地球に優しい? 侵略者

空川億里

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第10話 反乱

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 ベッドから起きたショードファ人の男は、同じショードファ人の看護師を絞め殺すのに成功した。
  元捕虜の10人のショードファ人達は全員が自分のレイガンを病室に置いており、それを携えて廊下に出る。
 たまたま通路を歩いていたショードファ人の医師がおり、さすがに10人がいっぺんに出てきたために、相手も警戒の色を見せていた。
   元捕虜の1人が医師に近づいた。手をのばせば届きそうな距離まで行くと、医師はさすがに身構えた。
「ドクター」
 元捕虜のうち1人が話した。
「我々はいつまで、ここで寝てなきゃならんのですか」
 元捕虜が接近すると医師は異常を感じたのか、反転して逃げだした。1人が追うと、ドクターは腰にさしてあったレイガンを抜いて撃つ。
 銃口から目に見えない光が放たれ、追手の1人の頭部にでかい穴が開き、男はそのまま廊下に倒れた。
 形成は一挙に変わる。医師がレイガンを携帯してるとは予想外だった。
 ドクターはさらに引き金を引き、もう1人の元捕虜のどてっ腹にクレーターが出現する。
 その男も倒れ、残りは8人になっていた。
    医師は右腕にはめたブレスレット型通信機のボタンをあごで押し、ブリッジにつないだ。
   その間、視線は残りの8人から放さない。
「こちらドクター。元捕虜が逃げた。10人のうち2人は倒した。診察の際わからなかったが、おそらくはチャマンカ人に操られてる」
  そこへ1人の元捕虜がレイガンを撃ってくる。
    医師はよけながらレイガンでその1人を倒すと背後に振り返り、逃げだした。これで元捕虜の残数は7人だ。
    ちょうどその時医師が逃げたのと反対側の通路の角に、保安部隊の制服を着たショードファ人が2人現れる。
 かれらはレイガンの銃口をこっちに向けると引き金を引く。見えない射線がぶちあたり、元捕虜の1人が倒れた。
 残った6人は保安部隊がいるのとは反対方向へ逃走する。が、1人が背中から撃たれ、通路に倒れた。これで残りは5人である。
 艦内には、緊急警報がけたたましい大音量で流れていた。


                  
「一体何で、こうなった」 
 怒りをつとめて抑えながら、ワランファ准将が話した。
「戻ってきたのは全員がショードファ人の元捕虜で、洗脳チップが埋められてたわけでもないのに」
「全くわけがわかりません」
 ドクターがそこへ、口をはさんだ。
「ここへ連れてきた時あらゆる検査をしましたが、洗脳された形跡はありませんでした。チャマンカ人が形跡を残さぬような、新たな方法を考えたとしか思えません」
「ともかく現在この艦内には元捕虜が5人いて、我々に対し反乱を起こしている。不本意ながら仮に洗脳されているにせよ、次にどんな行為に出るかわからんのだ。保安隊長、かれらを全員殺せ」
 ワランファに命じられた隊長は一瞬返事を躊躇したが、やがて以下の言葉を発した。
「了解しました」


         
 結菜にとってショードファ人の戦艦は、わくわくするような存在だった。
   通路の中をあちこち歩いても決して飽きたりしないのだ。艦内の重力も空気の成分も地球とは違うため、彼女はプロテクト・スーツを着たままだった。
 そこへ突然緊急警報が流される。近くの部屋に入ろうとした時5人のショードファ人が現れた。
    全員が殺気立っている。
「一緒に来い。貴様は人質だ」
 相手がショードファ語で話した。それはヘルメットを通じ日本語に変換される。相手は銃口を、結菜に向けたので両手をあげた。
「あんたら一体どうしたの。捕虜交換で、救われたのに」
 結菜は叫んだが、誰も返答しなかった。ショードファ人の表情は読みとりにくいが、それを割り引いても一種異様な雰囲気を感じる。やがて保安隊が進行方向の左右の角から顔を出し、手にしたレイガンの引き金を引く。
 撃ちあいになる。元捕虜側の1人が倒れた。保安隊はすぐ顔をひっこめたので、倒れた者はいない。
     背後から人の気配がして振り向くと、いつのまにか瀬戸口の姿がある。
「どうせなら、おれを人質にしろ。女の子を人質にするなんざ、卑怯な真似をする」
 瀬戸口は丸腰で、両手を頭の後ろに組んで、歩いてきた。
「失礼ね! あたしは女の子じゃない。立派なレディよ」
 結菜は叫んだ。
「そりゃ、悪かった」
 瀬戸口は、薄い唇に苦笑を浮かべた。
「2人とも人質だ」
 元捕虜の1人が決めつけた。
「このままブリッジに向かえ!」
「艦橋を乗っとる気か?」
 瀬戸口が聞いた。
「さすがにそれはワランファ准将が認めないだろ。おれ達もろともあんたら、殺されるぜ」
「それでもかまわん」
「ドクターの話だと、捕虜だったショードファ人は洗脳されてなかったって言ってたのに」
 結菜が、悔し気に吐きすてた。
「ドクターの発言は正しかったな」
 瀬戸口が、発言する。
「え? 何で?」
 不思議そうに、結菜が瀬戸口の方を見た。
「こいつらは、自由意思で動いてる」
 瀬戸口が続けた。しばらく沈黙があったが、その後でショードファ人の1人が口を開いた。
「その通りだ」
 隣にいた別の元捕虜が、睨むように発言の主を見た。それでも最初に口を開いたショードファ人は話しはじめる。
「チャマンカ人に言われたのだ。自分達の命令を聞かなければ拷問にかけ、10人全員殺すとな。最初に屈服したのは、おれだ。ザースコ少佐だ」
「裏切ったのね」
 怒声をあげて、結菜が相手をまっすぐ見た。
「ああ、そうよ。だが他にどんな選択肢があったと言うんだ」
 ザースコが、声をはりあげる。
「拷問されたうえ、結局殺されれば良かったというのか。ショードファ星が壊滅してから地球時間に換算すれば30年間、我々は命がけのゲリラ活動を続けてきたが、チャマンカ帝国の攻撃で、ことごとく拠点を潰された。今や帝国は銀河全域に広がって、どう転んでもおれ達の勝ち目はない。もうおれは、勝負の見えた戦いに嫌気がさした。むしろチャマンカの犬となり、不毛な抵抗にうつつを抜かす者達に引導を渡そうとしたまでよ」
 ザースコ少佐が射るようなピンクに光る目で、結菜を見つめる。凄まじい炎のような熱気を感じた。
「今ここにいる全員がザースコ少佐と、同じ気持ちだ」
 一緒にいた元捕虜の一人が、発言する。
「君達地球人がチャマンカに降伏したのは正しかった。おかげでショードファ星のように、放射能まみれの荒野にならずに済んだのだから」
「裏切り者め!」
 いつのまにか、保安隊の隊員たちが通路の角に顔を出して、ザースコ達を罵った。
「人質の地球人を放せ!」
「ならおれ達を転送室へ連れていけ。そこから東京にある在日チャマンカ総督府に転送しろ。でなければ、人質もろとも自爆する。当然この艦も無傷ではない。おれの体内に超小型の核爆弾がしこんである。脳波で起爆できるのだ」
「はったりを言うな。貴様らを連れてきた時、全員の体をスキャンしている」
「ショードファ星のスキャン技術で感知できないテクノロジーを、チャマンカは開発したのだ。信じなくてもいい。おれはすぐにでも自爆するだけだ。脳波で指示を出さなくてもお前さんに撃たれれば、自爆装置が作動する」
 ザースコの台詞に、保安隊の隊員は色めきたった。
「ちょっと待て。准将に連絡して、確認する」 
 保安隊のメンバーの1人が突然慌てだして、そう返答した。しばらく沈黙が続く。
 おそらく脳波通信で、状況を説明してるのだろう。やがてその隊員は、再び口を開いた。
「ワランファ准将の許可を得た。これから転送室へ一緒に行く。お前らも場所は知ってるだろう。そのまま歩け。おれ達は後をついていく」
「下手な小細工したら、人質の命はないと思え」
 ザースコ少佐が念を押した。
「お前らのように同胞を騙すような真似はせんから、安心しろ」
 保安隊の1人が嘲った。元捕虜の1人が食ってかかろうとしたが、ザースコ少佐が腕で制止した。
 やがてザースコ含めた5人の元捕虜と2人の地球人、3名の保安隊員は、転送室の中へ入る。
   ザースコ少佐が転送室の中にある操作盤で行先の座標を合わせ、スイッチを押す。
    それは確かに東京にあるチャマンカの総督府だ。
 1分後に転送が始まる。そして5人の元捕虜は床に円の描かれた場所に、2人の地球人と乗った。
   その円内にいる者が、総督府にワープするのだ。
「2人の地球人を放せ」
 保安隊のリーダーが命令した。
「放した途端撃たれたら困るからな。悪いが2人は連れていく」
 ザースコの回答だ。
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