない。
(もう、終わりにして……あの時みたいに、して……)
(お願い、……グレン……)
夢の中のそれは熱を解放してくれるようなものではなくて、ただ溜め込んでいく。
自分でふれようとしても、いつ誰に見られているか分からない状況では躊躇いが先に立った。
侍女たちは私の様子を観察する目を持っているけれど、そこに同情はない。
ある朝、湯浴みのあと、背中を拭いているときに、片翼の付け根がひどく敏感になっていることに気づかれた。
布が触れただけで息が漏れる。私は慌てて布を落とし、膝をついた。
その様子を見ていた侍女が、馬鹿にした様子で私を見た。
「どうなさいました、ノエリア様。そんなところが痒いのですか?」
私は首を振る。否定したいのに、顔が赤くなる。
「やはり色欲に溺れた証ですわね」
私は必死に唇を噛んだ。違う。けれど説明できない。
息を殺して、下着が濡れていくのを気づかれないように蹲るので精一杯だった。
別の侍女が囁く。
「一晩では足りなかったのでは?」
「仮にも王女だったくせに。恥を知る心があるなら、もう少し慎ましくしなさいよ」
その言葉に、胸の奥がひりつく。
慎ましくしてきた。ずっと、ずっと。
自分を押し殺し、欲を否定し、存在を小さくしてきた。
それでも、身体がどうしても言うことをきかない。
グレンにふれられたことを思い出しては、身体が甘く疼き、浅ましい自分が恥ずかしくて堪らなくなる。
あの夜に愛された感覚が消えてくれないまま、いやらしい夢を見て目を覚まし、傍にいられないことで呼吸が浅くなる。
身体は我儘に、またとろけるほどツガイに愛されたいと訴え、心はツガイに逢えない寂しさで壊れかけていた。
(グレン……どこにいるの、グレン……)
(私が変だったから、もう嫌なの?)
(それとも、やっぱり全部……私の都合の良い、幻だったの……?)
綺麗だと、可愛いと言われて、みっともない片翼にすら愛おしげに唇を寄せられて。
はしたない身体も指先まで愛撫されて。いじめられて。可愛がられて。
その記憶が、今は私を却って苛んでいた。
私は枕に顔を押しつけて、声を殺して泣いた。
10
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる