地球に優しい? 侵略者

空川億里

文字の大きさ
14 / 66

第14話 再会

しおりを挟む
    蒼介は夏映の紹介で、都内にある野菜工場で働く事になった。
 通勤はマンションにある転送機で行われたのだ。そこで彼は、思わぬ人物に会った。諸戸小春だ。
「諸戸さん、生きてたんだ」
 蒼介に対し、彼女はうなずいた。表情に乏しい顔が、さすがに今日は珍しく驚いていた。
 話を聞くと、偶然彼女も『新天地』が破壊された時、有給休暇をとっていたのだ。
 やってる業務は基本ここも『新天地』も同じなため、蒼介も小春も次第に職場に慣れていった。
 夏映からあの後1回だけ連絡があった。
    チャマンカ艦隊は血眼になってショードファ人の拠点を探してるそうだが、見つからないとの話である。
   銀河はそれだけ広いのだから、無理はない。
 そんなある日。工場での残業が終わり、1人で帰宅中の蒼介の眼前に、突如全身真っ白なショードファ人の姿が実体化した。
 本物を見たのは初めてだがテレビのニュース番組で、その容姿は何度も観ていた。
 ショードファ人は手にレイガンを持っていた。
 あっと思う間もなく引き金が引かれ、おそらくは見えない射線が飛んできたのだろう。
 が、それは、蒼介の眼前を遮るために発生したシールドが防いだ。
 元々こんなケースもあろうかと、夏映に渡されたベルトにシールド発生装置が組みこんである。
 次の瞬間、今度は夏映がすぐそばに実体化した。
 彼女はプロテクト・スーツを着ており、手にプラズマ・ソードを持っていた。
 腰にさした銃を抜かないのは、撃っても相手のシールドで、防がれると考えてだろう。
 プラズマ・ソードを持って普通に接近すれば、シールドを突き抜けるのが可能であった。
 ショードファ人はレイガンを夏映に向けて撃ったがやはりシールドで防がれたので、彼もしくは彼女の方もプラズマ・ソードを腰から抜き、夏映との間で激しい斬りあいが開始される。
 蒼介は恐る恐る、夏映に渡されていた銃をバッグの中から取りだした。銃は普通の物ではない。
 シールド・クラッシャー銃だ。
 引き金を引くと一発目で相手のシールドを無力化し、続けて撃たれた弾丸が敵の体内にとどまって、原子レベルまで分解してしまう。
 大変高価な物らしく、チャマンカの一般兵士や警官にも、支給されてないと聞いていた。手が、震える。無理もない。
 万が一を想定して渡されていたが、ちゃんとした訓練もしてないのだ。
 夏映を支援したいのだが、彼女同様敵のショードファ人が頻繁に動いており、狙いをつけるのが難しい。
 その時である。またもや何かが蒼介の眼前で実体化した。久々に会う結菜である。
 彼女の手には銃が握られ、その銃口は蒼介の胸を狙っていた。
「殺す気か!?」
 蒼介は、怒号を浴びせた。
「おれを、撃てるのか!?」
「あんたは、チャマンカに協力した」
「ショードファ人が、何をした。あいつらはおれの職場と同僚達を根こそぎ奪っていきやがった」
 声が、震えた。知らず知らず手にした銃の銃口を、相手の胸に向けている。
 引き金を引いて彼女に当たれば、結菜は地上から存在しなくなるのである。それを考えると、不思議な気がした。
 次の瞬間結菜は銃をホルスターに戻すと、今度はプラズマ・ソードを抜いた。蒼介もバッグの中からプラズマ・ソードのグリップを取りだす。
 グリップのボタンを押すと、プラズマの青い刃が伸びた。大した訓練も受けてないので、勝てる自信が全くない。
 が、結菜は剣を構えると、蒼介に向かって斬りかかった。
 彼もプラズマ・ソードを構える。互いの剣がぶつかりあった。
 少なくとも結菜は、それほどの剣の使い手とは思えなかった。
 恐らく先に現れたショードファ人の方が使い手だったのだろう。
 結菜の性格を考えると、蒼介を暗殺するという話が出て、自分にもやらせてくれと、ショードファ人の指揮官に頼みこんだに違いない。
 結菜の宝石のような目が、蒼介を睨んでいる。どうしても、自分が彼女を殺せるとは思えない。
 彼は相手がショードファ人なら、全員八つ裂きにしてやりたいほど憎んでいたが、同じ地球の日本人で喧嘩した事すらない相手を殺せるとは思えなかった。
 むしろ自分が殺された方が気楽な気もする。
 そんな心情が影響したのか、蒼介は、自分の構えたプラズマ・ソードを、相手の繰り出したプラズマ・ソードに叩き落とされてしまった。
 ためらわずに結菜は自分の剣を、こっちに向かって振りおろす。
 が、すぐそばに、チャマンカのポリス・ロボットに似たグレーのロボットが突如実体化し結菜の剣を、自分の手にしたプラズマ・ソードでくいとめた。
「助けに来ました」
 ロボットの顔面にあるスピーカーからアナウンサーの話すような流暢な日本語が流れでた。
 蒼介は、地面に落ちた自分のプラズマ・ソードを拾い、構え直す。
 結菜は不利を悟ったのか、自分のベルトのボタンを押し、次の瞬間、消失した。つまりは撤退したのである。
 横目で夏映の方を見る。彼女はショードファ人と互角に戦っていた。
 やはり相手のショードファ人が数での不利を自覚したのか、結菜同様消失する。
「助かったよ。ありがとう」
「護衛ロボットとして当然の義務です」
 グレーのロボットが、回答した。
「遅れて、ごめん」
 横から夏映が、口をはさんだ。
「一色さんの件がばれたのも、命まで狙われるはめになったのも、想定外だった。今後は24時間護衛をつける」
「このロボットが、常時そばにいるようになるのかな?」
「そうじゃないわ」
     夏映がブレスレットをよこした。
「今後はそれをはめていて。あなたに危害を加えるような敵が登場したら、自動的に救難信号が届いて、マイクロ・ワープで護衛ロボットを送りこむから」
 言われるままに、蒼介は腕輪を左腕にはめた。
 少しゆるかったが、はめると自動的に縮んで、ちょうどよい大きさになる。
 視線に気づいてそちらを見ると、諸戸小春の姿があった。
 いつもどこか怯えたような顔をしていたが、今はそれ以上に恐怖を抱いているようだ。
 さっきまでの修羅場を見てれば当然だが。
「大丈夫かい?」
 蒼介はかけよって声をかけた。近くに見えなかったから無事なはずだが、精神的なショックが大きいのかもしれない。
 小春の顔は泣き顔で歪んでおり、近寄ると思わぬ事に、向こうから抱きついてきた。
「一色さん、死ぬかと思った」
 小春は蒼介の胸に顔をうずめながら、嗚咽混じりの声を放った。
「大丈夫だよ。見ての通り、ぼくには強い護衛がいるからね」
 しばらくすると、ようやく気持ちが落ち着いたらしく、小春は1人で自宅へ帰った。
 その間、何度もこちらの方を見る。
「色男」
 ぼそりと、夏映がつぶやいた。
「よせよ。歳が離れすぎてる」
「愛に歳は、関係ない」
 棒読みの口調で夏映がのたまう。
「君だって、オジサンとつきあうのは嫌だろう」
「若い子が好きなくせに」
 夏映が勝手に決めつけた。
「あたしは、お金持ってるなら、オジサンでもいい」
「なら、おれは無理だ」
 蒼介は笑って答える。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【新作】1分で読める! SFショートショート

Grisly
ファンタジー
❤️⭐️感想お願いします。 1分で読める!読切超短編小説 新作短編小説は全てこちらに投稿。 ⭐️忘れずに!コメントお待ちしております。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

【戦国時代小説】 甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助

蔵屋
歴史・時代
 わたしは、以前、甲斐国を観光旅行したことがある。  何故、甲斐国なのか?  それは、日本を象徴する富士山があるからだ。     さて、今回のわたしが小説の題材にした『甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助』はこの甲斐国で殆どの戦国乱世の時代を生き抜いた。そして越後の雄•上杉謙信との死闘は武田信玄、山本勘助にとっては人生そのものであったことだろう。  そんな彼らにわたしはスポットライトを当て読者の皆さんに彼らの素顔を知って頂く為に物語として執筆したものである。  なお、この小説の執筆に当たり『甲陽軍鑑』を参考にしていることを申し述べておく。  それでは、わたしが執筆した小説を最後までお楽しみ下さい。  読者の皆さんの人生において、お役に立てれば幸いです。  

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

「魔物の討伐で拾われた少年――アイト・グレイモント」

(イェイソン・マヌエル・ジーン)
ファンタジー
魔物の討伐中に見つかった黄金の瞳の少年、アイト・グレイモント。 王宮で育てられながらも、本当の冒険を求める彼は7歳で旅に出る。 風の魔法を操り、師匠と幼なじみの少女リリアと共に世界を巡る中、古代の遺跡で隠された力に触れ——。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

処理中です...