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第6話 歌舞伎町
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ケイゴと会話しているうちに、だんだん愛斗は重苦しい気分になった。電話を切った後、この後どうしていいのかわからなくなる。
スマホの呼び出し音が鳴った。かけてきたのは、ヲタスケだ。
「大変なはめになっちゃったね。まさかユメカちゃんに嫌疑がかかるなんて」
ヲタスケの第一声がこうだった。
「ケイゴ君と話したけど、彼はよりにもよってリナちゃんを疑ってるみたいだね。彼女に限ってそんなはずないよ」
「全くそうです」
口ではそう肯定したが、実はそれほど自信がない。そもそもリナとは出会ったばかりで、考えてみれば、どんな女性かよく知らないのだ。
「実はね。リナちゃんから、ホストクラブに誘われてるんだ」
「ホストクラブ?」
「うん。なんでもムノさんが歌舞伎町のホストクラブによく行ってるってユメカちゃんに話してたのを聞いた事があるそうなんだ。お店の名前も聞いてるって」
ヲタスケは、続ける。
「リナちゃんはそのホストクラブに行って、ムノさんに関する情報を仕入れようって魂胆なをだ」
「でもホストの人達が顧客に関する情報を明かしますかね?」
「自分もそう思うんだけど、リナちゃん曰く秘策があるって話なんだよね」
「秘策? ですか?」
結局クソ暑い8月2日の金曜日に、愛斗はヲタスケとリナと待ち合わせて、歌舞伎町のホストクラブに行く事になった。
仕事の後、夜の8時にJR新宿駅の東口の交番前で待ち合わせしたのだ。到着すると、すでにヲタスケとリナがいた。
リナは慣れた足取りで、週末の人混みをよけながら、他の2人を先導する。インバウンド効果のせいか、外国人も多い。
やがて目的の店に着く。愛斗はあまり歌舞伎町に来ないし、ホストクラブに入るのも初めてなので、ビビりながら中に入る。
我ながら足取りもギクシャクして、故障したロボットのような歩き方になっていた。店内に入ると、テーブルの1つに案内される。
めっちゃイケメンの茶髪のホストがテーブルに着いた。
「お金が心配なんですけど」
小声で愛斗がヲタスケに相談する。
「今夜はあたしの奢りだから、心配しないで」
リナから、頼もしい返答。早速彼女は値段の張りそうな酒や料理をどんどん注文し始める。
これは上客と見たらしく、茶髪のホストに続いて、黒髪のホストがさらに席に着いた。
茶髪のホストは陽気でワイルドな雰囲気だったが、黒髪の方はちょっとクールなイメージだ。
リナは酒に強いようで、どんどんグラスを空けていた。
「そんなに注文して、お会計大丈夫ですか?」
茶髪のホストが質問した。
「大丈夫よ。あたしのパパ、大きな会社の社長だもの」
「リナさんは、◯◯大卒のお嬢様なんですよ」
ヲタスケが、解説した。彼が口に出した大学は良家の子女が通う有名な私大である。2人のホストもちょっと驚いたようだった。
「ところでさあ、こういう子知らない?」
リナは途中で自分のスマホを取り出すと、画像を見せる。そこにはユメカが映っていたが、隣にムノの姿もあった。
リナは、ムノを指差したのだ。
「この、赤毛にサングラスにピンクのマスクの子。よくここに、遊びに来るって言ったけど」
「すいませんけどリナさん。他のお客様に関する質問にはお答えしかねますが……」
黒髪のホストが話した。
「あーあ。今夜は派手に使おうと思ったけど、やっぱやめようかなあ」
「ちょ、ちょっとお待ちくださいね。店長に聞いて参ります。この画像を撮影してもよろしいでしょうか?」
「大丈夫よ」
茶髪のホストは自分のスマホで撮影すると、席を外した。やがて再び茶髪のホストが現れる。
「お待たせしました。大変残念ですが、誰もこの方を知りません。でもこちらの女性なら、以前はよくいらしてました」
茶髪のホストが、ユメカの画像を指差した。
「『2020』のユメカさんですよね?」
黒髪のホストが聞いた。リナがうなずく。
「よく店に来て、結構お金使ってました。でも4月ぐらいから『お金がないから当分来れない』って言い出して、6月以降はパタッと来なくなりました。まさか殺人やって捕まるなんて」
「ユメカちゃんは、殺してない! 勝手に殺人者ってきめつけないで」
リナが、ピシャリとはねつける。
「だってテレビで言ってましたよ」
呆れた顔で、黒髪のホストが話す。
「あくまで容疑者として、逮捕されただけ。真犯人は、別にいる。赤毛の子はあたし達同様ユメカちゃんの熱心なファンなの。赤毛の子なら、何か知ってるかと踏んだわけ」
「そうなんですね」
黒髪のホストが慌てて答えた。客の主張を頭から否定するわけにもいかないのだろう。だが愛斗も、リナと同じ気持ちである。
スマホの呼び出し音が鳴った。かけてきたのは、ヲタスケだ。
「大変なはめになっちゃったね。まさかユメカちゃんに嫌疑がかかるなんて」
ヲタスケの第一声がこうだった。
「ケイゴ君と話したけど、彼はよりにもよってリナちゃんを疑ってるみたいだね。彼女に限ってそんなはずないよ」
「全くそうです」
口ではそう肯定したが、実はそれほど自信がない。そもそもリナとは出会ったばかりで、考えてみれば、どんな女性かよく知らないのだ。
「実はね。リナちゃんから、ホストクラブに誘われてるんだ」
「ホストクラブ?」
「うん。なんでもムノさんが歌舞伎町のホストクラブによく行ってるってユメカちゃんに話してたのを聞いた事があるそうなんだ。お店の名前も聞いてるって」
ヲタスケは、続ける。
「リナちゃんはそのホストクラブに行って、ムノさんに関する情報を仕入れようって魂胆なをだ」
「でもホストの人達が顧客に関する情報を明かしますかね?」
「自分もそう思うんだけど、リナちゃん曰く秘策があるって話なんだよね」
「秘策? ですか?」
結局クソ暑い8月2日の金曜日に、愛斗はヲタスケとリナと待ち合わせて、歌舞伎町のホストクラブに行く事になった。
仕事の後、夜の8時にJR新宿駅の東口の交番前で待ち合わせしたのだ。到着すると、すでにヲタスケとリナがいた。
リナは慣れた足取りで、週末の人混みをよけながら、他の2人を先導する。インバウンド効果のせいか、外国人も多い。
やがて目的の店に着く。愛斗はあまり歌舞伎町に来ないし、ホストクラブに入るのも初めてなので、ビビりながら中に入る。
我ながら足取りもギクシャクして、故障したロボットのような歩き方になっていた。店内に入ると、テーブルの1つに案内される。
めっちゃイケメンの茶髪のホストがテーブルに着いた。
「お金が心配なんですけど」
小声で愛斗がヲタスケに相談する。
「今夜はあたしの奢りだから、心配しないで」
リナから、頼もしい返答。早速彼女は値段の張りそうな酒や料理をどんどん注文し始める。
これは上客と見たらしく、茶髪のホストに続いて、黒髪のホストがさらに席に着いた。
茶髪のホストは陽気でワイルドな雰囲気だったが、黒髪の方はちょっとクールなイメージだ。
リナは酒に強いようで、どんどんグラスを空けていた。
「そんなに注文して、お会計大丈夫ですか?」
茶髪のホストが質問した。
「大丈夫よ。あたしのパパ、大きな会社の社長だもの」
「リナさんは、◯◯大卒のお嬢様なんですよ」
ヲタスケが、解説した。彼が口に出した大学は良家の子女が通う有名な私大である。2人のホストもちょっと驚いたようだった。
「ところでさあ、こういう子知らない?」
リナは途中で自分のスマホを取り出すと、画像を見せる。そこにはユメカが映っていたが、隣にムノの姿もあった。
リナは、ムノを指差したのだ。
「この、赤毛にサングラスにピンクのマスクの子。よくここに、遊びに来るって言ったけど」
「すいませんけどリナさん。他のお客様に関する質問にはお答えしかねますが……」
黒髪のホストが話した。
「あーあ。今夜は派手に使おうと思ったけど、やっぱやめようかなあ」
「ちょ、ちょっとお待ちくださいね。店長に聞いて参ります。この画像を撮影してもよろしいでしょうか?」
「大丈夫よ」
茶髪のホストは自分のスマホで撮影すると、席を外した。やがて再び茶髪のホストが現れる。
「お待たせしました。大変残念ですが、誰もこの方を知りません。でもこちらの女性なら、以前はよくいらしてました」
茶髪のホストが、ユメカの画像を指差した。
「『2020』のユメカさんですよね?」
黒髪のホストが聞いた。リナがうなずく。
「よく店に来て、結構お金使ってました。でも4月ぐらいから『お金がないから当分来れない』って言い出して、6月以降はパタッと来なくなりました。まさか殺人やって捕まるなんて」
「ユメカちゃんは、殺してない! 勝手に殺人者ってきめつけないで」
リナが、ピシャリとはねつける。
「だってテレビで言ってましたよ」
呆れた顔で、黒髪のホストが話す。
「あくまで容疑者として、逮捕されただけ。真犯人は、別にいる。赤毛の子はあたし達同様ユメカちゃんの熱心なファンなの。赤毛の子なら、何か知ってるかと踏んだわけ」
「そうなんですね」
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