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第七話 花嫁日和は異世界にて
05.HOWEVER
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積み木細工が崩れ去るかの如く、ファムファタールの天之箱舟は瓦解しながら海に落ちていき、次々と巨大な水柱が立った。
その光景を高い位置から遠目で眺めているヒヨリとヴァイル。
風の翼……帆布(キャノピー)は大きく膨らんで傘のような形状となり、パラシュートの機能を果たして、ゆっくりとヴァイルたちは降下していった。
座席となる場所は一人分しかなく不安定である為に、ヒヨリはヴァイルの膝に座り、しっかりとヴァイルの身体を抱きついていた。
お互いの息遣いが聞こえるほど密着しており、より旨の鼓動は高鳴ってしまってしまう。
照れを紛らわすためにヒヨリが話しかける。
「こ、これで、魔女の船までやってきたの?」
「ああ。前にも言っただろう。もっと凄いことが出来るって」
「確かに凄いけど……」
大きな凧に乗って空を飛行する忍者みたいだなと思いつつ、異世界でもそういう発想があると共に実現可能だったのには驚いてしまう。
「これも魔法なの?」
「いや、俺は魔法は使えないよ。風を操る魔法が使えたのなら、もっと上手く飛べているさ」
二人乗りでは操作が難しく、帆布もボロボロの状態であり、風(気流)をつかめられず上昇が出来ないでいた。
ゆっくり降下しており、このままではいつしか海に着水し、漂流してしまう可能性がある。危機はまだ脱していない。
けれど、ヒヨリに恐怖や不安を感じていなかった。
何度も助けて貰い、ましてや普通だったら到達できない空の上まで駆けつけてくれたヴァイルが側に居てくれるから。
絶体絶命の状況だったにも関わらず生還を果たし、こうして生存していることで、喜びと共に心の底から湧きあがってくる“熱い想い”があった。
しかし、長時間も漂流する心配はなさそうだ。遠方でヨルムンガンド号がこちらに向かっているのが見えた。
「ヴァイル様ーー! ヒヨリ様ーーー! 大丈夫ですかーー! 今、助けに行きます! 待っててください!」
とガウディの呼び声が聞こえた気がする。
連れ去られてから初めて、二人は安堵の息を吐いた。
「これからどうしうよう……」
魔女ファムファタールが元の世界に戻してくれるかもという望みは、まるで真下の海に漂う泡沫のように消えていってしまった。
元々、自分(ヒヨリ)をこの異世界(ミッドガルニア)を連れてきたのがファムファタールだった。今更ながら腹を立ててしまうも、ヴァイルが敵討ちをしてくれているので、怒りの矛先が失われてしまい虚しさを覚える。
「心配するな。まだヒヨリが元の世界に戻れる方法があるだろう」
「九偉神の宝を全て集めたら、どんな願いが叶うという? でも、探したり見つけたりするのは凄く難しいんじゃ……」
「難しいが不可能じゃない。過去にも全ての宝を集められたことがあるんだ。それに、そのぐらい成し遂げられないようじゃ、ヒヨリを嫁に迎えられないだろう」
ヴァイルの優しい言葉とほほ笑みに、涙が込み上げてくる。
この世界にやってきて泣き虫になったなとヒヨリは実感してしまう。
改めて顔を見合わせるヒヨリとヴァイル。
涙が溢れるヒヨリの瞳と凛々しいヴァイルの瞳が見つめ合い……自然と唇と唇を触れ合わせた。
よくファーストキスは甘いと言われるが、よく解らない。ただ、心臓の鼓動や時間さえも止まりそうだった。
ヒヨリは確信した。
(私はヴァイルが好きになったんだ)
ヴァイルは自分の身体(命)を張って助けてくれた。だけど、その恩を返したいだけではない、ヴァイルの想いに自分も応えてあげたい。
まだキスを続けたかったが――「ぐ~♪」と、ヒヨリとヴァイルのお腹の虫が盛大に鳴ってしまった。
ヒヨリはクスッと笑いがこぼれてしまい、ヴァイルは柄にも似合わず頬を赤くして照れている。
「ヴァーン島に帰れたら、美味しいご飯を作るからね」
「ああ、期待しているよ」
「そうだ、何か食べたいものとかある?」
「そうだな。初めて食わせて貰った汁物(スーパ)……いや、なにかずっしりしたもの……肉が食いたいな」
「お肉か……。それじゃハンバーグなんてどうかな」
「はんばーぐ? 美味いのか、それは?」
「うん、とっても。私の得意料理でもあるから楽しみにしていてね!」
きっとヴァイルは願いを叶えてくれるだろう。
ならば、その時が来るまで、この異世界を花嫁修業のつもりでヴァイルと一緒に過ごし、美味しいご飯を作ってあげても良いかなと決心した。それはヴァイルの花嫁になる決意も含まれていた。
こうして若林日和(ワカバヤシ ヒヨリ)の花嫁日和は異世界にて始まるのである。
その光景を高い位置から遠目で眺めているヒヨリとヴァイル。
風の翼……帆布(キャノピー)は大きく膨らんで傘のような形状となり、パラシュートの機能を果たして、ゆっくりとヴァイルたちは降下していった。
座席となる場所は一人分しかなく不安定である為に、ヒヨリはヴァイルの膝に座り、しっかりとヴァイルの身体を抱きついていた。
お互いの息遣いが聞こえるほど密着しており、より旨の鼓動は高鳴ってしまってしまう。
照れを紛らわすためにヒヨリが話しかける。
「こ、これで、魔女の船までやってきたの?」
「ああ。前にも言っただろう。もっと凄いことが出来るって」
「確かに凄いけど……」
大きな凧に乗って空を飛行する忍者みたいだなと思いつつ、異世界でもそういう発想があると共に実現可能だったのには驚いてしまう。
「これも魔法なの?」
「いや、俺は魔法は使えないよ。風を操る魔法が使えたのなら、もっと上手く飛べているさ」
二人乗りでは操作が難しく、帆布もボロボロの状態であり、風(気流)をつかめられず上昇が出来ないでいた。
ゆっくり降下しており、このままではいつしか海に着水し、漂流してしまう可能性がある。危機はまだ脱していない。
けれど、ヒヨリに恐怖や不安を感じていなかった。
何度も助けて貰い、ましてや普通だったら到達できない空の上まで駆けつけてくれたヴァイルが側に居てくれるから。
絶体絶命の状況だったにも関わらず生還を果たし、こうして生存していることで、喜びと共に心の底から湧きあがってくる“熱い想い”があった。
しかし、長時間も漂流する心配はなさそうだ。遠方でヨルムンガンド号がこちらに向かっているのが見えた。
「ヴァイル様ーー! ヒヨリ様ーーー! 大丈夫ですかーー! 今、助けに行きます! 待っててください!」
とガウディの呼び声が聞こえた気がする。
連れ去られてから初めて、二人は安堵の息を吐いた。
「これからどうしうよう……」
魔女ファムファタールが元の世界に戻してくれるかもという望みは、まるで真下の海に漂う泡沫のように消えていってしまった。
元々、自分(ヒヨリ)をこの異世界(ミッドガルニア)を連れてきたのがファムファタールだった。今更ながら腹を立ててしまうも、ヴァイルが敵討ちをしてくれているので、怒りの矛先が失われてしまい虚しさを覚える。
「心配するな。まだヒヨリが元の世界に戻れる方法があるだろう」
「九偉神の宝を全て集めたら、どんな願いが叶うという? でも、探したり見つけたりするのは凄く難しいんじゃ……」
「難しいが不可能じゃない。過去にも全ての宝を集められたことがあるんだ。それに、そのぐらい成し遂げられないようじゃ、ヒヨリを嫁に迎えられないだろう」
ヴァイルの優しい言葉とほほ笑みに、涙が込み上げてくる。
この世界にやってきて泣き虫になったなとヒヨリは実感してしまう。
改めて顔を見合わせるヒヨリとヴァイル。
涙が溢れるヒヨリの瞳と凛々しいヴァイルの瞳が見つめ合い……自然と唇と唇を触れ合わせた。
よくファーストキスは甘いと言われるが、よく解らない。ただ、心臓の鼓動や時間さえも止まりそうだった。
ヒヨリは確信した。
(私はヴァイルが好きになったんだ)
ヴァイルは自分の身体(命)を張って助けてくれた。だけど、その恩を返したいだけではない、ヴァイルの想いに自分も応えてあげたい。
まだキスを続けたかったが――「ぐ~♪」と、ヒヨリとヴァイルのお腹の虫が盛大に鳴ってしまった。
ヒヨリはクスッと笑いがこぼれてしまい、ヴァイルは柄にも似合わず頬を赤くして照れている。
「ヴァーン島に帰れたら、美味しいご飯を作るからね」
「ああ、期待しているよ」
「そうだ、何か食べたいものとかある?」
「そうだな。初めて食わせて貰った汁物(スーパ)……いや、なにかずっしりしたもの……肉が食いたいな」
「お肉か……。それじゃハンバーグなんてどうかな」
「はんばーぐ? 美味いのか、それは?」
「うん、とっても。私の得意料理でもあるから楽しみにしていてね!」
きっとヴァイルは願いを叶えてくれるだろう。
ならば、その時が来るまで、この異世界を花嫁修業のつもりでヴァイルと一緒に過ごし、美味しいご飯を作ってあげても良いかなと決心した。それはヴァイルの花嫁になる決意も含まれていた。
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