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第7話 探検
復活党は野党時代から核兵器保有を主張していた。ついにその悲願を達成したのかもしれない。
「見張りは、食堂の隣にある監視室で行う。ここには島の外部に向けられた防犯カメラが撮った映像が、リアルタイムでモニターで再生されているそうだ」
兵頭が、解説する。
「元々は、ストーカー対策で設置したものです」
恋文が、後を引き継いだ。その後皆は彼女の先導で隣室に入った。
確かにそこにはたくさんの液晶モニターが並んでおり、島をめぐる海岸の各所が映しだされている。
「悪いけどもう眠いから、寝かせてほしいです」
発言したのは、稗田である。気持ちは、わかる。
室内はエアコンが効いてるとはいえ、8月の猛暑と難破で、若田部も疲労が蓄積していた。
「とりあえず日替わりで2人ずつ、見張りをするのはわかりました。取り急ぎの話がないなら、眠らせてください。北海道から逃げてきて、くたくたなんです」
「すまなかった。確かに急ぎの話は以上だ。休みたい者は、休んでくれ」
兵頭が、頭をかく。無理もない。若田部も飛行機で逃げたわけじゃない。
警察の手配が回ってるかもしれないので、途中何度も電車やバスを乗り継いだり、長距離を歩いたりしたのだ。
よく逮捕されずに、ここまで来たものである。再び若田部は別館にある食堂を離れ、エンピツ屋敷の本館に戻った。
自分の部屋にある202号室のベッドに倒れこむと、やがていつしか前後不覚に眠りの世界に落ちこんでいた。
目が覚めて、壁にかかった時計を見ると、夜の8時を過ぎていた。腹が減ったので食堂に行く。
ついでに食堂の隣にある監視室に向かった。そこには兵頭の姿がある。
「早乙女さんは、いないんですか?」
若田部が、質問した。
「その辺を探検したいと言い出してね。8時頃外出したよ。なんだ。君も彼女狙いか?」
兵頭が、ニヤリと笑う。
「そんなんじゃないですよ。ただ、2人1組って聞いてたから」
激しく首を横に振ると、そこを出た。廊下でバッタリ瀬古と、出くわす。
瀬古はなぜか自分の履いてる短パンのポケットの中をひっくり返したり、周囲の床を見渡したりしている。
何か探し物をしてるようだ。その彼が、監視室から出てきた若田部に気づいた。
「ほのかちゃんは監視室?」
馴れ馴れしい口調で瀬古が聞いてくる。
「いえ。8時頃周辺を探索に行ったそうです」
「そういや俺も、まだ島内を回ってないな。ちょっとその辺見てくるか。食堂に懐中電灯が用意してあったしな」
それだけ残すと瀬古は食堂に入り、端のテーブルに並べて置いてあった懐中電灯の1つを持つと、別館の外に出て、北の方の森の中に入っていった。
若田部は、食堂の棚にあったカップラーメンを1つ取ると、電気ポットで保温状態になっていたお湯を注いだ。
ふと壁の時計を見ると、8時半になろうとしている。そこに今度は、今国が現れた。
カップラーメンを食べていた若田部は、ヒーローに声をかける。
「しかし今国さんは、すごいですよね。脱獄不可能と呼ばれた孤島の刑務所から、よく出られましたね」
今国がいた刑務所は、東京湾に浮かぶ人工的に作られた島に作られており、現代のアルカトラズと呼ばれていた。
ネットに掲載された政府の情報を信じるなら、刑務所内のあちらこちらに防犯カメラがしかけられ、刑務所の周囲は高さ3メートルの塀で囲まれ、塀の上には高圧電流の流れる電線が張られているそうだ。
「よければどんな方法で逃げ出したのか、教えてください」
眼前の英雄は視線を落とし、それには答えぬままだった。
「ごめんなさい!」
慌てて、若田部は謝罪する。
「辛い思い出なのに、嫌なことを思い出させて」
しばらくしてから今国が、重々しく口を開いた。
「そういえば、さっき瀬古君が森の方に行ったけど」
「ええ。何でも、森を探検するとか。その前には、早乙女さんも」
「心配だな。瀬古君は、早乙女さんにご執心だったしね」
今国は、早くも食堂を出ようとしていた。確かに瀬古は、ちょっと心配なところがある。今国が行ってくれるなら安心だ。
今国が外出した後、稗田が食堂に来る。その頃にはカップ麺を食べ終えていた。
「さっき今国さんが森の方に出て行ったけど何かあったの?」
若田部は、それまでの経緯を話す。
「そうなんだ。早乙女さんは美人だから大学でも人気があったからね」
「同じ大学だったんだ! 知らなかった! 全員初対面だと思ってた」
「僕も早乙女さんも理数系なんだけど、彼女は優秀な生徒だったんで、教授についてウィルス兵器の研究をさせられてた。君が鹿児島に着いたのは他の人より遅れたけど、その前にみんなにこの件は伝えてる」
稗田はさらに話を紡ぐ。
「今国さんは若田部君より後から来たけど、別の機会にやはり話してる。早乙女さんが北海道から鹿児島へ逃げてきたのは、兵器開発に関わりたくなかったからだよ。それについて相談されて、2人で逃げる事になったんだ。念のため言っておくけど、僕らは恋人じゃない。純粋に民主化運動の同志としてのつきあいさ」
稗田は、そう念を押す。
「見張りは、食堂の隣にある監視室で行う。ここには島の外部に向けられた防犯カメラが撮った映像が、リアルタイムでモニターで再生されているそうだ」
兵頭が、解説する。
「元々は、ストーカー対策で設置したものです」
恋文が、後を引き継いだ。その後皆は彼女の先導で隣室に入った。
確かにそこにはたくさんの液晶モニターが並んでおり、島をめぐる海岸の各所が映しだされている。
「悪いけどもう眠いから、寝かせてほしいです」
発言したのは、稗田である。気持ちは、わかる。
室内はエアコンが効いてるとはいえ、8月の猛暑と難破で、若田部も疲労が蓄積していた。
「とりあえず日替わりで2人ずつ、見張りをするのはわかりました。取り急ぎの話がないなら、眠らせてください。北海道から逃げてきて、くたくたなんです」
「すまなかった。確かに急ぎの話は以上だ。休みたい者は、休んでくれ」
兵頭が、頭をかく。無理もない。若田部も飛行機で逃げたわけじゃない。
警察の手配が回ってるかもしれないので、途中何度も電車やバスを乗り継いだり、長距離を歩いたりしたのだ。
よく逮捕されずに、ここまで来たものである。再び若田部は別館にある食堂を離れ、エンピツ屋敷の本館に戻った。
自分の部屋にある202号室のベッドに倒れこむと、やがていつしか前後不覚に眠りの世界に落ちこんでいた。
目が覚めて、壁にかかった時計を見ると、夜の8時を過ぎていた。腹が減ったので食堂に行く。
ついでに食堂の隣にある監視室に向かった。そこには兵頭の姿がある。
「早乙女さんは、いないんですか?」
若田部が、質問した。
「その辺を探検したいと言い出してね。8時頃外出したよ。なんだ。君も彼女狙いか?」
兵頭が、ニヤリと笑う。
「そんなんじゃないですよ。ただ、2人1組って聞いてたから」
激しく首を横に振ると、そこを出た。廊下でバッタリ瀬古と、出くわす。
瀬古はなぜか自分の履いてる短パンのポケットの中をひっくり返したり、周囲の床を見渡したりしている。
何か探し物をしてるようだ。その彼が、監視室から出てきた若田部に気づいた。
「ほのかちゃんは監視室?」
馴れ馴れしい口調で瀬古が聞いてくる。
「いえ。8時頃周辺を探索に行ったそうです」
「そういや俺も、まだ島内を回ってないな。ちょっとその辺見てくるか。食堂に懐中電灯が用意してあったしな」
それだけ残すと瀬古は食堂に入り、端のテーブルに並べて置いてあった懐中電灯の1つを持つと、別館の外に出て、北の方の森の中に入っていった。
若田部は、食堂の棚にあったカップラーメンを1つ取ると、電気ポットで保温状態になっていたお湯を注いだ。
ふと壁の時計を見ると、8時半になろうとしている。そこに今度は、今国が現れた。
カップラーメンを食べていた若田部は、ヒーローに声をかける。
「しかし今国さんは、すごいですよね。脱獄不可能と呼ばれた孤島の刑務所から、よく出られましたね」
今国がいた刑務所は、東京湾に浮かぶ人工的に作られた島に作られており、現代のアルカトラズと呼ばれていた。
ネットに掲載された政府の情報を信じるなら、刑務所内のあちらこちらに防犯カメラがしかけられ、刑務所の周囲は高さ3メートルの塀で囲まれ、塀の上には高圧電流の流れる電線が張られているそうだ。
「よければどんな方法で逃げ出したのか、教えてください」
眼前の英雄は視線を落とし、それには答えぬままだった。
「ごめんなさい!」
慌てて、若田部は謝罪する。
「辛い思い出なのに、嫌なことを思い出させて」
しばらくしてから今国が、重々しく口を開いた。
「そういえば、さっき瀬古君が森の方に行ったけど」
「ええ。何でも、森を探検するとか。その前には、早乙女さんも」
「心配だな。瀬古君は、早乙女さんにご執心だったしね」
今国は、早くも食堂を出ようとしていた。確かに瀬古は、ちょっと心配なところがある。今国が行ってくれるなら安心だ。
今国が外出した後、稗田が食堂に来る。その頃にはカップ麺を食べ終えていた。
「さっき今国さんが森の方に出て行ったけど何かあったの?」
若田部は、それまでの経緯を話す。
「そうなんだ。早乙女さんは美人だから大学でも人気があったからね」
「同じ大学だったんだ! 知らなかった! 全員初対面だと思ってた」
「僕も早乙女さんも理数系なんだけど、彼女は優秀な生徒だったんで、教授についてウィルス兵器の研究をさせられてた。君が鹿児島に着いたのは他の人より遅れたけど、その前にみんなにこの件は伝えてる」
稗田はさらに話を紡ぐ。
「今国さんは若田部君より後から来たけど、別の機会にやはり話してる。早乙女さんが北海道から鹿児島へ逃げてきたのは、兵器開発に関わりたくなかったからだよ。それについて相談されて、2人で逃げる事になったんだ。念のため言っておくけど、僕らは恋人じゃない。純粋に民主化運動の同志としてのつきあいさ」
稗田は、そう念を押す。
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