1 / 3
第1話:処刑前夜の取引
しおりを挟む
地下牢の冷たい石床に、俺は転がっていた。
ヴェルド。王国騎士団の元副長。それが三日前までの俺だ。今は違う。王女暗殺未遂の大罪人。明朝には首が落ちる。
笑えてくる。
俺がやったわけではない。だが、それを訴えたところで何になる。この国の上層部は腐りきっている。真実など、誰も求めていない。
◇◇◇
三日前のことを思い出す。
俺は騎士団の詰め所にいた。いつもと同じ朝だった。部下たちと訓練の予定を確認し、巡回の報告を受け、書類に目を通す。
そこに、宰相の使者が来た。
「ヴェルド副長。宰相閣下がお呼びです」
嫌な予感はあった。宰相グレイヴスは、この国の実質的な支配者だ。王女イゾルデは正当な血筋だが、実権はない。宰相とその取り巻きが、全てを動かしている。
俺は騎士団の副長として、何度かその腐敗を目にしてきた。横流しされる軍資金。握り潰される告発。出世のために上に媚びる騎士たち。
だが、俺には何もできなかった。声を上げれば潰される。黙って従うしかない。それがこの国の現実だった。
宰相の執務室に入ると、グレイヴスは書類から顔も上げずに言った。
「王女暗殺未遂の件、犯人はお前だ」
意味が分からなかった。
「……は?」
「昨夜、王女の寝所に侵入者があった。護衛が取り押さえたが、逃げられた。その侵入者が、お前だ」
「俺は昨夜、宿舎にいました。部下が証言できます」
「その部下は、今朝から行方不明だ」
グレイヴスが、ようやく顔を上げた。
笑っていた。薄く、冷たく。
「察しのいいお前なら分かるだろう。これ以上、何か言うか?」
分かった。全部、仕組まれている。
俺を消したい誰かがいる。そして、宰相はそれに乗った。いや、宰相自身が仕組んだのかもしれない。
証人は消された。俺が何を言っても、握り潰される。
抵抗すれば、どうなる。騎士団の部下たちに累が及ぶ。家族がいる者もいる。俺一人の意地のために、彼らを巻き込むわけにはいかない。
「……分かりました」
俺は抵抗しなかった。
連行される時、すれ違った騎士たちは目を逸らした。昨日まで一緒に訓練していた部下たちが、俺を見なかったふりをした。
団長のベルクは、俺が連行される姿を窓から眺めていた。何もしなかった。当然だ。この男は保身しか考えていない。俺が消えれば、副長の椅子が空く。それだけのことだ。
この国は、腐っている。
上から下まで、骨の髄まで。
◇◇◇
拷問は三日続いた。
自白しろ、と。黒幕の名を吐け、と。
黒幕などいない。俺は何もやっていないからだ。だが、拷問官にそれは関係ない。彼らはただ、命令に従っているだけだ。
爪を剥がされ、指を折られ、背中を焼かれた。
それでも俺は何も言わなかった。言うことがないからだ。
三日目の夜、拷問官は来なくなった。明日処刑する人間に、これ以上手間をかける必要はない。合理的な判断だ。
俺は牢の隅で、天井を見上げていた。
死ぬのか。明日。
不思議と、恐怖はなかった。ただ、虚しさがあった。
何のために騎士になった。何のために剣を振るってきた。国を守るためだと思っていた。民を守るためだと思っていた。
だが、この国に守る価値などあったのか。
上は腐り、下は怯え、誰も声を上げない。
こんな国のために、俺は——
◇◇◇
深夜。
足音が聞こえた。
看守ではない。もっと軽く、静かで、それでいて迷いがない足音。
松明の光が格子の向こうに揺れる。
現れたのは、フードを被った細身の人影だった。護衛はいない。従者もいない。たった一人で、この地下牢まで降りてきている。
フードを下ろした瞬間、俺は息を呑んだ。
——イゾルデ王女。
この国の正当な血筋にして、名ばかりの統治者。実権を宰相に奪われ、傀儡同然の存在。
そして、俺が「暗殺しようとした」ことになっている相手。
「……殿下」
声が掠れた。三日間、ろくに水も与えられていない。
「静かに」
王女は短く言った。
その顔を見て、俺は少し驚いた。
若い。二十歳そこそこ。噂では「諦めた王女」と聞いていた。宰相の言いなりで、何も決められず、ただ王宮の奥で息を潜めているだけの存在だと。
だが、今この瞬間、俺の前に立っている女の目は——生きていた。
何かを決意した目。覚悟を決めた目。
諦めた人間の目では、ない。
「お前がやったのではないことは知っている」
前置きなしに、王女は言った。
「……それは、どうも」
「皮肉か?」
「いいえ。ただ、知っていても意味がないでしょう。俺は明日、処刑される」
「そうだな。このままなら」
王女は格子の前にしゃがみ込んだ。目線が、俺と同じ高さになる。
「取引をしないか」
「……取引?」
「お前を助ける代わりに、私のために働け」
意味が分からなかった。
「殿下。失礼ですが、あなたに俺を助ける力があるとは思えません」
「正面からは無理だ。だが、裏からならできる」
王女が懐から小瓶を取り出した。透明な液体が入っている。
「仮死毒だ。飲めば心臓が止まり、呼吸も消える。だが、六時間後に目覚める」
「……仮死、ですか」
「明日の処刑は、予定通り行われる。お前の『死体』は、罪人として城外に捨てられる。そこで目覚めろ」
俺は王女の顔を見つめた。
この女は、本気で言っている。
「目覚めた後は、どうなります」
「私の影になれ」
王女の声は、わずかに震えていた。強がっている。必死に、平静を装おうとしている。だが、隠しきれていない。
「名を捨て、顔を捨て、騎士だった過去を全て捨てろ。表の世界では、お前はもう死んでいる。裏でのみ生きる存在になれ」
「汚れ仕事をやれ、ということですか」
「……そうだ」
一瞬、王女の目が揺れた。
この女は、こういう命令を出すことに慣れていない。それが分かった。
「私には敵が多い。宰相グレイヴス。その取り巻きの貴族たち。さらにその背後には、隣国の影もある。私一人では、どうにもならない」
「……それで、俺を」
「お前のことは調べた」
王女が、俺の目を見た。
「三年前、東部の村が山賊に襲われた時。騎士団は動かなかった。上からの命令がなかったからだ。だが、お前だけは独断で部下を率いて出撃した」
覚えている。あの時、俺は処分を受けた。命令違反だと。
「二年前、宮廷の汚職を告発しようとした騎士がいた。その騎士は『事故』で死んだことになっている。だが、実際には暗殺だった。お前はそれを知っていて、その騎士の家族を密かに逃がした」
なぜ、それを知っている。俺は誰にも言っていない。
「お前は、腐った騎士団の中で、それでも正しくあろうとした数少ない人間だ。そして、正しくあろうとしたがゆえに、消されようとしている」
王女は小瓶を格子の隙間から差し入れた。
「私のために働け。そうすれば、お前は生き延びられる。そして——」
言葉が途切れた。
「そして?」
「……この国を、変えられるかもしれない」
その声は、小さかった。
自信がないのだ。本当に変えられるのか、自分でも分かっていない。それでも、やろうとしている。
俺は小瓶を見つめた。
三日前まで、俺はこの国に絶望していた。腐った上層部。保身しか考えない上司。見て見ぬふりをする同僚たち。
何のために生きているのか、分からなくなっていた。
だが——
今、目の前にいるこの女は、違う。
たった一人で、地下牢まで降りてきた。護衛も連れずに。
実権もなく、力もなく、傀儡同然の立場で。それでも、何かを変えようとしている。
怖いはずだ。震えているのが分かる。それでも、ここにいる。
なぜだろう。
この女を見ていると——まだ生きていたいと思える。
理由は分からない。だが、そう感じた。
「……一つ、訊いてもいいですか」
「何だ」
「なぜ、俺の過去をそこまで知っているのですか」
王女の表情が、一瞬だけ固まった。
「……調べたと言っただろう」
「三年前の東部の件は、記録に残っています。だが、二年前の件は——俺以外、誰も知らないはずだ」
沈黙が落ちた。
王女は俺から目を逸らした。
「それは……」
言葉を探している。嘘をつこうとしている。だが、うまい嘘が見つからない。
「……今は答えられない」
結局、王女はそう言った。
「いつか話す。だが、今は——信じてくれとしか言えない」
不思議な言い方だった。
だが、俺はそれ以上追及しなかった。
「分かりました」
「……受けるのか?」
「ええ」
俺は小瓶を手に取った。
「どうせ明日死ぬ身です。賭けてみる価値はある」
「……そうか」
王女が立ち上がった。その顔に、わずかに安堵の色が浮かんでいた。
本当に、俺が受けるかどうか不安だったのだ。
「目覚めたら、廃墟の礼拝堂に向かえ。床下に装備を隠してある。その後の指示は、追って伝える」
「了解しました」
王女は踵を返した。松明の光が遠ざかっていく。
その背中を見ながら、俺は声をかけた。
「殿下」
足が止まる。振り返らない。
「……なぜ、俺なのですか。他にも使える人間はいるでしょう」
長い沈黙があった。
そして、王女はこう答えた。
「お前でなければ、駄目なんだ」
意味が分からなかった。
だが、それ以上は訊けなかった。王女は足早に去っていく。
階段を上がる足音が遠ざかり——
消える直前、かすかな声が聞こえた。
「お願い……この人で、合っていて……」
何の話だ。
俺は首を傾げた。だが、考えている余裕はない。
小瓶の蓋を開ける。透明な液体が、松明の光を反射していた。
騎士ヴェルドは、明日死ぬ。
だが、その先に——何かがある。
俺は小瓶を口に運び、一息に飲み干した。
ヴェルド。王国騎士団の元副長。それが三日前までの俺だ。今は違う。王女暗殺未遂の大罪人。明朝には首が落ちる。
笑えてくる。
俺がやったわけではない。だが、それを訴えたところで何になる。この国の上層部は腐りきっている。真実など、誰も求めていない。
◇◇◇
三日前のことを思い出す。
俺は騎士団の詰め所にいた。いつもと同じ朝だった。部下たちと訓練の予定を確認し、巡回の報告を受け、書類に目を通す。
そこに、宰相の使者が来た。
「ヴェルド副長。宰相閣下がお呼びです」
嫌な予感はあった。宰相グレイヴスは、この国の実質的な支配者だ。王女イゾルデは正当な血筋だが、実権はない。宰相とその取り巻きが、全てを動かしている。
俺は騎士団の副長として、何度かその腐敗を目にしてきた。横流しされる軍資金。握り潰される告発。出世のために上に媚びる騎士たち。
だが、俺には何もできなかった。声を上げれば潰される。黙って従うしかない。それがこの国の現実だった。
宰相の執務室に入ると、グレイヴスは書類から顔も上げずに言った。
「王女暗殺未遂の件、犯人はお前だ」
意味が分からなかった。
「……は?」
「昨夜、王女の寝所に侵入者があった。護衛が取り押さえたが、逃げられた。その侵入者が、お前だ」
「俺は昨夜、宿舎にいました。部下が証言できます」
「その部下は、今朝から行方不明だ」
グレイヴスが、ようやく顔を上げた。
笑っていた。薄く、冷たく。
「察しのいいお前なら分かるだろう。これ以上、何か言うか?」
分かった。全部、仕組まれている。
俺を消したい誰かがいる。そして、宰相はそれに乗った。いや、宰相自身が仕組んだのかもしれない。
証人は消された。俺が何を言っても、握り潰される。
抵抗すれば、どうなる。騎士団の部下たちに累が及ぶ。家族がいる者もいる。俺一人の意地のために、彼らを巻き込むわけにはいかない。
「……分かりました」
俺は抵抗しなかった。
連行される時、すれ違った騎士たちは目を逸らした。昨日まで一緒に訓練していた部下たちが、俺を見なかったふりをした。
団長のベルクは、俺が連行される姿を窓から眺めていた。何もしなかった。当然だ。この男は保身しか考えていない。俺が消えれば、副長の椅子が空く。それだけのことだ。
この国は、腐っている。
上から下まで、骨の髄まで。
◇◇◇
拷問は三日続いた。
自白しろ、と。黒幕の名を吐け、と。
黒幕などいない。俺は何もやっていないからだ。だが、拷問官にそれは関係ない。彼らはただ、命令に従っているだけだ。
爪を剥がされ、指を折られ、背中を焼かれた。
それでも俺は何も言わなかった。言うことがないからだ。
三日目の夜、拷問官は来なくなった。明日処刑する人間に、これ以上手間をかける必要はない。合理的な判断だ。
俺は牢の隅で、天井を見上げていた。
死ぬのか。明日。
不思議と、恐怖はなかった。ただ、虚しさがあった。
何のために騎士になった。何のために剣を振るってきた。国を守るためだと思っていた。民を守るためだと思っていた。
だが、この国に守る価値などあったのか。
上は腐り、下は怯え、誰も声を上げない。
こんな国のために、俺は——
◇◇◇
深夜。
足音が聞こえた。
看守ではない。もっと軽く、静かで、それでいて迷いがない足音。
松明の光が格子の向こうに揺れる。
現れたのは、フードを被った細身の人影だった。護衛はいない。従者もいない。たった一人で、この地下牢まで降りてきている。
フードを下ろした瞬間、俺は息を呑んだ。
——イゾルデ王女。
この国の正当な血筋にして、名ばかりの統治者。実権を宰相に奪われ、傀儡同然の存在。
そして、俺が「暗殺しようとした」ことになっている相手。
「……殿下」
声が掠れた。三日間、ろくに水も与えられていない。
「静かに」
王女は短く言った。
その顔を見て、俺は少し驚いた。
若い。二十歳そこそこ。噂では「諦めた王女」と聞いていた。宰相の言いなりで、何も決められず、ただ王宮の奥で息を潜めているだけの存在だと。
だが、今この瞬間、俺の前に立っている女の目は——生きていた。
何かを決意した目。覚悟を決めた目。
諦めた人間の目では、ない。
「お前がやったのではないことは知っている」
前置きなしに、王女は言った。
「……それは、どうも」
「皮肉か?」
「いいえ。ただ、知っていても意味がないでしょう。俺は明日、処刑される」
「そうだな。このままなら」
王女は格子の前にしゃがみ込んだ。目線が、俺と同じ高さになる。
「取引をしないか」
「……取引?」
「お前を助ける代わりに、私のために働け」
意味が分からなかった。
「殿下。失礼ですが、あなたに俺を助ける力があるとは思えません」
「正面からは無理だ。だが、裏からならできる」
王女が懐から小瓶を取り出した。透明な液体が入っている。
「仮死毒だ。飲めば心臓が止まり、呼吸も消える。だが、六時間後に目覚める」
「……仮死、ですか」
「明日の処刑は、予定通り行われる。お前の『死体』は、罪人として城外に捨てられる。そこで目覚めろ」
俺は王女の顔を見つめた。
この女は、本気で言っている。
「目覚めた後は、どうなります」
「私の影になれ」
王女の声は、わずかに震えていた。強がっている。必死に、平静を装おうとしている。だが、隠しきれていない。
「名を捨て、顔を捨て、騎士だった過去を全て捨てろ。表の世界では、お前はもう死んでいる。裏でのみ生きる存在になれ」
「汚れ仕事をやれ、ということですか」
「……そうだ」
一瞬、王女の目が揺れた。
この女は、こういう命令を出すことに慣れていない。それが分かった。
「私には敵が多い。宰相グレイヴス。その取り巻きの貴族たち。さらにその背後には、隣国の影もある。私一人では、どうにもならない」
「……それで、俺を」
「お前のことは調べた」
王女が、俺の目を見た。
「三年前、東部の村が山賊に襲われた時。騎士団は動かなかった。上からの命令がなかったからだ。だが、お前だけは独断で部下を率いて出撃した」
覚えている。あの時、俺は処分を受けた。命令違反だと。
「二年前、宮廷の汚職を告発しようとした騎士がいた。その騎士は『事故』で死んだことになっている。だが、実際には暗殺だった。お前はそれを知っていて、その騎士の家族を密かに逃がした」
なぜ、それを知っている。俺は誰にも言っていない。
「お前は、腐った騎士団の中で、それでも正しくあろうとした数少ない人間だ。そして、正しくあろうとしたがゆえに、消されようとしている」
王女は小瓶を格子の隙間から差し入れた。
「私のために働け。そうすれば、お前は生き延びられる。そして——」
言葉が途切れた。
「そして?」
「……この国を、変えられるかもしれない」
その声は、小さかった。
自信がないのだ。本当に変えられるのか、自分でも分かっていない。それでも、やろうとしている。
俺は小瓶を見つめた。
三日前まで、俺はこの国に絶望していた。腐った上層部。保身しか考えない上司。見て見ぬふりをする同僚たち。
何のために生きているのか、分からなくなっていた。
だが——
今、目の前にいるこの女は、違う。
たった一人で、地下牢まで降りてきた。護衛も連れずに。
実権もなく、力もなく、傀儡同然の立場で。それでも、何かを変えようとしている。
怖いはずだ。震えているのが分かる。それでも、ここにいる。
なぜだろう。
この女を見ていると——まだ生きていたいと思える。
理由は分からない。だが、そう感じた。
「……一つ、訊いてもいいですか」
「何だ」
「なぜ、俺の過去をそこまで知っているのですか」
王女の表情が、一瞬だけ固まった。
「……調べたと言っただろう」
「三年前の東部の件は、記録に残っています。だが、二年前の件は——俺以外、誰も知らないはずだ」
沈黙が落ちた。
王女は俺から目を逸らした。
「それは……」
言葉を探している。嘘をつこうとしている。だが、うまい嘘が見つからない。
「……今は答えられない」
結局、王女はそう言った。
「いつか話す。だが、今は——信じてくれとしか言えない」
不思議な言い方だった。
だが、俺はそれ以上追及しなかった。
「分かりました」
「……受けるのか?」
「ええ」
俺は小瓶を手に取った。
「どうせ明日死ぬ身です。賭けてみる価値はある」
「……そうか」
王女が立ち上がった。その顔に、わずかに安堵の色が浮かんでいた。
本当に、俺が受けるかどうか不安だったのだ。
「目覚めたら、廃墟の礼拝堂に向かえ。床下に装備を隠してある。その後の指示は、追って伝える」
「了解しました」
王女は踵を返した。松明の光が遠ざかっていく。
その背中を見ながら、俺は声をかけた。
「殿下」
足が止まる。振り返らない。
「……なぜ、俺なのですか。他にも使える人間はいるでしょう」
長い沈黙があった。
そして、王女はこう答えた。
「お前でなければ、駄目なんだ」
意味が分からなかった。
だが、それ以上は訊けなかった。王女は足早に去っていく。
階段を上がる足音が遠ざかり——
消える直前、かすかな声が聞こえた。
「お願い……この人で、合っていて……」
何の話だ。
俺は首を傾げた。だが、考えている余裕はない。
小瓶の蓋を開ける。透明な液体が、松明の光を反射していた。
騎士ヴェルドは、明日死ぬ。
だが、その先に——何かがある。
俺は小瓶を口に運び、一息に飲み干した。
1
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
私を婚約破棄した国王が処刑されたら、新しい国王の妃になれですって? 喜んで…と言うとでも?
あんど もあ
ファンタジー
幼い頃から王子の婚約者だったアイリスは、他の女性を好きになった王子によって冤罪をかけられて、田舎で平民として生きる事に。
面倒な貴族社会から解放されて、田舎暮らしを満喫しているアイリス。
一方、貴族たちの信頼を失った王子は、国王に即位すると隣国に戦争を仕掛けて敗北。処刑される。
隣国は、アイリスを新しい国王の妃にと言い出すが、それには思惑があって…。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵令息から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる