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1話完結
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今や22世紀である。人工知能の進化には驚くべきものがあり、私の開発したAI『愛』は、データ上の小説を含む全ての日本語の文章を読みこんで、それを元に次々と、様々な小説を作り出していた。
異世界ファンタジー、ホラー、SF、恋愛物、ミステリ、ハードボイルド、純文学、どれもがたくさんダウンロードされ、ベストセラーになったのだ。
今や人間の職業作家は消滅していた。人間はアマチュアとして小説投稿サイトなどに載せているだけなのだ。
AIは人間と違い、不祥事を起こさずスランプもないのが強みである。
それは日本に限らず世界中でそうだった。『愛』以外にもAI作家は存在したが、次から次へと様々なバリエーションの作品を紡ぐ『愛』にかなう日本語で執筆する小説専門のソフトはなかった。
『愛』の作品は翻訳ソフトで世界中の言語で翻訳され、海外でも人気である。翻訳も今や人間ではなくAIがやる時代なのだ。
私の銀行口座には、多額のお金が振り込まれ、クレジットカードの限度額を心配せずに支払いができる身分になった。
都内港区に豪邸を建て、軽井沢やハワイやルナシティやスペースコロニーに別荘を建設し、自家用ジェットや自家用スペースプレーンで旅行するようになったのだ。
そして美しい人気女優と結婚し、見目麗しい愛人達を囲っていた。そんなふうに私を金持ちにしてくれた『愛』に思わぬライバルが現れる。
『仁』という名であった。ネットで話題になったので早速読んだ。最初はバカにしていたが、とても良かった。
私はこれでも読書家のつもりだが、今まで読んだ事がないような、個性的な文章だ。
舞台設定もワールドワイドで、普段あまり一般的に行かないようなマニアックな地域がまるで行ったかのように描かれていた。
その地で食べた料理の味や香り、嗅いだ花の香りなどが、実際に自分の胃へと放り込んだようにビビッドに書かれているのだ。
地球上だけではなくルナシティやマーズシティやスペースコロニーの都市の様子も詳細に描かれていた。
物語は過去にも遡り、データ上にはないはずの、今は使われなくなったネイティブ・アメリカンなどの少数民族の言語による台詞のやりとりがあったりしたのだ。
会話の後に括弧をつけて、日本語訳を載せていた。
そんなやりとりが、上手く作品世界とからみあい、小説に奥行きを持たせている。
『仁』はその作風の目新しさで、たちまち小説が売れ始めた。やがて重大発表がなされる。『仁』はAIではなく人間の男性だったのだ。
確かに『仁』も、『仁』の電子書籍を出版した会社も『仁』をAIだとは1度も主張してないので、別に嘘をついてはなかった。
事実上世界中で人間のプロ作家は絶滅したので、勝手に私を含めた皆が、人工知能だと信じこんでいたのである。
人間の男性『仁』は、裕福な企業経営者の息子だった。
お金に困ってない彼は、データ化されてない世界中の絶版本を読みあさり、それらを研究・分析して、創作活動に役立てたのだ。
AI作家はデータ上の情報しか活用できないので、そこは人間の強みである。
そして彼は世界中のあまりネットで情報の出てこない地方都市を旅行して、地元でしか知られてないようなソウルフードを食べたり、現地の祭りを取材したりして、作品に生かしたのだ。
一方やはりデータ上に資料がない、今は使われなくなった少数民族の言語や文化を作中に取り入れた。
そういった情報は仮にデータ上にあっても、多くの人は興味がなかろうとAI作家は判断して、題材にとりあげる事はほとんどなかった。
またデリケートな話題のためAI作家がほとんどとりあげる事のない皇室のあり方や部落差別や宗教についても、メインの題材でないにしろ、作品にからませたのが『仁』だった。
やがて『仁』は、今ではまずやらなくなったサイン会や講演会をやるようになり、多くのファンが物珍しさから集まったのだ。
言うまでもなく、AI作家にサイン会や講演会はできなかった。
出すたびにベストセラーを連発していた『愛』の作品の売り上げは落ちている。一方『仁』の創作物は売り上げを伸ばしていた。
『仁』は人間なので当然ながら出版ペースは遅いのだが、逆にそれが読者の飢餓感を煽る形になっている。
今のところ対抗する手段はなかった。『仁』が飽きられるか、思わぬスキャンダルなどで自滅するのに期待するしかない。
人間長年生きてれば、後ろ暗いところの1つや2つはあるだろう。
やがてあるスキャンダルが、ネット上を騒がせた。残念ながら、『仁』の不祥事ではなかった。
他でもないこの私が、自社の複数の社員からパワハラやセクハラで訴えられ、社長を辞任するハメになったのだ。
会社のイメージが悪くなり、『愛』の新作のダウンロード数は、以前よりも半減してしまった。
確かにAI自体は不祥事を起こさない。が、私の世間的なイメージが下がれば、『愛』のイメージが下がるのも当たり前の話だった。
異世界ファンタジー、ホラー、SF、恋愛物、ミステリ、ハードボイルド、純文学、どれもがたくさんダウンロードされ、ベストセラーになったのだ。
今や人間の職業作家は消滅していた。人間はアマチュアとして小説投稿サイトなどに載せているだけなのだ。
AIは人間と違い、不祥事を起こさずスランプもないのが強みである。
それは日本に限らず世界中でそうだった。『愛』以外にもAI作家は存在したが、次から次へと様々なバリエーションの作品を紡ぐ『愛』にかなう日本語で執筆する小説専門のソフトはなかった。
『愛』の作品は翻訳ソフトで世界中の言語で翻訳され、海外でも人気である。翻訳も今や人間ではなくAIがやる時代なのだ。
私の銀行口座には、多額のお金が振り込まれ、クレジットカードの限度額を心配せずに支払いができる身分になった。
都内港区に豪邸を建て、軽井沢やハワイやルナシティやスペースコロニーに別荘を建設し、自家用ジェットや自家用スペースプレーンで旅行するようになったのだ。
そして美しい人気女優と結婚し、見目麗しい愛人達を囲っていた。そんなふうに私を金持ちにしてくれた『愛』に思わぬライバルが現れる。
『仁』という名であった。ネットで話題になったので早速読んだ。最初はバカにしていたが、とても良かった。
私はこれでも読書家のつもりだが、今まで読んだ事がないような、個性的な文章だ。
舞台設定もワールドワイドで、普段あまり一般的に行かないようなマニアックな地域がまるで行ったかのように描かれていた。
その地で食べた料理の味や香り、嗅いだ花の香りなどが、実際に自分の胃へと放り込んだようにビビッドに書かれているのだ。
地球上だけではなくルナシティやマーズシティやスペースコロニーの都市の様子も詳細に描かれていた。
物語は過去にも遡り、データ上にはないはずの、今は使われなくなったネイティブ・アメリカンなどの少数民族の言語による台詞のやりとりがあったりしたのだ。
会話の後に括弧をつけて、日本語訳を載せていた。
そんなやりとりが、上手く作品世界とからみあい、小説に奥行きを持たせている。
『仁』はその作風の目新しさで、たちまち小説が売れ始めた。やがて重大発表がなされる。『仁』はAIではなく人間の男性だったのだ。
確かに『仁』も、『仁』の電子書籍を出版した会社も『仁』をAIだとは1度も主張してないので、別に嘘をついてはなかった。
事実上世界中で人間のプロ作家は絶滅したので、勝手に私を含めた皆が、人工知能だと信じこんでいたのである。
人間の男性『仁』は、裕福な企業経営者の息子だった。
お金に困ってない彼は、データ化されてない世界中の絶版本を読みあさり、それらを研究・分析して、創作活動に役立てたのだ。
AI作家はデータ上の情報しか活用できないので、そこは人間の強みである。
そして彼は世界中のあまりネットで情報の出てこない地方都市を旅行して、地元でしか知られてないようなソウルフードを食べたり、現地の祭りを取材したりして、作品に生かしたのだ。
一方やはりデータ上に資料がない、今は使われなくなった少数民族の言語や文化を作中に取り入れた。
そういった情報は仮にデータ上にあっても、多くの人は興味がなかろうとAI作家は判断して、題材にとりあげる事はほとんどなかった。
またデリケートな話題のためAI作家がほとんどとりあげる事のない皇室のあり方や部落差別や宗教についても、メインの題材でないにしろ、作品にからませたのが『仁』だった。
やがて『仁』は、今ではまずやらなくなったサイン会や講演会をやるようになり、多くのファンが物珍しさから集まったのだ。
言うまでもなく、AI作家にサイン会や講演会はできなかった。
出すたびにベストセラーを連発していた『愛』の作品の売り上げは落ちている。一方『仁』の創作物は売り上げを伸ばしていた。
『仁』は人間なので当然ながら出版ペースは遅いのだが、逆にそれが読者の飢餓感を煽る形になっている。
今のところ対抗する手段はなかった。『仁』が飽きられるか、思わぬスキャンダルなどで自滅するのに期待するしかない。
人間長年生きてれば、後ろ暗いところの1つや2つはあるだろう。
やがてあるスキャンダルが、ネット上を騒がせた。残念ながら、『仁』の不祥事ではなかった。
他でもないこの私が、自社の複数の社員からパワハラやセクハラで訴えられ、社長を辞任するハメになったのだ。
会社のイメージが悪くなり、『愛』の新作のダウンロード数は、以前よりも半減してしまった。
確かにAI自体は不祥事を起こさない。が、私の世間的なイメージが下がれば、『愛』のイメージが下がるのも当たり前の話だった。
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