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金も家も権力もあるが虐待される奴隷か、金も家も権力も無いただの平民か、それが問題だ
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自分は王族で、最も高貴な一族なのだから、周囲の人間も高貴な身分の者であるべきだと考えていた。下位の身分の者は高貴な自分に従うべきであり、取るに足らない存在だと認識していた。
だからこそ、子爵令嬢のリリアナが婚約者であることが許せず、高貴な自分への侮辱だとすら思っていた。
初めは父に何度か婚約者を変えて欲しいと頼んだが、その度に光属性魔法の希少性を懇々と説かれ早々に諦めた。
リリアナも最初は下位貴族らしく自分に従順だったが、すぐに私を軽んじるようになり、横柄な態度になっていった。
所詮は下賤な者だから、まともに教育を受けられないのだろうと見下すことで溜飲を下げ、もっと学ぶ時間をとった方が良いと理由をつけ定例の茶会の頻度を減らした。
リリアナが王宮に来なくなった事に気づいた一番上の兄から、誕生日くらいは贈り物をしろ、とせっつかれたので、仕方なく侍従に命じて適当にプレゼントを贈らせたが、リリアナからは礼の一つもなく、それ以降贈るのをやめた。
リリアナのデビュタントの夜会でエスコート役がリリアナの兄だった事を知った二番目の兄から、婚約者のエスコートも出来ないのか、と責められたので、渋々侍従に命じて次の夜会では自分がエスコートする旨の手紙を書かせて送るも、次の夜会は体調不良で行けない、というふざけた返事が来たのでそれ以降誘うのをやめた。
学園でもリリアナと話すことはほとんどなく、卒業を間近に控え、なぜこんな無愛想で無礼な女と結婚しなければならないのかと悲嘆に暮れていた頃、クリスティーナが接触してきた。
クリスティーナは公爵令嬢で私の再従妹でもあり、身分も血筋も申し分ない。彼女の姉が王太子妃でなかったら、間違いなく私の婚約者になっていただろう。
そんな彼女がリリアナから嫌がらせを受けていると言う。
──これは好機かもしれない。
そう思った。上手くいけばリリアナと婚約破棄できると。
それからは、リリアナがどんな嫌がらせをしているのか詳しく聞くため、クリスティーナと一緒にいることが増えた。嫌がらせの内容は、教科書を破られたとか、ドレスにお茶をかけられたとか、どれも程度の低いものであったが、それこそあの卑しいリリアナらしい。
どのタイミングで婚約破棄を突きつけるのが効果的か、学園の静かな裏庭で考えていると、クリスティーナがボロボロの格好で泣きながら駆け寄ってきた。
私の元に辿り着く直前でフラつく彼女を抱きとめ、慌てて訳を聞くと、私と仲の良いクリスティーナに嫉妬したリリアナがやったのだと言う。
嫉妬。リリアナが? 嫉妬で嫌がらせをするほどあの女は私の婚約者でいたいのか? あんな態度でも、やはりあの女は高貴な私との結婚を望んでいる。そんなリリアナに婚約破棄を突きつけたらどんな顔をするだろう。
そう思い、愉悦に歪みそうになる口元を抑えながら、涙を流して怯えるクリスティーナを慰めた。公爵令嬢をナイフで切りつけたのだ、いくら治癒魔法が使えても何らかの処分は免れない。陛下に報告してリリアナに罰を与えよう、そうクリスティーナを説得するが、彼女は傷物令嬢になりたくないから大事にしたくない、謝罪だけで構わないのだという。
それならば、と私はクリスティーナにプロポーズした。自分の婚約者が公爵令嬢を傷つけたのだ。その責任を取って彼女を新たな婚約者とするのは筋が通っている。
そうすれば、私はリリアナと婚約破棄できるうえに、新たな婚約者を私に相応しい高貴な身分の公爵令嬢にする事ができる。
全て私の望み通りに。
決してクリスティーナの胸元から覗く谷間や切り裂かれたドレスの隙間から見える太股に惹かれた訳ではない。
クリスティーナは喜んで承諾し、それでは卒業パーティーでリリアナを断罪してはどうか、と提案してきた。公の場で宣言してしまえば、いかに国王陛下といえども取り消すことは難しい。
妙案だと思った。
ついでにリリアナを国外追放にして欲しい、と言ってきたので快諾した。
そして、今に至る。
だからこそ、子爵令嬢のリリアナが婚約者であることが許せず、高貴な自分への侮辱だとすら思っていた。
初めは父に何度か婚約者を変えて欲しいと頼んだが、その度に光属性魔法の希少性を懇々と説かれ早々に諦めた。
リリアナも最初は下位貴族らしく自分に従順だったが、すぐに私を軽んじるようになり、横柄な態度になっていった。
所詮は下賤な者だから、まともに教育を受けられないのだろうと見下すことで溜飲を下げ、もっと学ぶ時間をとった方が良いと理由をつけ定例の茶会の頻度を減らした。
リリアナが王宮に来なくなった事に気づいた一番上の兄から、誕生日くらいは贈り物をしろ、とせっつかれたので、仕方なく侍従に命じて適当にプレゼントを贈らせたが、リリアナからは礼の一つもなく、それ以降贈るのをやめた。
リリアナのデビュタントの夜会でエスコート役がリリアナの兄だった事を知った二番目の兄から、婚約者のエスコートも出来ないのか、と責められたので、渋々侍従に命じて次の夜会では自分がエスコートする旨の手紙を書かせて送るも、次の夜会は体調不良で行けない、というふざけた返事が来たのでそれ以降誘うのをやめた。
学園でもリリアナと話すことはほとんどなく、卒業を間近に控え、なぜこんな無愛想で無礼な女と結婚しなければならないのかと悲嘆に暮れていた頃、クリスティーナが接触してきた。
クリスティーナは公爵令嬢で私の再従妹でもあり、身分も血筋も申し分ない。彼女の姉が王太子妃でなかったら、間違いなく私の婚約者になっていただろう。
そんな彼女がリリアナから嫌がらせを受けていると言う。
──これは好機かもしれない。
そう思った。上手くいけばリリアナと婚約破棄できると。
それからは、リリアナがどんな嫌がらせをしているのか詳しく聞くため、クリスティーナと一緒にいることが増えた。嫌がらせの内容は、教科書を破られたとか、ドレスにお茶をかけられたとか、どれも程度の低いものであったが、それこそあの卑しいリリアナらしい。
どのタイミングで婚約破棄を突きつけるのが効果的か、学園の静かな裏庭で考えていると、クリスティーナがボロボロの格好で泣きながら駆け寄ってきた。
私の元に辿り着く直前でフラつく彼女を抱きとめ、慌てて訳を聞くと、私と仲の良いクリスティーナに嫉妬したリリアナがやったのだと言う。
嫉妬。リリアナが? 嫉妬で嫌がらせをするほどあの女は私の婚約者でいたいのか? あんな態度でも、やはりあの女は高貴な私との結婚を望んでいる。そんなリリアナに婚約破棄を突きつけたらどんな顔をするだろう。
そう思い、愉悦に歪みそうになる口元を抑えながら、涙を流して怯えるクリスティーナを慰めた。公爵令嬢をナイフで切りつけたのだ、いくら治癒魔法が使えても何らかの処分は免れない。陛下に報告してリリアナに罰を与えよう、そうクリスティーナを説得するが、彼女は傷物令嬢になりたくないから大事にしたくない、謝罪だけで構わないのだという。
それならば、と私はクリスティーナにプロポーズした。自分の婚約者が公爵令嬢を傷つけたのだ。その責任を取って彼女を新たな婚約者とするのは筋が通っている。
そうすれば、私はリリアナと婚約破棄できるうえに、新たな婚約者を私に相応しい高貴な身分の公爵令嬢にする事ができる。
全て私の望み通りに。
決してクリスティーナの胸元から覗く谷間や切り裂かれたドレスの隙間から見える太股に惹かれた訳ではない。
クリスティーナは喜んで承諾し、それでは卒業パーティーでリリアナを断罪してはどうか、と提案してきた。公の場で宣言してしまえば、いかに国王陛下といえども取り消すことは難しい。
妙案だと思った。
ついでにリリアナを国外追放にして欲しい、と言ってきたので快諾した。
そして、今に至る。
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