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第9話 監禁
「これは確かに君のだよな?」
今国が聞く。瀬古は言葉を発しなかった。しばらく沈黙が、続く。
「このライターは、早乙女さんの遺体のそばに落ちていた。若田部君も見たよな?」
今国が話しながら、若田部を見る。若田部は、慌ててうなずく。
「俺じゃねー。ライターはいつのまにか落としてて、探してたんだ!」
瀬古は大声を張り上げて、唾を飛ばした。
「ちょっと待ってください」
口をはさんだのは智恵理である。
「瀬古さんを犯人だって決めつけるのは、早いのでは? あたしもさっきまで外に探検に行ってました。一応アリバイのない人は、全員洗ってみるべきでは?」
「そりゃ、そうだな」
水川船長が同意する。
「実は俺も、1人で外に出てるから、アリバイはない」
「君もだよな。若田部君」
稗田が冷たい口調で指摘した。若田部は、うなずく。若田部は無論やってないが、他の人目線で見れば、容疑者の1人だ。
「そういう稗田君も、そうだよね。あたしが外に行った時すれ違いに別館に戻っていくのが見えたもん。稗田君は、気づかなかったみたいだけど」
智恵理が指摘すると、稗田が激しく動揺した。
「実は、あたしも森の中に出てたんだ」
横から恋紋が、告白する。
「結構外に出ている人が多かったから途中で道に迷ったり、怪我する人がいないか心配で」
「結局俺以外の6人は早乙女さんが外出した後、全員外に出たわけだ」
兵頭が、そう口にしながらがっくりと肩を落とし、頭を両手で抱えた。
「まさか、こんな事態になるとは‥‥‥彼女を1人で外に出した、俺の責任だ」
「無理ないですよ」
若田部がうつむいた兵頭を慰める。
「この島には同志しかいないんですから、誰も今回のような状況は予測できなかったでしょう」
「誰か侵入者がいたんじゃないの?」
うわずった声で、瀬古がそう指摘した。
「それは、ない」
頭を抱えたまま、兵頭が否定する。
「俺がずっと防犯モニターを見ていたからな」
腹の底からしぼりだすような、重苦しい声だ。これほどエネルギッシュで力強い人が、こんなにも打ちひしがれているのに驚いていた。
それだけショックだったのだろう。
「本当に死んだんですか? 人工呼吸とかしなかったんですか?」
穏やかだが、強い語調で智恵理が今国と若田部を、かわるがわる見る。愛らしい眼差しに、ナイフのような光が宿る。
「かなりきつくスカーフで首をしめられてて、完全に死んでたな。なあ、そうだよな?」
今国が、若田部に同意を求めた。若田部は、ギクシャクと首肯する。
「悪いけど瀬古君。君を信用できない」
今国が、瀬古にそう放つ。
「君はかなり早乙女さんにご執心だったから。そこで皆に提案がある」
ヒーローは周囲を振り返る。
「瀬古君には悪いけど真相がはっきりするまでどこかの部屋に、外から施錠していてもらうのはどうだろう?」
「外からの施錠なら、今瀬古さんがいる部屋でも可能です」
恋紋がそう解説した。
「みなさん気づいたかもしれませんが、みなさんに渡した鍵で外から施開錠できるサムターンキーとは別に、外からしか施開錠できない錠もついてます。全ての部屋に。同志の中からスパイが出た時を想定して、そんな構造にしたんです」
「なら、ちょうどいい。誰か反対する者はいないか?」
今国の問いかけに、皆は黙ったきりである。
「僕は、賛成です」
紙やすりをかけたような彼特有のザラザラした声で、稗田がそう表明した。
「冗談じゃねえよ!」
激昂したのは、瀬古である。
「俺を監禁しようっていうのか!?」
「ありていに表現すれば、その通りさ」
稗田がそう、瀬古に返した。
「ライター1つで犯人扱いなんて、酷すぎる」
慟哭に近い叫び声を瀬古があげる。
「どうだろうか。兵頭さん」
今国が、声をかけた。
「しかたないな。瀬古君には悪いが、一旦今言った形をとらせてもらう」
それまでずっと頭を抱えていた兵頭は、自らの両手を離し、ようやく立ち上がって瀬古を見る。
「俺には無理だよ。難破した時両腕を怪我したんだ。スカーフで首をしめるなんて」
「それは君の主張であって、本当にそうかはわからないからな」
氷河のように冷たい言葉が兵頭から放たれた。瀬古は、半泣きだ。真相はわからないが、若田部はなんだかかわいそうになってしまう。
無論本当に犯人なら、許せないが。
「とりあえずマカロフを預からせてもらう。どこにある?」
兵頭が、詰問した。
「部屋だけど」
「では、これから一緒に部屋に行こう。両手は上に上げてくれ」
兵頭は、自分のピストルを取り出して、その銃口を瀬古に向ける。
「聞こえなかったのか? 両手をあげるんだ」
瀬古は何か反論しようとしたが、諦めたらしく、素直に命令に従った。
「悪く思わないでくれよ。無論君が冤罪の可能性もある。だから君を監禁後、真犯人を我々で探す。他に犯人が見つかったら、瀬古君を解放する」
「兵頭さんの言う通りです」
脇から稗田が、ざらつく声で口をはさむ。
「僕らは警察じゃないので科学捜査はできないんですから。やむを得ない措置です」
それから皆は本館に向かった。瀬古の部屋は黄色い鉛筆の1階にある103号室である。
そこへ彼は拳銃を握った手に追われるように歩いていた。
「大丈夫だとは思うが逃げようとしたり、変な動きをしたりしたら、遠慮なく撃つからな」
「兵頭さん、酷いですよ。僕ら民主化運動の同志でしょう? なんでこんなマネするんです?」
瀬古が、泣き言を放つ。その時である。稗田が自分のポケットからマカロフを取り出した。
安全装置を外し、その銃口を瀬古の後頭部に向ける。
今国が聞く。瀬古は言葉を発しなかった。しばらく沈黙が、続く。
「このライターは、早乙女さんの遺体のそばに落ちていた。若田部君も見たよな?」
今国が話しながら、若田部を見る。若田部は、慌ててうなずく。
「俺じゃねー。ライターはいつのまにか落としてて、探してたんだ!」
瀬古は大声を張り上げて、唾を飛ばした。
「ちょっと待ってください」
口をはさんだのは智恵理である。
「瀬古さんを犯人だって決めつけるのは、早いのでは? あたしもさっきまで外に探検に行ってました。一応アリバイのない人は、全員洗ってみるべきでは?」
「そりゃ、そうだな」
水川船長が同意する。
「実は俺も、1人で外に出てるから、アリバイはない」
「君もだよな。若田部君」
稗田が冷たい口調で指摘した。若田部は、うなずく。若田部は無論やってないが、他の人目線で見れば、容疑者の1人だ。
「そういう稗田君も、そうだよね。あたしが外に行った時すれ違いに別館に戻っていくのが見えたもん。稗田君は、気づかなかったみたいだけど」
智恵理が指摘すると、稗田が激しく動揺した。
「実は、あたしも森の中に出てたんだ」
横から恋紋が、告白する。
「結構外に出ている人が多かったから途中で道に迷ったり、怪我する人がいないか心配で」
「結局俺以外の6人は早乙女さんが外出した後、全員外に出たわけだ」
兵頭が、そう口にしながらがっくりと肩を落とし、頭を両手で抱えた。
「まさか、こんな事態になるとは‥‥‥彼女を1人で外に出した、俺の責任だ」
「無理ないですよ」
若田部がうつむいた兵頭を慰める。
「この島には同志しかいないんですから、誰も今回のような状況は予測できなかったでしょう」
「誰か侵入者がいたんじゃないの?」
うわずった声で、瀬古がそう指摘した。
「それは、ない」
頭を抱えたまま、兵頭が否定する。
「俺がずっと防犯モニターを見ていたからな」
腹の底からしぼりだすような、重苦しい声だ。これほどエネルギッシュで力強い人が、こんなにも打ちひしがれているのに驚いていた。
それだけショックだったのだろう。
「本当に死んだんですか? 人工呼吸とかしなかったんですか?」
穏やかだが、強い語調で智恵理が今国と若田部を、かわるがわる見る。愛らしい眼差しに、ナイフのような光が宿る。
「かなりきつくスカーフで首をしめられてて、完全に死んでたな。なあ、そうだよな?」
今国が、若田部に同意を求めた。若田部は、ギクシャクと首肯する。
「悪いけど瀬古君。君を信用できない」
今国が、瀬古にそう放つ。
「君はかなり早乙女さんにご執心だったから。そこで皆に提案がある」
ヒーローは周囲を振り返る。
「瀬古君には悪いけど真相がはっきりするまでどこかの部屋に、外から施錠していてもらうのはどうだろう?」
「外からの施錠なら、今瀬古さんがいる部屋でも可能です」
恋紋がそう解説した。
「みなさん気づいたかもしれませんが、みなさんに渡した鍵で外から施開錠できるサムターンキーとは別に、外からしか施開錠できない錠もついてます。全ての部屋に。同志の中からスパイが出た時を想定して、そんな構造にしたんです」
「なら、ちょうどいい。誰か反対する者はいないか?」
今国の問いかけに、皆は黙ったきりである。
「僕は、賛成です」
紙やすりをかけたような彼特有のザラザラした声で、稗田がそう表明した。
「冗談じゃねえよ!」
激昂したのは、瀬古である。
「俺を監禁しようっていうのか!?」
「ありていに表現すれば、その通りさ」
稗田がそう、瀬古に返した。
「ライター1つで犯人扱いなんて、酷すぎる」
慟哭に近い叫び声を瀬古があげる。
「どうだろうか。兵頭さん」
今国が、声をかけた。
「しかたないな。瀬古君には悪いが、一旦今言った形をとらせてもらう」
それまでずっと頭を抱えていた兵頭は、自らの両手を離し、ようやく立ち上がって瀬古を見る。
「俺には無理だよ。難破した時両腕を怪我したんだ。スカーフで首をしめるなんて」
「それは君の主張であって、本当にそうかはわからないからな」
氷河のように冷たい言葉が兵頭から放たれた。瀬古は、半泣きだ。真相はわからないが、若田部はなんだかかわいそうになってしまう。
無論本当に犯人なら、許せないが。
「とりあえずマカロフを預からせてもらう。どこにある?」
兵頭が、詰問した。
「部屋だけど」
「では、これから一緒に部屋に行こう。両手は上に上げてくれ」
兵頭は、自分のピストルを取り出して、その銃口を瀬古に向ける。
「聞こえなかったのか? 両手をあげるんだ」
瀬古は何か反論しようとしたが、諦めたらしく、素直に命令に従った。
「悪く思わないでくれよ。無論君が冤罪の可能性もある。だから君を監禁後、真犯人を我々で探す。他に犯人が見つかったら、瀬古君を解放する」
「兵頭さんの言う通りです」
脇から稗田が、ざらつく声で口をはさむ。
「僕らは警察じゃないので科学捜査はできないんですから。やむを得ない措置です」
それから皆は本館に向かった。瀬古の部屋は黄色い鉛筆の1階にある103号室である。
そこへ彼は拳銃を握った手に追われるように歩いていた。
「大丈夫だとは思うが逃げようとしたり、変な動きをしたりしたら、遠慮なく撃つからな」
「兵頭さん、酷いですよ。僕ら民主化運動の同志でしょう? なんでこんなマネするんです?」
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安全装置を外し、その銃口を瀬古の後頭部に向ける。
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