54 / 66
第54話 このプレゼントを、君に捧げる
しおりを挟む
「特効薬だ」
蒼介は手に収まる大きさの、銀色の円筒形の物体を、夏映に向かってさしだした。
一見昔懐かしい初代ウルトラマンが変身する時に使うベータカプセルのように見えるが、無論そうではない。
ベータカプセルのおもちゃでもない。
「これ、どうしたの?」
夏映は星を散りばめたような目で蒼介を見ながら、不審そうな声をあげた。
2人は、夏映が住むマンションの一室にいた。
蒼介が刺客に襲われて以来、2人は同じマンションの隣どうしの部屋にいる。
万が一の場合、夏映が蒼介を守るためだ。
そのために夏映は部屋にレイガンとショックガン、プラズマ・ソードを備えている。
蒼介も、同じ武器を自室に運んでいた。
先程彼は夏映の部屋の呼び鈴を押し、扉を開いた彼女に対し、その物体を見せたのだ。
2人は応接室に向かいあったソファーに座っている。
「結菜にかけあって、ショードファ人から入手した。奴らの宇宙船から地球へ転送させたんだ。このカプセルの中に特効薬が入ってる。大翔君に近づけてボタンを押すと薬が彼の体内にマイクロワープしてウィルスを駆逐する」
「信じられるの? よりによってショードファ人を」
「わからない。だから無理に勧めない。チャマンカ人の医師に相談するのも手だと思う。が、相談したら『怖いから使えない』と決めつけられてこのカプセルはとりあげられ、永遠に使えないかもしれない」
蒼介の言葉に夏映は黙ったままだった。
「チャマンカ人のドクターに説明されたの。冷凍睡眠は大翔の病気の進行を遅らせているだけで、あと半年以内に病原菌が彼の体内の全域に侵食して、最後には絶命するって」
夏映は重苦しい口調で語る。まるで突然重力の大きな惑星に転送されたかのようだ。
「大翔君のご両親に相談したらどうだろう?」
「ヒロ君には、両親がいないの。2人共すでに他界してる。1人っ子だし。だから早く結婚して、子供が早く欲しいって話してた」
夏映の声が震えだし、水晶のような涙が流れた。
「とりあえず、これは君に渡しておくよ。あとは、君の判断に任せる」
夏映は戸惑いを隠せぬ震えた手で特効薬の入ったカプセルを受けとった。
「なんだかどこか、遠くへ行っちゃうような口調ね」
翳りを帯びた眼差しで、夏映がそう口にする。
「そんなわけないだろ」
蒼介は笑い飛ばしたつもりだが、どこまで笑い飛ばせたか自信がなかった。
蒼介は手に収まる大きさの、銀色の円筒形の物体を、夏映に向かってさしだした。
一見昔懐かしい初代ウルトラマンが変身する時に使うベータカプセルのように見えるが、無論そうではない。
ベータカプセルのおもちゃでもない。
「これ、どうしたの?」
夏映は星を散りばめたような目で蒼介を見ながら、不審そうな声をあげた。
2人は、夏映が住むマンションの一室にいた。
蒼介が刺客に襲われて以来、2人は同じマンションの隣どうしの部屋にいる。
万が一の場合、夏映が蒼介を守るためだ。
そのために夏映は部屋にレイガンとショックガン、プラズマ・ソードを備えている。
蒼介も、同じ武器を自室に運んでいた。
先程彼は夏映の部屋の呼び鈴を押し、扉を開いた彼女に対し、その物体を見せたのだ。
2人は応接室に向かいあったソファーに座っている。
「結菜にかけあって、ショードファ人から入手した。奴らの宇宙船から地球へ転送させたんだ。このカプセルの中に特効薬が入ってる。大翔君に近づけてボタンを押すと薬が彼の体内にマイクロワープしてウィルスを駆逐する」
「信じられるの? よりによってショードファ人を」
「わからない。だから無理に勧めない。チャマンカ人の医師に相談するのも手だと思う。が、相談したら『怖いから使えない』と決めつけられてこのカプセルはとりあげられ、永遠に使えないかもしれない」
蒼介の言葉に夏映は黙ったままだった。
「チャマンカ人のドクターに説明されたの。冷凍睡眠は大翔の病気の進行を遅らせているだけで、あと半年以内に病原菌が彼の体内の全域に侵食して、最後には絶命するって」
夏映は重苦しい口調で語る。まるで突然重力の大きな惑星に転送されたかのようだ。
「大翔君のご両親に相談したらどうだろう?」
「ヒロ君には、両親がいないの。2人共すでに他界してる。1人っ子だし。だから早く結婚して、子供が早く欲しいって話してた」
夏映の声が震えだし、水晶のような涙が流れた。
「とりあえず、これは君に渡しておくよ。あとは、君の判断に任せる」
夏映は戸惑いを隠せぬ震えた手で特効薬の入ったカプセルを受けとった。
「なんだかどこか、遠くへ行っちゃうような口調ね」
翳りを帯びた眼差しで、夏映がそう口にする。
「そんなわけないだろ」
蒼介は笑い飛ばしたつもりだが、どこまで笑い飛ばせたか自信がなかった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
「魔物の討伐で拾われた少年――アイト・グレイモント」
(イェイソン・マヌエル・ジーン)
ファンタジー
魔物の討伐中に見つかった黄金の瞳の少年、アイト・グレイモント。
王宮で育てられながらも、本当の冒険を求める彼は7歳で旅に出る。
風の魔法を操り、師匠と幼なじみの少女リリアと共に世界を巡る中、古代の遺跡で隠された力に触れ——。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【戦国時代小説】 甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助
蔵屋
歴史・時代
わたしは、以前、甲斐国を観光旅行したことがある。
何故、甲斐国なのか?
それは、日本を象徴する富士山があるからだ。
さて、今回のわたしが小説の題材にした『甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助』はこの甲斐国で殆どの戦国乱世の時代を生き抜いた。そして越後の雄•上杉謙信との死闘は武田信玄、山本勘助にとっては人生そのものであったことだろう。
そんな彼らにわたしはスポットライトを当て読者の皆さんに彼らの素顔を知って頂く為に物語として執筆したものである。
なお、この小説の執筆に当たり『甲陽軍鑑』を参考にしていることを申し述べておく。
それでは、わたしが執筆した小説を最後までお楽しみ下さい。
読者の皆さんの人生において、お役に立てれば幸いです。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる