地球に優しい? 侵略者

空川億里

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第20話 帰還

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 やがて戦艦モガラモガラは、チャマンカ星の上空にワープアウトした。久々の母星に、ソワール大佐は高揚感を抑えきれない。
 ちなみにモガラモガラとは、チャマンカ星の、伝説の英雄の名に由来する。
 多くのチャマンカ人にとって、モガラモガラという名には、特別の思い入れがあった。
 ガシャンテ大将やソワール大佐を含めた一行はシャトルに乗りこんだ。
 シャトルはカタパルトから飛びだすと、地上にある飛行場へと向かう。
 そして飛行場の滑走路に着陸する。
 準光速ミサイルの攻撃で破壊された都市の残骸を見るのは痛々しかったが、それでも多くのチャマンカ人が歓声を上げてソワール達を迎えた時には喜びが、全身の隅々にまで伝わっていくような気がした。
 凱旋パレードや祝賀会などお決まりのイベントが終わった後、ソワール大佐は1人だけバサニッカに呼びだされた。
「宰相閣下、今日は一体何のご用でしょうか」
「ソワール大佐、私は君を評価してるのだ。大佐にしておくのはもったいないが、上の方が詰まっていてね。なかなか昇格させづらいのだ」
「ありがたいお言葉です。が、自分はそもそも昇進に興味ありません。例え一兵卒であっても、帝国のお役に立てれば、それで十分満足です」
「貴様のそういう謙虚な点も、私は評価してるのだ。まあ、かけなさい」
 バサニッカはソファーに腰かけると、向かいのソファーを大佐に勧めた。
 宰相のソファーはピンクだが、これは彼女の表皮からピンク色の毛が落ちても、目立たぬようにするためだろう。
 室内は掃除用のロボットが走行しており、静かに床の毛を清掃していた。
 地球人と違いチャマンカ人は全身が毛に覆われているので、地球人よりも頻繁に毛が落下する。
 その分清掃は念入りに行われていた。
「貴様は一体どう思う? このチャマンカ帝国を」
「素晴らしい帝国です。この帝国に生まれたのを、心から喜びたいです」
「それは、私も同感だ。が、此度の件をどう考える。この偉大なるチャマンカ星がショードファ人に攻撃され、大変な損害を被った。何らかの対策を立てねばならないと思わんか」
「それは無論です。対ミサイル防衛システムのようなものが必要かと」
「ところが野党は、この件に反対なのだ。今は疲弊した民を救うのが先だと抜かしておる。貴様どう考える。このようなチャマンカ帝国の民主制を」
「何とも言えません。我々軍人は、政治に口を出してはいけぬ決まりですので」
「そんな体制が歯がゆいとは、思わんか? きっと永遠帝陛下も、そう感じてらっしゃるだろう」
「何がおっしゃりたいので?」
 不穏な空気を感じながら、ソワールが、質問した。
「はっきり宣言しよう。クーデターを起こす」
 氷の女は射抜くように、ソワールを見た。大佐が返答せずにいると、バサニッカは笑顔を浮かべる。
 先程までの真剣な顔つきが嘘のような、春のような笑みだった。
「なに、クーデターと言っても無血クーデターだ。1人も殺さず一時的に議会を占拠する。そして、野党が反対する対ミサイル防衛システムを建設するのだ。その後野党議員は全員解放し、新たに選挙を行うという流れだ。どうだ? 一緒に協力せんか」
 ソワールはさらに、沈黙を続けた。
「まあ、突然こんな話をされても、貴様も困ろう。しばらく考える猶予を与えよう」
 バサニッカは笑顔らしき物を浮かべたが、その目は笑っていなかった。

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